2020.04.30
  • インタビュー
西園寺未彩(かんたんふ):早めに活動休止して、苦しむ人を増やさない方がいいなって思いました
今年1月31日、セルフプロデュースで活動するアイドルグループ「かんたんふ」は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大に対するWHOの緊急事態宣言を受けて、「すべてのイベント出演をキャンセル」する旨をツイッターで表明した。   WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を発令したのは1月30日のこと。そして、かんたんふからの上記のツイートは1月31日8時36分に投稿されており、時差などを勘案すると、その対応はWHOの宣言から間髪を容れずに成されたと言えるだろう。   ちなみに、中国の武漢が都市閉鎖されたのは1月23日のこと。この頃は「中国が大変なことになっている」と不安を覚えたものの、まだ“対岸の火事”と認識していた人がほとんどであっただろう。厚労省が発表した1月31日時点での日本国内感染者数は11人であり、死者は0人。渡航者による感染がわずかに見られたものの、巷のムードはまだ“自粛”には程遠いものだった。   2月3日ダイヤモンド・プリンセス号が横浜に停泊したことで“対岸”ではなくなり、2月16日に大阪のライブハウスで感染が発覚されてからは音楽/エンターテインメント業界にも自粛の気運が徐々に生じてきたが、まだまだ多くのライブが“決行”されていた。その後、学校への休校要請や様々な業界への自粛要請が出されていったが、日本政府による7都府県への緊急事態宣言が発令されたのは、ようやく4月7日のこと。そういう意味では、かんたんふは、日本政府に2ヶ月以上先んじて自らとそのファン、そして音楽業界へと向けて“緊急事態宣言”を出していたのだ。   かんたんふがいち早く出した“宣言”は、当時は好奇の目で見られていたことだろう。高齢者と同居する筆者も人一倍感染対策を心掛けていたつもりだが、それでもこの時期は(もちろんマスクや消毒液などで防備しつつだが)ライブ現場を訪れ、取材なども通常通りに行なっていた。ゆえに彼女たちの対応は「少し過剰ではないか」と感じていたのが正直なところだ。   だが、かんたんふの下した判断が今大いに評価されている。彼女たちの対応がいかに有効なものであったか、彼女たちにいかに先見の明があったか。現在の感染状況を見れば、それは明白であろう。   ちなみに、こうした運営的な判断を下していたのは、グループの中心人物である西園寺未彩だ。メンバーの出入りが少なくなかったこのグループにおいて、やはりStereo TokyoやReLIeFといったグループで経験を積んだ西園寺未彩が主導的立場に就いたのは、自然な流れであろう。“精度の高い予測”も“適切な判断”も彼女に負うところが大きい。   そんな彼女が、かんたんふの体制を整え、音楽性も軌道修正しながら、再始動の準備に入っているという。新生“かんたんふ”としていよいよ動き出そうというのだ。   誰よりも意識の高い彼女が、感染対策に万全を期しながらも、こうして新たな活動を始める。現在の自粛ムードの中、音楽業界に限らずエンタメ界隈全般において、様々な工夫を凝らしながら活動に取り組み、人々に元気や癒しや希望を届けようとしている表現者たちは少なくない。そんな中、感染防止の重要性を自らの活動を犠牲にすることで訴え続けてきた西園寺未彩が、感染対策の手を緩めることなく、こうして“現場”に戻るという判断を下したことは、そろそろ自粛疲れの影響が出てきそうな我々にとって、ひときわ輝く“希望の光”となることだろう。   ひとつ付け加えるならば、彼女のコロナ禍への対応に鑑みずとも、ほんの少しだけ試聴させていただいた新曲そのものが、大きな期待を抱かせてくれる意欲作だったことは言明しておきたい。   かんたんふの西園寺未彩にお話を伺った。“新生かんたんふ”に関する最も早いインタビュー。もちろん“STAY HOME”を遵守し、オンラインにて行なった。             出たらすぐに“宣言”できるように文面を考えておいたんです     ――かんたんふは、というより西園寺さんは、新型コロナウイルス感染対策に誰よりも早くから取り組まれていましたよね。     西園寺未彩(以下:西園寺):いえ、世界的に見るとそんなに早くないです。   ――それこそ1月31日の時点で「WHOの緊急事態宣言を受けて、すべてのイベント出演をキャンセルさせていただきました」というメッセージをツイッターで出されています。それ以降はライブもイベントも一切やってないですよね。それからは公の場には出ておられません。ライブも結局1月25日六本木VARIT.での主催ライブが最後でした。   西園寺:はい。   ――いや、でも早くなかったですか? あの時点でそういう対応したグループって周りにいなかったと思います。   西園寺:最初はちょっと笑われてましたね。   ――過剰反応じゃないか、と?   西園寺:はい。でも、どのグループも濃厚接触に含まれるライブ活動はやめなきゃいけなくなる日が来るのは分かっていたので、「いいんじゃない、勝手に言ってれば」って感じでした。   ――それが今すごく評価されていますよね。   西園寺:どうなんだろう。そもそも「かんたんふ」自体知名度がないので…。多分知名度があれば「すごいすごい」ってなってたかもしれないですけど…。   ――でも、アイドル界はもちろんエンタメ業界全体を見渡しても相当早かったんじゃないですか?   西園寺:メンバーに中国出身の子がいるんですよ。   ――朱亞(しゅあ)さんですよね。   西園寺:(編注:活動休止前最後の出演となった)1月25日のライブ裏でも朱亞ちゃんは「母国がこんなに大変なことになってるのに私は何もできない」って泣いてて…。そういうのを見たり聞いたりしているのもあって「本当に大変なことになるんだ」って感じてました。その時点では日本はまだそこまで深刻な状況ではなかったんですけど、そうなっちゃう可能性もあると。1月半ばにまずその情報を初めて知ったんです。新しい肺炎が流行ってる、と。その時は「そうなんだ、こわっ」ぐらいしか思ってなかったんですけど、ウイルスのことをちゃんと調べて理解できたのが、1月の末で。   ――ご自分で調べられたわけですね。   西園寺:そうです。「どんなウイルスか」とか「これから先どうなるのか」といったことを考えておかなきゃいけないじゃないですか、私たちは。