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2020.06.10
終わらないで、夜

終わらないで、夜 新体制無観客ライブ「よるのうた」ライブレポート

配信開始から、ひと呼吸おいて鍵盤の優しい旋律からライブが始まる。アコースティックギターが重なる。黒一色で統一されたステージ、この日はスクリーンの投影もない。シンプルなステージング、静かな旋律がなんとも言えない緊張感を高めていく。新しい夜が始まる。

 

おわよる1

 

4人での新たな体制でのライブは、アコースティックの生演奏から始まる。4人全員揃ってではなく、1曲目は初期メンバーの二人、祈園にっと(ねおんにっと)、木菟あうる(みみずくあうる)がステージ中央に腰掛ける。アコースティックになることで「(Sick)Homesick」は、いつもと違う顔を見せる。この日のこの歌は、都会のものすごい速さで流れていく喧騒の中に佇む姿ではなく、夜ひとりくらい(一人、暗い)部屋の中、窓から見える小さい空を見上げる。そんな姿が見える。二人で掛け合うように歌う姿は、別々の場所にいる2人の女の子を表現しているようだったが、曲後半のユニゾンで2人の気持ちが一つになったように見えた。

 

そもそもこの2人の表現は対照的だ。祈園にっとは、生粋の表現者だ。その強い感受性を包み隠さずオモテに出し、今伝えたい言葉を彼女のセンスを添えて届ける。外に向けて表現をしており、包み込むような器の大きさも持っている。しかしながらステージを降りると全くの別人、キュートな面も大いに見せてくれる。木菟あうるは、一言で言うと生真面目。超がつくほどの真面目さを持つ彼女、言い換えれば誠実であり深い真心を持っている。この日のステージも誰よりも緊張をしていた、それは彼女が初めての配信ライブ、初めての4人体制のステージということの重要さをまっすぐに真摯に捉えているからこその緊張なんだろう。そして彼女の表現は内に向いている、内側に秘めているものをためてためて、それを表現しているようだ。内なるものをただただ真っ直ぐに。祈園と木菟、対照的な表現者の2人が重なる夜は、息づかいまでも歌声のように染み渡る。

 

おわよる2

 

続いての「Beyond the Night Sky」は、鈴星るう(すずほしるう)、真宵えま(まよいえま)が歌う。5月末で卒業をした天満月さあや(あまみづきさあや)が残してくれた歌詞を、昨年より加入した2人が歌う。前半は、鈴星がリードをして真宵が支える、後半は真宵がリードし鈴星がコーラスで支えるように歌う。終わらない都会の夜に寄り添うように強がるように。「終わらないで、夜」の代表曲とも言えるこの曲を新体制となったこの時に、この2人で歌うの見ていると、鈴星、真宵が加入直前に公開された「Beyond the Night Sky」のミュージックビデオを思い出す。公開当時は、加入前の鈴星、真宵はエキストラとして参加していた。その曲を、今日は2人で歌っている姿に胸が熱くなる。

 

この2人もまた対照的で面白い。鈴星るうは、素直という言葉に尽きる。自分自身の良い面、未熟な面、自信のあること、ないことを表情に言葉に態度に素直に出す。それも勇気がいることでもあるが彼女はやってのける所に、強さを感じる。ネガティブな感情を心に抱えながらも、一生懸命ステージに食らいつく時、彼女から見える自信に溢れる姿にハっとする。真宵えまは、カッコイイ。"カッコつけている"という方がいいかもしれない、"終わらないで、夜"を体現しているような彼女は、クールにスマートになんでもこなす。虚無感や葛藤や不安を心の奥に隠して。それでも心の奥に隠しているものが見え隠れする。クールの中に可愛さを覗かせる、いろんな面を切り取れるのが彼女の魅力だろう。強くありたい彼女の想いが、ファンのみならずメンバーさえも惹きつける。

 

ステージ上は、鈴星から木菟へ入れ替わり「Anemone」。ジャジーなメロディが、アコースティックになることで、輪郭が尖っていく。ヴォーカル2人に鍵盤、ギターが寄り添うように奏でる。集中力がぎゅっと増して、音が洗練されていくのがわかる。いつも以上に気持ちの入っている真宵の声が、徐々に掠れているのがより雰囲気を演出し、それに木菟の透明度の高い音が乗ると、揺れて苦しい歌詞の世界が浮かび上がる。

 

10分の転換ののち、4人でのパフォーマンスが始まる。

 

おわよる3

 

「干渉遮断のモラトリアム」(SE)で4人が順にステージに、そして「3:25 a.m.」へ。ステージを作る上で、4人フォーメーションというのは軸を作るのが非常に難しく、バランスが取りづらい。新体制になってフォーメーションが変わり、彼女たちも今までとは違う感覚で踊っているだろう。が、4人のアンバランスさ、不安定さが、「終わらないで、夜」の表現しようとしていることにマッチしているようで、特にこの日はまだ4人体制に馴染んでいない、違和感のようなものが世界観をより際立たせているように見える。照明と彼女たちのパフォーマンスだけという、シンプルなステージングだからこそ表現できていることなのかもしれない。

「ルサンチマン」体を動かすことで、新しい夜をなじませているように歌う。2ヶ月ライブができない間に世界が変わり、今まで通りのライブも難しい、目標としていたワンマンライブも中止となってしまった彼女たちは、そのたくさんの抱える想いを込めて真っ黒な天井に手を伸ばす「いつかいつか 手が届いたら この時間は報われるの」と歌いながら。

この日の締めくくりとなる「Echoes」、木菟が歌いあげ、祈園が言葉を発した時にハッとする。やっと画面の向こうに向き合ってくれたように思えたからだ。自分たちの世界を届ける、発信をしている彼女たちが、この曲でコールアンドレスポンスをする。あなたはひとりじゃないよ、と。目の前には、いつもいたファンはいない、ただ遠く離れたどこかにはいる。そしてまだこれから出会う誰かに向けて。直接会えない分、"隙間"は多いかもしれない、でも今、声をあげて音を重ね、時間を重ねている今はひとりじゃないよ。と。今日の「Echoes」はそんな風に聞こえた。

 

「4人という新たな門出を、みなさんと一緒に過ごせるのが嬉しいです。この姿を早く見せたかったし、これからもいろんなことに挑戦していきたいと思っているので、これから加速していく終わらないで、夜を見ててください」(祈園にっと)

 

おわよる4

 

昨年から、何度も「終わらないで、夜」を見てきたが、毎回違う姿を見せてくれているのが彼女たち。安定している不安定さと、完成しているようで未完成なところが「終わらないで、夜」の世界観の一つなんだろう。無観客であることで、彼女たちの感情が研ぎ澄まさせれていった夜だった。新体制で、ファンの目の前で感情のやりとりをした時に、さらなる「終わらないで、夜」の世界が広がっていくのではないだろうか。

 

 

<セットリスト>

01.(Sick)Homesick(にっと&あうる アコースティック ver)
02.Beyond the Night Sky(えま&るう アコースティック ver)
03.Anemone(あうる&えま アコースティック ver)
04.干渉遮断のモラトリアム(SE)
05.3:25 a.m.
06.ルサンチマン
07.Echoes

 


<インフォメーション>

終わらないで、夜 配信楽曲リンク
https://linkco.re/5PHxV00P


公式サイト
https://www.owayoru.com/

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公式アカウント
https://twitter.com/owaranaide_yoru

祈園にっと
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木菟あうる
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鈴星るう
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真宵えま
https://twitter.com/owa_emma

 

取材・文:もりたはぢめ
取材協力:株式会社センターグローブ

 

 

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