2020.02.26
  • インタビュー
ONEPIXCEL|私たちが大切にしてるのは「今」を見せるということなので
ONEPIXCELのライブを観ると、彼女たちが“表現”というものにいかに真摯に取り組んでいるかを実感する。 そのことは、今年2月9日に行われた神田明神ホールでのワンマンライブでも再認識させられた。コンセプトや設定、映像や照明など様々な演出が丁寧に作り込まれてはいるが、それらはあくまでも楽曲を最も効果的に提示するためのものであり、その中心にあるのはやはり彼女たちの歌とダンスである。いや、それさえも“手段”あるいは“演出”であり、中心に据えられているのは楽曲、さらに言えば、そこに込められた感情である。それを伝えるために彼女たちは工夫を凝らし、ただがむしゃらに頑張るだけではなく、力の入れどころを心得ながら的確な表現を試みているのだ。逆に言えば、そうした感情をオーディエンスと共有するために、セットリストから舞台演出、さらにはMCや進行のタイミングに至るまで、とことんこだわっているのではないだろうか。それは、約1年前に行ったインタビューでの様々な発言からも推察され、今回のインタビューではさらに明確に語られている。 インタビューでも明言しているが、彼女たちは「今を大切にしている」という。「今のONEPIXCELを見て欲しい」と。そして、“今”が過去の経験の積み重ねによって出来ていることもしっかりと認識している。ゆえに、一つ一つの作業を、“今”出来うる最善の努力として真摯に取り組み、やがて“過去”あるいは“経験”になるものとして丁寧に積み重ねているのだ。 そんな彼女たちがメジャー初のアルバム『LIBRE』をリリースする。「メジャーデビューしてから約2年間の集大成」と位置付けられたこのアルバムには、2年前にリリースされたメジャーデビューシングル「LAGRIMA」から、その時々で彼女たちの進化を示してきた「Girls Don’t Cry」や「Final Call」といったシングル曲、さらには、最新のONEPIXCELの魅力を余すところなく伝える新曲まで、様々なスタイルの楽曲が収録されている。まさに「過去の積み重ねが“今”を形成する」ことを体現する作品だと言えるだろう。 『LIBRE』というタイトルは、スペイン語で「自由」を意味する。彼女たちによれば「好き勝手にしていいということではなく、自分たちのルールの中での自由」とのこと。 時間芸術である“音楽”には、時間軸上の“今この瞬間”に鳴っている音の次にいかなる音を選択してもいい“自由”がある。12音いずれの音を選択しても音楽理論上の問題はない。だがそこには、人間が経験の蓄積によって得た“心地好い”音階や和音を形成するルールがあり、聴き手の情動を“正しく”揺さぶるためにはそれらを意識することが必要である。そういう意味では、彼女たちが掲げる「LIBRE」とは、極めて“音楽的”な概念ではないだろうか。ゆえに、この作品に、ひいてはONEPIXCELの表現に“音楽的”なものを感じるのだ。 残念ながら鹿沼亜美は体調不良のため欠席。傳彩夏、田辺奈菜美のお二人にお話を聞いた。     2月に入ってからずっとおなかが痛かったです(笑)(傳)   ――先日、神田明神ホールでのワンマンライブを拝見しました。あの会場でやられるのは初めてでした?   傳彩夏(以下:傳):初めてです。   ――どうでした? いいホールでしたよね?   傳:すごくよかったですね。   田辺奈菜美(以下:田辺):音もいいし…   ――音よかったですよね。   田辺:あとステージも広いので、思う存分暴れられました(笑)。めっちゃ楽しめましたね。   ――めちゃくちゃ広いですよね。あんな横に長い会場ってコンサートホールみたいなとこじゃないとなかなかないですよね。   傳:なので曲の構成とかもちょっと変えて、曲によって左側に寄ったり右側で踊ったりとかしました。   ――天井も高いですよね?   傳:高かった。   ――どうですか?空気を掴みづらかったり、作りづらかったり、とかなかったですか?   田辺:いえ、全然、   傳:すごくやりやすかったです。   田辺:やはりライブハウスとは違うので、最初は会場入るまでイメージできなかったんですけど、会場に入ってからはこれまでで一番やりやすいぐらいの、すごくいい環境でした。   ――前日に下見したりとかリハしたりとかは?   田辺:してないです。   傳:当日入ってリハ、みたいな。   ――それでもちゃんと“掴む”わけですね?   田辺:そうです。   傳:結構リハに時間かけるんです。開場が4時半だったんですけど4時までリハしてて…。音響さんや照明さんともじっくり話し合って、“チームONEPIXCEL”で時間をかけてチェックしました。   ――そういう時は結構意見を出したりするんですか?   傳:はい。まず1人ずつ歌うんです。ワンハーフ(編注:ワンコーラスと半分。「ワンコーラス+大サビ」など)を1人で歌って、マイクの音とか反響とかをチェックして、「もうちょっとこうして欲しい」とかを伝えて、1人ずつ3人が終わったら3人で合わせてもう1回他の曲をワンハーフやるんです。それで聴こえ方をさらにチェックして、という感じです。   ――なるほど。自分への音の“返し”とか、会場内にどう回っているか、後ろまでちゃんと届くか、とか。   田辺:あと、曲によって「オケを少し大きくして欲しい」とか、「マイクのリバーブをもっと欲しい」とか、「リバーブもうちょっと減らして欲しい」とか、そういうところもリハーサルでちゃんとチェックして、最初の出番のタイミングとかも細かくチェックして、本番に臨みました。リハーサルがすごく充実していたので、不安もなくホントにやりやすい環境でしたね。   ――ライブを拝見して思ったんですが、「余裕でやられてるな」って感じがしました。   傳:余裕じゃないですよ~。   田辺:ないですよ~。   ――余裕なかったですか? でも、リハも上手くいって、やりやすい環境でのびのびとやられていた感じがしたんですが…。   田辺:ライブ中はのびのびとやってるんですけど、本番前はすっごい不安です。   傳:2月に入ってからずっとおなかが痛かったです(笑)。もう2月9日まで「あと何日だ」みたいな。「あとここ確認して、ここの振り付けは変わって、ここの立ち位置は何番」みたいなのもずっと頭でイメージして…。もうイメトレしかしてない2月だったので、9日の本番が終わるまでずっとおなかが痛かったです。   ――いつもそうなんですか?   田辺:今回は「be with you」っていう曲の振り付けがライブ当日の2日前ぐらいに変わったり、とかそういうのもあったので…。   傳:1曲丸々振りを変えたんです。   ――なんで変えたんですか?   傳:結構前にやってた曲なので、私たちもやってくうちに成長していったから、というか…。   田辺:振りがちょっと可愛いすぎちゃって、今の私たちがやったら「なんか違うな」って3人とも思っていたので、「振りを変えてもらおう」ってなったんです。   