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2023.09.06
ハナフサマユ

今、ちょっと心が苦しい人、今、なんとなく幸せかもと思っている人、いろんな感情を込めたアルバムになりました。ハナフサマユ インタビュー

ハナフサマユの最新3rdアルバム『バートレット』が完成、9月20日に発売になる。同作品に込めた想いを、伺った。


9月の誕生果がわたしの好きな洋梨だったことから、アルバムタイトルを『バートレット』に決めました。


――最新アルバム『バートレット』を聴いたとき、ここには、人を思う気持ちを歌にした曲たちがたくさん詰め込まれているなと感じました。

ハナフサマユ  そう届いていたのなら嬉しいです。アルバムの制作に入ったのが、今年2月まで行っていた全国ツアーを終えてから。その時期に新しいアルバムを作ろうという話が持ち上がれば、9月にリリースする形で進めようと具体的な日程まで見えてきました。
  わたし、つねに曲作りをしているからストックはありましたけど。アルバムを作るうえで、明確なテーマを持って作りたい想いもありました。ツアーを終えてすぐ、「どういうアルバムにしようか」と考えを巡らせ始めたときに出てきたのが、「自分の好きなものをテーマにしよう」ということでした。

――そこには、どんな理由があったのでしょうか。

ハナフサマユ  わたし、日々を何気なく過ごしていく中でも、気づいたら緑色の入った服を選んでいたり、好きな食べ物を好んで口にしているなど、 無意識の中で「好き」を求める暮らしを送っています。タイトルに記した『バートレット』とは、西洋梨のこと。もちろん、梨が好きという理由もありますが、9月リリースというお話をいただいたことから、誕生花や誕生石などに合わせ、誕生果(実)もあったからそれも調べました。そうしたら、9月の誕生果がわたしの好きな洋梨だったから、アルバムタイトルを『バートレット』に決めました。そのうえで、これまでに書いてきた楽曲の中から、「好きなもの」に繋がる曲たちを選べば、アルバムのテーマに寄り添う曲たちを新たに作り始め、アルバムを完成させました。今作に収録した『好きなこと好きなだけ』はまさに、わたしの好きを詰め込んだ楽曲です。

――マユさんは、アルバムを制作するうえで明確なテーマを持ったほうが進めやすい方だ。

ハナフサマユ  そうですね。ただし、2ndアルバムの『結晶』は、アルバムに収録したい曲たちをいろいろと集めたときに、「なんか人生を歌っている曲たちが集結した結晶のようなアルバム」と思ったことから『結晶』と名付けたように、後からタイトルを決めています。そういう作り方もありますけど。今回の『バートレット』のように、明確なテーマ性を持って作り始めたほうが一貫性は出やすいなと思います。


その人自身の人生や恋愛に重ねながら聴いてもらえる。それが、何よりも嬉しいこと。


――マユさん自身、人を思う気持ちを大切にしている方ですよね。

ハナフサマユ  そうですね。この間、アルバム『バートレット』についてお話をしていたときに気づいたのが、「このアルバムに収録したのは、誰かに届けたい想いや、人の心に届いてこそ活きる歌たちばかり」であること。そういう意味でも、人を思う気持ちは強いのかも知れません。

――狙ったわけではなく、自然にそうなった形だ。

ハナフサマユ  自然にですね。わたしが曲を作る場合、自分自身や特定の誰かというよりも、一人の主人公を設定し、その人が想い抱く視点で書くことが多いから、自然と誰かへの想いが強くなっていく傾向があります。

――冒頭を飾った『プリムラ』は、青春時代を舞台にした、ミュージシャンどうしの恋愛風景を女性の視点から歌った楽曲という印象を受けました。

ハナフサマユ  『プリムラ』は数年前からあった曲。当時はバラードとして作っていましたけど、今回のアルバムへ収録しようと決め、曲調や歌詞を変え、改めて作り直しました。結果、アルバムの1曲目を飾れば、MVも制作したように、本当に報われて良かったなと思います。

――中には、時を経て形になる楽曲もあるんですね。

ハナフサマユ  そこも様々ですね。『プリムラ』のようにずっとストックしてあった曲もあれば、人に会いたくても会えなかったコロナ禍の時期に書いた『あいたい』のような歌も入っています。アルバムに収録した中で一番新しい楽曲が、『好きなこと好きなだけ』。この曲は、アルバムのテーマが決まったからこそ生まれた楽曲でした。

――コンスタントに楽曲制作をしているとはいえ、テーマ性を持ってアルバムを作る以上、どうしても外れてしまい、ストック側にまわる曲たちも出てくるわけだ。

ハナフサマユ  そうなりますよね。『プリムラ』のように、時を経て、アレンジを変えて形になる場合もあるからこそ、コンスタントに曲を作っておくのは、わたしの中で大事なこと。個人的な想いかも知れませんが、ツアー前など別のことへ集中しなきゃいけない時期以外、定期的に曲を作っていないと自分のモチベーションが下がってしまう気がするから、創作活動は止めないようにしています。

――作るうえで、題材に困ることはありません?