人前に立つわけですし、いろんな人と会いますし、ライブ活動がメインで濃厚接触のある空間にいるわけですし。どれぐらい怖い病気なのかっていうのを分かっておかなきゃいけないので、いろいろと調べてみると、世界中で感染者が出ることは確実だと思って。日本もそうなるから「今後は防護服とかでライブするのかな、いや、それはちょっと無理かな」とか考えて、「じゃあ、活動を一旦やめましょう」ってことになりました。   ――その時点では、巷では「怖いな」「中国は大変だな」といった空気はありましたが、まだ“対岸の火事”といった感じでした。アイドルの皆さんも通常通りライブをやられていましたし…。切実な問題として捉えていた人は、少なくとも音楽・エンタメ業界ではほとんどいなかったんじゃないかと思います。 でも、その時点で「ライブ活動休止宣言」を出されたというのは、やはり中国出身の朱亞さんが身近にいらっしゃって、身近な問題と捉えていたからですか?   西園寺:もちろんそれもありますが、でも、そういう存在がいなくても絶対やってました。   ――いなくてもやってました?   西園寺:はい。   ――というのは、ご自身で調べて、ご自身で恐怖を実感していたから?   西園寺:そうです。このCOVID-19自体をちゃんと理解したら、自分や身近な人が発症する恐ろしさとか、どこまで広がる可能性があるのかとか、誰もが他人事では済まされないってわかると思うんですよ。普通にファンの人と直接会う「ライブ活動はできなくなる」って分かりましたし、いずれみんな対面式のイベント活動が止まるのは分かっていたので、だったら早めに活動休止して、苦しむ人を増やさない方がいいなって思いました。   ――そうやって詳しく調べられたのは、そもそもそういう性格なんですか? それとも運営としての責任を感じてとか?   西園寺:未彩は目に見えない嫌なものが一番怖いんですよ。“人の悪意”とかそういう目に見えないものが。ウイルスも目に見えない嫌なものじゃないですか。なので、すごく怖くて…。分からないものを理解しないと怖すぎて何もできなくなっちゃうので、調べて理解しました。理解する前はちょっとパニックだったけど、理解してからは「こういう対策をしていればある程度は大丈夫」って思えるから、安心するために自分で調べました。   ――その時点では、周りにそれだけ意識の高い方ってそんなにいらっしゃらなかったんじゃないですか?   西園寺:その時は普通に馬鹿にされてました。お友だちとかには連絡して「こうこうこういうことに今後なっていくからホントに危ないよ」とか「人と接触する場所には行かないほうがいいよ」って言ってたんですけど、仲良しでもちょっとオーバーだと思ってる人はいたと思います。   ――で、1月半ばから調べ始めて、1月末には「活動休止宣言」。早いですね。   西園寺:1月末に「この先間違いなく大変になる」って完全に理解して、そのうちWHOが緊急事態宣言を出すというのは分かってたので、出たらすぐに“宣言”できるように文面を考えておいたんです。なので、WHOから出たタイミングですぐに“活動休止宣言”を出した、そんな感じです。   ――かなり用意周到だったわけですね。   西園寺:はい。未彩は、1月25日のライブの時も「ここでも感染とか有り得る」と思ってすごく怖かったんですよ。多分あのときあの場で本気で危機感を持っていたのはかんたんふのスタッフさんと未彩と朱亞ちゃんくらいだったんじゃないかと思います。   ――その日のライブは映像で拝見しました。   西園寺:ホントに怖くて。「サングラスとマスクして出る?」という話をしたんですけど、マスクをしちゃうと顔が分からないし、声も出ないし、それはちょっと駄目だなってことでマスクはやめて、まあ、曲のイメージにも合ってるから「サングラスならいいかな」ってことになったんです。かんたんふのスタッフさんが入り口で、お客さん一人一人にマスク配布と手に消毒液シュッシュして、あの時点で出来た感染予防は万全で開催しました。そういった対策に「ありがとう」「助かる」と言ってくれる人も少数居ましたが、その内手に入りづらくなるとわかっている中で配布した貴重なマスクを、顎マスクにしてたりつけてくれない人も居て悲しかったです。命は過保護すぎるくらい大事にして欲しいなと思いました。   ――なるほど。でも、やはりその時点でそこまで意識の高かった人っていうのはほとんどいなかったでしょうね。僕も高齢の母と同居しているので、ものすごく気を遣っていて、今年に入ってから電車には一度も乗っていないですし、人混みも避けていましたが、でも、仕事関係で3月末のライブは観に行ってました。3月上旬ぐらいまでは対面でマスクも外して取材もしていましたし。そういう意味でも、西園寺さんは現状把握と状況予測の能力がすごいですね。   西園寺:でも、これからのほうが大変だと思います。感染者が増えるとか、亡くなる方が増えるとかもそうなんですが、コロナ終息後の経済の落ち込みをどう立て直していくかが課題になると思います。   ――すごく考えられてますね。これまでの運営としての取り組み方や書かれた文章などを見たりして、「この人はちょっと違うな」って思っていたんですが、やはり鋭い感性をお持ちですね。芸術的な観点からだけでなくて。こういう方がたくさんいれば、感染拡大なんてしないですね。   西園寺:そうだといいんですけど、それだけじゃ通らないことがたくさんあるのも分かってます。人が止まると物も止まっちゃうので、そうなれば潰れる会社も相当あるだろうなって。すごく不景気になると思います。もうなってると思いますが。      
2020.04.21
  • インタビュー
Nao☆|「SCOOBIEさんに負けられない」と思いながらレコーディングしました