傳:今の自分たちにしかできないライブをやるんだから、それに合うように振りも変えようということになって、振付師さんに頼んで、2日前に変えていただいて、バタバタバタバタってしながら合わせて当日を迎えました。   ――確かに、約1年前に取材させていただいた時に比べると、やはり大人になられたなという感じはします。   傳:なってますかね?   ――思いました。ライブを観てもそう思いましたし。   田辺:おぉ、ありがとうございます。   ――それに合わせて表現も少しずつ変えていくというわけですね。   傳:曲調も初期の頃に比べてだいぶ変わってきているので。   ――ですよね。   傳:みんな十九、二十歳になって、二十歳と(デビュー当時の)中学生ってだいぶ違うので、そういう変化も見せていきたいですし、私たちが大事にしてるのは「今」を見せるということなので。   ――おぉ。   傳:「今のONEPIXCEL」を見て欲しいですし、「今しかできないことをやろう」っていうのを大事にしていて…。なので、振りは変えるし、曲調もどんどん変わってきてるし…。   ――なるほど。当日は新曲も披露しましたよね。   傳:はい。1曲やりました。   田辺:「DO IT, DO IT」を初披露しました。   ――じゃあ、それもちょっと緊張した要因ですか?   田辺:そうです。   傳:でも、なんであんなに緊張したんだろう? 久しぶりのワンマンってこともあるのかなぁ。新曲っていえば、「Summer Genic」の振りも変わってるんですよ。   ――そうなんですね。   傳:「Summer Genic」もワンマン前日の対バンで一度やっただけだったんですけど…   ――一度やっただけで振り付け変えたんですか?   田辺:そうですね。   傳:ちょこちょこ変わってるんです。「Final call」のイントロを変えてみたりとか。   田辺:他にもいろいろ変わってます。   傳:半分くらいあるのかな?   田辺:会場が広いからっていうのもあって、メンバーの立ち位置もそうですし…   傳:タイミングとかも変えたりしました。   ――やっぱりそれも「今」ってことなんですかね?   田辺:そうですね。   ――その会場に合わせた表現をやる、そこでできる今を表現する、ってことですよね。なんかカッコいいですね。即興でやるジャズのミュージシャンみたいな。   傳:即興はできないです(笑)。ちゃんと練習を重ねてやります!    
2020.02.26
  • インタビュー
寺嶋由芙|外の世界にどんどん行けるようにしたいです
今、最も“外を向いている”アイドルではないだろうか。 数多くのゆるキャラと交友関係を結び、全国各地のイベントに参加していることはよく知られているが、ここへ来てその勢いをさらに加速させ、むしろ“アイドル”というものを全国津々浦々へとPRしているかのような印象だ。また、サンリオとコラボレーションを行ったり、地元千葉愛を様々な形で表現したり、パンケーキ好きやカフェラテ好きをアピールしたり…。いずれも、小賢しい戦略などではなく、好きが高じて“宣伝活動”に勤しみ、それが仕事へと繋がっているというのが、このソロアイドルの信頼できるところだ。 最近では、三重県二見輿玉神社の節分祭で福娘を務めたり、名門クイズ番組『パネルクイズ アタック25』へ出演したり(一般枠で予選を勝ち抜いての出場とのこと!)…。そういえば昨年はあの浅草マルベル堂の7月度ブロマイド売り上げランキングで1位を獲得している。現行のアイドルにはおよそ縁がなさそうな領域へと果敢に足を踏み入れているのだ。 また、現在行っている2本のツアー『寺嶋由芙のクチコミ☆3.8以上余裕超えツアー』『寺嶋由芙のお近づき2マン~友達何人できるかな~』では、普段アイドルがやらないであろう会場を選んだり、あまりアイドルと共演しないようなアーティスト(いや、見かけはそうだが意外と対バンしてるけども…)と相見えたり…。 「まじめなアイドル、まじめにアイドル」と自ら称するように、紛うことなき“正統派アイドル”ながら、限られたアイドルシーンの中だけで快適に過ごす“ガラパゴス”と化すのでは決してなく、自らのため、アイドル界のため、そして彼女自身の“ヲタク”のために、積極的に“外の世界”へと打って出ようとしているのだ。 そんな寺嶋由芙の新曲は、なんと6年前にリリースしたソロデビュー曲「#ゆーふらいと」の続編となる、その名も「#ゆーふらいとII」。作詞に夢眠ねむ、作曲にrionosというデビュー曲と同じ布陣を揃え、当時の面影を仄かに残しながらも、現在の、そして未來の寺嶋由芙を感じさせるヴィヴィッドなナンバーへと仕上げている。そしてカップリングは、これまでソロデビュー曲のカップリングであった人気曲「ぜんぜん」(作詞作曲:ヤマモトショウ)の新ヴァージョン「ぜんぜん 2020 ver.」だ。 6年の時を経て、今一度告げられた“離陸”のアナウンス。それは、新たな世界へのさらなる飛翔を示すものなのか。 寺嶋由芙にお話を伺った。     自分で自信を持ってやっている人が最後には評価されていくのを周りですごく見るので     ――最近また、ゆるキャラ仕事が多いですよね。   寺嶋:おかげさまで。   ――今年の1月12日には四日市ドームで「ご当地キャラクター感謝祭」に出演されました。今をときめくFoorinと…   寺嶋:そうです。日本レコード大賞ですよ。   ――そして”昭和のビッグアイドル”あべ静江さんと共に。そこに寺嶋由芙さんが並ぶのもすごいです。   寺嶋:ありがたいです。もう本当に。   ――どんな感じだったんですか?   寺嶋:四日市市の”こにゅうどうくん”っていうゆるキャラがずっと仲良くしてくれてまして、そのご縁で呼んでいただきました。こにゅうどうくんは東海ラジオさんに番組を持ってるんですよ。レギュラー出演してて。   ――ゆるキャラが番組を持ってるんですね!   寺嶋:はい。「よん」とかしか言わないですけど(笑)、一言二言しゃべる番組を持っていて、そのラジオの公開収録を兼ねたイベントだったので、トークとライブとやらせていただきました。   ――寺嶋さんはゆるキャラの“通訳”としても有名ですが…   寺嶋:はい(笑)。   ――今回は通訳は?   寺嶋:今回はこにゅうどうちゃんが自分でしゃべってました。一言二言ですけど「ありがとう」とかは言えるみたいで。   ――なるほど。今回はおしゃべりのお相手だったと。ゆるキャラ通訳のコツってありますか?   寺嶋:う~ん。でも、“訳”が合ってるかどうかわかんないですから(笑)。なので、なんとなくジェスチャーから読み取って、「あ、こういうこと言いたいのかな?」って感じで身振り手振りを見るっていう感じです。でも、事前にその町の特産品とか、そのキャラクターがPRしたいものをある程度知っておく必要はありますね、例えば「こにゅうどうくんの町は何が有名なのか」とか「こにゅうどうくんが何モチーフでできているのか」を知っておいてあげないと、ただ「可愛いですね」で終わっちゃうので…。ゆるキャラたちは地元をPRするのが仕事なので、それを手助けするようなセリフは頭に入れておくように常に心掛けています。   ――さすがです。「これ言ってください」「あれ言ってください」といった指示が事前にあるんですか?   寺嶋:いえ、基本はないです。こちから訊いたりします。「絶対言いたいことありますか?」とか、事前にスタッフさんに訊いておいて、こにゅうどうくんにも「これ言うからね」って確認しておいたり…。割とでも、台本もゆるいことが多くて「以下フリートーク」とか「以下和やかに語る」みたいな(笑)。なのでその場で対応したりしてます。   ――やはり、ゆるキャラに相当通じてないとできないですよね。   寺嶋:好きだからこそやらせていただける仕事だと思いますね。全く興味がない方がいきなりやるとなると、結構覚えることの多い大変な仕事だと思います。好きで知識が自然に入っているから全然苦じゃなくできるっていう…。逆に私が今「サッカーの試合の解説をしてください」って言われたら無理ですけど、ゆるキャラは本当に好きだからできてるんだと思います。   ――昨今はSNSを通して人々が厳しい目を光らせていますから、愛のない人が仕事でポッと入ってきても、なかなか認めてもらえないですよね。   寺嶋:その点、ゆるキャラに関してはすごくありがたい環境でやらせていただいていると思います。   ――そういう意味では、「アイドルというゆるキャラのストーリー性について」という卒論を書かれた寺嶋さんから見ると、ゆるキャラの世界もすごいブームがありながらも、その後ちょっといろいろあったりして、やはり栄枯盛衰というか…。ゆるキャラの世界も簡単じゃないですよね。   寺嶋:ホントにアイドルと似ていて、かわいい子たちがいっぱいいるから、かわいいだけじゃなかなか難しくて…。で、ちょっと奇抜なことをするキャラクターが出てきたりして、でも、やっぱりそういう子たちって続かなくて…。キャラクター事業への愛があってこそで、話題先行みたいなことばかりだと続かなかったり、ファンの気持ちもついて来なかったりしますし。あとやはり、ご当地をPRすることが一番の彼らの仕事なので、そこからブレたことをしちゃってると難しいんだろうな、というのは見ててずっと思ってました。アイドルもやはりお客さんに喜んでもらうとか、かわいく楽しく歌を届けるみたいな基本が大事だと思うので、そこは忘れずに、でも驚いてもらえることとか、面白がってもらえることも探さなきゃいけない、っていうのをすごく思います。   ――それもゆるキャラとの活動で学んだことというか。   寺嶋:そうです。やはり残っているのは真面目な子です。ゆるキャラを見ててホントそう思います。   ――ゆるキャラにも真面目と不真面目ってあるんですか?   寺嶋:みんな真面目ですよ、基本的には。ゆるキャラたちも別にブームがあるからやってるっていうよりは、純粋に自分の地域をPRするために活動してる子たちなので、一番やらなきゃいけない地元のPRを地道にやってる子たちがやはりファンを増やしてますし、今でも支持されて活躍していると思います。   ――SNSの世界ではいろんな言葉が飛び交っていて、辛辣な言葉も少なくないですが、大衆の厳しい目がそこにあると、変なごまかしやまやかしはできなくて、結局は「真面目が一番強い」ってことになりますよね。   寺嶋:そうです。何言われてもやっていることがブレていない人とか、自分で自信を持ってやっている人が最後には評価されていくのを周りですごく見るので、そういう風にやっていくべきなんだなって。    
2020.02.21
  • インタビュー
謎ファイルとやま観光|変わった歌とか面白い歌を歌っています
「アイスクリームパラダイス」は衝撃だった。ローファイながらも叙情性を帯びるヒップホップトラックの上で、幼い女声の“ラップ”(時に無邪気な呟きのようにも聴こえるが、ラップのマナーに則った“フロウ”に果敢に挑んでいる)が繰り広げられている。そして、「何だっつーの ハーゲンダッツーの」という挑発的なリリックと、シンセのアルベジオのリフレインが不思議な呪術性を醸し出しているのだ。 「謎ファイルとやま観光」というそれ自体が謎に満ちた名前。他の曲を聴いてみれば、シンプルなファンクビートの上で「グーチョキパー 」やら「わんわん」「にゃんにゃん」と言いまくるだけのナンバー「グーチョキパー 」、ストレートな音頭に乗せて富山の海の名産を紹介する「とやま海鮮音頭」、どこかで聴いたような80s風エレポップに乗って富山から宇宙へとワープする「ハイパースペースでGO!!」など、次々とクセ球が飛んで来る。昨年7月にリリースされたEPでは、『サージェント・ペパーズ・ホタルイカ・ハーツ・トヤマ・ガールズ』というタイトルと、ドラムヘッドと草花を配したジャケットによって、ユルすぎる“オマージュ”と洒落込んでいる。 制作陣に名を連ねるのはドクター・ポーなる人物。また「アイスクリームパラダイス」を作詞作曲した富山出身のMC LASが、これまた素通りできない逸材である(「Open the door」という曲のMVを観ると、木霊のようなエコーや深山にそよぐ風のようなストリングスが紡ぎ出すサウンドと、大自然のど真ん中で撮影された映像とが相まって、“富山版ミナスサウンド”のような風情が漂っている。もちろん朴訥としたラップから匂い立つグルーヴのヤバさも最高)。 そして、謎ファイルとやま観光の公式HPには「現代アートの伝説アンディ・ウォーホルが行ったポップアートを今の時代に!今のやり方で!」とある。“斜め上を行く”どころか、“異次元にふわふわと浮かんでいる”かのような謎すぎるコンセプトだ。 謎は深まるばかり。写真で見るかぎりは、純朴で育ちが良さそうな美少女3人組なのだが、いかにも裏で抜け目ない大人が暗躍しているような印象である。いささか悪ノリが過ぎるかのような…。 だが、実際にライブを観て、彼女たちと話をしてみると、さらに驚いた。まずはメンバーのSA-NA、RUNA、MIYABIが“美しい”のだ。地方アイドルにありがちな“素朴な可愛いアイドル”ではなく、まるでジョン・エヴァレット・ミレイのファンシーピクチャーに描かれている美少女のような造形美を誇っており、さらに言うならば、ご当地アイドルならではの純朴を小賢しくアピールポイントとするのではなく、ローティーンの純朴さそのものがその美しい造形をさらに際立たせているといった印象。インタビューにもあるとおり、女たちの美意識の高さは東京の少女モデルたちにも引けを取らない。 そしてその存在感。大人があれこれと策略をめぐらせるが、それらに踊らされているのでは決してなく、むしろ大人が知らず知らずのうちに操られているかのよう。全てが彼女たちを中心に回っているかのようなのだ。 そもそもポップアートとは「漫画やポスターや工業製品などに使用される大衆的イメージを取り入れた現代美術の傾向」であるが、そこには大衆文化の持つ非人間性や陳腐さ、空虚さへの批評性が表現される一方、そうしたものが現代の新たな“風景”であるとしてそこに魅力を見出す向きもあった。いずれにせよ、“芸術”という高級文化に大衆文化というオルタナティヴを放り込むことによって、そこに新たな意味性を帯びさせることが本質なのではないだろうか。 