Speak emo
最高に生きてる感があって、踊ってる私たちも「人間って最高!」みたいな人間賛歌的なものを感じて
「FUNKY BUT CHIC」を旗印に、哲学的思考を背景とした詞を、本格的なダンス・ミュージックに乗せて歌い踊るフィロソフィーのダンス(通称:フィロのス)。ウルフルズやナンバーガール、相対性理論などを手掛けてきた加茂啓太郎がプロデュースするこの”アイドル”グループは、“楽曲派アイドル”の理想形と言えるかもしれない。
まずは“楽曲”という側面から見ると、洋楽などにどっぷり浸かった耳の肥えたリスナーにも突き刺さるような、本格的なサウンドを展開。シックやEW&F、ジェームス・ブラウン、カーティス・メイフィールドといった偉大な先達にオマージュしたファンクチューンを基調に、時にエレポップやAOR、スタジアム・ロックやエスニックチルアウトまで多岐に亘るサウンドで音楽好きを唸らせるのだ。また、加茂プロデューサー曰く「ポップ・ミュージック・ヒストリーのアーカイブの発掘と再解釈」もテーマとして掲げているとのこと。それはすなわち、フィロのスがオマージュを捧げる音楽を知らない層にも、その普遍性を伝承する役割を果たしているということだ。
そして“アイドル”という側面から見れば、4人のメンバーの“四者四様”のルックスとキャラクターがなんといっても魅力的だ。また、“フォーマット“としてのアイドルの機能を存分に生かして、いわゆる特典会での“接触”やSNSなどでの言動で“神対応”をすることにより、ファンの心をぐっと掴む。そのことにより、“アイドル界隈“外から楽曲で引き寄せられてきた人たちに“アイドル”の素晴らしさを伝える役割をも担っていると言えよう。
楽曲によって引き寄せられた層がアイドルという“フォーマット”の中でさらに虜になっていく。一方、アイドルとしての魅力に惹かれた層が楽曲にその普遍的な素晴らしさを見出す。あたかも“フィロのス”という存在を媒介して、“楽曲”と“アイドル”の素晴らしさが各々伝播されていくかのようだ。
そんなフィロのスが、6月16日恵比寿リキッドルームにて、初のバンドセットワンマンライブを行った。“楽曲派アイドル”にとっては、バンドセットライブは一つの到達点ともいうべきもので、多くの“楽曲派アイドル”が既に挑んでいる。そんな中、フィロのスはまさに満を持してのバンドセット。この夜のライブは、フィロのス史上でも「過去最高となった」と言っても過言ではないだろう。洗練された和声やニュアンス豊かなグルーヴを完全再現するのみならず、そこに臨場感と躍動感を加える、手練手管のミュージシャンたちの優れた演奏に乗り、フィロのスの4人は思う存分歌い踊った。驚きだったのは、この特別な編成による特別なライブで紡ぎ出されていたと感じたのが、決して特別なものではなく、他ならぬ“フィロのスらしい魅力”だったということだ。
それは、彼女たち特有の“肯定性”というか…。いわば“懐古的なダンスミュージック”を鳴らしているがゆえに、ともすれば享楽的、刹那的、あるいは幻影的になりがちだが(もちろん、そうした表現をサウンドの妙とする優れたグループは存在するが)、彼女たちの場合は、幸福感や現実感、あるいは生命感に満ち溢れているのだ。
そうした“肯定性”の秘密を探るべく、十束おとは、日向ハル、奥津マリリ、佐藤まりあの4人にインタビューを敢行。バンドセットライブを終えた数日後に、ライブについて、グループの根源的な魅力についてなど伺った。あの幸福感・生命感の源は“富士そば”???
「早くアリーナツアーをやりたいので、売れてください」って言われたので、もう何がなんでも売れたいなと思いました(日向ハル)
――恵比寿リキッドルームでのバンドワンマンを終えて、今、率直にどうですか?
