FEATURE

2025.10.24
友希(i☆Ris 若井友希)

友希インタビュー!! このアルバムを作り上げたことで、「わたしはシンガーソングライターだ」とみんなに宣言できる自信が生まれました。

 シンガーソングライターの友希、声優アイドルグループi☆Risの若井友希と伝えたほうがわかりやすい方も多いだろうか。最初に「シンガーソングライターの友希」と紹介したのにも理由がある。i☆Risの若井友希としての経験を生かしつつという前提もあるが、彼女が一人の音楽家として表現しているのは、一つの枠にカテゴライズされることのない、若井友希という女性の“way of life(生き方・生きざま)”。収録した楽曲の作詞/作曲を自ら担うように、シンガーソングライター友希は、彼女の人生そのものを音楽にして表現している。i☆Risの若井友希としての活動を尊重し、大好きでいることを踏まえたうえで、友希自身や、彼女なりの視点で捉えた女性の生きざまを、表現活動の中に色濃く描きだしている。10月29日にリリースする1stアルバム『Main Dish』には、心の化粧を落とした素顔の…裸の友希の心情が映し出されている。「えっ、よくわからない」という方は、このインタビューを通した彼女の言葉を、じっくりと噛みしめてほしい。


回り道をしたことで、最終的に今の自分に繋がったわけだから、寄り道や回り道という経験を重ねられて良かったなと思います。


──友希さんの歌声に触れるたび、背中を押してくれる勇気を覚えます。友希さんは、「こうだ」と思ったら前向きな気持ちで駆けだすタイプ?

友希 人に元気を与えるのは得意ですが、自分の面倒を見るのは下手なタイプなので、誰かについていくことや追いかけるほうが得意です。ただ、歌声を聴いてそう感じてもらえたのは、嬉しいです。

──1stアルバム『Main Dish』を聴いて感じたのが、多くの曲から音楽と共に生きてゆく友希さんの生きざまや信念が見えてきたことでした。

友希  今回のアルバムを作るうえで自分の進むべき道筋はしっかりと見えていたし、迷うことなく走る中で生まれたアルバムだから、そう感じていただけたことは間違いないです。

──ただ、その信念を明確に持つまでが…。

友希  いろんな回り道をしてきました(笑)。

──自分の中にやりたいことは明確に見えていながらも、それを実現していくのは、なかなか難しかったということでしょうか?

友希 そうですね。思った通りの道へ真っすぐに向かうのは難しかったので、あっちへ行ったりこっちへ行ったりみたいな感じでした。でも、回り道をしたことで最終的に今の自分に繋がったわけだから、寄り道や回り道という経験を重ねてきて良かったし、だからこそ今の答えを出せたなと思います。

──たとえ回り道をしようとも、心が挫けなかったからこそ今へ繋がったわけですよね。

友希 メンタルの強さはありますね。今でもそうですが、わたしの中心にはi☆Risという声優アイドルグループとしての活動があります。そのうえで、「どれだけ若井友希としての活動ができるかな?」という模索がありました。自ら作詞や作曲を行えば、楽器を弾くこともあって、わたしがソロとして求めていたのがシンガーソングライターとしての活動。でも、わたしが主戦場にしているアニメやアイドルの業界とシンガーソングライターとでは、表現してゆく世界観が異なるから、いくら「シンガーソングライターの友希です」と名乗っても、認めてもらうどころか、そう認識してもらうのが難しいと感じていたから、なかなか踏み出す勇気を持てずにいましたし、異なるジャンルの壁を壊すことに抵抗を感じていました。それでも、i☆Risの活動の合間を縫って、ソロとしても活動の機会を作ってきました。
 その壁を、今回、友希としてアルバムを出すことで本気で壊したいと思ったし、わたし自身がシンガーソングライター友希として制作に取り組み、このアルバムを作りあげたことで、「わたしはシンガーソングライターだ」とみんなに宣言できる自信が生まれました。


MVも制作した『THIS IS ME』は、i☆Risの活動をしてこなかったら出せなかった要素を詰め込んだ楽曲になりました。


──作詞や作曲は以前からやってきたこと?

