Speak emo
宇野友恵(RYUTist)|「もっとああしたいこうしたい」っていう欲が今もうバーッて出てきています
RYUTistメンバー個別インタビュー。ラストとなる第4弾は宇野友恵をお迎えした。
筆者は彼女の歌声と歌いっぷりが大好きである。日本で最も好きな女性ヴォーカリストの一人に数えるほどだ。ひっくり返ったり、よじれたり、力んだり、といった“危うさ”を感じさせつつも、それらが実に豊かな表情や色彩を生み、さらには波打つような“うねり”を生じさせながら、聴き手を心地好く翻弄する。その快感は、歌い手としてのタイプは全く異なるが、カエターノ・ヴェローゾやジョイスらに比するものと言ってしまいたい。まぁ、このブラジルの大御所たちは聴き手を掌で転がすような熟練の技を誇るのだが、宇野友恵はまだその域には達してはいないだろう。だが、その独特の“危うさ”や“儚さ”によって聴き手の心を掴み、その歌声の“うねり”の中に引き込み、そして翻弄するのだ。ある意味これも“掌で転がしている”ということなのかもしれない…。
RYUTistではヴォーカルリーダーを務め、その仕事ぶりはインタビューでも語ってくれているが、グループにおける歌の支柱となっている。そして、自身にも高いハードルを課し、真摯な態度で研鑽を積み、高い表現力を獲得している。
その感性もなかなかユニークだ。好きな歌手に土岐麻子、カネコアヤノ、柴田聡子といった面々を挙げるセンスの良さ。また、読書家でもある彼女は、伊坂幸太郎の「殺し屋」シリーズや堂場瞬一の『垂れ込み 警視庁追跡捜査係』といった小説を好む。そして「めだまを潰すのが好き」という謎の嗜好もあり…(かつては不思議ちゃんキャラだったようだ)。
さらには、純朴で温厚な性格のRYUTistメンバーの中にあって、わずかに陰を感じさせるような部分もあり、時にハッとするような鋭いことを言い放つ一面もある。
一筋縄ではいかない側面が幾重にも重なり、重層的な魅力を形成している。それが声に滲み出ているからこそ、彼女の歌に耳を、そして心を奪われるのだろう。
そんな彼女にお話を伺った。歌についてはたっぷりと、そして幼少期のことや読書についても、さらにはメンバーについてや、自身の「これから」についてなども…。
最後にひとつ付け加えておきたい。彼女は、グループ内では比較的「物言う」タイプではあるのだが、同時にとても心優しい人である。このインタビューでも、言葉の端々にそれを感じ取ることができた。そして、それは歌にも表れている。
『ファルセット』での彼女の歌いっぷりに改めて耳を傾けながら、ぜひご一読いただきたい。
歌うことが怖くなくなりました
ーー友さんとはシリアスなお話をしたいなと思ってるんです。
宇野友恵(以下:宇野):大丈夫かなぁ。
ーー最初から難しい質問をしようかなと。
宇野:頑張ります!
ーーで、最初の質問はこれなんですが、友さん、歌うの楽しいですか?
宇野:楽しいです。今は。
ーー“今は”楽しいですか。
宇野:はい。
ーー楽しくない時期もありました?
宇野:全然楽しくない時もありました。
ーーキツい時もありましたか。
宇野:結構いろんなところで言ってる気がするんですが、一度声が出づらくなっちゃって、歌いづらくなった時期があったんですよ。裏返っちゃったりとか、飛び出しちゃったりとか、そういうことが多くなって、辛かったことはあります。2016年の夏ぐらいですかね。
ーーその話はどこかで読んだことがあります。で、今いろんな映像が残っていますから、それらを観てちょっと検証してみたんですよ。2011年、13年、14年、15年ぐらいの映像では結構ストレートに歌われてて、2016年10月の古町どんどんの映像を見ると、変わってきたなっていう感じがして…。
宇野:そうですね。そこらへんから考えて歌うようになってしまって…。それまでは歌うことに対して何も抵抗なく、何も考えないで感覚で歌えちゃってたところがあったんですが、2015年の「神話」のレコーディングの頃から優しい歌い方、ふんわりした歌い方が多くなってきて…。それまでの自分はストレートなハッキリした歌い方が得意で、それ以外の歌い方を知らなかったんですが、一回そこで考えて歌うようになったらだんだん歌えなくなっちゃって、「もう歌うの怖い」って思うようになって…。2016年夏あたりがどん底でした。
ーー結構考えちゃう性格ですか?
宇野:そういう印象を持たれやすいんですけど、意外とそんなことはなくて…。でも、嫌なことは引きずるタイプではあります。切り替えるのが苦手で…。
ーー(佐藤)乃々子さんは「次の日になったらもう忘れる」ということをおっしゃってました。「悩みはない」って。かなりしつこく訊いたんですが、全然出てこなくて(笑)。
宇野:「今が楽しければいい」って言ってましたね。すごくいい言葉だなと思いました。
ーーでも、友さんは結構考えちゃって、それが悪い方向に行く場合もあったりするわけですか?