そして、この謎ファイルとやま観光にも、そうした“化学反応”が見られるように思えるのだ。もっとも、このユニットの場合は、ポップアートのように「高級文化にそのオルタナティヴとして大衆文化を交配させる」のではなく、「今や行き詰まりを見せつつある“オルタナティヴ・アイドル”の手法の中心に、純粋培養された圧倒的な“美”や“輝き”という概念を据える」という、ある種の“逆パターン”に挑んでいるかのようだ。何ものにも代えがたい“美”や“輝き”を中心に据えることで、そこにまつわる、いかにも大人が考えそうな“マーケティング”や“エンターテインメント”がまた別の意味を帯びていき、そうした表層的かつ享楽的な“装飾”にある種の魅力が芽生え、それらによって中央に鎮座する“美”がより一層際立つのだ。 富山県の魅力を全国、全世界に発信すべく2018年7月に結成された富山PRガール(仮)。地元にある専用劇場“富山PR劇場”を拠点に様々な活動を行っているが、謎ファイルとやま観光は、その派生ユニットとして2018年10月にスタートした3人組。その“ヤバさ”は好事家の間でじわじわと広がっていき、前述のラップ・ナンバー「アイスクリームパラダイス」でさらに多くの耳目を集めることとなった。 Speak emoは早速この“謎多き”3人組に取材を敢行。その結果は、Speak emo史上“最も音楽的な話をしない”ものとなった。だが、それこそが「自分の作品の表面だけを見てくれ、裏側にはないもない」と嘯いたウォーホルの思想に合致するものではないだろうか。富山のPRに勤しみ、嬉々としてファッションやコスメの話に興じる3人の姿はまさにありのままであり、その裏には何も潜んではいない。だが、そこに“起点”を置かれてしまうことで、受け手は自ずと“そこから先”に想像を巡らせ、その裏に潜んでいるかもしれない“謎”を解き明かそうとしてしまうものだ。ましてや、あんなにクセのある楽曲を歌い踊っているのだから…。 SA-NA、RUNA、MIYABIの3人にお話を伺った。       富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです(RUNA)     ――まずは自己紹介をしていただけますか?   SA-NA:小学5年生11歳のSA-NAです。   ――「サナ」ではなく「サーナ」さんですね?   SA-NA:「サーナ」です。富山のおすすめのスポットは、“世界一きれい”って言われているスターバックスがある環水公園です。   ――あ、“いつもの自己紹介”があるんですね。では続いて、RUNAさん。   RUNA:中学1年生のRUNAです。富山のおすすめはチューリップがきれいなところです。   ――はい。ではMIYABIさん。   MIYABI:小学4年生10歳のMIYABIです。富山のおすすめは立山連峰がきれいなところです。   ――みなさんは“謎ファイルとやま観光”というグループですが、富山PRガール(仮)の派生ユニットになるわけですよね?   一同:はい。   ――ということは、みなさんも富山PRガール(仮)のメンバーでもあるわけですね?   一同:はい。   ――富山PRガール(仮)は、どんなことをされているんですか?   RUNA:富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです。   ――具体的な活動としてはどんなことを?   MIYABI:歌って踊ったり…。   ――どんなところで歌って踊ってるんですか?   RUNA:劇場にも出演してるし、他のお呼ばれしたイベントだったり、お祭りだったり。あと東京や名古屋のイベントにも出演させてもらってます。   ――あ、名古屋にも。   SA-NA:あと、石川とか。   ――劇場って専用の劇場があるんですか?   RUNA:はい。富山市の街中にある富山PR劇場っていうところです。   ――皆さん専用の劇場なんですね。すごいですね!   SA-NA:2階建てです。   ――2階建てですか!   RUNA:1階にカフェがあって、その上にライブ会場が…。   ――皆さんすごいですね。富山だともう大スターじゃないですか?   一同:いえ(笑)。   ――そんなことないですか? でも街を歩いてたら声を掛けられるんじゃないですか?   MIYABI:掛けられないです。   ――「謎ファイルの子だ」みたいに言われないですか? 一度もないですか?   一同:ないです。   ――プライベートだから声かけないみたいな感じなんですかね。   SA-NA:そうなんかな???   ――で、富山PRガール(仮)には、オーディションか何かで入ったんですか?   RUNA:オーディション……になるんかな?   マネージャー氏:SA-NAとRUNAは、もともとの前身のグループにいて…。   ――あ、そういうのがあったんですね。   RUNA:はい。   ――ということはMIYABIさんは富山PRガール(仮)から?   MIYABI:はい。   ――SA-NAさん、RUNAさんは芸歴長いんですか?   RUNA:3年ぐらい?   SA-NA:私は3年ぐらい。   RUNA:RUNAは?   マネージャー氏:一緒だよ。3年ぐらいじゃない?   RUNA:3年?   マネージャー氏:3年ぐらいです。   ――MIYABIさんは1年ぐらいですか?   MIYABI:1年半ぐらいです。   ――富山PRガール(仮)自体結成されたのは?   SA-NA:2018年の7月26日?   RUNA:え?28日じゃなかった?   マネージャー氏:28日か。そうか、忘れたけど…。   ――そこから派生ユニットの謎ファイルとやま観光が出来たのは…?   SA-NA:謎ファイルとやま観光は、え~っと…。   マネージャー氏:2018年10月です。7月に富山PRガール(仮)としてデビューして、その3カ月に派生ユニットとして活動をスタートしました。   ――早い展開ですね。    
2020.02.15
  • インタビュー
nuance「横浜の懐の深さとJ-POPが重なるのかなって思ってるんですよね」