  Nao☆の新曲がとてもいい。   今や全国区の知名度を誇る新潟発のアイドル・ユニット、Negiccoのリーダーとして永きに亘り活動してきたNao☆。2019年4月10日に入籍し、“現役アイドルの結婚”として大いに注目され、それが快く歓迎されたことでも話題となったが、昨年そんな“新たな生活”をスタートさせたNao☆が、2020年4月さらなる“新たなスタート”を切った。   2018年に結成15周年を迎えたNegicco。2019年はKaedeがソロ活動を本格化させ、Meguは自身で立ち上げたブランド“CURRY RICE RECORDS”の企画で30人のクリエイターにデザインを依頼し、30種類のTシャツ展を企画したり、今年3月にはさらなるオリジナルブランド“Life to meet you!”を立ち上げるなど、個人活動が活発となってきたが、残るNao☆は比較的「マイペースで」一年を過ごしていたようで…。だが、いよいよNao☆も精力的に動き出した。しかも心躍るグルーヴをたたえた極上のソロ・シングルを引っ提げて。   表題曲「ベスト☆フレンド」は、SCOOBIE DOのギタリスト、マツキタイジロウが作詞作曲を、SCOOBIE DOの面々が編曲及びサウンド・プロデュースを手掛けたSCOOBIEらしいファンキー・チューン。一方カップリングの「rainy~next season~」は、Nao☆自身が作詞を、Keishi Tanakaが作曲及びサウンドプロデュースを手掛けた、しなやかにスウィングするビートが印象的なナンバー。いずれも、これまでのNegiccoにはないタイプのダンスミュージックであり、Nao☆自身としても新たな挑戦となる“新機軸”と言えるものである。   不思議なのは、Nao☆が新たな領域へと足を踏み入れたことを明確に示す2曲でありながら、Nao☆が歌うと紛れもない“Nao☆の歌”になっていることだ。さらに言えば、様々なスタイルの楽曲を歌ってきたNegiccoの引き出しにも無い曲調でありながら、やはりNao☆が歌うとNegiccoをも感じさせるのだ。こうした歓迎すべき“矛盾”が生じている要因の一つには、やはり彼女の特徴的な歌声が挙げられるだろう。   Nao☆の歌声は、伸びやかな響きをたたえつつも、決してズケズケと心に踏み入ってくるようなものではなく、少し距離感を保ちながら響いてくるような印象がある。むしろ、そうした距離感が聴き手のイマジネーションを膨らませる余地になっているのではないだろうか。例えば、面と向かって歌い掛けてくるというより、隣に並んで歌っていて、聴き手は声がスーッと発せられるのを隣りで感じているといったような…。だが、メロディが跳躍する時などにフーッと近づいてきたりすることで聴き手の心を揺さぶるのだ。   そんな彼女の歌声が、SCOOBIE DOが巻き起こすいなたくて生々しいグルーヴや、Keishi Tanakaの紡ぎ出す小粋なスウィングビートと対峙しているのが、このシングルの妙味であろう。見事な調和を見せながらも、決して“相手の色”に染まるのではなく、がっぷり四つに組み、むしろ相手を染め返そうとさえしているかのような…。そんな心地好い“せめぎ合い”が感じられるのだ。   Nao☆に新曲についてたっぷりとお話しを伺った。           自分はやはり歌が一番好きなので「ソロで歌うことができたら」という気持ちは強かったです   ――昨年ご結婚を発表した際、「31歳でまた新しい1つのスタートを切りたいと思いました」とコメントされていました。まぁ、人生の大きな節目ですから、もちろん“新しいスタート”ですが、その1年後となる4月7日にソロ・シングル「ベスト☆フレンド」をリリースされました。これもまた“新しいスタート”という感じでしょうか?   Nao☆:はい。これも新しいスタートですね。カップリング曲が「rainy~next season~」で、生誕記念イベントのタイトルも「32nd Anniversary Live~Second Season~」(編注:新型コロナウイルスの影響で4月4日から6月24日へと延期となった)だったんですが、そういう気持ちでタイトルを付けさせていただきました。   ――2年前にリリースされた「菜の花」は、“生誕企画もの”という要素が強かったですよね?   Nao☆:「Nao☆」という自分の名前から取った「菜の花」というタイトルが先に決まっていて、「菜の花」というタイトルに合せた、春を感じるような楽曲を北川勝利さんに作っていただいて…。なので、“30歳の記念”ということで作らせていただきました。   ――では、それに比べると今回のシングルリリースは“本格的なソロ活動”と捉えていいのでしょうか?   Nao☆:昨年は結婚して、“新しい人生”を1年間マイペースでやらせていただいたんですが、そんな中、今年2020年から自分もソロとしても活動できたらいいなと思っていたんです。「どういう楽曲で」「どういう方向性で」とかを考えて楽曲をお願いしたりとか…。   ――昨年1年間は「マイペース」で活動されたとおっしゃいましたが、でもNegiccoとしても、個人としても、いろいろ活動はされていた印象でした。「マイペース」という感じでもないような…。   Nao☆:私からすれば結構マイペースでやらせてもらった感じでした。時間も沢山いただいて、自分のペースでやらせていただきましたね。   ――趣味とか自分磨きとか、そういったことに充てる時間が結構あったんですか?   Nao☆:そうですね。一昨年の15周年の時はNegicco1本でダーッとやってきたので、31歳はちょっと、西野カナさんが「自分の時間を取りたい」っていったみたいな感じで、自分もマイペースで活動させていただきました。   ――具体的に何をされていたんですか?   Nao☆:「のんびりしてた」しか思い浮かばないです。でも、絵を描いたりとか、自分の趣味の時間も結構作れたかなという感じでした。そのおかげで、昨年アートブック『nanohana*book』を出させていただいて…。好きなことを1冊の本にさせていただくことができましたね。   ――その「のんびりした時間」の中で、ソロ活動に関してもいろいろ考えていたということですか?   Nao☆:「来年できたらいいな」という風には思っていました。ただ、Kaedeのようなペースではできないと思っていたので、自分なりにソロができれば…。今Negiccoはそれぞれが個人でいろんな活動をしてるんですが、自分はやはり歌が一番好きなので「ソロで歌うことができたら」という気持ちは強かったです。   ――別の雑誌でKaedeさんにインタビューをさせていただいたんですが、その時に、Negiccoは毎年個人面談をやっていて、「Negiccoを続けていく意思はありますか?」みたいな“確認”があるとのことおっしゃっていました。で、そうした“面談”の時にKaedeさんは「ソロ活動を本格的にやりたい」といった話をされたようですが、Nao☆さんもそういう意思を表明してたりしてたんですか?   Nao☆:表明というか、一昨年の秋には「ソロとかどう?」といったお話もしてもらっていたんですが、「2019年はちょっとマイペースで、2020年から生誕でCDを出して、1人でもライブをやったり、個人で歌をもっと重点的にやっていきたい」といった話はしていましたね。   ――ということは、今回のリリースは「念願の」という感じですか?   