宇野:そうですね。その頃は嫌なことがあるとずっと頭の中でぐるぐるしちゃって、どんどん悪循環になっていって、それも歌に影響してたんじゃないかなって思います。今は「あんまり考えないようにする」「寝たら忘れる」っていうのを徹底してます。
ーー今はそういう風になれたわけですね。
宇野:そうです。その頃に比べるとだいぶ自分の考え方も変わった気がします。
ーーその辺がどう変わってきたのかを探ろうと思っているんですが、まず言っておきたいのが、僕、友さんの歌が大好きなんですよ。
宇野:本当ですか?
ーーちょいちょいTwitterなどで呟いてるんですけど、日本で一番好きな女性ヴォーカリストの一人です。
宇野:本当ですか? どれぐらいいる中でですか?
ーー5~6人ぐらいですかね。例えば、矢野顕子さんとか、PSY・SのCHAKAさんとか、ACOさんとか、トルネード竜巻の名嘉真祈子さんとかすごく好きなんですが…。
宇野:その中に入れていただいてるんですか?
ーー入れてます。
宇野:うれしい!
ーーどこが好きかっていうと、まだいい言葉が見つかってないんですが、歌が“波打つ”というか、メビウスの輪のように“よじれる”というか。それによって色彩感とか質感が流れるように変わっていくというか…。それって、ある意味声がひっくり返ることから生まれたもののような気がするんです。なので、子供の頃のストレートな唱法から、柔らかいものを求められて思い悩んで、いろいろやろうとして声がひっくり返っちゃった、というところから出来上がった唱法じゃないか、と。それがすごくいい形になってきたんだなと思ってるんですが…。
宇野:うれしいな。ありがとうございます!
ーーそうなんです。でも、その“唱法”は、あまり考えないようにしたらそういう風になってきたってことですか? それともいろいろ試行錯誤されたんですか?
宇野:いろいろやりました。普通に歌うこともままならないっていう時は、本当に歌うのが怖くなって、ライブで歌うのが怖くて、どうしよう、ってなってたんですが…。(プロデューサーの)安部さんのアドバイスだったんですが「なんでもいいから出せ」「ぶっ壊して出しちゃえ」って言われて、それで一段階気持ち的に抜け出せた感覚があって…。全部で5段階ぐらいあるんですけど(笑)。
ーーぜひ聞きたいです。その5段階。まずは「なんでもいいから出せ」ってことで、とにかく歌えることにはなったと。
宇野:はい。で、2段階目は、その頃、永井ルイさんにヴォーカルトレーニングをしていただいたんですが、「いっぱい息を吸ってから歌おう」ってアドバイスをいただいて。それまでは、本当に何も考えなくても歌えてたので、息を吸うとか考えなくてもできてたんですが、息を吸うことを意識してをやるようにしたら、ちょっと歌いやすくなったんです。
ーー息を沢山吸うと声が出しやすくなるんですか?
宇野:緊張して声が出にくくなってるので、1回深呼吸をするような感じで息を吸ってから歌うっていう、本当に基本的なことなんですけどね。
ーー喉とか気道とかに一度空気を通しておいて柔らかくする、みたいなそんな感じなんですかね?
宇野:そうですね。それが2段階目でした。あ、5段階もなかったかもしれない。それが確か2017年ぐらいだったかな。「口笛吹いて」のサビ前の「変わらないから」のところとか全然出なくて…。レコーディングで「ここは友恵さんに歌って欲しい」って(作曲した)KOJI obaさんに言っていただいて、そこの歌割りをいただいたんですが、レコーディングの時にすごく頑張ってなんとか録れたんです。ライブで「口笛吹いて」を披露してからも「ライブでやるごとにちょっとずつでいいから直していこう」みたいな感じで、私の歌に関してスタッフさんも結構気にかけてくださってたんですけど、それでレッスンの時に「息を吸ってやるようにしたらどう?」みたいな教えていただいたんです。それをやったら「口笛吹いて」の自分の一番気にしてたパートでがツンって歌えるようになって、それが2段階目の成長です。
ーーその後は?
宇野:その後は、良くなったり下がっちゃったりと波があったんですが、すごい最近なんですけど、『ファルセット』のレコーディング期間中に、自分で10分ぐらいの発声練習を作ったんです。今までやってきた発声練習をいろいろと組み込んで。それを毎日やって、歌い方を矯正したんです。基礎が大事だと思ったので。『ファルセット』のレコーディングをやってくたびに、どんどん歌うことに抵抗がなくなって楽しくなっているのを感じて、最後にレコーディングしたのが「春にゆびきり」なんですけど、この曲は一番いいテイクが録れました。一番納得して、しかも歌を楽しむことができたレコーディングだったと思います。
ーー僕の認識では、高校を卒業するぐらいに何かスランプといいますか、思い悩んだ時期があったとのことですが…。それって『日本海夕日ライン』が出るぐらいの頃ですか?
