6人組アイドルのマジカル・パンチライン（以下、マジパン）の、リモートでのワンマンライブが開催された。「全曲披露」とうたわれたこのライブ、懐かしい楽曲がいくつ飛び出すのだろうと期待せずにはいられない。

スタート前、袖で円陣を組む6人。これを見られるのはリモートだからこそだ。しかも、新衣裳！　メンバーそれぞれが自分のカラーをメインにした、アルバムタイトルのMAGiCAL SUPERMARKETにちなんだ「店員さんがいっぱい！」がコンセプトのショップ店員風衣装だった。

スタートはグループ初のフルアルバム「MAGiCAL SUPERMARKET」のリード曲「マジカル・スーパーマーケット」。いろんなマジパンを見せるよ！　と宣言するような始まり方で、1曲目から6人のパワーを感じた。「マジ☆マジ☆ランデブー」では浅野 杏奈、小山 リーナ、清水 ひまわりが3人でじゃれ合っていたり、末っ子・吉田 優良里のソロ部分で5人のメンバーがゆらゆらと揺れていたりする姿が愛くるしいとしか言いようがない。吉澤 悠華のくしゃっと笑った顔や沖口 優奈の表情豊かな歌声も魅力的で、この曲は本当に聞いていて楽しいし、途中でクラップや「Fu！」とかけ声が入ると気分が高まる。次の「小悪魔Lesson1・2・3♪」は途中でメンバーとじゃんけんしたり、手を上げる振りがあったりと賑やかな1曲だ。ここまで3曲を一気に駆け抜け、リーダーの沖口から挨拶と、メンバーが順に定番の自己紹介をした。

すぐにライブが再開。「謎から謎めくMystery」はポップな曲調の割に途中のステップが激しく、ツイストの動きでスカートが翻るのがキュートだ。「108煩悩BOMB」は怒涛の言葉遊びでうっかりしていると置いていかれてしまうアゲ曲。清水と沖口がラップになると男前なのだ。さらにアゲていこうと、タオル曲の「ぱーりないと!! 」が始まる。サビでメンバーが横一列になりタオルを回すのだが、全員がばっちりカメラ目線で、今まさに目が合っているという実感がうれしい。ちょっと落ち着いて、7曲めは「Alright」。折れそうな心を抱えている人には沁みる曲だ。

ここまで終わると暗くなり、マジパンのシングルMVが流れた。「もう一度」「今日がまだ蒼くても」「Melty Kiss」「私が私を燃やす理由」「パレードは続く」「マジカル・ジャーニー・ツアー」「Magiかよ!?BiliBili☆パンチライン」と、どんどん過去へと遡っていく。さあ、いよいよ「全曲披露」ライブが佳境に入ってきた。

映像の間にメンバーは衣裳チェンジ。歴代衣裳が久々に勢揃いした。沖口と吉田が「Magiかよ!?BiliBili☆パンチライン」のファンタジー風。浅野と清水は「MAGiCAL MYSTERY TOUR」ジャケットのシックなワンピース。吉澤が「パレードは続く」のキラキラミニ。小山は「私が私を燃やす理由」のセーラー服モチーフの衣裳で登場した。懐かしかったファンも多いのではないだろうか。

「Magiかよ!?BiliBili☆パンチライン」はグループ名がタイトルに入っていて、当初掲げていたファンタジー色の濃いメロディラインだ。メンバーが一旦ステージから下に降り、「近い！」と思っている間にステージにはマイクスタンドが用意された。「リインカーネイション」「手のひらがえし」のメドレーだったが、赤のライトが一気に妖艶な空気を作っていた。最後、小山のセリフ「変わったのは私？」はすごみがありカッコよかった。「マジック☆ガール」はまだアイドルとしてあどけなかった頃のマジパンの楽曲だ。「ハルイロ」では♪しばらくは会えなくても♪の歌詞が時代とあいまって励まされ、癒された。

MCは、当然それぞれの歴代衣裳の話になった。「私大きくなった、成長した！」と、言う清水は自分の衣裳を着ていた吉田に「私もう（その衣裳は）入らんのよ」と笑いを誘っていた。そして沖口の衣裳で登場した吉澤は、「ずっと好きだったので着れて嬉しいです」とご機嫌。「おっきー（沖口）より似合ってる」の意見に「（私が）元祖やぞ！」とツッコミを入れる沖口。言葉のセレクトが絶妙である。

ライブが再開され、「Never Ending Punchline」から、6曲のノンストップ・メドレーでメンバーはずっと全力疾走しているような運動量だ。カッコいい曲、可愛い曲、アツい曲が織り交ぜられ、曲ごとに表情をクルクルと変える彼女たちのポテンシャルの高さにひとときも目が離せなかった。「パレードは続く」「マジカル・ジャーニー・ツアー」ではっちゃけたら小休止で、映像によるイベントインフォメーションがあった。

この間にメンバーは衣裳替え。3着目は「MAGiCAL SUPERMARKET」のジャケット衣裳（上着なし）で登場した。「万理一空 Rising Fire！」もファンタジー色が強いが、特に清水と小山はこういった歌の世界観にハマっている。このあとは最近の曲が続いた。「名もなきヒーロー」は歌ってるメンバー自身が気持ちよさそうで、「君の人生の主役は君なんだよ」と教えてくれる。「今日がまだ蒼くても」は、手を伸ばした理想が遠くても、ひたすら未来を目指していこうと背中を押してくれる曲だ。マジパンの曲はいつも勇気と希望をくれるので力が湧いてくる。

