Speak emo

2020.02.21
謎ファイルとやま観光

謎ファイルとやま観光|変わった歌とか面白い歌を歌っています

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「アイスクリームパラダイス」は衝撃だった。ローファイながらも叙情性を帯びるヒップホップトラックの上で、幼い女声の“ラップ”(時に無邪気な呟きのようにも聴こえるが、ラップのマナーに則った“フロウ”に果敢に挑んでいる)が繰り広げられている。そして、「何だっつーの ハーゲンダッツーの」という挑発的なリリックと、シンセのアルベジオのリフレインが不思議な呪術性を醸し出しているのだ。

「謎ファイルとやま観光」というそれ自体が謎に満ちた名前。他の曲を聴いてみれば、シンプルなファンクビートの上で「グーチョキパー 」やら「わんわん」「にゃんにゃん」と言いまくるだけのナンバー「グーチョキパー 」、ストレートな音頭に乗せて富山の海の名産を紹介する「とやま海鮮音頭」、どこかで聴いたような80s風エレポップに乗って富山から宇宙へとワープする「ハイパースペースでGO!!」など、次々とクセ球が飛んで来る。昨年7月にリリースされたEPでは、『サージェント・ペパーズ・ホタルイカ・ハーツ・トヤマ・ガールズ』というタイトルと、ドラムヘッドと草花を配したジャケットによって、ユルすぎる“オマージュ”と洒落込んでいる。

制作陣に名を連ねるのはドクター・ポーなる人物。また「アイスクリームパラダイス」を作詞作曲した富山出身のMC LASが、これまた素通りできない逸材である(「Open the door」という曲のMVを観ると、木霊のようなエコーや深山にそよぐ風のようなストリングスが紡ぎ出すサウンドと、大自然のど真ん中で撮影された映像とが相まって、“富山版ミナスサウンド”のような風情が漂っている。もちろん朴訥としたラップから匂い立つグルーヴのヤバさも最高)。

そして、謎ファイルとやま観光の公式HPには「現代アートの伝説アンディ・ウォーホルが行ったポップアートを今の時代に!今のやり方で!」とある。“斜め上を行く”どころか、“異次元にふわふわと浮かんでいる”かのような謎すぎるコンセプトだ。

謎は深まるばかり。写真で見るかぎりは、純朴で育ちが良さそうな美少女3人組なのだが、いかにも裏で抜け目ない大人が暗躍しているような印象である。いささか悪ノリが過ぎるかのような…。

だが、実際にライブを観て、彼女たちと話をしてみると、さらに驚いた。まずはメンバーのSA-NA、RUNA、MIYABIが“美しい”のだ。地方アイドルにありがちな“素朴な可愛いアイドル”ではなく、まるでジョン・エヴァレット・ミレイのファンシーピクチャーに描かれている美少女のような造形美を誇っており、さらに言うならば、ご当地アイドルならではの純朴を小賢しくアピールポイントとするのではなく、ローティーンの純朴さそのものがその美しい造形をさらに際立たせているといった印象。インタビューにもあるとおり、女たちの美意識の高さは東京の少女モデルたちにも引けを取らない。

そしてその存在感。大人があれこれと策略をめぐらせるが、それらに踊らされているのでは決してなく、むしろ大人が知らず知らずのうちに操られているかのよう。全てが彼女たちを中心に回っているかのようなのだ。

そもそもポップアートとは「漫画やポスターや工業製品などに使用される大衆的イメージを取り入れた現代美術の傾向」であるが、そこには大衆文化の持つ非人間性や陳腐さ、空虚さへの批評性が表現される一方、そうしたものが現代の新たな“風景”であるとしてそこに魅力を見出す向きもあった。いずれにせよ、“芸術”という高級文化に大衆文化というオルタナティヴを放り込むことによって、そこに新たな意味性を帯びさせることが本質なのではないだろうか。

そして、この謎ファイルとやま観光にも、そうした“化学反応”が見られるように思えるのだ。もっとも、このユニットの場合は、ポップアートのように「高級文化にそのオルタナティヴとして大衆文化を交配させる」のではなく、「今や行き詰まりを見せつつある“オルタナティヴ・アイドル”の手法の中心に、純粋培養された圧倒的な“美”や“輝き”という概念を据える」という、ある種の“逆パターン”に挑んでいるかのようだ。何ものにも代えがたい“美”や“輝き”を中心に据えることで、そこにまつわる、いかにも大人が考えそうな“マーケティング”や“エンターテインメント”がまた別の意味を帯びていき、そうした表層的かつ享楽的な“装飾”にある種の魅力が芽生え、それらによって中央に鎮座する“美”がより一層際立つのだ。

富山県の魅力を全国、全世界に発信すべく2018年7月に結成された富山PRガール(仮)。地元にある専用劇場“富山PR劇場”を拠点に様々な活動を行っているが、謎ファイルとやま観光は、その派生ユニットとして2018年10月にスタートした3人組。その“ヤバさ”は好事家の間でじわじわと広がっていき、前述のラップ・ナンバー「アイスクリームパラダイス」でさらに多くの耳目を集めることとなった。

Speak emoは早速この“謎多き”3人組に取材を敢行。その結果は、Speak emo史上“最も音楽的な話をしない”ものとなった。だが、それこそが「自分の作品の表面だけを見てくれ、裏側にはないもない」と嘯いたウォーホルの思想に合致するものではないだろうか。富山のPRに勤しみ、嬉々としてファッションやコスメの話に興じる3人の姿はまさにありのままであり、その裏には何も潜んではいない。だが、そこに“起点”を置かれてしまうことで、受け手は自ずと“そこから先”に想像を巡らせ、その裏に潜んでいるかもしれない“謎”を解き明かそうとしてしまうものだ。ましてや、あんなにクセのある楽曲を歌い踊っているのだから…。

SA-NA、RUNA、MIYABIの3人にお話を伺った。

 

 

 

富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです(RUNA)

 

 

――まずは自己紹介をしていただけますか?

