2020.05.28
  • インタビュー
朝空詩珠紅|こんな顔して、私すっごい負けず嫌いなんですよ
Speak emoにてスタートした、愛知県豊田市のご当地アイドル、Star☆T(スタート)のメンバー全員インタビュー。第2回は朝空詩珠紅(あさそらしずく)をお迎えした。 この春、高校を卒業したばかりの彼女だが、Star☆T4期生としてオーディションに合格したのは中学1年の時であるゆえに、グループでの活動歴は既に6年目。総リーダーの和久田朱里、3期生の牧野凪紗、4期生の嶋﨑友莉亜、荻野陽向子、misolaといった主要メンバーに割って入り、その存在感を大いに示している。例えば、東海選抜アイドルユニット「7☆3(シチサン)」の17歳以下ユニット「7☆3ギュッと。」にStar☆T代表として参加したり、2018年のアルバム『メロウ』のオープニング曲であり、ライブでの重要なレパートリーにもなっている「恋するマーメイド」でセンターを務めたり…。今やStar☆Tを支える大きな柱の一つとなっていると言っても過言ではないだろう。   だが、筆者が彼女と話すのはこの日が初めて。笑顔が魅力的な彼女だが、その“アルカイックスマイル”とでも称したい抑制された微笑みからは、その心情を読み取ることは容易ではなさそうだ。決して感情を大っぴらに曝け出すタイプではなく、賑やかなこのグループの中では口数も決して多い方ではない。   さて、どのように攻略していくべきか…。手掛かりは、和久田朱里・牧野凪紗・嶋﨑友莉亜にインタビューした際にいただいた「天使」「たまに毒を吐く」といったキーワードと、YouTubeで見つけた「くそがきく~ぴょん」という映像ぐらい…。なかなか手強そうだが…。   実際に話してみると、思った以上に饒舌で、1.5時間を超えるインタビューでは全然足りないぐらいだった。彼女自身も「あっという間に感じました」と言うぐらい話が尽きず、“Star☆T愛”から“豊田愛”、そして“衣装愛”から“乃木坂愛”に至るまで、様々な感情を吐露してくれた。   煌びやかに舞い踊る姿からは窺い知ることのできない、“冷静で客観的な視点”や“内に秘めた熱い想い”。それらが、彼女に重層的な魅力を纏わせているのだ。   そんな朝空詩珠紅からこぼれ落ちる言葉と想いを、しかと受け止めていただきたい。             ちょっと前までは「くそがき」でした     ーーステージに立つ朝空さんは幾度か拝見したことがあるんですが、こうやってお話しするのは初めてです。まだどういう方なのか今ひとつ掴めないんですが…。   朝空詩珠紅(以下:朝空):そうですよね。   ーーまずはその辺りのところから探ってみたいと思います。「Woman」のリリース時に和久田朱里さん、牧野凪紗さん、嶋﨑友莉亜さんにインタビューした際、他のメンバーを簡単に紹介していただいたんですが、朝空さんについてお訊きすると、「天使」という言葉が出てきたんですよ。   朝空:えぇ、そうなんですかねぇ…。   ーーどうですか、それを聞いて。   朝空:みんな絶対そんなこと思ってないですよ。   ーーすぐに「天使」って答えが返ってきましたよ。まあでも、そのあと「腹黒天使」「たまに毒を吐く」という補足がありましたが…(笑)。   朝空:それ、絶対なぁちゃん(=牧野凪紗)じゃないですか。   ーーそうですね。和久田さんが「天使」と言ったら、 牧野さんが「腹黒天使」、嶋﨑さんが「たまに毒を吐く」と(笑)。実際のところどうなんですか?   朝空:自分としてはそんなつもりはないです、全然。いつの間にかそうやって呼ばれるようになっちゃっただけで(笑)。   ーーじゃあ、毒は吐いてないわけですね。   朝空:全然吐いてないです。   ーーでも、無意識のうちに吐いていて、それを“毒”と捉える人もいる、ってこともあるんじゃないですか?   朝空:そんなことないです、ホントに。   ーーということは、本当は“天使のような優しい方”で。   