友希 そうですね。友希としての活動も、始めてからもう5-6年は経ちます。これまでは、i☆Risの活動の合間の中、わたしの誕生日近辺にライブツアーや音源のリリースなどをやってきました。もちろん、応援し、ライブに足を運んでくださる方々がいてくれることがわたしの勇気にもなりましたし、嬉しかったんですけど。支持してくださる方のほとんどがi☆Risファンだから、「シンガーソングライターと名乗るのはいいけど、そこからどうi☆Risファン以外の方にアピールをしていけば良いのか」がわからず、そこで立ち止まってしまうこともありました。

──だけど、グループ活動と並行して個人の活動も定期的にしてきたことが、自分の…。

友希  モチベーションになっていました。ただ、わたしの中ではi☆Risとしての活動が大切だからこそ、そこを飛び出してまでシンガーソングライターとして活動をしようとは思っていませんし、今もその気持ちはないです。いくら自分で「シンガーソングライターとしての道を築きたい」と思っても、シンガーソングライター一筋でやっている方々に比べたら、その道を築きあげてゆく時間がわたしは圧倒的に足りない。だから、心の中ではいつも「100%その活動に費やせないし、やれる自信もない」とウジウジしていたんですね。その気持ちを変えてくれたのが、サウンドプロデュースをしてくださったRyo'Lefty'Miyataさんと一緒にアルバム制作を行ったことでした。

──そこ、興味あります。

友希  Ryo'Lefty'Miyataさんと一緒に制作を行っていく中、今までに引き出せていなかった自分を体現できれば、それが自信にもなりました。何よりも嬉しかったのが、これまでのわたしの経験をしっかりと生かせたこと。MVも制作した『THIS IS ME』は、i☆Risの活動をしてこなかったら出せなかった要素を詰め込んだ楽曲になりました。普通、シンガーソングライターの方はダンスをしないじゃないですか。だけど、それを取り入れて表現していけるのが、シンガーソングライター友希としての強みだし、武器になること。それを自分でつかめたのは大きかったなと思います。

──確かに。

友希  それ以前は、声優アイドルとして活動する若井友希という存在が、シンガーソングライター友希の立場から見たら、ちょっと敵に見えていたんですね。もちろん同じ自分だし、i☆Risの若井友希の存在に感謝はしているけど。どうしても自分の中では、声優アイドルとシンガーソングライターは異なる2つの軸として見えていました。だから、あえて異なる道を求めようとしてきたんですけど。『THIS IS ME』を作ったことで、「若井友希の要素も友希の仲間に加えられるし、一つにしていけるぞ」と思えました。「歌って踊れて演じられるシンガーソングライターって、他にいなくない?? 」「わたしはバリバリ踊れるし、バリバリ楽器も弾ける。アイドル的な要素だって取り入れてゆく姿勢を示せれば、他にはない、他の誰にも負けない友希だけの音楽ができる」。そう感じられたことが、わたしの中での大きな変化になりました。

──『THIS IS ME』は、ミュージカル的な要素を組み込んだ楽曲ですからね。

友希  その表現は、わたしが声優をやっていなかったら出来なかったこと。i☆Risの若井友希としての姿を拒否して、シンガーソングライターとしての道に固執していたら、つまんない人間になっていた可能性だってあった。わたしの場合、シンガーソングライターらしい人生じゃなかったからこそ、普通じゃないシンガーソングライター像が見えてきたというか、友希にしか出来ないシンガーソングライターとしてのスタイルをつかむことが出来た。そういう面でも、i☆Risの若井友希という存在にはとても感謝をしています。
 

「わたしが一番一途に恋をしていたのって歌だな」と思った瞬間、『コイウタ』が完成しました。


──1stアルバムの『Main Dish』には、既存曲も4曲収録していますが、ほとんどが新曲です。既存曲になるのが…。

友希 『カフェラテ』『HEARTFULL』『アカリ』『Dear.30s→』になります。新曲でも、『コイウタ』『カプチーノ』『ビタミン』は、アルバム制作前からデモ曲として手元にありました。それをRyo'Lefty'Miyataさんと一緒に詞や曲をアレンジしていきました。他は、アルバム用に書き下ろしています。 

──『コイウタ』で、「わたしは音楽が好きなんだ」と宣言していますよね。

友希 『コイウタ』は、「真っすぐなラブソングを書こう」と作り始めた曲でした。制作の過程の中、「わたしが一番一途に恋をしていたのって歌だな」と思った瞬間、書くべき内容はもちろん。「この曲は絶対にアルバムの1曲目にしたいし、ライブでも1曲目に歌いたい」という像が見えてきて、それでこの曲が完成しました。

──『コイウタ』には、音楽が好きという純粋で真っ直ぐな気持ちが描きだされています。 

友希  これまでに「音楽をやめよう」と思ったことは一度もなかったし、この先も、わたしには音楽がないと生きていけない。わたしを助けてくれたのも音楽だし、わたしを悩ませたのも音楽でした。それくらい一番側にあって一番大好きなのが、わたしは音楽です。そういう思いを『コイウタ』に込めました。