佐藤まりあ(以下:佐藤):私たちまだまだ成長できるなって思えたというか…。「すごく良かったよ」と言ってくださるファンの方が本当に多かったし、自分たちも今までにないぐらい一生懸命準備して来たので、“成功”と言っていいかは分からないですけど、しっかりと形に残すことができて良かったと思います。夏フェスもいっぱい決まってるし、これからまだまだフィロソフィーのダンスを知ってもらえると思いますし、「未来に少し希望が見えた」みたいなワンマンだったなと思っていて、「この先も頑張ろう」って気持ちで、今いっぱいです。
――あくまでまだ通過点というわけですね。
佐藤:はい。ワンマンも「ここは通過点だから」ってスタッフさんにも言われてたんですけど、もうまさにいい感じに通過できたので、また次の目標を決めて、そこもしっかり通過して行きたいなと思っています。
――なるほど。奥津さん、お願いします。
奥津マリリ(以下:奥津):私は、当日のMCでも言ってたんですけど、“夢が叶った感”がすごい強くて。とにかくすごい幸せで。でも「ここで燃え尽きちゃダメだ」というのはメンバーもスタッフさんもみんなで言ってて、それに、私たちもそうですけど、「ああ、良かった」みたいな感じでファンの方も燃え尽きてしまわないか、って思ってて…。なので、今は「これからを見せなきゃいけない」という思いが強いです。夢が叶って、また次、また次、って思ってもらえるようになりたいな、って。ワンマン翌日にもライブがあったんですけど、ファンの方も「あのフィロソフィーのダンスだから、もっといいものを見せてくれる」みたいな期待感を抱いていただいていたみたいで、翌日のライブでもその熱を持ったまま、階段を下がらずにしっかり上がれたので、これからもまだまだ上がって行きたいな、という思いです。
――ハルさんはいかがですか?
日向ハル(以下:日向):リハーサルから本番までの約半月だったんですけど、自分が今までやってきた中で、一番刺激を受けて、一番自分が成長したなと思える時間でした。まずプロの力に感動したというか…。初めてリハーサルを見学した時に、メンバー全員感動して泣いちゃうぐらいすごい演奏で…。「こんな素晴らしい演奏なんだから、お客さんにこれをさらにいい形で伝えるのは、もう私たち4人に掛かっているな」と思って必死に練習したんですよ。こんな豪華な方々と今までやる機会がなかったので、やっぱりそういうのを目の当たりにして、自分に対して思うこともありましたし、「やっぱプロってすごいな」って改めて思いましたし。ライブが終わってからも、そのバンドメンバーの方々と打ち上げとかでたくさん話して、「なんで音楽を始めたんですか?」とか、「どういうモチベーションで頑張って来たんですか?」とかいろいろ聞かせていただいて…。
――お聞きになったんですね?
日向:聞きました。そんなに簡単に会える方々ではないので、貴重な経験になったと思いますし、終わってからもメンバーの方に「今までバンドでライブをやることに慣れ過ぎてて、今回ハルちゃんたちが僕らの演奏に合わせて本当に楽しそうに幸せそうに歌って踊っているのを見て、心が洗われました。バンドって素晴らしいなって改めて思いました。ありがとう!」って言われて…。こっちはもう素晴らしい演奏をバックにただただ楽しかっただけなのに、そう言っていただけたことがすごく嬉しくて。「早くアリーナツアーをやりたいので、売れてください」って言われたので、もう何がなんでも売れたいなと思いました。
――十束さんはいかがですか?
