Speak emo
一色萌|すごい人たちがこのために尽力してくださっているのを感じているので、そういう方たちの期待を裏切らないように頑張ろうって思っています
敢えて操られてみても面白そうだなって
ーーで、“パブロックアイドル”と名づけられたわけですよ。
一色:キスエクで「プログレ」と言われた時もわけもわからずだったんですが、「パブロック」「パワーポップ」って言われて、パ行がいっぱいで何が何だかって感じです。
ーー「パブロック」ってどんなものだと捉えていますか?
一色:現段階では全然理解していなくて…。気持ちとしては、キスエクの活動をしながら別のところに足を付けて、違うアイドル活動を並行してやる、って感じです。で、キスエクに在籍しながら、また“更地”から別のアイドルをするわけですが、キスエクではそのジャンルを理解しようと思ったんですよ。やっているうちに個人的にも気になってきて興味が出てきましたし、プログレファンの方の特性かもしれないですが、私たちがプログレを勉強してる様子を見て楽しんでくれてるのがわかったから、プログレを勉強しようって思ったんですよね。でも、よくよく考えたら私は、ベルハーさんとかゆるめるモ!さんみたいに、ジャンルのことをまったく理解してない女の子たちが歌って踊ってるのを面白いと感じてたなって思って…。なので、ソロとしては、逆にわからないまま楽しんでやる、というのを実践してみたいなという気持ちがあって、あえて勉強しないっていうのもアリかなって、今のスタートの時点では思ってるんですよね。知りすぎてるっていうか、ジャンルについてその子がわかりすぎてると興醒めするっていう人がいるのもちょっと感じていて、確かにそうだな、と。
ーーなるほど。僕も2016年ぐらいから楽曲派アイドルにハマって、いろんなところで書いてきたんですが、こういう主張をしてきたんですよね。大人が自分の音楽的欲求を満たすために若い女の子をアイコンとして使って、一方若い女の子もとにかくステージに立ちたいっていう要求があって、それらがWin-Wiの関係を作って、そうした意外性のある組み合わせに興味深い化学反応が起こっていて、そこにこそ“楽曲派アイドル”の醍醐味がある、と。ただ「大人の音楽的欲求を満たす」っていう部分はある種の隙というか、ツッコミを入れられる部分でもあるかな、とは思ってたんですよね。
一色:そうですね。
ーーでも、今回萌さんは敢えてそこに乗っかって“操られてしまう”って感じですか?
一色:そう。姫乃たまさんも「アイドルは隙がないと!」っていうようなことを言ってたなと今思い出したんですが、キスエクに関しては、もはや「何もわからず女の子たちがプログレをやらされてる」ではないんです。プログレについては結構勉強してますし、クリムゾンの『宮殿』とかのジャケットをバーンって出されたらみんな面白がっちゃうし。あと、私はre-in.Carnationで音楽的な活動をしてますし、りんりん(小嶋りん)もヴァイオリンで最近注目していただいてたりとか。
ーー彼女、本格的にやられてますもんね。
一色:そういうことも考えると、やはり“無知な女の子”としてキスエクのメンバーを見るのはもう無理だろうなっていうのは思っていて。アイドルが大人にわけもわからず操られてて、でもその操られてる状況を本人はなんとも思わず普通に楽しんでアイドルをやってるっていうようなのは…。でも、それがアイドルの本来の形のような気もしていて、でもキスエクは割と自主的に音楽をしてしまっていて、だから王道のアイドルオタクが近寄りがたくなってしまったのかなと思うところがちょっとあって…。それはそれでいいんですけどね。キスエクとしては。
ーーキスエクと今回のソロには、そういったスタンスの違いがある、と。
一色:敢えて操られてみても面白そうだなって。そういう気持ちはあります。一生懸命勉強して、一生懸命技術的に向上を目指していくと、私としてはやってることがキスエクと一緒になってしまうんですよね。その姿は多分キスエクを見てるお客さんにとっては見たことのあるものになってしまうので、私を応援してくれてる人には新しいものを見せたいですし、新しいものとして楽しんでもらいたいので、違うアプローチを試してもいいのかなって。でも、わかんないんですよね。これからめっちゃデフ・スクールさんにハマってしまって、デフ・スクールさんに詳しくなっちゃうかもしれないですし(笑)。
ーーまぁ、パブロックっていうと演奏がラフなイメージで、懸命に技術を学ぶというよりもフィーリングでいっちゃうみたいなところがありますので、“パブロックアイドル”としては「勉強しない」で正解なのかもしれないですよね。
一色:そうかもしれないですね。