朝空:いやいや、それもちょっと違うと思うんですけど…。   ーーあと、今回取材するにあたって色々と朝空さんのことを調べたんですが、「くそがきく~ぴょん」という映像を発見してしまいまして…。   朝空:ああ…。   ーー「くそがき」なんですか?   朝空:ちょっと前までは「くそがき」でした。   ーー今はそこから成長した、と。   朝空:ちょっと成長しましたね。   ーーそういうキャラを作っていたとかではなく?   朝空:キャラを作ってたわけではないんですけど…。ちょっと毒を吐いてたのが「くそがき」みたいな感じになっちゃって。   ーーあの動画を撮っていた時って、まだ中学・高校の頃でしたよね?   朝空:はい、そうです。   ーーその頃は結構生意気だったとか?   朝空:生意気ではなかったですよ(笑)。   ーー色々と印象的な答えがありましたが、あれは“言わされてた”んですよね???   朝空:自分で考えたのもあります。   ーーそうですか。   朝空:はい。   ーー「好きな男性に求めるものは?」っていう問いへの答えがすごく良かったんですけど。   朝空:あれは多分言わされました。   ーーなるほど。   朝空:あ、待って。「ほどよい束縛」ですよね?   ーーはい。   朝空:あー、あれは自分で言いました(笑)。   ーーそうですか(笑)。   朝空:あれは自分でした。   ーー素晴らしい答えですね。   朝空:ホントですか???   ーーすごく大人っぽい答えです。「ほどよい束縛」がいいと思ってたんですか?   朝空:そうですね、多分(笑)。恥ずかしい…。   清水プロデューサー:でも、「くそがき」なんですよ。あの動画で言ってることは、くーぴょん(=朝空詩珠紅)が実際に言った発言を拾ってきて、あそこで言ってもらったっていう感じですので。   ーー用意されたセリフではありつつも、それは決して“嘘”ではなく。   清水プロデューサー:はい。そうですね。   ーー実際に本人が言った言葉だと。   清水プロデューサー:くーぴょんは普段メンバーといる時もワァーッと喋る方ではなくて、どちらかというと静かにしている方なんですが、ボソッと言うひと言がちょっと毒があるというか…。そういうキャラクターですね。   ーーなるほど。   清水プロデューサー:なので、和久田朱里がみんなを纏めようとしてガァーッと言ってる時に、「くーぴょん、ちょっとリーダーうるさいよね」って振ると、「確かにうるさい」ってちゃんと答えてくれるんですよ。そういうところに「くそがき」感があるかなと。   ーーあぁ、清水さんもそういう部分を上手く利用して(笑)。   清水プロデューサー:そうですね(笑)。   ーーでも「毒を吐く」ということは、ある意味「本質を捉えている」とも言えるんじゃないでしょうか。他人の「指摘されたくない真実」をズバッと言い当てていると。そういう風に「本質を見抜く」力がおありなんじゃないですか???   朝空:そうなんですかね…。うーん、どうなんでしょう(笑)。   ーーあと、もうひとつ印象的だったのが、和久田さんのことを「キス魔のキャバ嬢」って言っていました(笑)。あれは言わされたんですよね???   朝空:あれは…。あれも自分です…。これは今でも思ってますね(笑)。   ーー中高校生から出てくる回答ではないと思うんですが(笑)。   朝空:でも、あかりん(=和久田朱里)はお酒を飲むとめちゃめちゃキス魔になるんですよ。   ーーあぁ、真実に基づくものなんですね。   朝空:そうなんですよ。そのイメージが強くて、今でもそう思ってます。   ーー先日、和久田さんご本人も取材でおっしゃってましたけど、ちょっとケバい時期もあったようですから。でも、これまで「天使」「腹黒天使」「毒を吐く」「くそがき」っていうワードが出てきましたが、ご自身ではどんな性格だと思いますか?   朝空:でも、思ったことはそんなに言えないタイプで…。   ーーそうですか。   