Speak emo

2020.10.22
加納エミリ

加納エミリ | 曲が出来るかなり前から「朝になれ この恋を忘れるまで」っていうフレーズだけがずっと頭にあって…

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そういう“ネガ”と“ポジ”がせめぎ合って勝ったり負けたりしてるみたいな、そんな曲ですね

 

 

 

ーー歌詞についてなんですが、これは、先日ツイッターでおっしゃっていたように「実体験」なわけですよね? いろいろ想像はできると思いますが、北海道で過ごした“隠遁生活”のことを歌っているようにも思えます。

 

加納:そうですね。歌詞はすごく時間をかけて作ったので、札幌にいる間にも作業したんですが、札幌にいる時期のことを書いたっていうより、それ以前の悶々としている時を思い出して書いてたって感じです。

 

ーーそうですか。この曲はプリプロも北海道に行かれる前にやられたとのことで、曲自体はその前に作られていたわけですもんね。

 

加納:そうですね。はい。

 

ーー「永遠に続かないなんて 分かってたのにな」というラインの後に来るサビの頭の一行「朝になれ この恋を忘れるまで」っていう風に「恋」に落とし込まれるわけじゃないですか。これはある種のメタファーなのかもしれないですし、実体験なのかもしれないですけど(笑)。

 

加納:その「恋」って文字だけで「恋愛の曲なのかな」って思う方もいますよね。

 

ーーですよね。

 

加納:曲が出来るかなり前から「朝になれ この恋を忘れるまで」っていうフレーズだけがずっと頭にあって…。なんか、なかなかいいなと思ってて、「じゃあこのフレーズを膨らませてみよう」と思ったところからこの曲ができたんですよ。そこから「こういう感じのサビにしよう」「イントロはこうしよう」みたいな感じでできていったんですよね。最初は自分も恋愛の曲なのかなと思いきや、完成してみるとそうでもないなって思えてきて。自分の中でもすごく不思議な感覚なんですけど…。でも恋愛ソングではないと思いますね。

 

ーー例えば、コロナで外出を自粛しなきゃいけないっていう悶々とした気持ちに重ね合わせる人もいるかと思います。

 

加納:いますよね、きっと。

 

ーーでも、「コロナで外出できない」っていうことをダイレクトに言葉にしても、それはもしかしたら詩にならないかもしれないですけど、「恋」という言葉を入れることで、一つの固定観念を解放して普遍的な表現へと昇華されるようにも思います。

 

加納:いろんな意味に捉えてもらえますよね。

 

ーーですよね。そこら辺が上手いですね。

 

加納:いやいや、たまたまですけどね(笑)。

 

ーーその「朝になれ この恋忘れるまで」というフレーズからこの曲が生まれたとのことで、「朝になれ」という部分はタイトルにもなっています。そこには、ご自身の想いが強く反映されているわけですか?

 

加納:そうですね。タイトルの方により大きく反映されていますね。

 

ーーそういう想いって、北海道に戻られてからも、あるいは今でもお持ちなんですか?

 

加納:今はだいぶ少なくなりましたけど…。札幌に帰る直前の時期っていうのが自分の中で一番辛かったですかね。「朝になれ」っていうタイトルも歌詞ができるかなり前からあったんですよ。考えに考えて付けたタイトルってわけじゃないんですけど、結果的にはいいタイトルだなって思います。

 

ーー東京に出てきてしばらくは“燻って”いた時期もありつつ、ようやくいろんなことが動き出して、活動も華やかになってきて、“ネクスト・ブレイク”と目されていた時期でもあったと思うんですが、でも、どこかで「朝になれ」つまりは「夜」だった部分もあったということなんですね?

 

加納:そうですね。「夜が長いな」みたいに思っていた時期が結構あったので。眠れなくて。夜いろいろ考えちゃうじゃないですか。将来のこととか、漠然とした不安とかが頭の中でぐるぐるして眠れないっていうことが一時期結構あったので、その時になんとなく思ったことが「朝になれ」ってタイトルになったんだと思います。

 

ーー先ほども言いましたが、そうした想いは結果的に今のコロナの状況下の人々の気持ちに繋がっている部分もあると思います。そういう意味でも、「端から大勢に向けたものより個人的なもののほうが結果的に大勢に刺さる」とツイートされた言葉どおり、普遍性を帯びているんじゃないでしょうか。

 

加納:本当に個人的な曲で、自分が当時思ってたことを書いただけなんですが……そうですね。

 

ーーでも、それだからこそ、そういう人たちにも共感してもらえる部分があるのではないかと。

 

加納:共感してもらえたらすごいうれしいですね。寄り添って行けたらいいなって。

 

ーーそういう意味では、悶々とした気持ちが描かれていますが、結構ポジティブな部分も顔を出しますよね。

 

加納:そうそう。せめぎ合いなんですよ。全てに絶望しているわけじゃなくて、自分には“音楽”っていう唯一やりたいことがあって、「音楽をもう少し頑張りたい」「あと何年間かやったらいい結果になるんじゃないか」といった期待が自分の中にあったから……そういう“ネガ”と“ポジ”がせめぎ合って勝ったり負けたりしてるみたいな、そんな曲ですね。

 

ーー「曖昧なことで迷うとき 生きてるって実感するね」っていうラインなんて、そうなってる自分に生命感みたいなものを感じていて、ポジティブですよね。自分を客観的に見ながら、まあ楽しんでるまでとは言わないですけど、「ああ、これが生きてるってことなんだな」みたいに生命感を実感しているような…。

 

加納:たしかに自分のことを客観的に見ているみたいですね。

 

ーーやはり自分の中に人格が3人いるわけですね。

 

加納:アハハ(笑)。

 

ーー「若さのせいならば これも悪くないかな」っていう部分にもポジティヴさを感じます。

 

加納:未熟さが原因で起る問題とかあるじゃないですか。経験不足ゆえに自分に悩みが生じるというか…。ここはそういう歌詞をつけました。

 

ーー「未熟」っていうのも一つの表現の形にするのが“インディー側”の加納さんらしいところというか…。

 

加納:アハハ(笑)。

 

 

 

取材・文
石川真男

加納エミリ 商品情報

〈配信シングル〉

配信シングル

「朝になれ」
約10ヶ月振りとなる新曲「朝になれ」が9/25にデジタルリリース
iTunes、Apple Music、Spotify等で配信中

 


〈7inchアナログレコード〉

アナログ版

「朝になれ」
価格:1,500円(税抜)
発売元:なりすレコード
品番:NRSP-794
発売日:2020年11月25日

収録曲
A面:朝になれ
B面:Because Of You (2020 MIX)

 

加納エミリ ライブ情報

フライヤー

 

EMIRI KANOU BIRTHDAY PARTY
日時:2021年2月17日(水)
場所:渋谷WWW
開場 18:30 / 開演 19:30
料金:¥3,500 (+1ドリンク別)
配信チケット料金 ¥2,500

Band Member
渡瀬賢吾(Gt) / KAZUYA(Ba) / Manaka(Dr) / Kanna(Syn)
※追加チケット、配信チケットの販売は後日発表

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。