ハナフサマユ  わたしの場合、「今、自分が何を感じているか」よりも、「何かを見て思った感情を、誰かの視点に置き換えて書くこと」が主。自分の想いではなく、誰かの想いをわたしが曲にしてゆくスタンスだから、今のところは創作に困ったことはないです。

――アルバム『バートレット』に収録した曲たちも、誰かの視点で書いた歌が多いということ?

ハナフサマユ  そうです。もちろん、自分で創作をしているから、わたし自身の気持ちと重ねあわせられる面もありますけと。100%わたしの視点で書く歌詞は滅多にないです。

――でも、聴く側は、「マユさん自身の気持ちかな?」と重ねて聴いてしまいます。

ハナフサマユ  そう思って聴いていただいてぜんぜん構いません。それくらいリアルさのある歌詞であるのなら、とても嬉しいことですからね。わたしの歌をみなさんが聴いたとき、その人自身の人生や恋愛に重ねながら聴いてもらえる。それが、何よりも嬉しいことですから。


人によっては瞬時にスクロールされ、ほんの一瞬しか目に届かないことだってよくあります。それでも、好きなことや大事にしている気持ちを詰め込みました。


――『靴ずれ』は、自分の人生に重ねながら聴いた楽曲でした。

ハナフサマユ  わたし、実際に靴ずれをすることがあって、そこへ、ときには靴ずれをするような日々もあるけど…と、人として歩む人生を重ねあわせて書きました。アルバムの中でいうなら、『靴ずれ』や『ハコニワ』は、その人の歩む人生と重ねやすい歌かも知れません。どの歌も、自分の人生や恋愛模様を重ねあわせて聴いていただけたら嬉しいですね。

――マユさんの書くラブソングも、いろんな経験に重ねやすければ、一つ一つの歌詞から情景が浮かんでくることも多いなと感じています。

ハナフサマユ  わたし自身も、中高生の頃はいろんなアーティストの方々から影響を受けてきましたし、それらの曲に自分の想いを重ねながら聴いていました。それこそ、失恋をしたときには、曲に自分の気持ちを重ねあわせて涙したり。アルバム『バートレット』に収録した曲たちにも、聴いてくださった方々が日々暮らしていく中で感じる想いに重なる面があると思います。そんなとき、少しでも心の支えになれたら嬉しいですね。

――『好きなこと好きなだけ』に出てくる「私の好きな「Prelude」 イントロが長いあの曲 27秒から刻むエレキがかっこいい」の『Prelude』って、Mr.Childrenの楽曲のことなんですね。

ハナフサマユ そうです。歌詞を書くうえで、どうしても「エアジョーダン」と「Prelude」の言葉を使いたかったから、それぞれに許諾申請を取ったうえで書いています。とくにエアジョーダンの歌詞は、「あなたが好きなエアジョーダン」と「ぶつかりあった感情論」の"じょー"の部分で韻を踏んでいるように、どうしてもエアジョーダンにしたかったんですよね。だから、許諾をいただけたことは本当にありがたく思っています。

――じつは細かいこだわりが…というのも、他にもいろいろとありそうですね。

ハナフサマユ  いろんなところに、細かいこだわりを散りばめています。たとえば『プリムラ』。きっと作曲など音楽面に詳しい方なら、「だけどひとつ「C」のコード今も覚えてるよ」と歌いながらも、「えっ、この曲のどこにCのコードが出てくるの?」となると思います。『プリムラ』の中で、Cのコードは使っていません(笑)。でも、簡単に覚えられるコードといえばCかなと思って歌詞に使ったのと、「「C」のコード」と歌いながらも、Cのコードを使ってないところも面白さかなと思い、あえてそう狙いました。『ハコニワ』では韻を多く踏みたくて、「~です」や「窮屈で退屈」などいろんな場面で韻を踏む言葉を使っています。

――個人的に好きな一節が、『好きなこと好きなだけ』に記した「スクロールの早い世の中にも届け」なんです。

ハナフサマユ  今の世の中は、大切に書いて投稿した文章であろうと、人によっては瞬時にスクロールされ、ほんの一瞬しか目に届かないことだってよくあります。それでも、好きなこと大事にしている気持ちを『好きなこと好きなだけ』には詰め込みました。同時に、早い速度で流れる今の時代の変遷も、その言葉を通して揶揄もしています。


