Speak emo
NaNoMoRaL|だから今年は走り抜けないと
今回はめっちゃ解釈しづらいと思います(パセリちゃん)
――続いて「たりらでたりら」。これは問題作じゃないですか?
パセリちゃん:これいいですよね。めちゃくちゃいいと思う。
――僕も一番耳に残りました。未來さん、歌うのは難しくなかったですか?
未來:難しかったです。聴いた時に好きな感じではあったんですけど、なんか私っぽくないなって…。
パセリちゃん:うん、未來さんが歌うのを一番想定していない曲かもしれない。
未來:私が歌わなそうですよね。
パセリちゃん:あんまり想像つかなかったですね。これを渡してどう歌うのか。基本的には「これを渡したらこう歌うだろうから、こうしよう」っていう曲の作り方をするんですが、これに関してはマジでどうなるかわからなかったです。もしダメだったらやめようかと思ってたぐらいなんですが、すごく良かったので。
――ですよね。素晴らしい歌いっぷりです。まずはサウンド面からいきますと、やはりこれは、前作の「唖然呆然」でいわゆるテンポに関する縛りから解放された部分があったと思うんですが、それがあったからこそ出来たものですよね?
パセリちゃん:そうですね。
――これまでのNaNoMoRaLにはなかったような、“黒っぽさ”というか“横揺れグルーヴ”が感じられます。未來さんはグルーヴを感じながら歌いましたか?
未來:ちゃんと感じてたかな?
パセリちゃん:わかんない。
未來:とにかくパセリさんの仮歌っぽく歌おう、そうしたら間違いはない、と思って歌いました。
――で、これってパセリさん、やはり黒っぽいもの、ファンキーな、グルーヴィーなものを作ろうとしたんですか?
パセリちゃん:ブラックミュージック的な感じということですか?
――はい。
パセリちゃん:僕の中ではサイケというか…。
――なるほど。
パセリちゃん:00:42~の左チャンネルから出ているギターの音がすごくサイケです。
――あぁ。サイケとソウルミュージックとは互いに影響し合っている部分もありますから、それらに通底するグルーヴが出ているかもしれないですね。
パセリちゃん:そう。一番そういう感覚に近い。で、サビだけドンとド直球でいく、みたいなのが僕のすごい好きな手法なんです。
――でも、パセリさんが洋楽を全然通っていないっていうのが不思議です。
パセリちゃん:通ってないんですよ。
未來:でも結構聞かれますよね。洋楽っぽいって言われます。
――最初は「絶対洋楽聴いてきた人だ」と思ってました。
パセリちゃん:何から聴いていいかわからなくて、全然触れてないんです。
――こうなったら、むしろ聴かないほうがいいかもしれないですね。
パセリちゃん:でも結局邦楽の人たちって洋楽聴いて育ってるので、その人たちを聴いていればいいです。
――で、歌詞なんですが、“赤塚不二夫イズム”入ってますよね?「天才バカボン」入ってますよね?
パセリちゃん:入ってます? 入ってたかもしれないですけど…。
――え? そこら辺意識してないんですか???
パセリちゃん:え、ちょっと待ってくださいね…。
――だってこのタイトルといい、歌い出しの「たりらりらん」なんてまさに…。
パセリちゃん:あぁ。それは全然意識してなかったです。あぁ、確かにそうですね。めちゃくちゃそうです。
――前作『a zen bou zen』収録の「コンテニ」に“赤塚不二夫イズム”が感じられる、という話になりましたが、これはまさに『天才バカボン』の次のシリーズ『元祖天才バカボン』の主題歌「タリラリランのコニャニャチワ」じゃないですか! 歌詞コピーしてきまんで、ぜひご覧ください。
パセリちゃん:いや似てますね。でも意識してないです。
未來:あ、すごいほんとだ!
――あぁ、そうだったんですね。今回もまた“赤塚イズム”きたのかなと思ったら、そうではないわけですね?
パセリちゃん:「たりらりらん」は、もう完全に語感で…
――あぁ、語感で。
パセリちゃん:はい。
未來:すごいですね。バカボンが脳にいたのかな?
パセリちゃん:うん。そうかも。
――やはり根本に“赤塚イズム”があるんじゃないですか?