Nao☆:そうですね。Kaedeのソロ活動とか見ていると、Kaedeもすごく成長してるのを一緒にいて感じましたし、一人でCDを出したり、自分の曲だけでワンマンライブをやったり、というのを見ていると、やっぱりちょっと羨ましい部分もあったり…。自分は自由な時間をいただいていたんですが…。でも、それを考える時間があったので、やりたいという気持ちが強くなったんだと思います。その間にいろんな人の作詞を研究したりして…。   ――今ちょっと時期が時期ですので、なかなか先が見えない部分もあると思いますが、でも、ソロでライブをやったり、さらにシングルを出したり、楽曲を作ったり、といったことも構想しつつの今回のシングル、という感じですか?   Nao☆:そういうこともやっていきたいなという気持ちは伝えています。はい。   ――以前から「ソロをやりたい」という気持ちはあったんですか?   Nao☆:それまではNegicco以外の活動は考えてなかったです。   ――そうなんですね。Nao☆さんがシングル出すということで、「やはり来たな」という印象を僕は受けたんですが、ご本人としては「ずっと前々から」という感じではなく、そういう気持ちが明確になったのは昨年ぐらいから、と。   Nao☆:そうですね。Kaedeがソロで歌うようになってから、Negiccoも個人でやりたいことをやったり、特技を伸ばしていったり……そういったことができるんだって分かりました。でも、みんな大人になっていくにつれて、今までとは違う厳しいこともあると思うので…。なので、そうやって大人になってもいろいろやらせてもらえるのはありがたいですね。   ――「厳しいこと」というのは何でしょう?   Nao☆:「厳しい」というか…。やはり「結婚してアイドルを続けられるのか」というが気持ちがまずあって、「結婚を発表したら活動がどうなるのか」っていうのも分からなかったですし…。なので、私が少し休憩してる間に、Kaedeがソロ活動したりとか、Meguがブランドを立ち上げたりとか、そういうことがあって、それもあり得るんだなというか。数年前までは、3人じゃなきゃ活動できなかったんですよ。取材もテレビ出演も3人じゃないとだめだったので、こうやって個人で活動していくというイメージができなかったというか。   ――でも、こんなに温かく迎えられた“現役アイドルの結婚”というのは前例がなかったんじゃないですか? ご結婚後も変わらず、すごく自然に活動をされている感じじゃないですか。それがすごく素敵だと思います。   Nao☆:本当にありがたいことに、お祝いのコメントとかいっぱいいただいて、ファンの方も今も応援してくれているので、ファンの方とNegiccoとの信頼関係というか、それがあってこそなんだなという感じがします。   ――僕の知る限りでは「Nao☆さん結婚したからもうファンやめる」っていう人はいないように思います。   Nao☆:そうですか?(笑) ありがとうございます。正直「いなくなっちゃう人もいるだろうな」と覚悟してたんですけど、でも皆さん「結婚しても応援してるよ」「ずっとファンでいるよ」って言ってくださったので本当にありがたいです。「Negiccoをずっと頑張ってきてよかったな」って思いました。    
2020.04.15
  • インタビュー
NaNoMoRaL|だから今年は走り抜けないと
なにやらただならぬ“勢い”である。 誰にも止められない暴走列車とでもいうべきか。いや、そんな粗暴な印象ではない。職人が手際よく次々と質の高い作品を作り上げているかのような、すごいことをさらりとやってのけているような印象だ。 昨年11月に2枚目となるミニアルバム『a zen bou zen』をリリースしたかと思えば、今年3月29日に早くも新たな7曲入りミニアルバム『macra no souji』をリリースするNaNoMoRaL。「結成2周年ワンマンライブで販売する」という“縛り”があったからこそこの短いスパンで完成まで漕ぎ着けることができたのだが、制作を開始したのが昨年12月から、というのだから驚きである。しかも収録の7曲は全て新曲。まさに、音や旋律や感情や感性がとめどなく溢れ、それを次々と作品にしていく“勢い”があるといったところ。その分、デモを受け取ってすぐさまレコーディングに臨んだ雨宮未來には大きな負担がかかったようだが、そうした経験はシンガーとしてのさらなる成長にも繋がっていることだろう。 そして、この“勢い”は何も「楽曲を録って出ししている」からだけではない。楽曲制作の合間に行なっているライブでの評判が日増しに上がっていることも、この勢いにさらに拍車をかけている印象だ。とりわけ“初見”のオーディエンスからの反応がすこぶる良く、音楽を愛する人々の間にその名をぐんぐんと浸透させているようなのだ。 梶原パセリちゃんが素晴らしい楽曲を日々量産し、雨宮未來が日増しにレベルアップする表現力によってそれらを最高の形で聴衆に届ける。この高性能な“両輪”が上手く噛み合って、あの“勢い”を生み出しているのだ。 雨宮未來曰く「毎回のライブが“最後の”ライブであるという気持ちで臨んでいる」とのこと。そうした“刹那感”もこの勢いをさらに増幅させており、そこにNaNoMoRaLの魅力の秘密があるのかもしれない。 そんな“両輪”により生み出された新作『macra no souji』には、NaNoMoRaLの今の“勢い”が凝縮されている印象だ。紛れもないNaNoMoRaLサウンドでありながら、明らかに前作とは違う意図のもとに制作され、その感触の違いが鮮明に描き出されている、梶原パセリちゃんの手による楽曲群。巧みなコントロールによって微細な陰影を施しながらも、あたかも呼吸をするかのように自然に無意識に、しかし時には何かに憑依されたかのように鬼気迫る表情を纏いながら、歌を紡ぎ出す雨宮未來。その詞は、時にシニカルな、時にハートフルなメッセージが抽象的かつ象徴的な言葉によってコーティングされたもので、それらが独特の音世界の中で興味深いストーリーを展開している。 スピードとクオリティの奇跡の両立。音源であれライブであれ、今一番体感しておかなければならないアーティストの一つであることは間違いないだろう。 雨宮未來、梶原パセリちゃんにお話を伺った。           「これ明日録るから」って新しいデモが早朝に送られてくるんです(未來)     ――早速ミニアルバム『marca no souji』についてお伺いしますが、前回のミニアルバム『a zen bou zen』が昨年11月20日のリリースですので、かなり早いペースですよね。   