──これまでの自分を振りきって、わたしはわたしが信じた道を突き進むと宣言した『Cut the rope』にも、「わたしには音楽しかない」という強い生きざまが刻まれていますよね。

友希  『Cut the rope』は、わたしがロンドンへ行ったときに、現地のトップランナーの方と一緒に作った曲になります。あのときは、わたしの心情もそうだけど、ロンドンでの経験や、そこで感じた気持ちや風景。日本から飛びだし、シンガーソングライターの友希として海外へ制作をしにいったときのワクワクとした思い。同時に、わたしにはi☆Risというホームグラウンドがあることなどなど。いろんな感情を詰め込んだ歌詞を書き、それを英詞にしていただき、『Cut the rope』が生まれました。

──『遺言』も、歌声の表現や表情も含め、とても印象深く心に焼きついた楽曲です。

友希   台本に書いてあるセリフを読むような感覚で歌詞を語る部分もあれば、叫ぶ部分もあるなど、『遺言』は半分お芝居のように歌い、表現した楽曲になりました。これも、声優をやっていなかったら出来ない表現だったなと思います。

──『コイウタ』『遺言』『THIS IS ME』『Cut the rope』冒頭からの4曲には、シンガーソングライター友希としての生きざまを書き記していますよね。

友希  そうなりましたね。

──続く『カフェラテ』と『カプチーノ』は、続きを成す物語になっていません?

友希 その通りです。『カフェラテ』は、わたしが友希としてライブ活動を始めるときに作った、一番長く歌ってきた曲になります。わたし自身思い入れの強い楽曲だからこそ、アルバムに入れたくて収録を決めました。
 わたし、珈琲が大好きなんですね。だから「"珈琲シリーズ"として曲を書きたいな」と思って、同じ世界観で、同じ主人公で、続きの物語として『カプチーノ』を書きました。結局は振り回されるという落ちですけど(笑)。もう1曲くらい続きが書けそうだから、「珈琲物語三部作」に出来たらいいなとも思っています。

──『カプチーノ』の曲調がすごくお洒落で格好いいです。

友希  『カフェラテ』はJ-POPらしい曲ですけど。『カプチーノ』は洋楽とJ-POPの良さを合わせたうえで、大人感も出して作りました。
 

アー写

 

あの当時のわたしは、30代の自分に思いを託そうとしていました。


──30代への憧れを歌った『Dear.30s→』も、今の友希さんの心情なんでしょうね。

友希  その通りです。この曲を書いたのは、28歳から29歳になろうとしていた時期。今もそうですが、当時のわたしは、30代の自分に思いを託そうとしていました。

──それは、どういうことですか?

友希 20代の自分は「悩むことを良しとする」というか。20代のうちに、たとえ苦しい思いをしてでも、与えられたものを全力でこなし続けたかった。それが、自分が求めているものじゃなかったとしても、誰かが求めてくれるのならそれを自分のものにしていきたい。そうやっていろんなものを吸収したうえで、30代になったら自分の思うがままに、自分の求めるものを思い切り追求していきたい。そのためにも、20代のうちにいろんな経験を積み重ねて、未来の自分のための準備期間にしていこうと思って進んできました。『Dear.30s→』は、30代を前にして「30代のわたしは、自分らしさを持って生きていきたいな」と祈りを込めて書いた歌です。

──20代のうちにあえて試練を経験しようという、その心の強さがすごいですよね。

友希  20代の自分は、ずっと何かに縛られて生きている感覚がありました。ならば、あえて自分にいろんな試練を与え、それを30代になったら解き放そうと。そういう気持ちでいたからこそ、わたしは『Dear.30s→』を書いたんだと思います。

──30代って、20代で蓄積してきた経験を花咲かせる世代でもありますよね。

友希  もちろん、30代のとらえ方もさまざまだと思います。ただ、わたしの身近にいる30代の方々は、みんな自分らしさを持って楽しく生きている。わたしはその姿を羨ましく見ていましたし、身近な人たちみんなが「30代になってからのほうが楽しいよ」と言うくらい、自分の道をしっかりと取捨選択をして生きているんですね。だからわたしも、「自分もそうなりたい」と思って、30代へ憧れを抱いているんだと思います。