ーーあと、全然話が変わるんですけど、オラファー・エリアソンっていう現代アートの作家がいて、鑑賞者に光を当ててスクリーンに影を映し出す、っていう作品を展示していたんですが、自分が動けば映し出された影も動くじゃないですか。なので、自分が影を操ってるように思いがちですが、「自分が右に動けば影も右に動き、左に動けば影も左に動く」っていう“現象”あるいは“意識”に実は自分が操られてる、と。そういうコンセプトらしいんですが、そういう意味では、萌さんは操られているようで、実は大人を操ってるんですよ。
一色:そうなんですか? ハハハ(笑)。
ーー平澤さんなり大嶋さんなりがいろいろ考えてやってしまっているのは、きっと萌さんに操られてのことなんですよ。
一色:どうなんですかね。エヘヘヘ(笑)。
ーーではまず「Hammer & Bikkle」からいきましょう。作詞作曲編曲が、今いろんなところで活躍されてる佐藤優介さん。この曲はいかがですか? この曲こそ“パブロックアイドル”を狙ったです路線ですよね。
一色:私、姫乃たまさんが大好きなんですけど、この曲を初めて聴いた時、僕とジョルジュで歌ってる姫乃さんの姿をパッて連想して、「わー素敵!」って思いました。あとキスエクで7分超えとかの楽曲に慣れてたので、2分台で終わる曲っていうのがめちゃめちゃ新鮮でしたね。全然違うことができそうだなって思って、すごいワクワクしました。
ーー佐藤さんがほぼ全ての楽器を弾いて、ギターのみbjonsの渡瀬賢吾さんが弾かれてるって感じですが、例えばトラックのレコーディングには関わったんですか? それとも音源ができてきて、そこで歌入れしたって感じですか?
一色:トラックのレコーディングには私は関わってないです。
ーー佐藤さんらがいる中で歌入れをしたんですか?
一色:レコーディングの日に平澤さんが立ち会ってくださって、「どういう風に歌ったらいいんだろう」ってなった時に、平澤さんが佐藤さんに電話してくださって。
ーーあ、じゃぁ佐藤さんは現場にはいなくて、電話で指示を受けたわけですね。
一色:はい。「どういうふうに歌ったらいい?」って訊いていただいたら、「自由にやっていいよ」って。
ーー萌さんご自身は、これをどう歌おうと考えましたか?
一色:「TAXI」とは全然違う雰囲気の曲だったので、せっかくだから「TAXI」と同じ人が歌ってるの?っていうぐらいに雰囲気を変えたいなって思って。「TAXI」がしっとりして大人っぽい感じの曲なので、こっちは軽く楽しく歌おうって思いましたね。
ーー確かにそんな感じですよね。声色がすごい変わってるなというか。「TAXI」の方は本当に大人な萌さんが出てきて、「こんなに大人になったのか!」と思ったりもしましたけど、一方「Hammer & Bikkle」の方はやはりアイドルを感じましたね。
一色:そうですね。アイドルソングとして楽しく歌えたらいいかなって思いました。
ーーサーフロックっぽい音や雰囲気もあったりして、そういう曲調ってアイドルも歌ったりしますから、萌さんとしてはアイドルっぽく歌ったわけですね。
一色:そうですね。
ーーで、これ。歌詞が難解ですよね。
一色:そうですよね。
ーー読んでも全然理解できなかったんですが。
一色:私も「どういうことなんだろう」と思いました。感情を乗せられないですよね。
ーー何か説明とかありました?
一色:特には何もなくて。でも、感情が乗せられる曲だと、感情が乗ることですごく歌い込んで作り込んだものになっちゃうので、逆にこのくらいでもいいのかなっていう気がしています。軽くさらっと、さっき言った「アイドルが何もわからずにやってる感」っていうやつみたいに。
ーーあぁ、そういう意味では、歌詞の最後のラインに「意味もないこんな歌を聴かせたい」ってあるように、この詞には特に意味がないのかもしれないですが、それって萌さんがご自分で考えられた「わからずに乗っかってみよう」っていうコンセプトにすごく合致するものですよね。
一色:そうですね。たまたまだと思うんですけど。
ーーじゃあ、敢えて深読みとかはせず、言葉を調べたりもしなかったんですか?
一色:「Hammer & Bikkle」はどういう意味かなってちょっと思って、調べてみました。
ーーこれ、どういう意味ですか? 僕、一応英語を専門にしてるんですが明確な答えが出なかったです。
一色:私も調べたんですが、わかんなかったんです。
ーー「Hammer」も「Bikkle」も人の名前かな、なんて思ったんですが。
一色:「Bikkle」で調べると乳酸菌飲料が出てきますよね(笑)。
ーーですよね。
一色:宣教師みたいな人も出てきたりしました。だからそれを見て「意味がないんだな」という意味を理解しました。
ーーそれ、なんだかキング・クリムゾン的な哲学のようにも思えます(笑)。
一色:クリムゾン的ですか?