雨宮未來(以下:未來):早いですね。   梶原パセリちゃん(以下:パセリちゃん):今回はマジで早かったと思います。   ――それは何か戦略があってのことですか?   パセリちゃん:いえいえ、まとまった休みがあったっていうか…。   ――休みが?   パセリちゃん:正月とここ最近の…。   ――あぁ…。ということは“録って出し”というか、「曲ができたから出そう」となったわけですか?   パセリちゃん:というより、元々年末ぐらいにウチの社長に話してたんですよ。「3月に2周年のワンマンをやりたいから(編注:2020年4月15日現在では延期未定)そこに合わせてCDを出したい」って。   ――社長っていうのはフジサキケンタロウさん?(編注:NaNoMoRaLは昨年12月に、nuanceなどを擁する、フジサキケンタロウ主宰のミニマリングスタジオに所属することとなった)   パセリちゃん:そうです。ミニマリングスタジオの大社長に(笑)。とはいえ、11月にミニアルバムを出したばかりで、曲のストックも全部CDに入れちゃってるので、そうなると新曲を作るしかないじゃないですか。社長に「え?できんの?」って言われたんですが、その時にまだ1%もできてなかったんですよね。   ――それは11月の時点ですか?   パセリちゃん:11月の…。いや12月ぐらいかな。はい、12月中旬ぐらい。   ――えっ!12月の時点で全くできてなかった、と?   パセリちゃん:そうですね。あ、1曲取り掛かってたぐらいでしたね。   未來:えーっ、そうだったんだ。   パセリちゃん:でも「できます」と言いました。「正月もあるし今調子いいです」って嘘ついて(笑)。   ――嘘ついて(笑)。   未來:そんなこと言ってました。   パセリちゃん:「今めちゃくちゃ調子いいんですよ」って。   ――それは“嘘”だったんですね?   パセリちゃん:いや、まあ、調子がいい時なんてあんまりないんで。「できます」っていうのは絶対嘘ですね。間に合わなかったらしょうがないって思いながら、取りあえず作り始めたって感じです。   ――でもバッチリできたわけですよね。   パセリちゃん:なんとか。今回は未來さんに大負担をかけてしまった…。   ――そうですよねぇ。   未來:音源が上がってくるのがかなり急でした。   パセリちゃん:そう、めちゃくちゃギリギリ。   ――以前も少し不平を漏らしていましたもんね。   パセリちゃん:いや、今までとは比較にならないぐらいギリギリ。   未來:「これ今日録るから」って新しいデモが早朝に送られてくるんです。   ――パセリさんが夜通し作業され、早朝に出来上がってすぐ送られてくる、と。   未來:で、「今日か」って思って。取りあえず聴いて、自分の中で歌えるようにしてきたいタイプなので、もう、頑張ってずっと聴いて、頑張ってレコーディングしました。   ――早朝にデモが来て、“その日”ですか?   未來:その日の夜です。   パセリちゃん:それを7曲分。   ――7曲全部そんな感じだったんですか!?   未來:7曲全部そうです。   パセリちゃん:大体そんな感じです。   未來:「明日録るよ」っていうやつもあったりしましたけど、「今夜録ります」っていうのが結構ありました。でもそこで文句を言ってはいけないから…。「もう録るんだ」って感じでした。   ――で、できちゃったわけですよね?   未來:なんかできました(笑)。   ――今後もそういうことが起きるんじゃないんですか?(笑)   未來:「あ、いけるんだ」って言われて、「これはもうまずいぞ」と思って…これから先…。   パセリちゃん:そう。僕からしたら、本当にギリだったので「ダメもとできてたらいいな」って感じでお願いしたんですよ。まあ言っても多分できないかなと思ってて、教えながらやっていけばそれがレッスンにもなるので、その日に練習としてやって、その後にレコーディングできればいいかな、っていうような感覚でいたんですけど。なんかちゃんと歌えてたんで…。   ――すごいですね。   パセリちゃん:いや、めっちゃ助かりましたマジで。   未來:ホントですか?良かった!   パセリちゃん:おかげで納期に間に合ったっていうのはあります。「明日録るよ」とかって言ってたのは3月頭の話ですから。   ――3月頭ですか!   未來:今は1曲「さよならデスペ」っていうのだけ披露してるんですけど、それも披露するまでが結構タイトで、早かったですよね。   ――でもそういう経験ってシンガーとしてすごく大きいんじゃないですか? やはりライブで試したりとか、ライブで歌い込んだりするわけじゃないじゃないですか。   未來:じゃないですね。   ――やはり、いきなりレコーディングは難しいですか?   未來:そうですね。不安です。何もライブで披露してない分、この歌い方で合ってるのかな、って。   パセリちゃん:でもそれは、やりたかったことの一つなんですよ。僕らが子どもの頃って、好きなアーティストの“初聴き”ってCDだったじゃないですか。ライブに行くっていう文化もそんなになかったから、僕は“CDが先”のほうが普通じゃないかなって思ってる部分があるので、ホントはCDを出してからお披露目していくっていうのをしたいんですよ。まあ既に1曲はお披露目しちゃったんですけど…。   ――今のいわゆる“ライブアイドル”の文化っていうと、とにかくライブをどんどんやっていった後に「ようやく音源化します!」って感じでCDをリリースしますよね。   パセリちゃん:そうですね。まあ、レコーディングしたら、もうそのままライブで披露しちゃったほうが早いっていうのでやってるだけだと思うんですけど…。僕らは今や、どんなライブでもセトリが組めるぐらい曲数も増えましたので、じゃ今回はライブじゃなくてCDで披露っていうのをやってもいいんじゃないかなと思って…。なので、曲を作ってCDでどうぞ、っていうのを主流にしたいんですよね。   ――じゃあ今後もそういうパターンで?   パセリちゃん:いや、わかんないですけど(笑)。今はそんな気持ちです。   ――そういう意味では、ミニアルバムとしてリリースするのがいいですか?   パセリちゃん:スピード感という意味では、ミニアルバムのほうが作りやすいですね。   ――フルアルバムを出したいとは?   パセリちゃん:出したいですけど…。   ――例えば、今はフジサキ社長がいらっしゃるわけで…   パセリちゃん:はい、超大社長。   ――(笑)。それはネタなんですか?   