朝空:言いたいんですけどなかなか言えないのが自分の短所でもあるかな、って思ってます。   ーー大人しいほうですか?   朝空:そうですね。クラスでも目立たないタイプの人間ですね。   ーーそういえば、ご自身のことを「陰キャだ」とおっしゃっていたのをどこかで聞いたことがあります。   朝空:そうなんですよ。ホントに。   ーーあまりよくない言い方なのかもしれないですけど、よく“スクールカースト”とか言うじゃないですか。   朝空:はいはい。私はクラスの中心の女の子たちを周りで見ているタイプです。   ーーへぇ~、そんなに恵まれたヴィジュアルをされているのに。   朝空:えーっ!そんなことない。いやいや。   ーー中学高校とか、めっちゃモテたでしょ。   朝空:いや、ホントにそんなことないですよ(笑)。   ーーそうですか。   朝空:ホントに全然目立たないタイプでした。    
2020.05.15
  • インタビュー
和久田朱里|Star☆Tの良さをもっと伝えたいなっていう想いは常にあります
Speak emoでは、「情報ではなく、感情を伝えるメディア」という理念を掲げ、長編インタビューを敢行してきた。単に「〇〇はこういうグループです」「〇〇はこういう作品です」といった“情報”を取り出して掲載するのではなく、言葉を交わすことで生まれる空気感を文字によって再現し、そこに話者の“感情”が滲み出るようなインタビューになれば、と奮闘してきた。   そういう意味では、複数メンバーとの対話によってそのグループの“色彩感”を炙り出しつつ、各メンバーのキャラクターを浮き彫りにしながらそれらのコントラストを描き出すのも一つの大きなテーマだが、一方、一対一の対話によってその人物のパーソナリティを深掘りし、言葉を尽くしながら多角的に表現していくことも、Speak emoの醍醐味の一つとなろう。ゆえに、ソロ・アーティストもしばしば取材してきたわけだが、“ソロ”はある意味“一人で看板を背負っているグループ”といった捉え方もできる。例えば、“加納エミリ”なら、“加納エミリ”という看板を背負うメンバーが全員(すなわち加納エミリひとり)で“加納エミリ”を表現するわけだ。   であるならば、グループのメンバーを個別に取材することは、また別の意味を帯びてくるだろう。“個”から向けられたグループへの視点。グループを離れた個人のよりパーソナルな心情。あるいは、音楽活動から離れた日常を垣間見ることもできるかもしれない。そういう意味でも、いわゆる“個別インタビュー”はかねがねやってみたいと考えていた。   そんな中、図らずも見舞われてしまったコロナ禍。取材は制限され、全てリモートで行われることとなった。いわゆる“TV会議”方式にすれば複数人との対話も可能だが、あまりクロストーク向きではなく、“空気感”を作るのはまだまだ難しい。   そういう意味でも、この逆境をむしろ好機と捉え、今こそ個別インタビューを始めたいと考えた。問題はどのグループからスタートするか、だが……。そりゃ当然Star☆T(スタート)からやん!   というわけで、Star☆T個別インタビューをスタート! いくつかはペアを組んでいただくことになるかもしれないが、いずれにせよ正規メンバー14名全員にたっぷりとお話を伺っていく予定だ。豊田を拠点にするこの大所帯グループゆえに、距離的にも人数的にも、この“リモート時代”だからこそ可能となったこの企画。そして何より、中部地方で確固たる地位を築くこの名門グループの優れたパフォーマンスと素晴らしい楽曲を、さらに多くの人に知っていただきたいと思って…。   その第一弾は、もちろんStar☆Tの“総リーダー”和久田朱里。筆者がStar☆Tに出会った頃には、既に「頼れるリーダー」であり「グループを背負う主要メンバー」であったが、そこに至るまでには少なからず苦労もあったようで…。そんな彼女に、幼少期のことからStar☆T加入時のこと、ソロ曲のことから私生活に至るまで、たっぷりと語っていただいた。               