Speak emo

2020.10.22
加納エミリ

加納エミリ | 曲が出来るかなり前から「朝になれ この恋を忘れるまで」っていうフレーズだけがずっと頭にあって…

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本当はもっとガッツリとヴェィパーウェイヴでいきたいなと思ってるぐらいなので

 

 

 

ーージャケットに関してお訊きします。これ、どなたが作ったんですか?

 

加納:CARREっていうバンドのMATERIALさんに作っていただきました。アルバム『GREENPOP』のジャケットも作っていただいた方で、今回もお願いしました。

 

ーー「どんな風にして欲しい」といったイメージを伝えたりしたんですか?

 

加納:まず、ヴェイパーウェイヴっぽいものをいろいろ送って参考にしていただいて、「朝になれ」ってタイトルなので、朝が来る前のちょっとモヤッとした空気感が欲しいなって思って、「これにこれをプラスして欲しい」みたいな感じでいろいろディスカッションして、作っていただきました。

 

ーーなんか感慨深いですね…。

 

加納:え?

 

ーーこれちょっと自慢げに書いていいですか?(笑)初めてインタビューさせていただいた時にヴェイパーウェイヴの話が出たじゃないですか。

 

加納:あ、はい。最初わからなかったんです。「ヴェイパーウェイヴって何ですか?」って感じでした。

 

ーーで、少しご説明して…。それが今やご自身の作品にヴェイパーウェイブを取り入れるところまで来たわけですよ!

 

加納:アハハ(笑)。本当はもっとガッツリとヴェィパーウェイヴでいきたいなと思ってるぐらいなので。

 

ーーなるほど(笑)。「僕が教えた」って書いていいですか?(笑)

 

加納:(笑)。よくいる“オタクのおじさん”みたいになってますよ(笑)。「僕はこの子に教えたんだ」みたいな(笑)。

 

ーーアハハハ(笑)。なんか怒られそうなのでそうは書かないですけど(編注:…というのも込みで書いてしまいました)。

 

加納:アハハ(笑)。

 

ーーで、ちょっとここが面白いんですが……例えば「ごめんね」とかならヴェイパーウェイヴのテイストっていうのはぴったり合うと思うんですけど、「朝になれ」の場合は「朝が来るようなイメージ」っていう意味では合ってはいるんですが、音楽的にはヴェイパーウェイヴっていうイメージではないじゃないですか。それがまた面白いなと思うんですよ。

 

加納:ミスマッチがすごいいいなと思ってて、結構ああいうタイプの曲だと「爽やかな美少女かなんかが朝が来るのを待つ」みたいなのが割とありがちだと思うんですが、自分は敢えてミスマッチの方に行きました。なんか、ああいいう曲もヴィパーウェイヴの一部だなと私は思ってるので。空気感とか。ミスマッチなところも含めて。なので、それがあの作品のいいところかなって思ってます。

 

ーーいや、僕も『GREENPOP』のレヴューを某雑誌に書いた時に少し匂わせたんですが、加納さんのことはヴェイパーウェイヴだとずっと思ってたんですよ。それはサウンド的にっていう意味ももちろん少しあるんですが、マインド的にというか…。

 

加納:あー、そうですね。よく分かってらっしゃる。さすがですね。

 

ーーいえいえ、とんでもない。例えば、加納さん的にはご自分が「ヴェイパーウェイヴだ」とおっしゃる時の「ヴェイパーウェイヴ」ってどう定義していますか?「ヴェイパーウェイヴ」って捉え方が難しいじゃないですか。

 

加納:シティ・ポップとヴェイパーウェイヴってすごく近いようで、決定的な違いがあるじゃないですか。どちらも都会的なんですけど、やはりシティ・ポップは“陽”でヴェイパーウェイヴは“陰”って感じがあって…。なので自分はシティ・ポップ側じゃないなっていうのはありますね。たまに「シティ・ポップ」って言われるんですけど、全然違うでしょうってずっと思っていて。自分のやっているものには、カウンターを狙っている部分があるんですけど、カウンターって強気なのに、私には結構ナイーヴなところも思いっきりあるので、マインド的には私は確かにヴェイパーウェイヴ側だなって(笑)。今シティ・ポップがすごい流行っていて、一方ヴェイパーウェイヴは面白がられてはいますけど、まだ爆発はしてないじゃないですか。だから、もっとヴェイパーウェイヴをたくさんの人に知ってもらえるような存在になりたいな、っていうのはあります。

 

ーーヴェイパーウェイヴって、2010年代初めにweb上に出現して、その後いろいろと派生や変質していったんですが、昨年12月に雑誌『ユリイカ』で特集が組まれたりして、またひと波来た感がありました。なので、加納さんにもうひと波作っていただきたいですね。今度は“NEO・ヴェイパーウェイヴ・ガール”ですかね(笑)。

 

加納:“NEO・ヴェイパーウェイヴ・ガール”(笑)。もうなんかわけ分からないですね。

 

ーーで、本当に思うのが、ちょっとギリギリなことまで言っちゃいますけど、例えばファンクだったりシティ・ポップだったりをやってるアイドルだったり、バンドだったりっていっぱいいるじゃないですか。今の時代それをそのままやろうと思えば、すぐにコピーできますけど、ヴェイパーウェイヴってそういうものをスクリュードしたりとか、テンポを変えたりとか、様々な加工を施すことで、そこに批評性が入ってくるわけですよね。ちゃんと“対象化”するというか…。そのままやったって全然面白くないわけですよ。簡単にできちゃうので。つまりは作り手がそれを「どう捉えているか」っていうのが重要なわけで…。

 

加納:どう落とし込むかですよね。

 

ーーですよね。で、やっぱり加納さんってそういう音楽、80年代のそういうものとかに愛がありますし、しかも、それを偏愛するというよりも「うわ、ダセーな」ってツッコミながらも愛でている感があって、そうしたものが音楽に含まれてるので、“ヴェイパーウェイヴ”かな、と。「朝になれ」も、決してシンセが鳴っているエレポップではないですけど、なんかそういうフィーリングがあるなって感じました。でも、そこまでヴェイパーウェイヴを理解して実践されるまでになったわけですね。

 

加納:第一人者になりたいです!(笑)

 

 

 

取材・文
石川真男

加納エミリ 商品情報

〈配信シングル〉

配信シングル

「朝になれ」
約10ヶ月振りとなる新曲「朝になれ」が9/25にデジタルリリース
iTunes、Apple Music、Spotify等で配信中

 


〈7inchアナログレコード〉

アナログ版

「朝になれ」
価格:1,500円(税抜)
発売元:なりすレコード
品番:NRSP-794
発売日:2020年11月25日

収録曲
A面:朝になれ
B面:Because Of You (2020 MIX)

 

加納エミリ ライブ情報

フライヤー

 

EMIRI KANOU BIRTHDAY PARTY
日時:2021年2月17日(水)
場所:渋谷WWW
開場 18:30 / 開演 19:30
料金:¥3,500 (+1ドリンク別)
配信チケット料金 ¥2,500

Band Member
渡瀬賢吾(Gt) / KAZUYA(Ba) / Manaka(Dr) / Kanna(Syn)
※追加チケット、配信チケットの販売は後日発表

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。