ふっと優しいイントロが流れて、「ひとかけら」が始まった。一人一人が歌詞を大切に歌っていて、重ねられたコーラスがきれいに響き、歌の世界に引き込まれた。暗闇に沈みそうな主人公が、自らを見直してまた一歩踏み出そうとする健気な歌だ。ふと、清水がアップになった。泣いている……？　こちらも聞きながらじーんとしていたので、感極まったのかなと微笑ましく見ていたが、涙の理由はこの直後に判明した。

一度暗転し、沖口がアップになる。「ここで、マジカル・パンチラインから大切なお知らせがあります」。最初は気楽に見ていたが、沖口の表情がやけに神妙である。これはもしかして、聞きたくない方のお知らせなのか。緊張しながら続けて聞いていると、浅野、清水、小山の3人が11月3日のライブをもってグループを卒業することになったと告げられた。

小山「12歳からアイドル活動を始め、アイドル一筋の5年間を過ごしてきました。マジカル・パンチラインとして活動してきた中で、新しい事にチャレンジしてみたい、もっと違う自分を発見したいという想いが芽生え、卒業を決意しました（公式サイトコメントより抜粋）」

清水「私、清水ひまわりは11月3日をもちまして、マジカル・パンチライン、そして芸能界を卒業致します。学校に通いながらアイドル活動をして来ましたが、もともと学ぶ事が好きというのもありまして、大学に進学する事を決めました。（公式サイトコメントより抜粋）」

浅野「この5年間、私なりに全力で走り抜けてきました。二十歳を迎えるこの年に、自分の人生を見つめ直し、私は、新たなステップへ進むべく、卒業を決意いたしました（公式サイトコメントより抜粋）」

小山、浅野はソロとして活動を継続するが、清水は芸能界から引退する道を選んだ。3人が一気に卒業というのは、正直かなりの衝撃で頭が真っ白になった。ライブ活動を自由に行えない状態で、ファンと会えない中での卒業発表は、メンバー自身が何よりつらいだろう。

沖口、吉澤、吉田の3人は、このグループを失くしたくないと、続ける道を選んだ。沖口が震える声で「私の大好きな……、現体制6人のマジカル・パンチラインを一人でも多くのファンの皆さんにお届けしていきます」なんて言われたら胸がぎゅーっとなるではないか。

しんみりしちゃったなあと思ったところで6人の始まりの曲となった「Melty Kiss」がスタート！　これを笑顔で歌われたらまた切なくて、清水の「へい！　へい！」がことさら胸に刺さってしまう。浅野と吉澤の2人パートで堪えきれずに涙があふれる吉澤。微笑みかける浅野の笑顔がまたキレイなのだ。そのまま「ONE」へ突入。歌詞が自分のやりたいことを諦めずに始めよう、と元気づけてくれる曲なのだが、♪we are the ONE（私たちはひとつ！）♪がズンと重く、やられた感がすごくあった。目指すところが変わっても私たちはひとつ、という意味もあるのだろう。それぞれが夢を追っていくのは喜ばしいが、卒業ライブで歌われたら確実に泣くやつだ。

ここで一旦ライブが終了。ステージに6人のイメージカラー（青・赤・黄・緑・水色・オレンジ）のライトが光る。少し間を開けて、Tシャツ＋デニムショートパンツに着替えた6人がステージに戻ってきた。1曲目は「もう一度」。目も鼻も赤い清水に、ステージをまっとうしようと涙をぬぐう吉澤。徐々にメンバーが笑い合いながらも目を潤ませる中、必死で笑い続けた吉田がいたいけで、力強く歌う浅野の目には確かな覚悟が宿っていた。クールビューティーの小山が涙声になると、こちらまで釣られそうになる。本日、本当に最後の曲は「これから、私！」。メンバー6人がそれぞれ顔を見合わせる。とても楽しそうに、最高に楽しい時間だよ！　とでも言うかのように。

最後はステージ上で6人が手を繋いでのご挨拶。会場に行けないファンの代わりに、スタッフからたくさんの拍手が送られた。6人でのマジパンが見られるのはあと2カ月もない。だけど、3人が卒業するまでの2カ月の間に、見たことのないマジパンがきっといる。見逃してはいけない、絶対に。

＜セットリスト＞
    
01 マジカル・スーパーマーケット
02 マジ☆マジ☆ランデブー
03 小悪魔Lesson1・2・3♪
04 謎から謎めくMystery
05 108煩悩BOMB
06 ぱーりないと!! 
07 Alright
08 Magiかよ!?BiliBili☆パンチライン
09 メドレー（リインカーネイション～手のひらがえし）
10 マジック☆ガール
11 ハルイロ
12 Never Ending Punchline
13 メドレー（私が私を燃やす理由～終わらざりしミスリル～ミカガミラビリンス～那由多摩訶不思議ソウルライブツイスター～Prologueは摩訶不思議～Happy New Kitchen）
14 パレードは続く
15 マジカル・ジャーニー・ツアー
16 万理一空Rising Fire！
17 名もなきヒーロー
18 今日がまだ蒼くても
19 ひとかけら
20 Melty Kiss
21 ONE
ENCORE
01もう一度
02 これから、私！

取材協力：株式会社センターグローブ