5月6日、渋谷REXを舞台に、気になるガールズバンド/シンガーが出演するイベント「橋本祭2023〜ホントノミリョク〜」が行われた。出演したのは、以下のアーティストたち。

月刊PAM(ex.THE COINLOCKERSのメンバーである船井美玖、宇都宮未来の2人によるユニット)
山崎亜美瑠(ex.NMB48)
長久玲奈バンド(Vo.長久玲奈(ex.AKB48)/Gt.Hannalyne(ex.THE COINLOCKERS)/Ba.鏡味のぞみ(ex.THE COINLOCKERS)/Dr.山木コハル(ex.X21)) 
月照ラス(声優、上間江望がヴォーカルを担うバンド)

  タイトルの「橋本祭り」とは、渋谷REXの橋本裕也店長が大推薦しているバンド/シンガーたちということから命名。しかもこの日は、橋本店長の誕生日当日。そのめでたい日に、彼が一押し…4押しのガールズたちを、イベントを通して紹介していた。ここからは、当日の月照ラスの模様をお伝えしたい。


月照ラス

現実を消し去り、一つ一つの物語の色に心を染めあげる。それこそが、月照ラスの楽曲やライブの魅力だ。


　場内中に漂っていた甘い空気を塗りかえるように、月照ラスが幻惑とした世界へフロア中の人たちを誘いだす。ライブは、スリリングなデジタルビート×ラウドロックな楽曲の上に、emが凛々しい歌声を重ねあわせる形でスタート。心地好い緊張感を持った歌声や演奏に向け、フロア中から熱いクラップが起きる。月照ラスは『Moonshot』を通し、この空間にピリッとした刺激を与えてゆく。月照ラスのメンバーたちが、エッジの鋭い演奏と凛々しい歌声で観客たちの気持ちを騒がせる。その演奏に心が吸い寄せられる。フロアのあちこちでも、多くの拳が突き上がり、メンバーたちにエールを送っていた。

  ハウリングしたギターの音を合図に『Daydream』が飛びだした。emは、スタンドにつけたマイクを両手でギュッと握りしめ、沸き立つ感情を力強く突き刺していた。響かせるではない、突き刺すという言葉が似合うくらい、その歌声や演奏は鋭利な衝撃を持って、フロアにいる人たちの身体を貫いていった。痛いけど熱い刺激に触れ、拳を振り上げ熱狂する人たち。同時にフロアには、その迫力へ呑み込まれるように舞台をずっと凝視している人たちも。それくらい強い存在感を、月照ラスは示していた。

　「一人一人の僕が集まって、僕らになった。一人一人の僕らの声が集まってウタになった。ライブハウスは、僕が僕らになれる場所。ここにいれば寂しさを感じることはない。僕らにはどんな景色が見えていますか」（em）

　「あ・か・つ・き・そ・ま・る・そ・ら・に・わ・す・れ・ら・れ・な・い・い・た・み」。emの呟くように歌った言葉を合図に、演奏は『風切羽』へ。その歌声と演奏は、この場にいる人たちの心を、荒れすさぶ広大な原野へと連れだした。壮大な景色の中、自分の心へ問いかけるように歌うemの姿が脳裏に映し出されてゆく。一人一人、捉え方や映し出された心の景色は様々だろう。でも、誰もが心のスクリーンに、現世ではない、異境の世界を舞台にした物語を思い浮かべていたに違いない。現実を消し去り、一つ一つの物語に心の色を染めあげる。それこそが、月照ラスの楽曲やライブの魅力だ。

　ノイズのような荒ぶるギターロックナンバーが炸裂。ふたたびemは、マイクを両手でギュッと握りしめ、沸き立つ思いを、荒ぶる音に乗せて天空へと響かせていった。『My Criteria』、感情を熱く騒がせる楽曲だ。フロアでも興奮を隠せず。いや、自身の沸き立つ気持ちへ素直に寄り添うように、拳を振り上げ飛び跳ねる人たちも登場。「壊してくれ」の歌詞ではないが、フロにいる人たちの理性を壊してゆく荒ぶる演奏だ。いつしか最後列の人たちまでもが、高く両手を掲げて手拍子していた姿も印象的だった。

　月照ラスは最後に『サヨナラと言えない僕に』をぶち噛まし、フロア中から絶叫した声と高く突き上がる拳の景色を作りあげ、一人一人の心に沸き立つ熱い衝撃を与えていった。演奏が進むごとに、天井知らずで熱を上げてゆく歌声と演奏が、嬉しくもエモい衝撃だ。これまで以上に大きな声でフロア中が包まれてゆくのも、納得だ。月照ラスは、見た人たちを圧倒するパワフルな存在感を持って、この場にいた人たちを熱情した景色の中へしっかりと封じ込めていった。閉じ込めたんじゃない。月照ラスはみんなを封じ込め、また次の物語の場へと連れだしていった。そう言いたくなるくらい、初見の人たちの身体さえもしっかりと揺らしながら、この場にいる人たちを月照ラスの色に染めあげていった。




PHOTO:大西基
TEXT:長澤智典　


https://tsuki-terasu.jp/
https://twitter.com/tsukiteras_band

　渋谷REXではガールズハンド/シンガーも積極的にイベントとしてプッシュしていくので、興味のある方はライブハウスへコンタクトしてもらいたい。

https://ruido.org/rex/
https://twitter.com/SHIBUYA_REX
https://twitter.com/rex_yuya