Speak emo

2019.05.16
寺嶋由芙

「この寺嶋由芙、結構いい女なんだからよろしくね、世間の皆さま」って思って歌うようにしています(笑)

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多方面でその才能を発揮するがゆえに、この肩書きはどちらかといえば目立ちにくいかもしれないが、寺嶋由芙は紛うことなき“楽曲派アイドル”である。

TV番組やイベントなどのMC、ゆるキャラの総元締め、SNSを駆使したインフルエンサー、アイドル界のご意見番、キャッチフレーズで謳っているとおりの「まじめなアイドル」、といった様々な顔を持つがゆえに、そして、そのレパートリーには音頭や演歌といった“変化球”も織り交ぜられているゆえに、そこに焦点が当たることは相対的に少ないのかもしれないが、次々と優れた楽曲を歌ってきたことは紛れもない事実だ。

真部脩一作曲「101回目のファーストキス」、ヤマモトショウ作曲「ぜんぜん」、宮野弦士作曲「天使のテレパシー」、望月ヒカリ作曲「私を旅行につれてって」、藤田卓也作曲「知らない誰かに抱かれてもいい」、芹沢和則作曲「世界で一番かわいい君へ」、rionos作曲「背中のキッス」、西寺郷太作曲「君にトロピタイナ」などなど…。多方面で活躍する気鋭の作曲家たちが素晴らしい楽曲を次々と寺嶋由芙に提供しているのだ。

そして、もう一つ言っておきたいのが、寺嶋由芙は優れたシンガーであるということだ。

決して「声量で圧倒する」「激しい抑揚で揺さぶる」「溢れる情感でねじ伏せる」といった分かりやすい特性があるわけではないが、なかなか味わい深いシンガーであることは間違いない。感性・知性・経験を駆使しながら詞の世界を咀嚼し、その柔らかな歌声に乗せながら、感情の機微を細密に描き出していくのだ。

その技巧はここへ来てますます冴え渡っている。昨年10月リリースの前シングル「君にトロピタイナ」では、エキゾティックな妖艶さと覚醒感溢れるビートの上で、敢えて抑制された歌声で語りかけることにより、一層聴き手の耳を引きつける。また、昨年行われた5周年ライブでは、ギミックを一切排し、楽曲と歌とパフォーマンスのみで持ち歌全50曲を披露する、という極めて“音楽的な”ショウを繰り広げ、“楽曲派アイドル”そして“シンガー”寺嶋由芙の姿をまざまざと見せつけた。

そして、このニューシングル「いい女をよろしく」。寺嶋由芙のさらなる音楽的進化を堪能できる作品となった。庄司裕作曲、ハロプロ楽曲を数多く手掛ける児玉雨子作詞、rionos編曲による表題曲は、「古き良きディスコ/ファンクへとオマージュするハロプロ楽曲」へのオマージュという”メタなオマージュ”というべきもの。ハロプロを彷彿とさせる様々な“クセ球”を随所に織り交ぜることで、持ち前の柔らかな声に滑らかなグルーヴを生じさせている。そして、kiki vivi lillyが作詞作曲編曲したカップリング「Last Cinderella」は、寺嶋由芙の歌声と語り口を最大限に生かすナンバー。ここでの彼女は、揺れ動きながら法悦へと上り詰める感情の揺らぎを、ウィスパーやファルセットも交えながら見事に描き切っている。

そんな寺嶋由芙にお話を伺った。

“おもしろ要素”をたくさん入れました

――ニューシングル「いい女をよろしく」。これは“5周年記念シングル”とのことですが…。

寺嶋:そうですね。

――昨年の10月に“5周年ライブ”がありましたよね…?