このグループの本質を掴むことは容易ではなかった。 その楽曲を聴くにつけ、そのパフォーマンスを観るにつけ、その風貌や佇まいを目にするにつけ。 AI美空ひばり「あれから」の作曲者として一躍脚光を浴びた佐藤嘉風がサウンドプロデュースを手掛けるその楽曲は、多くの“楽曲派”から圧倒的な支持を得つつも、“スタイリッシュ”へと全面的に傾くことはなく、どこか歌謡曲の持つ“野暮ったさ”のようなものを纏っている。あたかも「カッコつけることはカッコ悪い」という永遠の命題を改めて我々に突きつける—-といった安易な忠告などではなく、その裏に何かまた別の仕掛けがあるかのような…。 その歌唱は聴き手を捻じ伏せるような圧倒的なパワーを有するものではないが、その内省的な語り口はそれゆえにじわじわと聴き手を引き込んでいくような不思議な魅力に満ちている。そして、浅野康之(劇団鹿殺し / TOYMEN)が振付けを施すそのパフォーマンスは、いわゆる“ダンスグループ”の熱量を一気に発散するものではなく、そのアーティスティックな表現によってじわじわと高揚感を掻き立てるもの。 そしてメンバーに対しては、衣装や佇まいから「地元に愛される育ちの良いお嬢様」のような印象を抱いたのだが、その言動を見聞きすると、どうやら一筋縄ではいかないようで…。 だが、楽曲を聴き込み、現場に幾度か足を運ぶことで、少しずつ見えてきたような気がした。 nuanceとは「話し手が言外に示す意図」あるいは「色や音の微妙な差異」ということ。それはすなわち「そのもの」ではなく、そこからわずかに「異なるもの」ということだ。 そのものを提示するのではなく、それから少しズラすことで受け手のイマジネーションが膨らむ余地を設け、そのことによりその本質以上に魅力的な幻想世界を生じさせる。我々が目にする“現実”は、視覚を通して受け取る情報をもとに我々の意識が紡ぎ上げた“幻想”に過ぎない。そういう意味では、“幻想世界”を提示することは、“現実”を炙り出すことと同義なのかもしれない。そしてそれこそが、nuanceに漂う不思議な魅力の正体なのかもしれない。 だが、このたび取材をする機会を得たことで、ますますわからなくなってしまった。気配りと優しさに満ちた言動ながら、時に辛辣さや頑固さを覗かせるmisaki。おっとりとした受け答えの裏に芯の強さをわずかに覗かせ、その場を穏やかに落ち着かせる、わか。問い掛けに対する答えのほとんどが“沈黙”というなかなか手強い取材対象ながら、時に繰り出す言葉が実に鋭く味わい深い、みお。そして、何かが憑依したかのごとく声色を変え、身振り手振りも交えながら受け答えしつつも、それは決して「どうにか気持ちを伝えよう」と試行錯誤しているのではなく、むしろ「簡単には気持ちを悟られないようにしよう」と撹乱しているかのような珠理。いずれもなかなか手強い相手だ。 横浜の商店街が企画するイベントのテーマ曲を歌うアイドルユニットとして2017年3月に結成。これまで3枚のシングルと4枚のミニアルバムをリリースしてきたnuance。ワンマンライブや定期公演、主催ライブなども数多く行い、その優れた楽曲やパフォーマンス、そして独特の世界観がじわじわと評価を得てきた。 5枚目のミニアルバムとなる最新作『botän』では、グループそのもの、あるいは各メンバーそのものが“nuance”(すなわち差異やズレ)を確立したためか、楽曲自体は(多彩な音楽要素を内包するものの)どこかストレートな筆致で描かれている印象だ。 ア・サーティン・レイシオやザ・ポップ・グループあたりの英国ニューウェイヴ・バンドがエスニック・ファンクをやっているかのような「I know power」。ダイナミックな落差を有するドラマティックJ-POPロック「雨粒」。ジャジーなギターのループの上で、いつになく攻撃的なラップと叙情的な歌とが味わい深いコントラストを描く「ハーバームーン」。おっと、またメンバーに怒られそうなので、ウンチクを傾けるのはこれぐらいにしておこう。 3月10日には昨年4月に引き続き、再び渋谷O-EASTにてワンマンライヴが行われる。2つのバンドが1つにステージに立ち、色彩豊かなアンサンブルを奏でていくとのこと。そうした豪華な演奏陣を従え、nuanceの4人がどのような音楽絵巻を繰り広げていくのか。今一度彼女たちの本質を見極めに行くとしよう。 ワンマンライブを翌月に控えたmisaki、わか、みお、珠理の4人にお話を伺った。           わからないままずっとやっている感じです(珠理)     ーーいきなり直球で行きますが、nuanceってどんなグループなんですか?   わか:えー、なんだろう…。自分の中ではどんなグループか定まってないんですけど、よく言われるのが「曲がいい」とか「フリがいい」とか「衣装が可愛い」とかですね。自分的には、なんだろう、他のグループとは結構違うというのは感じます。曲もそうですし、なんか雰囲気が…。結構珍しいかなって思います。   ーーツッコミたいところもあるんですが、まずは皆さんにお聞きします。   珠理:nuance …。どんなグループ…。どんなグループ???   misaki:珠理のファンからはどんな風に言われるの?   珠理:ないよ、ないない。   misaki:言われない?   珠理:そういうことあんまり訊かないから。   misaki:他と似ているところでもいいんじゃない?   珠理:nuanceというジャンルではあるよね。他のアイドル、楽曲派アイドルとも何か違うし、でも「ウェーイ」みたいな盛り上がる系でもないし…。なんか、よくわからないなって思う。   misaki:掴めない、みたいな?   珠理:ちょっとわかんない。   misaki:「わかんない」もアリだよね。未だ掴めず、みたいな。   珠理:わからないままずっとやっている感じです。うん。   ーーあの~、今日misakiさんに“仕切り”を全てお任せしていいですか…?   misaki:えぇ~!何でですか?   ーー見事な仕切りなので(笑)。   misaki:(笑)。人の話に頷くのが好きなんですよ。   ーーぜひお願いします。   misaki:はい。じゃあ、続いてみおちゃんお願いします。   一同:(笑)。   みお:みおです。質問なんでしたっけ?   misaki:nuanceとは? 自分にとって。   みお:え…。う~ん……。……。え…。……。え……。………。   ーーこれ文字にしますから。今の沈黙を(笑)。   みお:う~ん…。わかんないです。   misaki:曲は?   みお:曲? 沸けるけど沸けない、みたいな。   一同:(沈黙)   みお:えっ?わかる???   わか:わかる、わかる。   ーーでは、次に参ります。misakiさん。   misaki:え~、結構わかが言っていたことと同意する部分が多いんですけど…。でも曲は、メジャーで活動しているアイドルさんたちのものに全然負けないぐらいいいなと思っていて。nuanceを私が続けたいと思う動機を挙げるなら「佐藤嘉風さんの作る曲がいいから」っていうのが一番に来るぐらい、曲に対する思い入れはすごく強いですね。   ーー俗にいう”楽曲派アイドル”という感じなんですかね。   misaki:なんですかねぇ。   わか:よく言われる。   ーーそもそもなんですが、”アイドルグループ”ですよね?   misaki:最初のころは「グループではなくてユニットって言え」みたいに言われてなかったっけ。   わか:そうだっけ…。   ーーグループとユニットってどう違うんですか?   misaki:“ユニット”はシュッとした感じだよね。   一同:(爆笑)。   misaki:初期の頃ラジオに出させていただいた時に、先方のスタッフさんが用意した自己紹介の文言に「アイドルグループ」って書いてあったんですけど、フジサキさん(nuanceのプロデューサー)がぴっぴって二重線を引いて「ユニット」に直していたのを覚えてます。   わか:そうだっけ。初めて知った。   misaki:なので、そこら辺のこだわりはあの頃はあったのかなって。今はわかんないですけど。   ーーなるほど。僕がお訊きしたかったのは「アイドルかどうか」っていう部分なんですが…。   misaki:あぁ。アイドルではあると思います。アイドルをやりたいって宣言していましたから。   わか:うん。もともとアイドルを募集していたので「アイドルをやるんだろうな」という気持ちでみんな入ってきてると思います。          