パセリちゃん:いやいや、“大社長”にしたいという意味も込めて“大社長”。   ――イジってるわけじゃないですよね?   パセリちゃん:半分イジってますけど(笑)。   未來:うん、ちょっとイジってるかもしれない。   ――(笑)。で、例えば年間のスケジュールとか、どういうペースで出していこう、みたいなのはまずはお2人で考えられたりして、その後“大社長”から承認を得て、って感じですか?   パセリちゃん:そうです。「こういうのやりたいんですけど」って社長に報告する感じです。「これこれこうします」って言ったら、「じゃあこういうのは?」ってアドバイスをくれたりもするし、より良い方向に導いてくれるっていうか…。こちらのやりたいことを尊重してくれるんですが、それだけじゃなくて、もっといい道筋を提案してくれるっていうか、そういう関係で今やってますかね。   ――どうですか? 未來さんから見たフジサキ社長は?   未來:フジサキさんは、でもすごく良い大人です。   ――良い大人ですか。未來さんはあまり大人を信じないほうですよね?   未來:あんまり信じないんですけど、フジサキさんは“若いお父さん”みたいな感じです。東京の。いや横浜か。横浜の若いお父さん。   ――ハハハ。   未來:感じで(笑)。私には、パセリさんという信じれられて頼れる大人が近くにいるんですけど、パセリさんにとっての頼れる大人ってあまりいないなって思ってたんですよ。なので、フジサキさんという方と出会ってホントに良かったなって。私にとってもですけど、パセリさんにとって良かったなって思います。    
2020.03.31
  • インタビュー
Star☆T|「Woman」は、歌詞に描かれている女性のように自由に聴いてもらいたい曲です。
“楽曲派”を自認する向きには説明不要だとは思うが、愛知県豊田市を拠点に2011年より活動するStar☆T(スタート)は、紛うことなき"楽曲派アイドル"である。 いや、「正規メンバー14名+研究生(「レッスン星」と称するとのこと)2名」という大所帯で、「期生」「チーム制」「選抜制」といったシステムを取り入れつつ、華やかな衣装で歌い踊るという“王道アイドル”の側面もあれば、豊田市駅前GAZAビル南広場での定期ライブ、地元イベントや地元メディアでの活動、地元行政機関や企業との連携などを通して「アイドルによる地方創生」「地域を元気にする」という目標を掲げた“ご当地アイドル“の顔も持つなど、その魅力はいくつもあるが、やはり楽曲が素晴らしいのだ。 その作風は多岐に亘るが、いずれも音楽好きを唸らせるような工夫が施されている。例えば、筆者が最初に気に入った(というより度肝を抜かれた)のは「Viva☆LUVi:ce」という楽曲。2017年3月25日名古屋は大須のDt.BLDに“楽曲派アイドルの最高峰”Especiaのファイナルツアーを目撃すべく“遠征”した際、公演前に同会場の別フロアでイベントが行われていて、そこにStar☆Tが出演していたのだ。颯爽と登場し、高速ビートと流れるようなサビのメロディが印象的な楽曲をキビキビとしたパフォーマンスで披露した。それが「Viva☆LUVi:ce」だった。後に判明したことだが、この曲は「それまで避けてきた“沸き曲”」「それ以前はもっとマニアックな曲をやっていた」とのこと。「あれだけ音楽的な“妙”があるのに、“沸き曲”として作っていたのか!」と驚いたものだが、確かに、遡って『restart』というミニアルバム(映像を先に撮り、そのサウンドトラックという形でリリースされた)を聴いてみると、心地好いメロディや和音を緩やかなディスコ風に味付けした「Restart!」や、ブラスやオルガンやティンバレスなどの音が配された渋いファンクの「エスプレッソをダブルで」(あのSHOGUNをイメージしたとのこと)といったマニアックな楽曲が並んでいた。 ともかくも、“楽曲派アイドルの巨星”Especiaが終焉を迎えようとしていた時、“希望の星”として颯爽と現れ、筆者の喪失感を癒してくれたのがStat☆Tだった。まあ、2017年のことなので、まだまだ新参ファンなのだが…。 その後もStar☆Tは、意欲的な試みに満ちた音楽を発表し続けてきた。 まずは初のフルアルバムとなった2018年の『メロウ』。楽曲単位で聴くことが主流になりつつあるサブスク時代に、なんと人魚を主人公とする物語が展開するコンセプトアルバムを世に問うたのだ。ここにも名曲が詰まっているが、圧巻なのは11分を超える組曲『泡沫の人魚-組曲-』だ。 2019年には、Star☆Tのメンバー10人がソロ曲を歌うプロジェクトアルバム『Star☆TSOLO10』をリリース。豊田ゆかりのアーティスト10組が、アーバン・ファンクからいなたいR&B、トロピカルハウスからヘヴィなロックに爽やかなシティポップまで、色とりどりの優れた楽曲を制作し、メンバーも個性溢れる歌声を披露している。 秀逸なのが、昨年リリースされたシングル「ご当地ソング」だ。タイトルを見れば音頭でも聴こえてきそうだが、シンプルなコードのループをメロディやリズムの変化によって複雑に色付けしていくという、洗練された技法で作られた楽曲。歌詞には、“ご当地の名所や名産”は一切出てこず、地元で過ごす日常が匿名的に綴られる、というように歌詞にも“ひねり”が効いている。 そして新作「Woman」。女性の解放を目指した平塚らいてうやボーボワールの名言を引用しながら、これからの時代を軽やかにしなやかに生きようとする女性を描いたこの曲では、サンバをモチーフにしたサビと、ロドニー・ジャーキンス辺りが作りそうな隙間の多いビートにストリングスが絡まるヴァースとが、滑らかに溶け合っている。カップリングの、目まぐるしくビートやアレンジが変わる「ドッペルゲンガー」や、疾走感に充ちた「私の好きな人には、好きな人がいる」も聴きものだ。 ますますグループとして進化し、音楽的にも充実しているStar☆T。もしも「まだ聴いてない」なんていう“楽曲派”がいるとするならば、まずはこの新曲を今すぐチェックしていただきたい。   Star☆Tのメンバーより、和久田朱里(わくだあかり)、嶋﨑友莉亜(しまさきゆりあ)、牧野凪紗(まきのなぎさ)の3人にお話を伺った。     一番長いので4時間やりました(嶋﨑)   ――皆さんのことは結構前から大好きだったんです。2017年3月25日に名古屋は大須のDt.BLDでたまたま皆さんのライブを見て、その素晴らしいパフォーマンスと楽曲に「うぁ、スゲェ!」となって…。   牧野凪紗(以下:牧野):えぇ~!   嶋﨑友莉亜(以下:嶋﨑):うれしい。   