Speak emo
何があってもアイドルで!
その姿を見ると、その歌声を聴くと、さらにはその人柄に触れると、誰もが魅了されるだろう。もちろん楽曲やパフォーマンスも非の打ち所がないが、ファンの“転がし方”や自己プロデュース力、そして情報発信力まで含め、エンタテインメントの域さえ超えた“人間としての魅力”に惹きつけられてしまう。
ゆえに、活躍の場は実に多岐に亘っている。イベントなどでのMC、TVでのナビゲーターやナレーション、そして一日警察署長に編集長に一日店長。@JAM EXPO2018では総合司会を務め、Twitterの広告キャラクターにも起用されている。また、大のゆるキャラ好きが高じて、ゆるキャラグランプリの司会を務め、今や全国のゆるキャラからも求められる存在となり……などなど枚挙にいとまがない。
例えば、現在のアイドルシーンを代表して「何かを述べてもらおう」「何かの役割を担ってもらおう」と考えた際、彼女の名前が必ずや一つの選択肢として候補に挙がるに違いない。それだけの存在感が今の彼女にはあるのだ。この取材中も、彼女の機転の利いた受け答え、的確な回答、気遣いに満ちた言葉選びなどなど、その聡明さに唸らされるばかり。「そりゃ仕事も来るわ」と至極納得した次第だ。
だが、忘れてはならないのは、彼女の“楽曲派アイドル”としての側面である。ディレクター、プロデューサー、スーパーバイザーとその都度肩書きは異なるが、ずっと彼女の音楽作品の制作に深く関わってきたのが、ウルフルズやナンバーガール、Bass Ball Bearなどを見出してきた加茂啓太郎。現在は楽曲派アイドルの急先鋒、フィロソフィーのダンスを育て上げていることで知られている。加茂は、フィロソフィーのダンスでは“ファンク”を軸に据えているが、彼女の作品においては実に多彩なサウンドを展開している。80年代アイドル歌謡のムードは通底するものの、軽快なエレクトロポップ風もあれば、ラフな生演奏風のシャッフルナンバーもあれば、ニューウェイヴ風音像のポップチューンもあれば、ガーリーなロックナンバーもあり、さらには、ゆるキャラを題材にしたノベルティソングもある。それらいずれの楽曲においても、錚々たる作家陣を起用して実に丁寧にサウンドを構築し、その随所にあっと驚く仕掛けを潜ませている。
例えば、今年4月にリリースされた2ndアルバム『きみが散る』の中盤では、流れるようなメロディとそこに心地好い浮遊感を施す転調が絶品としか言いようのない、rionos作曲の超名曲「背中のキッス」に続き、町あかり作詞作曲の“ヲタクの性(さが)を慈愛をもって見守る”演歌「終点、ワ・タ・シ。」が湿った空気を漂わせ、さらには、怒髪天の増子直純と上原子友康が各々作詞作曲したいなせな音頭「夏’n ON-DO」が祝祭に満ちたトーンで解放感をもたらす。この落差たるや! しかし、それは決して違和感とならず、心地好いコントラストとなって、いつの間にかすーっと心に染み込んでくる。ステージ上での“異種混合”ぶりはさらに秀逸である。全く異なるジャンルの曲を、あたかも優れたDJのごとく繋げ、あるいは、その“高低差”によって聴衆を翻弄しつつ、いつのまにかその心をぐいと掴むのだ。少なくとも、これだけバラエティに富んだ楽曲を並べながら一つのステージとして成立させることができるのは、今のアイドル界においては彼女しかいないだろう。それはすなわち、彼女の懐の深さが、どんなスタイルの楽曲をも受け止め、咀嚼し、“自分の歌”として描き出すことを可能にしているのだ。
10月17日、ニューシングル「君にトロピタイナ」をリリースした寺嶋由芙。これまた新たな“球種”を投じてきた印象だ。西寺郷太の作詞作曲によるグルーヴナンバーは、作曲者曰く「トロピカルミネアポリスユーロ歌謡」。いつになくドリーミーでグルーヴィーでトランシーな寺嶋由芙が堪能できる絶品のダンスチューンであり、“楽曲派アイドル”寺嶋由芙のイメージをさらに強く印象付ける一曲である。演歌歌手のごとく歌い上げたり、うたのお姉さんのごとく優しく語りかけたり、アニソン歌手のごとくドラマティックに旋律を紡ぎ出したりする変幻自在の寺嶋由芙が、今回は抑制されたクールな歌声をヒプノティックなビートの上にそっと乗せていく。
今年ソロ活動5周年を迎え、10月21日には渋谷ストリームホールにて5周年ワンマンライブを行なう彼女に、ご自身の多岐に亘る活動について、現在のアイドル界について、新曲「君にトロピタイナ」について、などお話を伺った。
まじめにやってきた甲斐がありました
――まずここから始めたいんですが、寺嶋さんのキャッチコピーに「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」というのがあるじゃないですか。それはご自身で考案されたんですか?