ーーはい。「結局我々は何もわからないということがわかった」みたいな(笑)。
一色:「何もわからないっていうことがわかった」と(笑)。
ーー例えば「ゼネスト」って単語が出てきますが、そんな言葉には馴染みがないでしょ?
一色:ないです。「ゼネスト」ってなんだろうって思いました。
ーー「ゼネラルストライキ」のことで、いわゆる会社単位でのストライキではなくて業界全体で一斉にストしちゃうみたいなことだと思うんですが…。あと「シオクラシー」は?
一色:わかんないです。
ーー「デモクラシー」の反対で「神権政治」「神政政治」などと訳されますが…。
一色:なんだろうっていう単語がどんどん出てくるんですよね。
ーーでも、そのへんはわからずに歌うのが正解なんでしょうね。
一色:だと思います。
一色萌 リリース情報
一色萌(ひいろもえ)
デビュー7インチ・シングル
「Hammer & Bikkle / TAXI」
アーティスト:一色萌(ひいろもえ)
タイトル:Hammer & Bikkle / TAXI
仕様:7インチ
価格:1,500円+税
レーベル:なりすレコード
品番:NRSP-789
発売日:2020年11月3日《レコードの日》
収録曲:
A面:Hammer & Bikkle
作詞・作曲・編曲:佐藤優介
B面:TAXI
歌と演奏:MOE Feat. DEAF SCHOOL
日本語詞/ナレーション:一色進(ジャック達)
プログレ・アイドル「XOXO EXTREME」の一色萌が両A面7インチで待望のソロ・デビュー!
2020年代のパブロック/パワーポップ/モダンポップを追求するNEWアイドルの誕生!
佐藤優介(カメラ=万年筆)プロデュースによる、あの某パブロックヒーローの代表曲を果てしなく連想させる「Hammer & Bikkle」、カップリングには、80年代の英国音楽シーンを代表するプロデューサー クライヴ・ランガーが在籍していたことでも知られる伝説のバンド“デフ・スクール”のヒット曲「TAXI」を日本語詞でカバー。何と本家デフ・スクールが本プロジェクトのためにバック・トラックを新録音した奇跡の日英コラボが実現した豪華ダブルサイダー・シングル。
一色萌 ライブ情報
・11/3〈レコードの日〉開催記念【なりすレコード プチインストア祭】
会場:HMVrecordshop新宿ALTA
日時:11月3日(火/祝) 19:30~ 一色萌
詳細
https://www.hmv.co.jp/news/article/2010311027/
・なりすレコードPresents 天野なつ 1stアルバム「Across The Great Divide」アナログ盤発売記念ライヴ
会場:渋谷La.mama
日時:11月7日(土)開場11時半 開演12時
◆会場チケット:2500円+D代
◆配信チケット:1500円
〈出演〉
天野なつ
広瀬愛菜
一色萌(Front Act)
ご予約はこちらから!
https://tiget.net/events/107872
・一色萌「Hammer & Bikkle / TAXI」&SAKA-SAMA「空耳かもしれない」発売記念合同インストアイベント@タワーレコード池袋店
会場:タワーレコード池袋店
日時:11月7日(土) 18:00~
〈出演〉SAKA-SAMA/一色萌
詳細
https://tower.jp/store/event/2020/11/014012
「The Trick Is Under The Table」ジャック達ワンマン・ライブ
日時:11月14日(土)open 18:30/start 19:00
会場:吉祥寺MANDA-LA2
¥4000+drink 限定30名
〈出演〉
ジャック達(一色進/宙GGPキハラ/夏秋文尚/大田譲fromカーネーション/鈴木さえ子)
ゲスト:一色萌
詳細
https://www.mandala.gr.jp/mandala2/
・XOXO EXTREME 3rd ワンマンライブ ~Re:UNION~
プログレッシヴ・ロックをテーマとしたアイドル、XOXO EXTREME待望の3rdワンマン!
前回から1年半の時を経て、渋谷クラブクアトロにRe:UNION!
バックバンドには Alsciaukat と Silent Of Nose Mischief という、
キャラクターの違う2バンドが同時にステージに常駐し、プログレッシヴの世界を描きます!
会場:渋谷クラブクアトロ
日時:11月27日 (金) 18:00 OPEN/19:00 START
来場4,000円(+1D)
配信2,000円
Tシャツ付配信4,500円(サイズ S,M,L,XL)
※配信視聴可能期間:11月27日(金) 19:00 ~ 12月4(金) 23:59迄
※Tシャツ付配信チケット受付は11月12日(木)23:59迄
詳細はこちら!
https://upluslive.udo.jp/schedule/20201127.html