Speak emo

2020.04.15
NaNoMoRaL

NaNoMoRaL|だから今年は走り抜けないと

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なにやらただならぬ“勢い”である。

誰にも止められない暴走列車とでもいうべきか。いや、そんな粗暴な印象ではない。職人が手際よく次々と質の高い作品を作り上げているかのような、すごいことをさらりとやってのけているような印象だ。

昨年11月に2枚目となるミニアルバム『a zen bou zen』をリリースしたかと思えば、今年3月29日に早くも新たな7曲入りミニアルバム『macra no souji』をリリースするNaNoMoRaL。「結成2周年ワンマンライブで販売する」という“縛り”があったからこそこの短いスパンで完成まで漕ぎ着けることができたのだが、制作を開始したのが昨年12月から、というのだから驚きである。しかも収録の7曲は全て新曲。まさに、音や旋律や感情や感性がとめどなく溢れ、それを次々と作品にしていく“勢い”があるといったところ。その分、デモを受け取ってすぐさまレコーディングに臨んだ雨宮未來には大きな負担がかかったようだが、そうした経験はシンガーとしてのさらなる成長にも繋がっていることだろう。

そして、この“勢い”は何も「楽曲を録って出ししている」からだけではない。楽曲制作の合間に行なっているライブでの評判が日増しに上がっていることも、この勢いにさらに拍車をかけている印象だ。とりわけ“初見”のオーディエンスからの反応がすこぶる良く、音楽を愛する人々の間にその名をぐんぐんと浸透させているようなのだ。

梶原パセリちゃんが素晴らしい楽曲を日々量産し、雨宮未來が日増しにレベルアップする表現力によってそれらを最高の形で聴衆に届ける。この高性能な“両輪”が上手く噛み合って、あの“勢い”を生み出しているのだ。

雨宮未來曰く「毎回のライブが“最後の”ライブであるという気持ちで臨んでいる」とのこと。そうした“刹那感”もこの勢いをさらに増幅させており、そこにNaNoMoRaLの魅力の秘密があるのかもしれない。

そんな“両輪”により生み出された新作『macra no souji』には、NaNoMoRaLの今の“勢い”が凝縮されている印象だ。紛れもないNaNoMoRaLサウンドでありながら、明らかに前作とは違う意図のもとに制作され、その感触の違いが鮮明に描き出されている、梶原パセリちゃんの手による楽曲群。巧みなコントロールによって微細な陰影を施しながらも、あたかも呼吸をするかのように自然に無意識に、しかし時には何かに憑依されたかのように鬼気迫る表情を纏いながら、歌を紡ぎ出す雨宮未來。その詞は、時にシニカルな、時にハートフルなメッセージが抽象的かつ象徴的な言葉によってコーティングされたもので、それらが独特の音世界の中で興味深いストーリーを展開している。

スピードとクオリティの奇跡の両立。音源であれライブであれ、今一番体感しておかなければならないアーティストの一つであることは間違いないだろう。

雨宮未來、梶原パセリちゃんにお話を伺った。

 

 

 

 

 

「これ明日録るから」って新しいデモが早朝に送られてくるんです(未來)

 

 

――早速ミニアルバム『marca no souji』についてお伺いしますが、前回のミニアルバム『a zen bou zen』が昨年11月20日のリリースですので、かなり早いペースですよね。

 

雨宮未來(以下:未來):早いですね。

 

梶原パセリちゃん(以下:パセリちゃん):今回はマジで早かったと思います。

 

――それは何か戦略があってのことですか?

 

パセリちゃん:いえいえ、まとまった休みがあったっていうか…。

 

――休みが?

 

パセリちゃん:正月とここ最近の…。

 

――あぁ…。ということは“録って出し”というか、「曲ができたから出そう」となったわけですか?

 

パセリちゃん:というより、元々年末ぐらいにウチの社長に話してたんですよ。「3月に2周年のワンマンをやりたいから(編注:2020年4月15日現在では延期未定)そこに合わせてCDを出したい」って。

 

――社長っていうのはフジサキケンタロウさん?(編注:NaNoMoRaLは昨年12月に、nuanceなどを擁する、フジサキケンタロウ主宰のミニマリングスタジオに所属することとなった)

 

パセリちゃん:そうです。ミニマリングスタジオの大社長に(笑)。とはいえ、11月にミニアルバムを出したばかりで、曲のストックも全部CDに入れちゃってるので、そうなると新曲を作るしかないじゃないですか。社長に「え?できんの?」って言われたんですが、その時にまだ1%もできてなかったんですよね。

 

――それは11月の時点ですか?