寺嶋:そうだと思います。最初は恥ずかしいので「友達が考えてくれました」みたいなことを言ってたかもしれないんですけど、多分自分で考えました。
――恥ずかしい、って、素晴らしいコピーじゃないですか!
寺嶋:いやいやいや~。ありがとうございます。
――この「古き良き時代」というのは、設定としてはいつの時代なんですか?
寺嶋:当初はそれほど具体的に設定を考えていたわけじゃないんですが…。以前にグループ活動していた頃からのキャッチフレーズで、ずっと使ってるんですけど、周りの個性が強すぎだったり、いろんなアイドルさんが出てきてて、すごく個性的だったりイマドキな方が多かったり、という中で、当時私は髪も染めず、化粧っ気も全然なく、流行りものについていけてなかったので、それを何とか良い言い方に換えられないかなと思って…。「ダサい」とか「時代遅れ」とかっていうウィークポイントを何とかチャームポイントに出来ないだろうかと思って出てきたのが「古き良き時代からきました」でした。
――なるほど。例えば、昭和アイドルのイメージもありますので「昭和」なのか、あるいは、お美しい姫カットをされているので「平安」なのかな、なんて思っていたんですが…。
寺嶋:そう、姫カット。最初はそれこそ「平安」みたいな…まあ、その時はまだ姫カットではなかったんですけど、黒髪ロングだったので、そういう時代の“古き良き”みたいなのは意識してました。
――「まじめなアイドル、まじめにアイドル」っていうのもその当時からおっしゃってたんですよね?
寺嶋:それもそうですね。いろんなアイドルさんがいる中で「まじめさ」をアピールしよう、と…。あ、他の方が不まじめって意味じゃないんですけど、そのいろんな飛び道具をいっぱい持ってる子が多い中で、「私は王道を行きますよ」っていう意味で付けました。
――今現在は“時代設定”はあったりしますか?
寺嶋:それが、そのキャッチフレーズを使い続けてたことによって「じゃあちょと古き良き、懐かしい感じの曲を歌ってみよう」っていう風になって…。特にテイチクさんに移籍してからなんですが、80年代のアイドルさんを意識したような曲をいただくことが増えたんです。なので、キャッチフレーズに引っ張られて今のアイドル像が出来ていったみたいな感じです。テイチクさんがもともと老舗のレコード会社さんですし、古き良い時代をずっと牽引してきたレーベルさんなので、その強みみたいなものをいただけたらと思って。
――なんだか“周到に仕組んでいた”みたいに上手く繋がっていきますね(笑)。で、今やあれじゃないですか。“アイドル界のご意見番”みたいな存在で!