和久田朱里(以下:和久田):ありがとうございます。   ――なので念願のインタビューです。で、まずは皆さん一人一人に「Star☆Tってどんなグループなのか」というのを簡単に言っていただきたいのですが。   牧野:はい、では私から。Star☆Tっていうグループは、名古屋にも沢山アイドルグループがいますが、どのグループよりも温かい家族みたいな、ファミリーみたいな感じがあると思います。グループ内だと、競い合いとか、ちょっとバチバチしたりとか、結構聞くじゃないですか。   ――はい。よく聞きます(笑)。   牧野:でも私たちは、喧嘩とかじゃなくて、思ったことをお互いにしっかり伝え合いながら、ちゃんと分かり合っているファミリーのような雰囲気があります。   ――いい絆があるんですね。   牧野:そう、強い絆が。年齢幅も結構広いんですけど、今一番若い子で小6?   和久田:新しい子が小6だね。   ――小学校の方もいらっしゃるんですね。   牧野:最近入った子です。   和久田:まだレッスン生なんですけど。   ――なるほど。   牧野:で、こちらのリーダーが(笑)。   和久田:25歳、最年長です。   牧野:そう。幅も広いんですけど、それだけ絆も強いグループだなと思います。   ――続きまして和久田さん。   和久田:私が思うStar☆Tの魅力は、やはり地元愛だと思います。豊田市のご当地アイドルとして、今も先ほどやってきたんですが、エフエムとよたでレギュラー番組を持たせていただいたり、ケーブルテレビでもリポーターとしてちょうどこの3人が土曜日の朝に生中継をやったりしています。あと、普通アイドルさんってライブハウスとかでのライブが多いと思うんですが、私たちは地元のイベントとかに出て、“餅投げ”とかやってます。「ふじまつり」といった地元のイベントに…。地域の方々、小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで親しめるようなイベントに出られるのが魅力かなって思っています。   ――餅を投げるわけですか?   和久田:神社などで餅投げとかあるじゃないですか?   ――はい。お正月とかにあるイメージですが、常にライブで餅投げてるわけじゃないですよね???   和久田:いや、そうじゃないです(笑)。   ――ですよね。   和久田:藤岡という藤の花が綺麗なところがあって、「ふじまつり」というのが毎年行われているんですが、そこは「フジオカリーナ」というオカリナが有名だったりして、そのオカリナの演奏とかもライブの前にやったりしました。   ――皆さんがオカリナを演奏する?   和久田:そうです。   嶋﨑:いただいて吹きました。     ――なるほど。じゃあ地元のいい所とかをアピールしたり、地元の企業とコラボしたり、そういったこともやっているわけですね。   和久田:なので、アイドルファン層だけじゃなくて、老若男女を問わず観ていただいています。あと豊田市駅前で第一、第三金曜日にライブをやらせていただいているんですが、野外のフリーライブになるので、学校帰りの中学生高校生とかが観てくれたりして、そういう所もStar☆Tの特徴かなと思います。   ――豊田市駅前は皆さんの縄張りなわけですね?   一同:いやいやいや(笑)。   ――他の人がやろうとしたら「誰の許可取ってそんなところで…」みたいな(笑)って、そんなことはないですよね(笑)。   和久田:(笑)。ゲストも呼んでやったりしてますので。   ――では、嶋﨑さん。「しまさき」さんなんですよね?   嶋﨑:はい、「しまさき」です。Star☆Tはご当地アイドルなんですけど、自分たちのオリジナル曲が現在60曲以上あるんです。あと、私たちの定期ライブとかワンマンライブのウリが、長尺ライブをすることなんです。一番長いので4時間やりました。     ――えっ?4時間…?   嶋﨑:私たちにとっては2時間ぐらいは普通で、MCとかコーナーも挟んだりするんですけど、8曲以上連続で歌ったりとかして。でも4時間でも全曲はやりきれなかったよね?     和久田:うん。全曲はできなかった。   嶋﨑:あとは、去年の夏にStar☆Tのメンバーの内の10人がソロ曲を出すというプロジェクトがありまして。     ――「Star☆TSOLO10」というやつですよね。   嶋﨑:はい。そういうのもあって、楽曲にすごく強いグループだと思っています。しかも曲のジャンルも幅広くて、バラードから盛り上がる曲、可愛い曲から演歌まであったり、すごいバリエーションがあるんです。自分たちで作詞したり振り付けを担当したりしているのもあって…。     ――楽曲いいですよね~。それは後ほどお伺いすることにして、あの~皆さん豊田在住ということすよね?   嶋﨑:はい。     ――今は時々、ご当地アイドルと言いながら全然違う地方から来てるみたいな“エセ地方アイドル”もいますが(笑)、皆さんはもうホントに“純正”なんですね?   和久田:はい。16人いて全員豊田在住です。   ――16人なんですね?   和久田:14人と、今は“レッスン星”(レッスン生)が2人います。   ――で、グループとしては2011年から活動しているとのこと。   和久田:はい。2011年12月から。   ――もう一期生はいらっしゃらないんですよね?   和久田:そうなんです。   ――和久田さんが二期生で。   和久田:はい。二期生です。   ――牧野さんが三期生?   牧野:はい。   ――嶋﨑さんは四期生と。   嶋﨑:はい。      
2020.03.25
  • インタビュー
ヤなことそっとミュート|今までのヤナミュー像、「Afterglow」像を崩さず、豪華にアップデートしたものが出来上がったと思います