宇野:その前後ぐらいです。
ーーで、その後は歌い方を変えて、新しい技を修得して、そこから絶好調になってきたかなって印象だったんですけど、本当に納得したのは『ファルセット』で、ってことですか?
宇野:すごい最近です。メンバーも含めていろんな人を参考にして歌のまねをしたりとかして、やっと自分の歌いやすい方法を見つけたというか…。いろいろネットで調べたりとかもしました。
ーーネットで調べたりとかしたんですか?
宇野:ネットに上がってるんです。発声の仕方とか。
ーーあぁ、動画とかご覧になったわけですね。そういった情報を集めて、ご自分のオリジナルの基礎練習法というか発声練習法を作って、その成果が『ファルセット』で遺憾なく発揮されていると。
宇野:そうです。でもまだまだです。
ーー友さんの目標や理想は高いですから、ご自分ではまだまだだと思われてると思うんですが、でも、ある一つの到達点には達したみたいな感覚はありますか?
宇野:そうですね。歌うことが怖くなくなりました。
RYUTist ライブ情報
Negicco主催「NEGi FES 2020 ONLINE」
■日時
2020年10月3日(土)
14:00スタート(17:00頃終了予定)
■出演
Negicco、RYUTist、RINGOMUSUME
■視聴チケット料金
¥500(税込)
https://l-tike.com/negifes2020/
※アーカイブ視聴可 2020年10月3日(土)公演終了、約1時間後~2020年10月6日(火)23:59
※公演終了、約1時間後にアーカイブが生成されますので、表示を確認次第、アーカイブ視聴をお楽しみください。
※本公演はローチケ LIVE STREMINGのサービスを使っての配信となります。
※チケットの購入・動画の視聴には電子チケット販売プラットフォームZAIKOへの登録が必要となります。
※チケットのご購入前に、記載の注意事項をよくお読みいただき、配信ライブ視聴に適したインターネット環境・推奨環境をお持ちかどうか必ずご確認ください。
※視聴チケット購入時、販売ページの注意事項を確認の上、ご購入ください。
※他注意事項は購入ページにてご確認ください。
DISCOTHEQUE -Streaming-
■出演者:RINGOMUSUME / RYUTist
■配信日:2020年11月1日 (日) 17:00~
※アーカイブ配信:公演終了2時間後~2020年11月8日 (日) 23:59まで
■配信チケット2300円
※販売期間:2020年9月25日 (金) 12:00~ 2020年11月8日(日) 20:00まで
※チケット購入サイト:eプラス https://eplus.jp/sf/detail/3321780001-P0030001
■本公演はチャットを設けますので、是非ライブストリーミングにご参加頂き、一緒にライブ配信を楽しみましょう!ハッシュタグは、#disco_rr
■公演に関するお問い合わせ
TAPES PRODUCTION:info@tapes-prod.com
RYUTist 商品情報
■RYUTist 4th Full Album『ファルセット』
発売日:2020 年 7 月 14 日(火)
品番:PGDC-0012
価格:¥3,000(税抜価格) +税
《収録内容》
01. GIRLS(作編曲:蓮沼執太)
02. ALIVE(作詞:蓮沼執太/作編曲:蓮沼執太)
03. きっと、はじまりの季節 (作詞・作曲:弓木英梨乃/編曲:sugarbeans )
04. ナイスポーズ (作詞:柴田聡子/作編曲:柴田聡子)
05. 好きだよ・・・ (作詞:NOBE/作編曲:KOJI oba)
06. センシティブサイン (作詞:シンリズム/作編曲:シンリズム )
07. 絶対に絶対に絶対に GO! (作詞:藤村鼓乃美 ・ 北川勝利/作編曲:北川勝利)
08. 青空シグナル (作詞:清浦夏実/作編曲:沖井礼二 )
09. 時間だよ (作詞:Kan Sano/作編曲:Kan Sano)
10. 無重力ファンタジア (作詞:清浦夏実/作編曲:ikkubaru)
11. 春にゆびきり (作詞:パソコン音楽クラブ/作編曲:パソコン音楽クラブ)
12. 黄昏のダイアリー (作詞:清浦夏実/作編曲:北川勝利・沖井礼二 )
宇野 友恵(うの ともえ)
誕生日:4月1日
イメージカラー:ピンク
新潟の好きなところ:山、海、川があって、四季がはっきりしてるところ!
新潟の好きな食べ物:新潟タレカツ丼