その人にとって人生の主人公は絶対に自分じゃないですか。だからこそ、この曲を最後に置いてアルバムを締めくくりました。


――マユさんの書く歌詞は、たとえネガティブな想いを記そうと、最後はしっかりと前を向きますよね。

ハナフサマユ  収録した11曲、どれも主人公は違いますけど。どの曲にも「何かしら光を射したい」想いを記しています。その気持ちは、昔からわたしの中にあったことでした。そこへ至るまでの過程の中、どんな悲みや苦しさがあろうとも、最終的にはちょっとだけでもいいから前を向けるようにしたい。たとえ失恋の歌でも、何かしらの光を記せば、生きてゆくうえでの前向きなヒントとなる言葉などを書くようにしています。

――『ボーイフレンド』と『プリンセスになって』は…。

ハナフサマユ  ドラマ「カラ恋」の主題歌として書き下ろしました。今回は、そんなにドラマに寄せなくてもいいという要望もあったので、ドラマの主人公に感情移入しながらも、主人公が頭の中で「こう思っているんじゃないか」という妄想を記しました。『ボーイフレンド』には、「この人でなきゃ駄目」みたいな想いも記せば、『プリンセスになって』には、「このあと、こういう世界が2人には待っているんじゃないか?!」という未来を予想するように書いています。

――『赤い糸』に記した想いも、赤い糸=運命の人という短絡的な捉え方でないところが好きです。 

ハナフサマユ  この曲では悲しいことを歌っていますからね。おっしゃられたように、タイトルだけを読むと、"赤い糸で結ばれる2人"と解釈する人が多いと思うんですけど。この曲では「運命の人なの?そうじゃないの??」と答えを探し求めています。悲しい歌詞とは裏腹に、昭和な匂いも入れつつ割とポップにアレンジをしたから、歌詞と曲調のギャップも面白さになっています。

――アルバムの最後を、「主人公は僕だから」と歌う『僕のストーリー』で終えているところもいいですね。

ハナフサマユ  誰の人生でも、そう。その人にとって人生の主人公は絶対に自分じゃないですか。だからこそ、この曲を最後に置いてアルバムを締めくくりました。

――でも、曲を作っているときは…。

ハナフサマユ  「『僕のストーリー』を最後の曲にしよう」と思って作ったわけではなく、曲順を決めていく中、最後に落ち着いた形でした。結果、とても最後に相応しい歌になりました。


自分の気持ちを止めることなく、これからも歩み続けます。


――完成したアルバム『バートレット』、今のマユさんにとってどんな1枚になりました?

ハナフサマユ  バートレット(西洋梨)自体が、爽やかさと濃密さ、どちらも備えた品種です。このアルバムも、酸いも甘いも記した作品になりました。酸は、人生の中での苦しいことや嫌なこと。それが失恋であったり。甘いは、逆に幸せや光が見えてくる想い。その両面を備えています。今、ちょっとだけ心が苦しい人、今、なんとなく幸せかもと思っている人、どちらの感情にも当てはまる曲を詰め込んだ1枚です。 

――11月からは、東名阪を舞台にしたツアーも控えています。

ハナフサマユ  今回、大阪と東京は初のホール公演になります。以前から、「いつかホールでライブをしたい」と、自分の夢ノートに書いていた夢が、今回叶う瞬間にもなります。ライブで歌うことで、アルバムに収録した曲たちがまた違った聴こえ方をしていくと思うから、ぜひ、生のライブでもわたしの歌を感じてください。

――今後もマユさんは、コンスタントに曲作りを続けていくんでしょうね。

ハナフサマユ  すでに今も、曲制作を続けていますからね(笑)。『靴ずれ』でも歌っていますけど、足を止めることがすべての終わりではないので、たまにはちょっと息抜きをし、自分の気持ちをリフレッシュもしながら。でも、一人のアーティストとして、ずっとみなさんに楽曲を届けていきたい。だからこそ、自分の気持ちを止めることなく、これからも歩み続けます。


TEXT:長澤智典

 

<インフォメーション>

 

JKT
ハナフサマユ
3rd ALBUM「バートレット」

TKCA-75162
価格 2,600円(税込)
楽曲配信:https://tjc.lnk.to/1a6qLSLP

収録楽曲
M1.プリムラ
M2.好きなこと好きなだけ
M3.靴ずれ
M4.ボーイフレンド
M5.あいたい
M6.ハコニワ 
M7.Farfalla
M8.赤い糸
M9.プリンセスになって
M10.レター
M11.僕のストーリー


LIVE
「ハナフサマユ メジャー3 rd アルバム「バートレット」リリースツアー ~酸いも甘いも~」
11月10 日(金 愛知 SPADEBOX OPEN18:45 START19:30
11月15 日(水 大阪 高槻城公園芸術文化劇場太陽ファルマテックホール OPEN18:00 START19:00
11月20 日(月 東京 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE  OPEN18:30 START19:30

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