寺嶋:いえいえ全然!とんでもないです。
――いろいろ意見を求められるんじゃないんですか?「貴乃花と相撲協会の問題についてはいかがですか?」みたいな(笑)。
寺嶋:大変ですよね、ホントに(笑)。
――で、今やすごい“タイトルホルダー”じゃないですか。
寺嶋:タイトル??? あ!そうですね。いろいろいただいて。
――まずは、TIFでクイズ王になられましたよね。僕はTIFの3日間好きなアイドルのライブを観るのに必死で(笑)その現場を見てないんですけど、どんなクイズだったんですか?
寺嶋:雑学で、ホント何でもありのクイズ大会だったんですが、事前にペーパーテストがあって…。
――ペーパーテストがあったんですね!
寺嶋:はい。そこで上位5名が通過して…
――あぁ、上位5名が…。
寺嶋:そこに入れていただいて、当日出場しました。もうペーパーテストの時点からいろんなジャンルの問題が出たんですが…。スポーツとかゲームとか、かと思えば、ことわざとか漢字の読み方とかいろいろあって。ペーパーテストを解いた時、私は「古き良き時代」から来てるので、流行りものが全然わかんなかったんですよ(笑)。なので、最近流行っているものとか、スポーツのこととかをぜひ教えて!ってヲタクに頼んで…。事前にヲタクたちから「最近はこういうのが流行っている」っていうのを問題にして出してもらったんですよ。それに私が答えて、わかんなかったらまた調べて、とかいうのやって、それで本戦に臨みました。
――すごいですね。
寺嶋:でも全然出なかったです、ヲタクに聞いたやつは(笑)。
――それにしても寺嶋さんはヲタク…いつもファンの方々を、愛を込めて“ヲタク”って呼ばれてますが、ヲタクの方の“扱い方”というか、“飼い慣らし方”もお見事すよね。ステージを拝見しても、もちろん歌もパフォーマンスも全てにおいて「非の打ち所がないな」って感じたんですけど、中でもMCでの“客いじり”がもう絶品でした。
寺嶋:ありがとうございます。楽しいんです。
――で、その想定問題はどういった形で募集されたんですか?
寺嶋:Instagramのストーリーで。
――あぁ、インスタのストーリーで。
寺嶋:ちょうどインスタのストーリーでアイドルさんの質問募集がすごい流行ってた時期だったので、みんなが質問を募集してる中、私はクイズ問題の募集をして、予習してました(笑)。
――なるほど。で、まずはTIFをは押さえましたよね。
寺嶋:押さえました(笑)。
――そして@JAM EXPO 2018での総合司会。八面六臂の大活躍という感じでしたね。
寺嶋:いやもうホント、いろんなところに出させていただいて。
――Twitterなどを拝見すると、いろんな方と写真を撮られてました。
寺嶋:そうなんですよ。「総合司会の寺嶋です」って言うと写真撮ってもらえるんです。事務所さんとかも「ダメ」って言えないっていう…(笑)。
――いやいや、皆さんが次々と「寺嶋さんと撮りたい」って集まって来たんですよね?
寺嶋:いえいえ全然。もうホントに隅っこで地味にしてました。ああいうフェスだと緊張します。
――でもこれで、二大フェスは押さえましたよね?
寺嶋:はい(笑)。
――あとは、Pop’n’Rollの編集長ですよ。
寺嶋:お陰さまで。
――でも、お忙しいでしょ。あっ、実はあれは“名義貸し”してるだけなんじゃないですか???
寺嶋:いえいえ~。月一で編集会議があって、あとは毎月の連載もあるので、その撮影があって、さらには突発的な取材もあったりしますので、けっこう働いてます(笑)。TIFとか@JAMとかの楽屋で、アイドルさんにインタビューしたりとか。
――アイドルさんにインタビューされる時って、ガッツリやる感じですか? それともちょっとしたコメントを取るぐらい?