 

パセリちゃん:11月の…。いや12月ぐらいかな。はい、12月中旬ぐらい。

 

――えっ!12月の時点で全くできてなかった、と?

 

パセリちゃん:そうですね。あ、1曲取り掛かってたぐらいでしたね。

 

未來:えーっ、そうだったんだ。

 

パセリちゃん:でも「できます」と言いました。「正月もあるし今調子いいです」って嘘ついて(笑)。

 

――嘘ついて(笑)。

 

未來:そんなこと言ってました。

 

パセリちゃん:「今めちゃくちゃ調子いいんですよ」って。

 

――それは“嘘”だったんですね?

 

パセリちゃん:いや、まあ、調子がいい時なんてあんまりないんで。「できます」っていうのは絶対嘘ですね。間に合わなかったらしょうがないって思いながら、取りあえず作り始めたって感じです。

 

――でもバッチリできたわけですよね。

 

パセリちゃん:なんとか。今回は未來さんに大負担をかけてしまった…。

 

――そうですよねぇ。

 

未來:音源が上がってくるのがかなり急でした。

 

パセリちゃん:そう、めちゃくちゃギリギリ。

 

――以前も少し不平を漏らしていましたもんね。

 

パセリちゃん:いや、今までとは比較にならないぐらいギリギリ。

 

未來:「これ今日録るから」って新しいデモが早朝に送られてくるんです。

 

――パセリさんが夜通し作業され、早朝に出来上がってすぐ送られてくる、と。

 

未來:で、「今日か」って思って。取りあえず聴いて、自分の中で歌えるようにしてきたいタイプなので、もう、頑張ってずっと聴いて、頑張ってレコーディングしました。

 

――早朝にデモが来て、“その日”ですか?

 

未來:その日の夜です。

 

パセリちゃん:それを7曲分。

 

――7曲全部そんな感じだったんですか!?

 

未來:7曲全部そうです。

 

パセリちゃん:大体そんな感じです。

 

未來:「明日録るよ」っていうやつもあったりしましたけど、「今夜録ります」っていうのが結構ありました。でもそこで文句を言ってはいけないから…。「もう録るんだ」って感じでした。

 

――で、できちゃったわけですよね?

 

未來:なんかできました(笑)。

 

――今後もそういうことが起きるんじゃないんですか?(笑)

 

未來:「あ、いけるんだ」って言われて、「これはもうまずいぞ」と思って…これから先…。

 

パセリちゃん:そう。僕からしたら、本当にギリだったので「ダメもとできてたらいいな」って感じでお願いしたんですよ。まあ言っても多分できないかなと思ってて、教えながらやっていけばそれがレッスンにもなるので、その日に練習としてやって、その後にレコーディングできればいいかな、っていうような感覚でいたんですけど。なんかちゃんと歌えてたんで…。

 

――すごいですね。

 

パセリちゃん:いや、めっちゃ助かりましたマジで。

 

未來:ホントですか?良かった!

 

パセリちゃん:おかげで納期に間に合ったっていうのはあります。「明日録るよ」とかって言ってたのは3月頭の話ですから。

 

――3月頭ですか!

 

未來:今は1曲「さよならデスペ」っていうのだけ披露してるんですけど、それも披露するまでが結構タイトで、早かったですよね。

 

――でもそういう経験ってシンガーとしてすごく大きいんじゃないですか? やはりライブで試したりとか、ライブで歌い込んだりするわけじゃないじゃないですか。

 

未來:じゃないですね。

 

――やはり、いきなりレコーディングは難しいですか?

