Speak emo

2018.10.17
寺嶋由芙

何があってもアイドルで!

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伸びるのは髪ぐらいです。髪と爪ぐらい(笑)

――“アイドル界のご意見番”の寺嶋さんにお聞きしたいんですが。

寺嶋:いやいや、ほんと恐れ多いです。

――どうですか? 現行のアイドルシーンを見て…。

寺嶋:アハハ。そんな大きな話いきます???(笑)

――ぜひ!

寺嶋:でも、それこそ先週末が解散ラッシュだったじゃないですか。PASSPO☆さん、ベビレさん、あとベボガちゃんもそうだし、AISちゃんとかも一気に解散してしまい…。そのちょっと前でいうと、私の大好きだったアイルネちゃんも解散しちゃったし、Dorothy Little Happyも髙橋麻里ちゃんが卒業することになったし…。ホントにこの5年ぐらいのシーンを支えてきた人たちが一気にいなくなっちゃうんだなってしみじみ思っていて…。でも、だからといってアイドルがなくなっちゃうわけではなくて、新しいグループも出て来てるし、私達より下の年代の子達がすごい頑張ってたりもするので、この解散ラッシュに飲み込まれずに、また新たなムーブメントが起これば良いなと思ってるんですけどね。ただ新しい波が来た時に、昔からいる私がちゃんと付いていかなきゃいけないなというか、乗っかっていかなきゃいけないなというのはすごく思ってます。

――寺嶋さんは解散はないですもんね。

寺嶋:そうなんです。解散はないので(笑)。方向性の違いとかがないので大丈夫です(笑)。

――「頑張ってる下の世代」で気になってるグループはありますか?

寺嶋:天晴れ!原宿さんとか、FES☆TIVEちゃんとか。若いヲタクの人が応援してるグループがすごい気になるんですよ。あとは虹コンちゃんとかも。虹コンちゃんは同じディアステージなんで、イベントが一緒になることも多いんですが、そのヲタクの人達が、大学生ぐらいの子だったりして。もちろん大人の方も多いんですけど。そういう若い人達が作ってる“熱さ”みたいなものを、私達も勉強していけたらなって思っている部分はあります。

――さすが意識が高いですね。そして言葉選びも…(笑)。

寺嶋:「ピンチケ」とか言わないですよ(笑)。でもピンチケはすごいエネルギーを持っているので、ピンチケから得るものがきっとあるってすごい思っていて。TIFや@JAMを見ていても、そこは気になっちゃいます。「何が違うんだろう」って。もちろん私、自分のヲタクのこと大好きなんで、今の雰囲気もとってもありがたいし、「由芙ちゃんのヲタクは良いヲタクだね」っていろんなとこで褒められるんで、自分のヲタクが一番だと思ってるんですけど、とはいえ自分に無いものを持ってる人はすごく気になる、っていうのもあります。

――いろいろ考えてらっしゃいますね。

寺嶋:大人なので(笑)

――15歳ぐらいのアイドルと話しているのとは大分雰囲気が違います(笑)。

寺嶋:でも、その15ぐらいのアイドルが「大人になっていくのを見ていたい」っていう層もいるじゃないですか。「背が伸びたね」とか「歌が上手になったね」とか。

――もう背は伸びてないですか?(笑)

寺嶋:背は伸びないですよ。伸びるのは髪ぐらいです。髪と爪ぐらい(笑)。そういう成長が見えづらくなってしまう分、パフォーマンスはちゃんと頑張らなきゃと思ってますし、あとは動員をもっと増やしたいとも思っています。会場がしっかり埋まっている、キャパも大きくなってる、っていうのをちゃんと見せていかないと、って。

――例えば、今の時代、CDからサブスクリプションサービスに移行していて、さらに言えば、もっとライトな層は音楽に限らずエンタメにお金払わないっていう風潮があるじゃないですか。でも逆に言えば、アイドルの太いヲタクの方が、ある意味“お布施”のようにたくさんお金を落とすじゃないですか。「アイドルを育てるために」とか「投資をするために」とか「恩返しをするために」みたいな形で。素晴らしいパフォーマンスや表現に対して「お金を払ってそれを体験したい」という気持ちからならいいと思うんですが、「お布施」のような意識が強くなりすぎると、あまり健全ではないような気もするんですけど、その点いかがですか?