寺嶋:そういう時はコメントいただくぐらいなんですけど、毎月一回やってる連載の「デート企画」では1時間ぐらいのインタビューをやらせていただいています。
――おぉ、ぜひインタビューのコツを教えてください。
寺嶋:いえいえ(笑)。でも楽曲のこととか活動理念みたいなものは本職のライターさんが聞かれると思うので、私は同じアイドル目線で「メイク道具何使ってるの?」とか「楽屋で何してるの?」とか、ヲタクが聞きたいことを聞いてます。ヲタクが聞きたいけどプロモーションにはならないことを(笑)。
――いや、むしろそのそういうことをみなさん知りたいんですよね。僕らは堅っ苦しいことを聞いたり書いたりするんですけど、あんまり読んでいただけなくて…。
寺嶋:いやいや、そういうの大事ですから。そういうことはもう本職の方に任せて、私はゆるいことを聞いてます。
――ということで、フェスは押さえ、メディアも押さえました。続いて、串カツ田中公式応援アイドル!
寺嶋:はい。串カツも押さえました。
――胃袋も押さえ。
寺嶋:はい。ホントに。
――そして、木更津警察署長にも就任されました。
寺嶋:はい、一日署長務めさせていただいて。
――一日署長は初めてですか?
寺嶋:初めてでした。
――いかがでしたか?
寺嶋:いやもうホントに嬉しかったです。しかも地元の千葉県なのでとっても嬉しくて! 本物の制服を着せていただいて、しかもゆるキャラ好きっていうことで、県内のキャラクターをいろいろ呼んでくださって、ゆるキャラと一緒に交通安全を呼び掛けたんですよ。今までの活動がいろいろ繋がったみたいで嬉しかったです。
――ゆるキャラを引き連れ、しかも「まじめにアイドル」をやってきたのが実ったということですね。
寺嶋:そうなんですよ。まじめにやってきた甲斐がありました。
――逆に言えばもう悪いこと出来ないですよね?(笑)
寺嶋:そうなんですよ! お話をいただいたのは春ぐらいで、実際にやったのは9月なんですけど、この半年ぐらい絶対に悪いことしちゃいけないって思っていて…。そして、やらせていただいた今となっては、木更津警察署の皆様の顔に泥を塗るわけにはいかないので、また今後もまじめに暮らしていかねばと思ってます。
――警察という行政機関まで押さえました!
寺嶋:すごい!そういう言い方、カッコいいですね!
寺嶋由芙 商品情報
「君にトロピタイナ」 2018.10 .17(WED)RELEASE
■初回限定盤A
TECI-636(TEBI-16535)/定価 1,500円+税(税込 1,620円)
[CD]
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの
[DVD]
1.「君にトロピタイナ」Music Video
2.「君にトロピタイナ」Making Video
■初回限定盤B
TECI-637 /定価 1,500円+税(税込 1,620円)
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの
3.コンプレックスにさよなら Live音源
from レッツぐる~ヴでハッピーバースデー!@東京キネマ倶楽部
4.天使のテレパシー Live音源
from レッツぐる~ヴでハッピーバースデー!@東京キネマ倶楽部
■通常盤
TECI-638 /定価 1,167円+税(税込 1,260円)
1.君にトロピタイナ
2.彼氏ができたの
3.君にトロピタイナ –Off Vocal-
4.彼氏ができたの –Off Vocal-
寺嶋由芙 ワンマンライブ情報
Yufu Terashima 5th Anniversary Live
~以前よく見たあの人も 通い続けるこの人も~ supported by japanぐる~ヴ(BS朝日)
▼日程:10/21(日)開場 17:30 / 開演 18:30
▼会場:渋谷ストリームホール(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-21-3)
▼料金:スタンディング 4860円
※整理番号付き、※入場時、別途1ドリンク代必要、※未就学児入場不可
▼チケット一般発売中
・ローソンチケット【Lコード:74498】
http://l-tike.com/order/?gLcode=74498
・ぴあ【Pコード:126-721】
https://t.pia.jp/sns/?p=e1839280_ft
・イープラス
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002169019P0050001P006001P0030008