天野なつ｜自分でやるのは大変なんですけど、それだけ結果がダイレクトに来るのが楽しいなって思います

 

 

ノーザン・ソウル、難しいですよね

 

 

――アルバムについてお伺いいたします。まずタイトル『Across The Great Divide』。これは誰が付けたんですか？

 

天野： 松尾さんです。

 

――どういう意味で付けたんでしょう？

 

天野： 昔あったんですよね。なんか。

 

――「great divide」って、直訳すれば「何かを分かつ大きなもの」「大きな隔たり」「大きな分岐点」といった感じですが、「the Greate Divide」で「ロッキー山脈」を指すんですよね。『ロッキーを越えて（Across the Greate Divide）』って映画もありましたし、ザ・バンドにも同名の曲があります。フォーク・シンガーのケイト・ウルフにも同じタイトルの曲がありますね。その辺が元ネタになってるんでしょうか？

 

天野： それもあるかもしれないですけど、山を越えてというか、この“上京”の意味も込められてますね。福岡から大きな山を越えて東京へ、と。

 

――なるほど。山を越えて一歩踏み出すということですね。

 

天野： そうですね。越えてきました。

 

――シングル曲を除いた新曲は４曲でしょうか？

 

天野： はい。４曲です。

 

――「midnight」「カレーライス」「Positive life」「true love」ですかね。で、アルバム全体なんですが、先ほどおっしゃったようなコンセプトの、大人の音楽が好きに響きそうな元ネタがいっぱい入った“ヴィンテージ・サウンド”と言うべきものですが、天野さん的にはいかがですか？ 以前は「ソフトロック？ノーザン·ソウル？何ですか？」みたいな感じだったと思うんですが、今やもう詳しいでしょう？

 

天野： あれから結構聴きました。まぁ今でも詳しいわけではないんですけど…。母からも「これいいよ」って色々勧められます。スリー・ディグリーズとか、「これCHiSEMiKUと一緒に歌ってみたら」とかいきなり言っててきます（笑）。でも、ソロになった当時は全然分かんなかったですね。

 

――もうそういうものにも詳しくなって、身体にも染み込んでてきたかなと思ったら、この間のLINE LIVEではディズニーの曲とか家入レオさんとか歌われていて、「あれ、あんまり変わってないかな」とも思ったんですが（笑）。

 

天野： 私、ディズニーの曲が大好きで、歌うのが楽しくて（笑）。最初の頃、松尾さんから「どういう曲が好きなの？」って訊かれて、「ディズニーです」って答えてました。ディズニーの曲って感情がダイレクトだなって思っていて。ミュージカルっぽい感じがあるから、「芝居もやりたい」「音楽もやりたい」みたいな私からすると聴いてて楽しいんですよね。楽しいし勉強にもなるし。すごい歌い継がれている曲じゃないですか。やはり名曲なのは間違いないなって。

 

――なるほど。それに匹敵するような名曲を、あわよくばディズニーに使われるような曲をこれから生み出していこうかな、と。

 

天野： ディズニーに使われる曲ですか？？？

 

――そこにはまだちょっと“Great Divide”がありますかね？（笑）

 

天野： 大人の大きな力が必要です（笑）。

 

――（笑）。でもどうですか、モータウンとかノーザン・ソウルって。

 

天野： ノーザン・ソウル、難しいですよね。

 

――あれはなかなか捉え所がないといいますか…。

 

天野： モータウンは調べたらまぁ分かるじゃないですか。ノーザン・ソウルはなかなか掴めないですね。どんなものなんですか？

 

――あれは難しいです。簡単に言えば、70年代にマンチェスターなどのイングランド北部の街で起こった“レアなソウルを掘っていく”ムーブメントと言いますか。なので「ノーザン（＝北部）」っていうのは「ムーブメントが起こった場所」を指すわけです。そういう人たちが掘ったのが、デトロイトのモータウンとか、シカゴのチェスなどのソウル・ミュージック。つまり米国北部の都市から生まれたソウルなので、そういう意味でも「ノーザン（北部の）・ソウル」なんですが、米国ではあまりそういう呼び方をしないので、ちょっとややこしいんです。「ノーザン・ソウル」はあくまでイングランド北部で起こったムーブメントのことで、すごくざっくり言えば“渋谷系”みたいなものですかね。

 

天野： あぁ。

 

――で、例えばそういう曲を今回歌ってるわけじゃないですか。ディズニー好きの天野さん的感性から捉えると、どういう音楽に聴こえますか？

 

天野： 新鮮というか、あんまり聴いたことのない感じ。

 

――日常的に生活の中で聴こえてくるようなものではないと？

 

天野： よく聴くJ-POPではないですね。例えば、関（美彦）さんの作った「うたかたの日々」とか、イントロはイギリスをイメージするんですが、こんなイントロあるんだって思いました。

 

――あれはビートルズっぽいとも言えますよね。

 

天野： あぁ、結構デモを聴いて驚くことが多いです。

 

――そこに“聴いたことのない世界”があるわけですね。

 

天野： 最初まだ馴染みがない頃は、LinQとも全然違うし、「これ私歌えるのかな」って思ってました。「どう歌いこなしたらいいんだろう」って。