 

SA-NA:小学5年生11歳のSA-NAです。

 

――「サナ」ではなく「サーナ」さんですね?

 

SA-NA:「サーナ」です。富山のおすすめのスポットは、“世界一きれい”って言われているスターバックスがある環水公園です。

 

――あ、“いつもの自己紹介”があるんですね。では続いて、RUNAさん。

 

RUNA:中学1年生のRUNAです。富山のおすすめはチューリップがきれいなところです。

 

――はい。ではMIYABIさん。

 

MIYABI:小学4年生10歳のMIYABIです。富山のおすすめは立山連峰がきれいなところです。

 

――みなさんは“謎ファイルとやま観光”というグループですが、富山PRガール(仮)の派生ユニットになるわけですよね?

 

一同:はい。

 

――ということは、みなさんも富山PRガール(仮)のメンバーでもあるわけですね?

 

一同:はい。

 

――富山PRガール(仮)は、どんなことをされているんですか?

 

RUNA:富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです。

 

――具体的な活動としてはどんなことを?

 

MIYABI:歌って踊ったり…。

 

――どんなところで歌って踊ってるんですか?

 

RUNA:劇場にも出演してるし、他のお呼ばれしたイベントだったり、お祭りだったり。あと東京や名古屋のイベントにも出演させてもらってます。

 

――あ、名古屋にも。

 

SA-NA:あと、石川とか。

 

――劇場って専用の劇場があるんですか?

 

RUNA:はい。富山市の街中にある富山PR劇場っていうところです。

 

――皆さん専用の劇場なんですね。すごいですね!

 

SA-NA:2階建てです。

 

――2階建てですか!

 

RUNA:1階にカフェがあって、その上にライブ会場が…。

 

――皆さんすごいですね。富山だともう大スターじゃないですか?

 

一同:いえ(笑)。

 

――そんなことないですか? でも街を歩いてたら声を掛けられるんじゃないですか?

 

MIYABI:掛けられないです。

 

――「謎ファイルの子だ」みたいに言われないですか? 一度もないですか?

 

一同:ないです。

 

――プライベートだから声かけないみたいな感じなんですかね。

 

SA-NA:そうなんかな???

 

――で、富山PRガール(仮)には、オーディションか何かで入ったんですか?

 

RUNA:オーディション……になるんかな?

 

マネージャー氏:SA-NAとRUNAは、もともとの前身のグループにいて…。

 

――あ、そういうのがあったんですね。

 

RUNA:はい。

 

――ということはMIYABIさんは富山PRガール(仮)から?

 

MIYABI:はい。

 

――SA-NAさん、RUNAさんは芸歴長いんですか?

 

RUNA:3年ぐらい?

 

SA-NA:私は3年ぐらい。

 

RUNA:RUNAは?

 

マネージャー氏:一緒だよ。3年ぐらいじゃない?

 

RUNA:3年?

 

マネージャー氏:3年ぐらいです。

 

――MIYABIさんは1年ぐらいですか?

 

MIYABI:1年半ぐらいです。

 

――富山PRガール(仮)自体結成されたのは?

 

SA-NA:2018年の7月26日?

 

RUNA:え?28日じゃなかった?

 

マネージャー氏:28日か。そうか、忘れたけど…。

 

――そこから派生ユニットの謎ファイルとやま観光が出来たのは…?

 

SA-NA:謎ファイルとやま観光は、え~っと…。

 

マネージャー氏:2018年10月です。7月に富山PRガール(仮)としてデビューして、その3カ月に派生ユニットとして活動をスタートしました。

 

――早い展開ですね。

 

 

取材・文
石川真男

謎ファイルとやま観光 商品情報

 

ジャケット写真

『サージェント・ペパーズ・ホタルイカ・ハーツ・トヤマ・ガールズ』
NSE-0002 ¥1,500(税込み)

〈収録曲〉
1.ハイパースペースでGO!!
2.グーチョキパー
3.ぜんぶたべたい(富山編)
4.ハイパースペースでGO!!(カラオケバージョン)
5.グーチョキパー(カラオケバージョン)
6.ぜんぶたべたい(カラオケバージョン)

PROFILE

PROFILE
謎ファイルとやま観光

富山の魅力を全国に広める為に結成された富山PRガール(仮)のメンバー、RUNA、SA-NA、MIYABIからなる派生ユニット。現代アートの伝説アンディ・ウォーホルが行ったポップアートを今の時代に!今のやり方で!「日本ご当地アイドル活性協会が選ぶ未発掘アイドルセレクト10」に2期連続で選ばれたり、 『南波一海のアイドル三十六房』R-グランプリにて2019シングルグランプリを受賞するなど今全国から注目が集まっているガールズユニット!

RUNA

2017年GIRLS DINNINGのメンバーとしてデビュー。脱退後、2018年富山PRガール(仮)の1期生として活動を開始。派生ユニットの謎ファイルとやま観光やprincipalessでも活動中。富山県在住の中学1年生。

SA-NA

2017年GIRLS DINNINGのメンバーとしてデビュー。脱退後、2018年富山PRガール(仮)の1期生として活動を開始。派生ユニットのcuemeや謎ファイルとやま観光、principalessでも活動中。富山県在住の小学5年生。

MIYABI

2018年富山PRガール(仮)の1期生として活動を開始。派生ユニットのMIYA☆RIIや謎ファイルとやま観光でも活動中。富山県在住の小学4年生。