十束おとは(以下:十束):まずは「終わってすっきりした」っていうのが本音で…。すごいプレッシャーというか、自分が気付いていないものまで抱え込んでいたみたいで、終わった瞬間もう10キロぐらいの重みが取れたと思うぐらい、めちゃめちゃ体がすっきりしました。私、基本的には毎朝6時に起きるんですけど、あの日終わって夜寝てから翌日のお昼12時ぐらいまで目が覚めなくて…。それぐらい自分の体が疲れてた、そこまで頑張ってた、っていうのを改めて知ったんですよね。今まで生きてきてそこまで何かに打ち込んだことってなかったので、「本気になって1つの物事に取り組むことができて、一応成功という形で終われたのは良かったな」って思いました。バンドメンバーの方もすごい豪華な方々で、しかもそれがクラウドファンディングという皆さんの出資で実現したというのが、私はアイドルとしての理想の形じゃないかなと思っていて…。自分たちではまだ呼べる力はないですけど、こうやって応援してくれてる方々の力があって、あのバンドと共にリキッドルームに立てたということが、私の中ではすごい大切な一歩だったなと思っていますね。改めてアイドルとファンの在り方を感じて、「やっぱりアイドルっていいな」って思いました。
――で、当日なんですが、もう始まる前からフロアになんかすごい熱気というか高揚感があったんですよね。そういうのって、例えば舞台袖にいた時とか感じたりしました?
十束:私、影ナレをしたので、みんなより一足先に舞台袖に行ったんですが、熱気がめちゃめちゃすごくて、「なんだこの空気?」って思いながら影ナレしてたんですけど、流れているBGMでもうみんなでノリノリな感じになってて、「えー!すごーい!」と思って!(笑)
――そうなんですよ。
日向:クラブ状態だったんだね。
十束:影ナレでも、言葉を発したら、もう「ワー!」みたいな。「こんなに人いるんだ」って、その声で改めて圧倒されて、それでライブやるのがさらに楽しみになりました。
――なんかちょっともう異様って言っていいぐらいでしたよね。僕はワンマンを見させていただく度に、「ブレイクするアーティストの空気みたいなのを感じる」って毎回ツイートしてるんですけど…(笑)
一同:ありがとうございます!
――今回は本当にそれまでで一番感じました。異様なぐらいでした。
十束:不思議だった…。不思議でしたよね?
――不思議でした。
佐藤:体験したかった。
奥津:ステージに降り立った時、一番最初に聞こえた歓声が、なんかテレビでよく使われるような「ワー!」みたいな大歓声だったんですよ。たくさん人がいて遠くの方からも聞こえてくるみたいな音ってあるじゃないですか。素材というか…。本当にたくさんの人がいるというのを感じて、なんか他人事みたいに「テレビのあれみたい」と思ったんですよね(笑)。実感がないというか…。今まで感じたことない空気でした。
――ある意味すご過ぎて、現実感がなかったという感じなんですかね?
奥津:そうそう。
――確かに。いや、それこそ加茂さんが選曲された開演前のBGMでね。
加茂プロデューサー(以下:加茂):あそこでうまくつながりましたね。偶然。
――ですよね。え、でも偶然なんですか?狙ってらしたんじゃなくて?
加茂:狙ってなかったです。
――ちょっと押したんですよね。で、開演時間が過ぎたぐらいでChicの「Le Freak」が流れて、もう皆さんもあの曲で「いよいよ始まるな」っていうをなんとなく感じていて、あそこでまた一段と「これはなんかすごいことが始まる」みたいな空気が膨らんだんですよね
佐藤:えぇ~!フロアにいたかった…。
フィロソフィーのダンス 商品情報
アイドル・フィロソフィー / ダンス・ファウンダー(日向ハルver.)(7インチシングルレコード)
発売日:2018年06月27日
¥1,700(税込)
夏のクオリア / 告白はサマー(十束おとはバージョン)(7インチシングルレコード)
発売日:2018年07月25日
¥1,700(税込)
「イッツ・マイ・ターン」&「ライブ・ライフ」
発売日:2018年08月31日
《通常盤》【CD only】¥1,100(税込)
《初回限定盤A》【CD+DVD】¥1,700(税込)
《初回限定盤B》【CD+DVD】¥1,700(税込)