スイミング、習字、ピアノ、ダンス、英語、ミュージカル、あとガールスカウトにも入っていました   ーーStar☆Tメンバー個別インタビュー、スタート!ということで、第1回はもちろんリーダーの和久田さん。個人にスポットを当てていろいろとお訊きしたいと思います。     和久田朱里(以下:和久田):はい。喋れるかなぁ…?   ーーStar☆Tは皆さん豊田市在住ということで、ご出身も豊田という方が多いですが、和久田さんもそうですよね?   和久田:はい。   ーーずっと豊田市にいらっしゃるんですか?   和久田:もう、ずっとこの実家です。   ーーいわゆる“箱入り娘”ということですね???   和久田:「はい」って、そうなるんですかね???   ーーでは、1人暮らしはしたことがなく?   和久田:ないです。1人暮らし願望もないんです。   ーー実家、心地好いですか?   和久田:はい。居心地いいです。私、血液型O型なんですけど、家族全員B型なんですよ。なので、みんなマイペースで「したいことをしたい時にする」っていう感じなので。家に誰もいない時もありますし。父は山登りに行って、母は遊びに行って、弟は1人暮らしで、みたいな。   ーー独立独歩でやられている感じなんですね。   和久田:そうです。   ーー家族でお出掛け、といったこともあるんですか?   和久田:それも全然あります。みんなでディズニーランド行ったりとか。   ーーもちろん千葉まで行くってことですよね?   和久田:そうです。あと、父が旅行好きなので、まぁ今は登山が趣味ですが、私が小さい頃は毎年夏にキャンプしたり、海に連れて行ってもらったりしていました。   ーーアクティブですね。   和久田:そうですね。   ーー幼い頃の記憶で、憶えてらっしゃる一番古いものってなんですか?   和久田:幼い頃の記憶…。幼稚園の時から“リトルおいでん”に出てましたね。豊田に“おいでんまつり”っていうのがあるんですが、その中に“リトルおいでん”というがあるんです。   ーーお子さんが出るようなやつですか?   和久田:そうです。おいでんまつりの前の早い時間に、幼稚園とか保育園とかの子供たちが出るのがあって、それに出てたりしてました。まぁでも、それは写真で見て憶えてるだけですけど。そうですねぇ…。小学校の低学年は静かでした。   ーー大人しかったんですね。   和久田:学芸会も“ナレーション2”みたいな役で、ひと言しかないみたいな。   ーーお芝居をやっても、本人は舞台に出ずにナレーション担当だったと。しかもひと言。   和久田:そうです。もう「スイミー」(編注:レオ・レオニ作の小さい魚を主人公とした絵本の名作)のちっちゃい一匹とかそういうのでした。でも、習い事はすごいさせてもらっていて…。   ーー何をやられてたんですか?   和久田:スイミング、習字、ピアノ、ダンス、英語、ミュージカル、あとガールスカウトも入っていました。   ーーえぇ!? 同時期にそれだけやってたわけじゃないですよね?   和久田:でも、小学5年生とかは学校に行って、夜は何かしらをやってました、今日は習字、今日はダンス、今日はスイミングみたいな。   ーーほぼ毎日って感じで?   和久田:今になって思うんですけど、結構“続けること”が好きで得意なのかなって。短期間で辞めた習い事ってあまりなくて。あ、あと茶道もやってました。   ーー例えば今、茶道やれますか?   和久田:最近リポーターのお仕事で紹介したことがあったんですけど、見ていて「あ、懐かしいな」って思って。多分ちょっと思い出せばできるんじゃないかな、って思います。   ーー今モノになっているのって何かありますか?   和久田:一番性格に影響しているのは、ガールスカウトなのかなと思います。   ーーリーダー的な役割を学んだとか?   和久田:そうです。ミュージカルも、なのかな? 小学校の高学年から急に目立ちたがり屋になったんですよ。   ーーそういうパターンありますよね? 