パセリちゃん:“東京ムービー(編注:『オバケのQ太郎』『巨人の星』『天才バカボン』などを制作したアニメーション制作会社。「タリラリランのコニャニャチワ」を作詞しているのは同社の企画部)イズム”があるのかもしれないですね(笑)。これは曲先で歌詞をはめていったんですけど、そこにはまるのがもう「たりらりらん」しかなかったってだけです。
――なるほど~。でも、「要するに解けないわけない/考えることでもない/要するに決めない/その先は分からないでしょ」辺りも赤塚イズムが溢れているように思います。
パセリちゃん:そうですね。元々そうした考え方があるんだと思います。
未來:そうなんだぁ。
パセリちゃん:うん。
――「サヨナラデスペ」ですが、この「デスペ」は…?
パセリちゃん:「デスペレート」です。
――あぁ。「デスペラード(=ならず者)」ではなく、「デスペレート(=絶望した)」のほうですね。
パセリちゃん:はい。7文字にしたかったので「デスペ」にしました。
――これは"いにしえの洋楽"というより、今風のパワーポップみたいな感じです。
パセリちゃん:僕の中ではこのアルバムの中で一番異質かなと思っています。一番最初に手を付けた曲なんですよ。完成したのは後ですけど。
――パセリさんの中では一番異質と?
パセリちゃん:そうです。まだ固まってない時に書き始めた曲というか…。
――今作は一曲一曲に特徴がありますが、もしかしたらこの曲が一番これまでのNaNoMoRaLっぽいかな、って思ったんですよね。
パセリちゃん:そうですね。
――つまり、それぞれに異質のものが並ぶ中、この曲は一番"これまでっぽい"から逆に異質だ、と。
パセリちゃん:そうです。
――今作で全般的に思ったんですが、例えばこの曲の「ロマンチックは嘘の臭い/捻り出した朝のしおり/プラスチックは夢の集い」という部分など、かなり抽象的・象徴的な“ひねり”を入れているような印象です。前回取材させていただいた時に歌詞の話をしたじゃないですか。例えば「げろれろる」で、「たった50音で構成された/レゴブロックみたいな四角い羅列」っていう一節がいいって言うと、「ちょっと格好つけすぎじゃないですかね?」と“自己評価”されていました。
パセリちゃん:はいはい。
――でも今回は、あまり格好つけすぎず、「こういう比喩をしたんだぜ!」みたいなのではなく、敢えて少しわかりにくくしている感じがしたんですが、いかがですか?
パセリちゃん:今回はめっちゃ解釈しづらいと思います。僕ですらその時の気持ちで書いてるので…。どう捉えてもいいっていう…。なので、3カ月後に同じ取材されたら全然違うことを言うかもしれない、っていうぐらい今回はすごく含みがありますよね。
―ー確かに解釈しづらかったです。ラインごとにはイメージできたとしても、全体として何かのストーリーやメッセージみたいなものに集約するのは難しいです。
パセリちゃん:エッセイってそうじゃないですか。
――あぁ、そうですね。
パセリちゃん:それは結構意識してます。答えが見つからないように。今までだったら、例えば歌詞を見てタイトルを見たら「これデスペレートだろうな」とかわかるように書いていたと思うんですけど、今回はそうはされたくなかったのかもしれないですね。
――そんな詞を未來さんは読み解いているわけですよね。
未來:はい。
パセリちゃん:全体っていうよりは、フレーズフレーズで多分響くものがあったんじゃないですかね?
未來:そうです。あと曲の雰囲気とか。ここはちょっと悲しいというか寂しいのかな、みたいな感じで読み取りました。
NaNoMoRaL 商品情報
3rd mini Album『macra no souji』
前作からわずか約5ヶ月で届けられた3rd minialbum。
息をするように精力的にライブを続ける2人から、どれだけ押し込んでも溢れ出てしまう《多幸感》は観にきた人全てを包み込む。
大きくなってから、心のどこかに閉まってきた感情を取り戻す「みんなのうた」がココにある。
[収録曲]
01 まくらのそうじ
02 ダメダメのうた
03 カラシナダンス
04 たりらでたりら
05 さよならデスペ
06 子どもでいてね
07 アンサーソング
2020年04月15日発売
税込2000円