寺嶋:もうほんとに、その人その人のスタンスで楽しんでいただければいいと思うんですが、あくまで“エンタメ”なので「無理はしないでね」っていうのは日々思っていて…。自分も頑張るけど無理はしないし無茶はしない。もちろん、より良くするためにすごく頑張ってはいるけど、辛くなっちゃうような無理は自分もしたくないし、みんなにも強要したくないです。「生活を切り詰めてでも1枚でも多くCDを買う」みたいなのは別に求めてないですね。ただ、自分もゆるキャラとかが好きで、ゆるキャライベントに行く時の感覚では、「こんなに楽しませてもらってるからお金払わなきゃ」って思っちゃうんですよ。ヲタクの感覚で「グッズ買わなきゃ」「持ってるけどもう一個買いたい」みたいな、そんな気持ちもわからなくはないので…。無理のない範囲で、でも感謝を込めてお金を払ってしまう“ヲタクの性”は、すごく私もわかります。はい。

――それは僕もよくわかります。それは健全ですよね。

寺嶋:それに、そういうのって楽しいですよね。

――そうですね。「お返しをしなきゃ」「お金を落としてあげなきゃ」っていうより、例えばホントに楽しいライブを観たら、終演後に物販に行って演者の方と話してみたいですし、「良かったよ」って言いたいですし、チェキも撮ってみたい、って気持ちになりますよね。

寺嶋:そうですよね。なので、そう思ってもらえるステージを作るっていうのが一番大事なのかなって思ってます。「今日すごく良かったからもう1回ループしちゃうよ」みたいなヲタクを増やすとか、「次は友達を連れてくるよ」って言ってくれる人を増やすとか、「CDを買ってください」ってダイレクトに言うんじゃなくて、「こういう空間を創れるように努力するんで、よろしくお願いします」っていうことなのかな、とは思っています。

――なるほど。で、先ほど「新たなムーブメントが起これば良い」とおっしゃいましたけど、そういう“希望”みたいなものに関して、どういう方向に向かえばいい、といった具体的なことは思い描いていますか?

寺嶋:どうなりますかね~。でも、アイドルが細分化してきた分、今すごくクオリティが上がっている気がしていて…。私がアイドルになれたのは、一時期の「猫も杓子もアイドル」みたいな時代で、当時のそうした波にはすごく感謝してるんですけど…。私、ハロプロのオーディションとかいろいろ受けてめちゃめちゃ落ちてるので、多分あの時代じゃなかったらアイドルになれなかった素材だと思うんですよ。「どんな子でも光を当ててくれる」アイドルブームが起こったからこそ、そんな私にもチャンスが巡ってきたと思ってるので、その波はすごくありがたかったけど、でも今は「なんでもかんでもアイドルでいいわけじゃないんだぞ」っていう時代になってきたのかなと思ていて…。そんな時代の中で出てきた子たちって、歌が上手だったりとか、ダンスが上手だったりとか。例えばcallme(編注:9月30日に「kolme」に改名)ちゃんとかはもはや自分たちで楽曲を作ったりしているので…。他にも、作詞をしたりとか、パフォーマンスをすごく磨いてる子たちが多いですし、どんどんそのスキルが上がっていて、その分、新しい波の子たちはそれを見てるから、もともとそういうスキルが備わってる子が多いなって思うんですよね。なので、全体のレベルがすごく上がっている気はしています。

――なるほど。アイドルもスキルを求められるようになって、それがだんだん蓄積され、基準となるレベルが上がっているという感じですね。

寺嶋:はい。なので、ちょっと私達とはまたフィールドが違うのかもしれないですけど、最近ソロデビューされた元℃-uteの鈴木愛理さんとかも、やはり℃-uteのエースでしたから、歌もダンスもめちゃめちゃ上手くて、もはやアーティストと呼ぶべきですけど、元々はアイドルで、今ああいう活動されていて…。すごくカッコいいなと思いますし、そういうものが求められる時代が来ているのかなって思います。