3年前に取材した際、メンバーはあまり喋らなかった。こちらの質問に対して沈黙が続くこともしばしば。ようやく捻り出した回答も少ない言葉をやっとのことで繋ぎ合わせたようなものだった。   だが、このインタビュー冒頭にも少し記しているように、発した言葉は興味深いものが多く、“面白発言”も次々と飛び出した。本文では紹介していないが、「ヤなことそっとミュート」(通称;ヤナミュー)という“変わった”名前について問うた際、南一花が「それまでは誰も“ヤなことそっとミュート”って言ったことがなかったじゃないですか。でも“ヤなことそっとミュート”。おぉ~!って感じ」と答えたのも興味深かった。「誰もがそう感じながらも明確な言葉が与えられていなかった概念」と言いたかったのだろう。   思うに、彼女たちは単なる口下手というより、たとえ時間を要しても、自分の本当の気持ちをなんとか掴み取り、それを自分の言葉で正確に表そうと奮闘していたのではないだろうか。相手に合わせて適当に相槌を打ったり、安易な言葉でその場をやり過ごしたりすることを良しとせず、真摯に本当の想いを言葉として紡ぎ出そうとしていたに違いない。   彼女たちのステージパフォーマンスには「何かを掴もうとするかのように前方に手を伸ばす」動きがしばしば見られる。それはまるで、自分の本物の気持ちを直向きに掴み取ろうとする行為を象徴するかのようなアクションであり、そこにヤなことそっとミュートの本質があるのではないだろうか。   あれから3年。彼女たちは随分と喋れるようになった。様々な経験を積んで頼もしくなったようだ。   2016年6月本格的なグランジ/オルタナティヴ・サウンドを引っ提げ颯爽とデビューした彼女たち。2017年3月に1stアルバム『BUBBLE』を、2018年6月には2ndアルバム『MIRRORS』を世に問い、さらには10月より「ユモレスカ」シリーズとして3曲入りEPを3ヶ月連続リリース(のちにこれらEP3枚をまとめてアルバム『ユモレスキ』として発表)し、2019年6月からは「NINE」シリーズと銘打って9枚のシングルを配信リリース。様々なスタイルの楽曲が怒涛のスケジュールで世に送り出されたこのシリーズは、ライブやレコーディングでの彼女たちの表現を大きく進化させたようだ。   昨年8月にはメンバーの脱退を経て3人体制となったヤナミューだが、12月に強力な新メンバー、凛つかさを迎えて再び4人体制となり、3月25日にいよいよメジャーデビューを果たす。その第1弾となるシングルは、既にファンにはお馴染みの「Afterglow」にストリングスを配したニューヴァージョン。これまでのヤナミューにはなかった、少々意外なアプローチでメジャーでの第一歩を踏み出すこととなったのだ。壮大なストリングスの音を纏いながら、静から動へとダイナミックにドラマティックに展開していく。さらには、カップリング「beyond the blue.」と対となって一つのストーリーを紡いでいくという“仕掛け”まである。   今回インタビューをしてみて、彼女たちが随分と巧みに言葉を操り、随分と的確に自分の想いを表現できるようになったことを感じた。しかし、相変わらず言葉に詰まり、しばし熟考する場面も多々あった。テクニックを獲得し、そこに安住するのではなく、初期のヤナミューがやっていたように、今なお“真実の言葉”を求め、それをより一層研ぎ澄まされた表現として提示すべく、真摯な想いを胸に、さらに“その先”へと手を伸ばし続けているのだ。   間宮まに、なでしこ、南一花、凛つかさにお話を伺った。               あの頃は本当に楽しさだけで全てを乗り越えてきたなって思います(まに)     ――もう3年前近くになりますが、1周年イベント「YSM ONE」の時に代官山UNITの楽屋で取材させていただいて…   間宮まに(以下:まに):はい、覚えてます。   ――あの時、取材前に運営の方に散々脅されてたんですよ(笑)。「みんな喋んないっすよ」みたいな(笑)。   一同:ああぁ。   ――「会話成立しないですよ」みたいなことを言われたんですが…。確かにちょっと言葉数は少なかったかもしれないですが、すごく面白いことを言ってましたよね(笑)。   一同:(笑)。   ――例えば、まにさんは「ヤナミューのオーディションは“ネタ”で受けた」っておっしゃってました(笑)。   まに:ネタじゃないですよ!(笑)   ――いや、でも確かに“ネタ”っておっしゃってました(笑)。   まに:違います! ネタじゃないです!   ――「自分がアイドルオーディション受けたらウケる」みたいな(笑)。   まに:「そういう自分を後から振り返ったら面白いだろうな」って感じのことは言いました。“ネタ”なんて言ったら人聞き悪いです(笑)。   ――そうですか(笑)。でも、すごく喋れるようになりましたね。   まに:頑張って成長してます。   ――ラジオとかもやってらっしゃいますもんね。   まに:はい。   ――なでしこさんは、最初は「やらされている感が“いっぱい”あった」っておっしゃってました。「少し」じゃなくて「いっぱい」って(笑)。“グランジ・アイドル”などと言われてましたが、そうしたものに「全然慣れてない」と。   なでしこ:あぁ、話したような気がします。   ――今もありますか?   なでしこ:でも、今はだいぶ染みついてきた感があります。   ――今はグランジ詳しいですか?   なでしこ:いやぁ(笑)。音楽のジャンルに関してはそんな詳しくないです。ライブでのパフォーマンスだったりは、あの時と比べれば板に付いてきた感はあります。   ――なでしこさんも受け答えが頼もしくなりましたね。一花さんは、皆さんんの取材で話している時とステージでの鬼気迫るパフォーマンスとのギャップがすごい、という話になった時に「ステージに立つ時も自分であることには変わりありません」「ちょっと“スン”って感じになりますけど」っておっしゃってました。「スン」って(笑)。   南一花(以下:一花):ハハ(笑)。そこを後々分析した結果、今ステージ上では“イキり”を大事にしていて…。   ――“イキり”ですか???   一花:はい。イキりを。ステージではやはりカッコよく見せたいというか、自信に満ち溢れているように見せたいというか…。見ている人もそのほうがきっと楽しいなと思うので、イキりを大事にしています。   ――イキっているわけですね(笑)。つかささんは初めましてですね。   凛つかさ(以下:つかさ):初めまして。   ――面白い経歴をお持ちのようで、それは後ほどお訊きします。じゃあ、皆さんもう業界には慣れましたよね?   まに:さすがに多少は慣れた感じがあります。   ――この6月で4周年ですよね。振り返ってみてどうですか?   まに:長かったかなぁ…。   ――長かったですか?   まに:はい。そんな感じがあります。   なでしこ:前回取材していただいた時なんてもう遥か昔のように思います。   まに:あの頃は本当に楽しさだけで全てを乗り越えてきたなって思います。その間いろんなことがあったので…。   ――苦しいこともいっぱいあり…。   まに:それを乗り越えて…。   ――それは、例えばメンバーチェンジのことだったり?   なでしこ:それもあります。まぁ、いろいろと。言えないことも(笑)。   ――まぁね。その辺は前向きにいきましょうね。