僕もちょっとそんな感じだったんですけど。大人しかった子が突然活発になる、みたいな。   和久田:6年生の時は学芸会で主人公やってました。   ーーなるほど。   和久田:5年生の時は音楽発表会みたいなやつで指揮者をやっていました。   ーー指揮者を。   和久田:はい。一番目立つだろうと思って。   ーー“目立ちたがり屋”になったのには何かきっかけがあったんですか?   和久田:いや、それが分んないんですよ。なんでだろう? でも、ホントその頃から生徒会もやってました。あ、違う、それは中学校か。   ーーじゃあ、小学校高学年ではクラスの中でもリーダー的な存在になっていたと?   和久田:はい、そんな感じでした。   ーーモテたでしょう?   和久田:モテたんですかねぇ???   ーー小学校の頃ってリーダー的な目立つ子ってモテますよね。   和久田:えーっ、小中学校憶えてないなぁ。好きな子がいたのは憶えています。   ーーまぁ、それはいますよね。なんか進展はあったんですか?   和久田:でも、卒業式に一緒に写真撮ったぐらいです。   ーーまだ淡い恋って感じだったんですね。   和久田:はい。でも中学校では遊んでたと思います。   ーー遊んでたというのは???   和久田:「遊んでた」は表現悪いですかね。まぁ、でも遊んでました。   ーーStar☆Tに入るまではずっと普通の高校生でしたか? 他のアイドルグループにいたとかそういうことはなく?   和久田:ないです。先ほど言ったように、小学校の低学年からダンスは習っていましたけど…。中学で部活が忙しくなったので辞めたんですけどね。   ーー部活ってなんだったんですか?   和久田:テニス部でした。軟式テニス部で。それが忙しくなっちゃったんで習い事を全部辞めたんです。茶道だけは続けてたかな? でもほとんど辞めちゃって、高校に入った時には、卒業後は大学には行かずにすぐ働きたいと思っていたので、商業高校に行ってすぐにバイトを始めたんです。マクドナルドとか。   ーーバイトとかは大丈夫だったんですか?   和久田:まぁ、大丈夫というか…それがバレて停学になったんですけど(笑)。私の学生生活、なかなか破天荒だったと思います。   ーー今やしっかり者のリーダーで、メンバーの規範となるような存在ですけど、高校の時とかは“ワル”だったわけですか???   和久田:“ワル”というか…(笑)。多分どっちもなんです。真面目でもいたいし遊んでもいたいみたいな両面があって。だから高校も生徒会長でした。   ーー生徒会長をやりながらも遊んでた、と。   和久田:はい、生徒会長とかだったんですけど。でも、高校が隣の市だったので「まあバレないか」と思ってバイトもやってました(笑)。    
2020.05.01
  • インタビュー
われらがプワプワプーワプワ|われプワの一番の武器は楽曲だと思っています
なかなか難しい取材、いや調査だった。   自らを「宇宙人」いや「プ宙人」だと嘯き、「上の人」いや「プワ神様」からあれこれと指令を受け、「Puwa the city」なるパラレルワールドへ誘ったり、怪しげなサプリを作ったり、強国アメリカを押さえようと国旗を纏ったり…。   まあこの辺りは、なかなか手の込んだものではあるが、よくある"設定"ともいえる。それに"ノル"か"ノラない"かさえ決めておけば、さほど難しい対処が求められるものではない。   だが、今回の取材では、そんな"設定"の合間にリアリティや素のパーソナリティーがちょこちょこと垣間見えたような気がして、"ノル"か"ノラない"かの舵をどちらに切ればいいのか迷う場面が多々あった。   例えば、「星空こまる」という一風変わった名前が本名なのか問うてみると、「本名です」との答え。いかにも芸名っぽいゆえに「宇宙人(いやプ宙人)という“設定“の中での“本名”」ということなのだろう。いや、でも今時の若い子なら、珍しいとはいえこうした名前も十分ありうる気がする。だけど「宇宙=星空」なんてあまりに出来過ぎのような…。