――寺嶋さんもお世話になっているプロデューサーの加茂啓太郎さんが手掛けるフィロソフィーのダンスなんて、そうした“新しい波”の象徴であり、一番の成功例の一つだと僕は捉えているんですが…。優れた楽曲があって、それをちゃんと表現できるスキルがあって。ともすれば閉塞的になってしまうアイドル界隈において、それを突破できる力があるように思うんですよね。“外”へ出て行っても楽曲だけで勝負できる、それどころかアイドル界隈に引き込むこともできる、というか…。実際僕もそうなんですが、「楽曲から入った」層って僕の周りにもいたりします。そういう意味でも、僕は寺嶋さんもそんな“楽曲派アイドル”だと捉えています。もちろん、あれだけ多岐に亘る活動をされているので、“楽曲派アイドル”というのも寺嶋さんの一つの側面に過ぎないと思いますが…。

寺嶋:だといいんですけど…。でも、うれしいですね。楽曲にこだわってもらってるのはすごく良かったなって思っています。最初のディレクターが加茂さんでよかったなっていうのはすごく思います。

――あと、先ほどもちょっと出たと思うんですけど、「ファンが高齢化してる」っていうのもあるじゃないですか。

寺嶋:確かにありますね。はい。

――おそらく2000年代に入る前ぐらいからモーニング娘。にハマって、そこからずっといろんなところに“転生”しながら今に至っている層も結構いると思うんです。さらには、おニャン子クラブぐらいまで遡って、一度離れてまた戻って来た層もいたりするんじゃないか、と。

寺嶋:そうですね。「終点、ワ・タ・シ。」っていう曲を歌ってるんですが、「いろんなところに目移りするかもしれないけど最後は私ですよ」っていう曲で、「20年選手、30年選手のヲタクの皆さんも最後はここに来ていただいて、一緒に老後を過ごしましょう」って気持ちなんですけど(笑)。で、そんな仲間をいろんな世代で増やしたいって思っています。若い世代の方とか、私よりも年下の子…たまに女子高生の子とか来てくれるんですけど、そういう子達ももっと増えるといいなと思ってます。どの年代の人が来ても、楽しいって思ってもらえるものが創れたら嬉しいですね。そして、これは、アイドルがそこまで気にすることじゃないのかもしれないんですけど、異なる年代の人と仲良くするのって結構楽しいのかなって思っていて…。他の年代だったり、他の職業だったり、普通だったらおそらく出会わなかった人達が一つのコミュニティを創ってるって、それこそがヲタクのおもしろさなのかなって、傍で見ていて思います。うちのヲタクってホントに楽しそうなんですよ。なので、そういうコミュニティを拡げていけるような、そのきっかけに私を使ってくれたらいいかなって思いますね。

――なるほど。いや、ホントにヲタクの方々の界隈を見てるとそう思いますよね。まさに年代も、本名さえも明かさないで、でもすごく仲良くなって、お酒飲んで語り合って。

寺嶋:毎日のように語り合ってるっていう(笑)。

――はい。おそらくは会社でも結構な役職の人もいれば、会社経営している人もいれば、フリーターもいれば、みたいな感じもあると思うんですけど、みんなが対等に付き合っているというか…。寺嶋さんを媒介にしてそうしたコミュニティが成り立っているって、素晴らしいことですよね。

寺嶋:それを見てると、私がモーニング娘。に憧れていた頃に描いていたアイドル像とは少し違うのかもしれないですけど、ある意味「人様の役に立ってる」っていう嬉しさはあります。この時代にアイドルになったから見えるものなのかもしれないですけど。

――あと、寺嶋さんって…まあ、僕もいろいろ追いかけないといけないので寺嶋さんの全ての活動を“監視”してるわけではないですが(笑)、あまり私生活を表に出されていない印象があるんですが…。

寺嶋:私生活がこのままなんで出しようがないんですよ。ホントにこのまんまです。休みの日があってもゆるキャラを見に行くか、サンリオピューロランドに行くかなんで、みんなが知ってるゆっふぃーでしかないのかな、と思います。あと単純に最近はオフがあまりないので、お仕事ばっかりしてます(笑)。