2020.02.04
  • インタビュー
染脳ミーム|とにかく2月8日までは駆け抜けます
昨年12月26日ツイッター上で染脳ミームは解散を発表した。2月8日青山月ミル君想フでの最終公演『感染後期』をもって、その活動に終止符を打つというのだ。 人生には抗えないこともあるのだろう。どうにもならないこともあるのだろう。あらゆる人の想いを咀嚼した上で最良の選択を導き出したとしても、それがあらゆる人にとっての最良の選択とは必ずしもならない。 Speak emoも力不足を痛感している。これまで3度インタビューさせていただいたが、果たしてその魅力を少しでも広められたのだろうか。筆者としては、テクノロジーを人力演奏の補完と位置付けるのではなく、イマジネーションを拡張するための媒介として捉えている(あるいは、時にイマジネーションがテクノロジーを煽っているとさえ感じられる)という点で、オーウェン・パレットやアンナ・メレディス、長谷川白紙あるいは崎山蒼志などの系譜へのアイドル側からのアプローチとさえ捉えていた。そうした面々が紡ぎ出すウネリの中に、染脳ミームも入っていく資格が十分にあると感じていたのだ。アイドルとしては先鋭的すぎたのだろうか…。 だが、こんな素晴らしいグループが存在したという記録はこの先もずっと残る。CDに、サブスクに、YouTubeに、そしてほんのわずかな“痕跡”に過ぎないがSpeak emoの記事に、そして何より染脳ミームを体感した人々の心に。 「まだ体感したことがない」という向きにも、まだ最後の瞬間に立ち会うチャンスはある。2月8日のラストワンマンライブ。それは、アイドル界を語る上で、日本の音楽シーンを語る上で、目撃しておかなければならないライブであろう。 +あむ+、夏目鳳石、おきんとん、乃依ねお、書庫りり子、糸飴キセの6人に、染脳ミームとしての最後の想いを語っていただいた。             もっとリリイベしたかったって思いました(あむ)   ーー残すところ2月8日のラストワンマンを控えるのみとなりました。きっとそれが一番思い出に残るものになるのかもしれないですが、では、今のところで一番思い出に残っていることは何ですか?   夏目:今のところで…。そうですね。ライブは毎回毎回違っていて、ライブごとに進化しているので、過去のライブよりも今のライブの方が好きで…。もちろんYouTubeにも上がってるのでたまに見返してたりもするんですが、やはり最近のライブの方が印象に残っています。最近のリリイベ期間のものとか。まあ、敢えて挙げるなら、昨年9月の1周年ワンマンですかね。一番お客さんもいましたし、この6人の結束が固まってからのワンマンライブだったので。でも、ホントに最近のライブの1回1回が楽しいって思っています。   ーー一回一回更新していって、思い描いているようなパフォーマンスができている、と。   夏目:はい、そうです。   ーーあむさんは?   あむ:私も一番思い出に残ってるのは、最近のリリイベですね。これまでで一番楽しかったと思っていて、6人の声が入ったCDも出るし、入っている曲も全部思い入れが強めです。もっとリリイベしたかったって思いました。   ーーやはり最近のことが思い出深いというか、心に深く刻まれてるという感じですね。おきんとんさんはいかがですか?   おきんとん:この質問絶対来る、って昨日の夜から考えてたんですけど…。   ーーおぉ、読まれました。   おきんとん:「何が良かったんだろう」って思ったんですけど、解散が決まってから一つ一つのライブを大事に…。また泣きそうに…なった…。   書庫:おきんとんさん泣かないで。   おきんとん:一つ一つ楽しもうって思っていたので、全部楽しいっていうか、お客さんも一体となって楽しんでいるのが嬉しくて…。   ーー最近のライブ一つ一つが、ということですね。ねおさんは?   ねお:選べないです。   ーー選べないですか。   ねお:でも全部楽しかったですね。やはり仲が良くなってきてからより楽しくなって、みんなで意見も言い合えるようになって、もっと良くしようって毎回更新していったので、全部好きです。   ーーいろいろ話し合ったりした結果、どんどん進化していったって感じなんですね?   ねお:はい。ライブって生モノだと思うので。   ーーなるほど。その集大成としてラストライブに一番いいものが出てくる、と。   ねお:はい。   ーー書庫さんは?   書庫:私も昔のライブも今のライブも全部大切で楽しかったって思うんですが、特に選ぶとしたらやはり1周年ワンマンとリリイベですね。1周年ワンマンには沢山のファンの方が来てくださって、本当に素敵な景色を見せていただいて、絶対染脳ミームのこの6人と感染者のみんなならもっと大きなところに行ける、って私の中では結構明確なビジョンが見えていたので…。なんかこういう結果になってしまったのは残念ですけど、その時は本当に人生で一番ってぐらい楽しかったです。ワンマンは「もう、終わんないで」ってぐらい楽しかった思い出ですね。リリイベも、アイドルとしての夢の一つがリリイベで、各地のCDショップをたくさん回りたいと思っていたので、夢が叶いました。初めて自分の声が入ったCDを出させていただき、そのリリイベもできてってすごい幸せでした。普通じゃできないことなので、もう、今もリリイベ中ですけど、すごい楽しいです。一つ一つが幸せな思い出です。   ーー最近はいろんな衣装を着てますし。   書庫:そうです。そう。それも楽しいです。いろんな衣装着てライブをやって…。もうできなくなるのが寂しいです…。   ーーキセさん、いかがですか?   キセ:私も楽しいって思うのは最近のリリイベで、いろんな衣装着てるのもそうですし、解散発表してから、やはり一回一回のライブを大事に、噛みしめながらやってるので…。私たちも楽しいですし、お客さんも残り少ないのでコールも熱心にやってくれているので本当に楽しいです。               新メンバー2人が入った初期曲の音源が、こうして形になってCDとして世に出せるのはとても嬉しいです(おきんとん)   ーーそんな中アルバム『Pandemic』がリリースされます。フルアルバムとしては最初で最後ということですか?   夏目:そうなります。これまでリリースした2枚はミニアルバムだったので。   ーー最初で最後のフルアルバムということで、皆さんにとっても特別なものになったと思います。いかがですか? キセさんからいきましょうか。   キセ:このアルバムには、私が加入する前の初期の曲も入っていて…。