あぁ、“ノル”べきなのか、“ノラない”のか、こまる…。あれ、なんかプワプワしてきたぞ…。   筆者がわれプワにハマったのは「ベランダから始めるセカイセイフク」から。いわゆる“ド新規”である。だが、この曲をきっかけにみるみるうちに心が“征服”されていったのだ。   洗練されたグルーヴと、爽やかさと仄かな切なさをたたえた和音の流れが心地好いこのキラーチューンには、これまたイマジネーションとインスピレーションに溢れた歌詞が乗っている。「ベランダ」を舞台に始まろうとする「君」と「僕」とのラブストーリーは、『ロミオとジュリエット』を連想させるようなベランダ越しの逢瀬に興じる古風な恋愛にも、ベランダから見上げる夜空に「君」の姿を思い浮かべる空想物語にも解釈できそうな…。あるいは、宇宙から飛来する「君」にアブダクトされるのを望む「僕」といったSFなのかもしれない。それほど「君」のことを想っている「僕」は、既に宇宙人いやプ宙人に心を“征服”されているのかもしれない……といった具合に“ノル”べきなのか、“ノラない”のか。いや、これは既に“ノッて”しまっているのだ…。   2月にリリースされた初アルバム『セカイセイフク2』には、ドライヴ感溢れるファンク・ビートと4ビートやスローなレゲエが交錯する「イッツアトゥモローワールド」、疾走するディスコファンクから4ビートジャズへの落差が心地好い「教えて♡まいすうぃーと係長♡~アイドル3年戦士地獄の出世物語~」、ドリーミーなムードを纏いながらツボを押さえたメロディを展開しつつ、複雑にリズムを変貌させていくアイドル・ポップ「こずみかるらゔらゔぽっぷ」といった一癖も二癖もあるナンバーがひしめいている。   またそれ以前にも、クリスピーなエレポップからいきなりボサノヴァ~ラップへといつの間にか変化している「初恋ウインク」や、角松敏生ばりの80年代アーバングルーヴな「あなたに出会えた」といった秀逸な楽曲をリリースしている。なんだろう、この混沌とした快感は…。これがプワプワ???   というわけでSpeak emoは、この「プ宙人」たちの徹底調査を試みた。調査対象は、柴田あいこ、川崎ひかる、斎藤真尋、星空こまる、丸島ゆいの、相沢菜々美の6人。   果たして、その正体は…。           「らゔで征服する」ってことですね(星空)   ――「われらがプワプワプーワプワ」略して「われプワ」。とても“クセの強い”グループだなという感じがするんですが、一体どんなグループなんですか?   柴田あいこ(以下:柴田):「プ宙」という星から、世界征服を目的に地球へやってきた「プ宙人」です。   ――はい。「プ宙」なんですね。「府中」じゃないんですよね?   柴田:「プ」です。   ――お一人ずつ訊いてみましょうか。   相沢菜々美(以下:相沢):正統派っていうよりは個性派で、アイドル界では唯一無二なんじゃないかなって思います。   川崎ひかる(以下:川崎):やっぱりみんな個性が強くて、楽曲も良くて、衣装も周りのグループはちょっとレベルが違うぐらいユニークで、個性たっぷりのグループだと思います。   斎藤真尋(以下:斎藤):われプワはコンセプトがコロコロ変わるんですが、民族になったこともありますし、今はみんなアメリカの国旗を掲げたりしてます。   ――そうですよね。アメリカ国旗をあしらった衣装ですよね。   斎藤:それが個性的で面白いかなって思います。   丸島ゆいの(以下:丸島):われプワは、名前もユニークだし、メンバーも個性的だし、「われらがプワプワプーワプワ」っていう名前を一度見ると大抵記憶に残ると思います。すごく個性的で楽しいグループですね。   星空こまる(以下:星空):われプワはみんな楽しくて、「らゔ」を届けるグループだと思います。   ――「らゔを届ける」わけですよね。「征服をする」と言いながら、やっぱり「らゔを届ける」わけですね?   星空:はい。そうです。   柴田:なんか矛盾してない? 