――そうですよね。いろいろやられてますもんね。

寺嶋:お陰さまで。なので、意識して隠してることとかは別にないですね。

――SNSで悩みごととかを呟かれることもあまりないような…。

寺嶋:そういうのは呟かないですね。それはヲタクを巻き込むことになるのではないか、と思うので。あと、SNSに書いて解決することでもないので、それは見せなくていいかな、とは思います。

――あくまで楽しい場を作るための媒介ということなので、自分の悩みを出す必要はないというか、逆にそれはマイナスになってしまう、と。

寺嶋:そうですね。それに、性格的にもあんまりそういうことを言うのが好きじゃないのかもしれないですね。

――そういうアイドル像を作り上げているというより、個人的な性格と。

寺嶋:まあ、アイドル像としても守りたい部分はあるんですが、性格的にもあんまり人にそういうことを言う方ではないですね。個人的に友人に相談することとかはあったとしても、不特定多数の人に見せる必要はないかなって、大人なので思ってしまいます(笑)。ただ、そういう“弱さ”みたいなのを見せる方がグッと来るっていうヲタクもいるじゃないですか。なので、そういう需要があることも理解はしてます。

――なるほど。それは他のところで。

寺嶋:そこは他で補っていただいて、私は“終点”でいいなと思ってます(笑)。

取材・文
石川真男

寺嶋由芙 商品情報

「君にトロピタイナ」 2018.10 .17(WED)RELEASE

初回限定盤A

■初回限定盤A
TECI-636(TEBI-16535)/定価 1,500円+税(税込 1,620円)

[CD]
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの

[DVD]
1.「君にトロピタイナ」Music Video
2.「君にトロピタイナ」Making Video

初回限定盤B

■初回限定盤B
TECI-637 /定価 1,500円+税(税込 1,620円)
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの
3.コンプレックスにさよなら Live音源
from レッツぐる~ヴでハッピーバースデー!@東京キネマ倶楽部
4.天使のテレパシー Live音源
from レッツぐる~ヴでハッピーバースデー!@東京キネマ倶楽部

通常盤

■通常盤
TECI-638 /定価 1,167円+税(税込 1,260円)
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの
3.君にトロピタイナ –Off Vocal-
4.彼氏ができたの –Off Vocal-

 

寺嶋由芙 ワンマンライブ情報

Yufu Terashima 5th Anniversary Live
~以前よく見たあの人も 通い続けるこの人も~ supported by japanぐる~ヴ(BS朝日)

▼日程:10/21(日)開場 17:30 / 開演 18:30

▼会場:渋谷ストリームホール(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-21-3)

▼料金:スタンディング 4860円
※整理番号付き、※入場時、別途1ドリンク代必要、※未就学児入場不可

▼チケット一般発売中
・ローソンチケット【Lコード:74498】
http://l-tike.com/order/?gLcode=74498
・ぴあ【Pコード:126-721】
https://t.pia.jp/sns/?p=e1839280_ft
・イープラス
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002169019P0050001P006001P0030008

PROFILE

PROFILE
寺嶋由芙
寺嶋由芙

「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」 千葉県出身。早稲田大学文学部日本語日本文学コース専攻を卒業。中学・高校の国語の教員免許を取得。
2 年連続アイドルクイズ王を獲得。イベント MC やナレーター、アイドル情報サイト『Pop’ n’ Roll』の編集長、 串カツ田中公式応援アイドル、そして地元千葉県木更津警察の一日署長なども務める。 大好きな「アイドル」そして「ゆるキャラ」を繋ぐ「ゆるドル」として活躍中。「ゆるキャラ ® グランプリ」をはじめ、 各種キャラクターイベントに MC、そして” ゆるキャラ通訳” として出演し、ゆるキャラ界で絶大な人気を誇る。 ソロアイドル活動 7 年目になり、12th シングル『# ゆーふらいとII』を 2020 年 2/26 にリリース! 

公式サイト: http://yufuterashima.com/