私、ミームに加入した時にマネージャーさんから私の声が入ってない初期のアルバムをいただいて、それをずっと聴いていたので、やっと自分の声が入った初期曲が出て、ちゃんとみんなに聴いてもらえるのが嬉しいですね。初期曲すごい好きですし、「パンデミックジェネレーション」や「薔薇の刺、スカート破れた」の落ちサビも歌わせてもらっているので、それを聴いていただけるのは本当に嬉しいです。   ーーやはり声が変わると曲の雰囲気もかなり変わってきますよね。   書庫:私も加入前にリリイベとかで普通にCD買っていたので、その曲を私が歌っているのはとても嬉しいんですが、同時に緊張もあって…。いろんな感情がありますね。もちろん嬉しさが勝ってるんですけど、同時に緊張もありみたいな…。やはり以前のミームを知ってる人もいるので…。でも(ガッツポーズをして)こんな感じに出来上がっていると思います(笑)。   ーーこんな感じで(笑)。ねおさん、いかがですか?   ねお:そうですね。新加入のキセと書庫の声が入った初期曲の音源が「やっと出た」という感じで嬉しいです。   書庫:確かに。   ねお:いろんな人に聴いてもらえて、全然知らない人とかの耳にも止まるので。ラストライブの2月8日以降にサブスク配信されて、解散以降も残るのでいっぱい聴いて欲しいです。パッケージも可愛くて、CDのデザインもすごくいいので、もちろんCDも手に入れて欲しいです。みんなの個性が詰まってると思います。   ーーでは、おきんとんさん。   おきんとん:新メンバー2人が入った初期曲の音源が、こうして形になってCDとして世に出せるのはとても嬉しいです。   ーーしっかり言えましたね。あむさんは?   あむ:最初のミニアルバム『Epidemic』は今のメンバーじゃないので、聴くと「ああっ」ってなっちゃう。やっとこのメンバーでリリースできたのが本当に嬉しいって思います。   ーーでは夏目さん。十分考える時間があったと思います(笑)。   夏目:いや(笑)。でも、最近は以前より自分の気持ちを言葉にするのが難しくなってきて…。   ーーそうですか??? 一番しっかり話していただける方だと今も頼りにしてるんですが。   夏目:いや…。以前は多分「自分がやらなきゃ」「自分が喋らなきゃ」「自分が考えなきゃ」みたいなのが強くて、みんなに頼ることをしなかったと思うんですけど、でも今は、そんなに自分で突っ走らなくてもみんながアイコンタクトとかで臨機応変に色々とやってくれるので…。それが実感できるので、前ほどガーって喋ることがなくなったって思います。   ーー皆さんのバランスが取れ、なおかつそれぞれが個性を出してくれるので、夏目さんが頑張んなくてもよくなってきたってことですね。   夏目:そうです。   ーーで、アルバムです。   夏目:そうですね。アルバムですね。初期曲が収録されてることで、それに新曲もプラスされていて…。初期SE「千のmeme1」にはメンバーの名前を言うところがあるんですが、新メン2人の声が入ったこの6人のヴァージョンがやっとリリースできました。染脳ミーム登場時に流れるインパクトの強いSEなので、それを更新できたのが嬉しいですね。初期曲も今のメンバーでの声が入っているので、以前のヴァージョンももちろんいいですけど、やはり今のメンバーが一番なので、ようやくリリースできたっていう気持ちです。   ーーオケは一緒ですか?   一同:オケは一緒です。             乙女プログレ、乙女なプログレ(書庫)   ーーでは、アルバムの中からそれぞれ皆さんの最も思い入れのある曲を一つずつ挙げていただきたいと思います。夏目さんから。   夏目:はい。アルバムの中から、ちょっと2つになっちゃうんですが、「ばぶるがむシンドローム」と「リガチャ。」が好きです。「リガチャ。」は今までのミームにありそうでなかった曲で、なんだか異世界に来たような雰囲気があって、何度聴いても飽きないスルメ曲だと思います。ファンの方にも好評のようですし。「ばぶるがむシンドローム」は“青春パンク”的な勢いがあって、ミームの今の代表曲にもなりつつあります。明るいだけじゃなくて、なんか切ないものもちょっと詰まっているというか…。明るく聴こえるけどそうではない感じもするので、そこが好きなところですね。最近の曲ではこの2曲が大好きです。めちゃめちゃリピートしてます。   あむ:私も「ばぶるがむシンドローム」が一番好きです。盛り上がる曲ですし、ライブ中ドタバタ動くので(笑)。振りを自分で考えていい部分が多いので、誰かが歌ってて、後ろで誰かと遊んだりできるのがすごく楽しいです。   夏目:遊んでるもんね。   あむ:そこが一番なんか“自由”って感じがするので好きですね。   ーーあむさんはダンスも色々とご自身で工夫されて作ったりしてますもんね。さすが“ダンス番長”です。   一同:ダンス番長!   ーー続いて、おきんとんさんはいかがですか?   おきんとん:2つあるんですけど…   ーー3つでも、4つでもいいですよ。   おきんとん:「リガチャ。」と「ばぶるがむシンドローム」。「リガチャ。」はなんかカッコ良くて、今までない、ちょっと気持ちも違う感じ。ハハハ。   ーーどう違うんですか?   おきんとん:「あ、今日リガチャだ」みたいな(笑)。なんだろ? 「今日リガチャあるんだ」みたいな。   ーーえ~っと…。   夏目:ちょっと高まるんだよね、なんか。   ーーあぁ。   ねお:ビシッとしちゃうんでしょ?   おきんとん:そう、なんかカッコよくて、ちょっと色っぽく…。   ーーおぉ、色っぽく。   おきんとん:ないんですけど(笑)、気持ちはそういうつもりで。あと歌詞がカッコいいです。   ーー面白い言葉がいっぱい入ってますよね。   おきんとん:ちょっと攻撃的な感じ。で、「ばぶるがむシンドローム」はすごく可愛い世界みたいな感じです。   ーー可愛くて、なおかつアゲ曲でもありますよね。   おきんとん:お客さんとの掛け合いとかもあって楽しいです。   ーーはい。ねおさんはいかがですか?   ねお:「リガチャ。」ですかね。自分は、落ち着いた感じでカッコいい、そして大人っぽい曲が好きなので、「リガチャ。」はすごく刺さりました。ダンスもすごくカッコよくて…。沸き曲も好きなんですけど、「雨傘ヴォーグ」とか「リガチャ。」みたいな聴かせる感じの曲がすごく好きですね。あと「ばぶるがむシンドローム」も大好きです。自分たちが歌ってる曲ですけど、私自身もいっぱい聴いてるので、皆さんもいっぱい聴いて欲しいです。   ーーでは、書庫さん。   書庫:私は「薔薇の棘、スカート破れた」ですね。最初聴いた時から「染脳ミームこれ持ってるのヤバ」みたいな(笑)。「この曲で戦える」「強すぎでしょ」って感動してました。   一同:アハハハ。   書庫:「マジで?」みたいな「あんたらこれ歌ってんの?強いよ」みたいな。   一同:(爆笑)。   書庫:だって、アイドルなのにこんなプログレみたいな。乙女プログレ?何?って感じで。振り付けもすごいし、「天才じゃん」って。   ーー今なんておっしゃいました? 