寺嶋:2018年10月のライブは「2013年10月に初めて私がソロライブをしてから5年」ということでの“5周年ライブ”。そこから5周年イヤーが始まっていまして…。2014年2月に「ゆーふらいと」という曲でデビューしたので、2019年2月がソロシングルリリースから丸5年。その中でリリースする“5周年記念シングル”ということですね。

――なるほど。2年に渡って行われるわけですね。

寺嶋:はい。この1年間はずっと。

――で、ちょっと戻りますと、5周年記念ライブ。あれには驚きました。寺嶋さんの音楽的側面を目の当たりにしたといいますか、“シンガー寺嶋由芙”がくっきりと浮き彫りになった感がありました。でも、あそこでちょっと総括しちゃった感じも…。

寺嶋:そうなんですよね。そこでちょっと燃え尽きちゃったような感もあり…。あの後2日ぐらい動けなかったんですよ。ずっと家にいました。体もバキバキで疲れ切っちゃって。

――大変だったんですね。

寺嶋:いつもだと一日で回復するところが二日かかったので「年かな」とか思いました(笑)。あの日は持ち歌全曲、“ふぇのたす”とのコラボ曲なども含め、メドレーなども交えて全50曲を歌う、っていうのを一人でやったんですが、そこでオタクも一度節目を感じちゃったと思うんですよ。でも、“卒業ライブ”ではないので、その後も「次の5年をどう見据えなきゃいけないか」を考えていかなくちゃいけないわけで…。

――そうですよね。でも、あのライブでは音楽的にいろんな玉を投げてくるなっていうのを改めて感じたんですが、今回のシングルもまたすごいですよね。攻めてますよね。

寺嶋:そうなんですよ。笑っちゃいました。最初仮歌を聴いた時に。もう面白くて。

――ハロプロ好きの寺嶋さんの想いが込められてる、とお聞きしたんですが…。

寺嶋:そうなんです。“5周年で10枚目”という記念のタイミングなので、原点回帰というか初心に戻るっていう意味で、自分が一番好きな、一番憧れてた“あの時代のハロー!プロジェクト”というものを一度やってみよう、ということです。

――ハロプロだとどの辺りから聴き始めたんですか?

寺嶋:安倍なつみさんが一番好きだったんです。初めて聴いたのが確か「サマーナイトタウン」で、その頃から何となく追っかけはじめて…。

――それは小学生の頃ですか?

寺嶋:たぶん小学校3年生とか。「LOVEマシーン」が小学校3年生ぐらいだったので、もっと小さかったかな。もう絶対モーニング娘。になろうと思って、コンサートとかにも連れてってもらって…。そこで初めて“オタク”というものを見たわけですよ。私、モーニング娘。を好きなのは、私みたいにあのお姉さんたちに憧れる女の子だろうと思っていたので、初めてコンサート会場、埼玉スーパーアリーナか横浜アリーナだったと思うんですが、に行った時に男の人が多くてびっくりしたのを憶えてます。「おじさんもいる」みたいな(笑)。女の子ばっかりだと思ってたんですよ。そういうのも知らずに、ただテレビの中のモーニング娘。に憧れて、振り付けを真似して…。学校でもすごい流行ってたので、音楽の授業の時間にモーニング娘。のダンスをみんなで踊ったり…。そういうのがあったりして、日常の中にモーニング娘。の曲やダンスやグッズがありました。ブロマイドもすごい集めてたんですよ。

――ハロプロショップとかに行ってですか?

寺嶋:ハロショは原宿に一度連れてってもらったかな…。千葉の小学生だったんですけど、原宿のハロショに連れていってもらって。あと、渋谷か。地下にあったのって渋谷でしたっけ?ご存知ないですよね…。

――あ、109ですか?

寺嶋:あ、109の地下にあった。そうなんですよ。そこに連れてってもらった記憶があります。

――ミニモ二。とかにも夢中になってたんじゃないですか?

寺嶋:ミニモ二。も大好きでした。小学生で毎日早起きして『おはスタ』観るとミニモ二。が出てて、PVが観れるので、それ観て毎日練習してましたね。「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」とか。

――ミニモニ。がきっかけでアイドルにハマって、今の活動に繋がっている人って多いですよね。

寺嶋:多いですよね。だから多分、私の世代にアイドルが多いんだと思います。91年前後に生まれの…。

――僕は「真夏の光線」が大好きなんですよ。

寺嶋:あの車運転するPVですね。

――そうです。で、「LOVEマシーン」とかあの辺りってちょっと苦手だったんですよ。改めて聴くとすごくいいんですけどね。

寺嶋:あ、分かります。それまでの「真夏の光線」とか「抱いてHORD ON ME!」みたいな“いい曲”路線から変わって、「どうしてこうなった」感がちょっとありましたよね。

――ちょっと大衆路線に行ったじゃないですか。僕はつんく♂さんが自分のルーツを色濃く出した時のカッコいい曲っていうのがすごく好きなんですよね。あと、「みかん」とかも大好きで。

寺嶋:「みかん」超好きです!「みかん」最高です!