気付かなかった。待って、矛盾してる。   一同:アハハハ。   星空:「らゔで征服する」ってことですね。   ――ね。柴田さんがおっしゃったように、矛盾する部分っていうのはありますよね。ただ、そこにすごく深いテーマがありそうな気もしますし、そこが面白いところじゃないかと思ったりします。で、ここはちょっと難しいところなんですけど、皆さんが「宇宙人」いや「プ宙人」であるという「てい」でお話した方がいいですかね?   一同:そうですね。   ――そうすると後々ちょっと設定を維持するのが難しくなって、結構苦しくなってくるパターンのような気もしますけど…。   一同:アハハ。   ――「プ宙人」ということでいいんですよね?   一同:はい。大丈夫です。   ――で、皆さん出身はどこなんですか?   丸島:プ宙です。   柴田:D78星雲です。   ――D78ですか?   柴田:はい。D78星雲。あ、これ言っちゃ駄目なのかな?   マネージャー氏:あ、大丈夫です。   ――ここは「P」じゃないんですね?   柴田:はい(笑)。   ――細かい設定があるんですね。なるほど。そもそも僕はまだ「われプワ」初心者なので、ファンの皆さんには当然のことなのかもしれないですが、ちょっと基本的なことからお訊きします。「われらがプワプワプーワプワ」の「プワ」ってどんな感じなんですか? 「フワ」とか「プニ」とかだと分かるんですけど、「プワ」って何なんですか?   柴田:グループができた当初は、今とコンセプトが全く違ってたんですよ。最初は宇宙でも何でもなくて(笑)。当時のキャッチコピーが「ふくらんで、はじけて、やわらかくて、かわいい!みんなを笑顔に元気にプワプワにするアイドル!!」だったんです。   ――ちょっと調べましたけど、そういうのがありましたね。   柴田:それがいつしか「プワ神様」というものが降臨して、今のわれプワになりました。   ――えーっと、ちょっと待ってくださいね。プワ神様?   柴田:はい。   ――宇宙人じゃなくて神様なんですね?   川崎:「上の人」がプワ神様なんです。   ――やっぱり宇宙にも神様はいらっしゃる?   柴田:そういうことです。   ――で、「プワプワにする」って、具体的にはどうすることなんですか?   川崎:楽しくさせちゃうみたいな。   相沢:日常を私たちで染めるみたいな。   ――あぁ、「染める」ということなんですね。   相沢:もう「われプワ」じゃないと幸せになれないみたいな感じで。幸せにすることを「プワプワ」って表現する。そういうのかなって私は思ってます。   ――地球人の感覚で言うと「幸せな感じ」っていうのが、皆さんの言う「プワプワ」だと。   丸島:ファンの方も「プワプワしたい」って言ってくださるんですよ。それこそ最近ライブがなくて、ツイッターとかを見ていると、「早くプワプワしたい」って皆さん言ってくれてるので、もうかなり染まってるんじゃないかなって。   ――あぁ、ファンの方も「プワプワ」っていう感覚を分かってるわけですね。   丸島:はい。   ――それは、例えば他のアイドルさんのライブを観ても幸せになる方っているじゃないですか。あるいは、何かを食べて幸せになったり、どこかで遊んで楽しくなったり。それと、皆さんを見て幸せになる「プワプワ」っていう感覚とは違うものなんですか?   相沢:そうですね。日本語では「幸せ」で、プ宙語だと「プワプワ」ってことです。   ――なるほど。でもそれでいくと、他のアイドルさんを観たファンの方が幸せになっても、その状態を皆さんの言葉で言うと「プワプワ」になるわけですよね?   丸島:あぁ~。われプワを観て幸せになることが「プワプワしてる」ってことなんじゃないですかね。   ――はい。「幸せ」と言ってもいろんな種類があると思います。「われプワを観ないとなれない幸せ」が「プワプワ」っていう“設定”にしましょうよ。   丸島:あぁ、そうです!   ――それでいきましょう。   一同:はい!(笑)