乙女プログレ?   書庫:乙女プログレ、乙女なプログレ。   ーー“乙女プログレ”。確かにそんな感じです。   書庫:ライブで見て「ヤッベー!」って叫びそうになりましたもん、サビの時。   ーー“乙女プログレ”。いい表現ですね。   あむ:プログレって何?   おきんとん:なんて言うの?   夏目:ここの初期メン、分かってないです。マジでホントに。   ーーいや、そもそも染脳ミームってプログレの要素がすごいありますよね。   夏目:よく言われるんですけど、わかんないでやってるので(笑)。   あむ:(書庫やねおを指して)ここはすごいわかったような感じで言ってますけど。   書庫:わかんねーでやってんだ、みんな、わかんねーんだ。   あむ:わかんないままやってる。プログレ…。   書庫:乙女プログレ。「薔薇の棘、スカート破れた」はすごい好きです。   ねお:今スマホ見るんだ(笑)。   書庫:今調べてる。   ーー何を調べてるんですか?   あむ:プログレです。   ねお:プログレッシヴ。   あむ:これが出て来た。   ーー“プログレ”って非常に定義しにくいものなので、読んでもきっと分からないと思います。   夏目:確かに。   ねお:多分ミームの意味も未だに分かってない。ミームって何?   書庫:あと、「リガチャ。」「君染ミームティクス」とかも好きです。作詞家の方が、私が中学の時に図書室でマジ読んでたラノベの作者ハセガワケイスケさんなんです。   ねお:はい。私もアニメ観てた。   書庫:「しにがみのバラッド。」、アニメもやってたよね。   ねお:観てた。大好きだった。   書庫:詞を書いていただいた時は「うそ!?マジで?」みたいな。感じでした。その方がまさか作詞をしてくださるとはと思ってなくて、中学の頃の自分じゃ考えられない出来事が起きたので。それもあって大好きです。   ーーなるほど。では、キセさん。   キセ:私も「薔薇の棘、スカート破れた」です。私が歌ってるサビに「弱い者が理解できることがあるわ」っていう歌詞があるんですが、その部分がミームの歌詞の中で一番好きで…。ミームの曲には「弱い者を助ける」っていうところがあって、私自身も元気がもらえるんですよ。変になんか「頑張れよ」っていうんじゃなくて、「弱くてもいいよ」って言ってるのが好きで。私はそんな曲でサビを歌わせてもらっているのが嬉しくて、皆さんにも聴いて欲しいなって思います。             泣き顔よりも笑った顔を見せろよ、と(ねお)   ーーまだ決まっていなかったり、言えなかったりすることもあるかもしれませんが、解散後はどうする予定ですか?   夏目:今はホントに何も考えてないです。   あむ:私はカフェイベント的なものをやる予定はあるんですけど、それ以外、アイドル活動は今のところ一切考えてなくて…。行くあても、入りたいところも特にないので…。   ーーカフェに勤められてて、そこでイベント的なことがあったりするわけですね。   あむ:そうです。「会える」機会があるっていうぐらいです。   ーーおきんとんさんどうされるんですか?   おきんとん:飼ってる猫をひたすら育てるしか思い浮かびません。   一同:ハハハ(笑)。   ーーまたキックボクシングか何かやりましょう!   おきんとん:もうやらないです。   ーーやらないですか。はい。   おきんとん:やらないです。   ーーねおさんは何か決まっていますか?   ねお:そうですね。もし、お誘いがあったりとか、「うわ、入ってみたい」みたいなグループがあったとしても、今以上に楽しめる自信は今のところないです。だからやる予定も目処も立ってないです。   書庫:私も何もないです。もうアイドルはやらないかなって思ってて…。なので、2月8日でアイドルとしてはもう終わっちゃうのかもとも思っていて…。やはりこのメンバーと染脳ミームの楽曲たちが大好きなので、今後のことはあまり考えてないです。この染脳ミーム以外では。   キセ:私も考えてないです。アイドルはもういいかなと思っています…。   ーー皆さん何も決まっていない、というか、考えていないって感じでなんですね。今はとにかく2月8日ラストライブに向けて、ってことですよね。で、2月8日のライブ。この日は新曲「染脳ミーム」を初めて発表するわけですよね?   夏目:一応、YouTubeにワンコーラスだけ上げてます。   ーー仮歌ですよね? (作曲の)マモルさんの声で。   夏目:はい。   ーーでは最後に、2月8日のライブに向けてひと言、お一人ずつおっしゃっていただけますか?   キセ:はい。新曲「染脳ミーム」は2月8日にしか発表しないので、その1回でホントにいい曲だってみんなに思ってもらえるようにパフォーマンスしなきゃなって思っています。2月8日は私にとっての最後のライブとなるかもしれないので、悔いだけは残さないように、みんなに「どうもありがとう」っていう感謝の気持ちを全力で伝えられるよう頑張ります。   書庫:そうですね、2月8日。私も最後のライブになると思うので、ホント悔いのないようにライブをしたいのと、さっきも言ったんですが、今までは自分寄りに考えてた部分があったので、最後はもうファンの方に今までの感謝の気持ちと幸せを届けられたらいいなって。染脳ミームとしての最後の気持ちを届けたいって本当に思います。あとはもう、最後はみんなで盛り上がりたいです。悲しいですけど、最後は「楽しかったね、ホント染脳ミーム良かったよね」で終われるようにしたいです。   ねお:全部全力出し切ってバカ盛り上げたいです。ファンの方で泣いちゃう人もいるかもしれませんが、泣き顔よりも笑った顔を見せろよ、と。   ーー見せろよと(笑)。   ねお:もう「見せろよ!」みたいな感じで、盛り上げていくので盛り上がって欲しいです。なんか小泉進次郎みたい。   一同:(爆笑)   ねお:盛り上がって欲しいので盛り上がって欲しいです(笑)。   おきんとん:え?   ねお:知らないの? 同じこと2回言う人。   書庫:知ってるけど。   あむ:わかんない。   ーー中身のないことを言う人っていうか(笑)。では、おきんとんさん。   おきんとん:最後まで元気と笑顔を届けて終われたらいいなって思います。あと感謝。今まで応援してくれたみんなにちゃんと返せるよう全部出し切って、泣かないように笑顔で終わりたいです。   ーーなるほど、笑顔で。あむさんいかがですか?   あむ:2月8日に発表する曲「染脳ミーム」がすごく好きなので、聴いて気に入って欲しいと思います。そして、ラストライブもいつまでも余韻に浸っていられるぐらい楽しんで欲しいですし、その日はみんなを幸せにしたいと思います。   ーーでは、最後に夏目さん。   夏目:最近涙もろいので…。ホントにもうダメ。ちょっと考えちゃうとやっぱりすぐ泣いてしまうんですが、絶対ラストは泣かないように、笑顔でやり切るっていうのをまず目標にして…。ダメだ。泣いちゃいそうです…。   書庫:泣かないで。   夏目:今は大丈夫。とにかく本番はメソメソしないよう笑顔でやり切ります!