 

未來:そうですね。不安です。何もライブで披露してない分、この歌い方で合ってるのかな、って。

 

パセリちゃん:でもそれは、やりたかったことの一つなんですよ。僕らが子どもの頃って、好きなアーティストの“初聴き”ってCDだったじゃないですか。ライブに行くっていう文化もそんなになかったから、僕は“CDが先”のほうが普通じゃないかなって思ってる部分があるので、ホントはCDを出してからお披露目していくっていうのをしたいんですよ。まあ既に1曲はお披露目しちゃったんですけど…。

 

――今のいわゆる“ライブアイドル”の文化っていうと、とにかくライブをどんどんやっていった後に「ようやく音源化します!」って感じでCDをリリースしますよね。

 

パセリちゃん:そうですね。まあ、レコーディングしたら、もうそのままライブで披露しちゃったほうが早いっていうのでやってるだけだと思うんですけど…。僕らは今や、どんなライブでもセトリが組めるぐらい曲数も増えましたので、じゃ今回はライブじゃなくてCDで披露っていうのをやってもいいんじゃないかなと思って…。なので、曲を作ってCDでどうぞ、っていうのを主流にしたいんですよね。

 

――じゃあ今後もそういうパターンで?

 

パセリちゃん:いや、わかんないですけど(笑)。今はそんな気持ちです。

 

――そういう意味では、ミニアルバムとしてリリースするのがいいですか?

 

パセリちゃん:スピード感という意味では、ミニアルバムのほうが作りやすいですね。

 

――フルアルバムを出したいとは?

 

パセリちゃん:出したいですけど…。

 

――例えば、今はフジサキ社長がいらっしゃるわけで…

 

パセリちゃん:はい、超大社長。

 

――(笑)。それはネタなんですか?

 

パセリちゃん:いやいや、“大社長”にしたいという意味も込めて“大社長”。

 

――イジってるわけじゃないですよね?

 

パセリちゃん:半分イジってますけど(笑)。

 

未來:うん、ちょっとイジってるかもしれない。

 

――(笑)。で、例えば年間のスケジュールとか、どういうペースで出していこう、みたいなのはまずはお2人で考えられたりして、その後“大社長”から承認を得て、って感じですか?

 

パセリちゃん:そうです。「こういうのやりたいんですけど」って社長に報告する感じです。「これこれこうします」って言ったら、「じゃあこういうのは?」ってアドバイスをくれたりもするし、より良い方向に導いてくれるっていうか…。こちらのやりたいことを尊重してくれるんですが、それだけじゃなくて、もっといい道筋を提案してくれるっていうか、そういう関係で今やってますかね。

 

――どうですか? 未來さんから見たフジサキ社長は?

 

未來:フジサキさんは、でもすごく良い大人です。

 

――良い大人ですか。未來さんはあまり大人を信じないほうですよね?

 

未來:あんまり信じないんですけど、フジサキさんは“若いお父さん”みたいな感じです。東京の。いや横浜か。横浜の若いお父さん。

 

――ハハハ。

 

未來:感じで(笑)。私には、パセリさんという信じれられて頼れる大人が近くにいるんですけど、パセリさんにとっての頼れる大人ってあまりいないなって思ってたんですよ。なので、フジサキさんという方と出会ってホントに良かったなって。私にとってもですけど、パセリさんにとって良かったなって思います。

 

 

取材・文
石川真男

 

 

NaNoMoRaL 商品情報

3rd mini Album『macra no souji』

nanomoral

前作からわずか約5ヶ月で届けられた3rd minialbum。
息をするように精力的にライブを続ける2人から、どれだけ押し込んでも溢れ出てしまう《多幸感》は観にきた人全てを包み込む。
大きくなってから、心のどこかに閉まってきた感情を取り戻す「みんなのうた」がココにある。

[収録曲]
01 まくらのそうじ
02 ダメダメのうた
03 カラシナダンス
04 たりらでたりら
05 さよならデスペ
06 子どもでいてね
07 アンサーソング

2020年04月15日発売
税込2000円

 

 

 

 

PROFILE

PROFILE
NaNoMoRaL

2018年03月に雨宮未來のソロユニットとして結成、ライブデビュー。ソロなのにユニットという特殊な編成で雨宮と梶原の男女Vocalがアイドル業界内で異彩を放っており、活動当初はアイドルイベントへの出演がほとんどであったが、現在ではバンドライブへの出演も多く、ライブデビューから2年で約300本のライブを行った。2019年10月には京都の音楽フェス『ボロフェスタ2019』に出演。その勢いのまま同年11月に渋谷WWWにてワンマンライブを開催。
2020年08月には浅草花やしき花劇場、12月には恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブを開催予定。

 

雨宮未來
twitter @amamiya_miku

梶原パセリちゃん
twitter @K_PaseliChan

公式サイト: https://www.nanomoral.com/

公式Twitter: https://twitter.com/NaNoMoRaL_info