――ですよね。そういう意味では、ハロプロにもいろんな音楽要素がありますが、「ハロプロへの想いを込める」って言った時に、どの辺りを参照したとか、どういう形にしようとか、ありましたか?

寺嶋:「LOVEマシーン」の頃のみんなでワイワイ騒ぐモーニング娘。っていうのがまず一つありました。当時の映像を改めて観ながら、いろいろと入れ込んでもらいました。“謎の合いの手”とか、つんく♂さんが入れてたような男性ボイスとか、あと、石川梨華ちゃんがやってた「Ah~n」みたいなやつを私がやったりとか、そういう“おもしろ要素”をたくさん入れました。

――そうなんですね。「いい女をよろしく」の方は、“70~80年代ぐらいのファンク/ディスコをオマージュしてるつんく♂さん”的な感じがして、すごくハロプロっぽいですし、合いの手があったりコミカルな要素があったりとか、それこそ「めちゃめちゃめちゃめちゃ」っていうところなど「恋愛レボリューション21」っぽいです。

寺嶋:あと「Wow Wow」の部分は振り付けも「恋愛レボリューション21」をオマージュしてもらっていて…。竹中夏海先生に付けていただいたんですが「メンバーと一緒にいるかのように踊ってね」と言われました。「グループアイドルとして踊ってるように」と。実際左右のメンバーを見渡す振り付けとかが付いていて。実際には誰もいないんですけど(笑)。あと「マイクを持ち替える時に人格を変えてください」とも言われました。右手で右から歌ってる時と、左手に持ち替えた時とで別の人に入れ替わってるかのように。アイドルグループだとよくある、背中合わせで後ろで待っていて、次の子がくるんって前に出てくる、みたいな。あれを1人でやるっていう振り付けなんです。

――いわば“ひとりモーニング娘。”をやってるわけですね。

寺嶋:そうなんです。全員分やってるんです。

――竹中さんはマイクの持ち方に非常にこだわりがある方ですもんね。

寺嶋:すごくこだわりのある方ですよね。

取材・文
石川真男

寺嶋由芙 商品情報

2019/4/17 発売「いい女をよろしく」
2019 年、“いい女” ゆっふぃーが届けるのは、90 年代正統派アイドルソング!

初回限定盤(CD+DVD)

■初回限定盤(CD+DVD)
TECI-668/定価 1,667円+税

1.いい女をよろしく 2.Last Cinderella 3.いい女をよろしくーOff Vocal ー 2.Last Cinderella ーOff Vocal ー DVD :「いい女をよろしく」MV & MVメイキング

通常盤

■通常盤
TECI-637 /定価 1,111円+税
1.いい女をよろしく 2.Last Cinderella

寺嶋由芙 ライブ情報

寺嶋由芙ワンマンライブ「ゆっふぃーらんらんコンサート」
http://yufuterashima.com/topics/2019-07-07-live/

▼開催 
7/7(日)
開場 15:00
開演 16:00

▼会場 
日テレらんらんホール 
〒206-0812 東京都稲城市矢野口4015-1 
http://www.yomiuriland.com/lanlan-hall/access.html

PROFILE

PROFILE
寺嶋由芙
寺嶋由芙

「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」 千葉県出身。早稲田大学文学部日本語日本文学コース専攻を卒業。中学・高校の国語の教員免許を取得。
2 年連続アイドルクイズ王を獲得。イベント MC やナレーター、アイドル情報サイト『Pop’ n’ Roll』の編集長、 串カツ田中公式応援アイドル、そして地元千葉県木更津警察の一日署長なども務める。 大好きな「アイドル」そして「ゆるキャラ」を繋ぐ「ゆるドル」として活躍中。「ゆるキャラ ® グランプリ」をはじめ、 各種キャラクターイベントに MC、そして” ゆるキャラ通訳” として出演し、ゆるキャラ界で絶大な人気を誇る。 ソロアイドル活動 7 年目になり、12th シングル『# ゆーふらいとII』を 2020 年 2/26 にリリース! 

公式サイト: http://yufuterashima.com/