ライブに来てくれるみんなへ向けてや、音楽に対してのLOVEを歌えば、ライブという場所でわたしの心が満たされることも書いています。


──『ママになったら』は、ピアノと歌を軸に据えた、とてもシンプルな構成の楽曲になりました。

友希  「この曲を弾き語りで表現するのもいいんじゃない?」と言ってくださったのは、Ryo'Lefty'Miyataさんでした。もともと「1曲は、母を題材にした楽曲を作ろう」と決めていました。そのうえで、わたしの両親が好きで聴いていたアレサ・フランクリンなどのブラックミュージックの要素を持った、それこそ教会の中で歌っているような曲にしたいと思っていたことから、Ryo'Lefty'Miyataさんのアドバイスもうまく取り入れ、この曲が生まれました。『ママになったら』では、わたしがピアノも弾きました。演奏をするときも、部屋の一室で弾いているような、教会の端っこで弾いている雰囲気を心がけました。

── 『ビタミン』は、今の自分を取り巻く環境を歌にしています?

友希 『ビタミン』は、休息が足りてない今のわたしの感覚。がむしゃらに頑張ってきた20代を経て、30代になったら休息も大事にしたい自分がいます。日々の栄養素というか、ちょっとイージーに生きる大切さもありだなと思い、それをビタミンにたとえて歌にしました。実際に、毎日の生活の中でビタミンを摂取し始めたのも、書くきっかけの一つになりました (笑)。

──『HEARTFULL』『アカリ』『WA!』は、ライブで支持の高い曲たちですよね。

友希  『HEARTFULL』はライブでずっと歌い続けている定番曲。歌詞のテーマも、ライブに来てくれるみんなへ向けてや、音楽に対してのLOVEを歌えば、ライブという場所でわたしの心が満たされることも書いています。ライブのときには、みんながタオルを振り回して楽しんでいるから、これから友希のライブを楽しむ方のためにも、「これはぜひ聴いておいて」という思いも込めて、この曲を収録しました。
  『アカリ』は、コロナ禍の時期に作った曲。世の中全体が沈んできた時期、わたしが手を差し伸べられるのは音楽という形だなと思ったことから、誰かの側にわたしの音楽があることが一番の望みだし、沈んでいる世の中にわたしの歌で明かりを灯してあげようと作った曲でした。クラウドファンディングを通して生まれた『WA!』も、ライブでの新しい定番曲になりそうです。


声優もやるし、アイドルもやるし、シンガーソングライターもやるしと、二足のわらじどころか三足のわらじで活動を続けます。


──この記事を目にする頃には、「友希 LIVE TOUR 2025 "Main Dish"」のツアーのファイナルになる11月1日(土)のKT Zepp Yokohama公演も目前です。

友希  今回の全国ツアーでは、全部一人でライブを作りあげてきました。そのぶん、シンガーソングライター友希の世界観を色濃く伝えることができたし、みなさんもそれを楽しんでくださいました。ツアーのファイナルになるKT Zepp Yokohama公演は、唯一バンド編成で行い、ツアーのメニューや構成を変えてお届けします。この日は、バンドがいるからこその演出も行い、パフォーマンス面でもいろいろと見せていくように、ツアーで作りあげてきたアルバム『Main Dish』の最終系をお見せしていけたらなと思っています。

──楽しみにしています。今後も、i☆Risの若井友希、そしてシンガーソングライターの友希としての両面を見せてくれますよね。

友希  もちろんです。むしろ、声優もやるし、アイドルもやるし、シンガーソングライターもやるしと、二足のわらじどころか三足のわらじで活動を続けていきます。わたしの20代の集大成であり、これからへ向けての意志をアルバム『Main Dish』を通して示せたからこそ、30代になってから、今度はどれだけシンガーソングライター友希として表現したい思いを深めていけるのか、そこを楽しんでいきたいなと思っています。これからの歩みも、見続けていてください。
 

アー写


TEXT:長澤智典

 

<インフォメーション>


友希 「THIS IS ME」 Music Video



友希 1st ALBUM 「Main Dish」

JKT

【収録曲】
01.コイウタ
02.遺言
03.THIS IS ME
04.Cut the rope
05.カフェラテ
06.カプチーノ
07.ママになったら
08.ビタミン
09.HEARTFULL
10.アカリ
11.Dear.30s→
12.WA!


「友希 LIVE TOUR 2025 "Main Dish"」

11月1日(土)
開場17:15/開演18:00
会場:KT Zepp Yokohama
全席指定 8,800円(税込)

・ローチケ
https://l-tike.com/yuki-wakai/
(Lコード:75022)

・イープラス
https://eplus.jp/yuki_wakai/

・チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/yuki-tour2025/
(Pコード:297-430)


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