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2022.02.18
Aphrodite

黒い女神たちへひれ伏しなさい。新体制となったAphroditeの単独公演をレポート!!

 新たなる黒い女神として生まれ変わる。その瞬間に立ち会えたのが嬉しかった。2月17日(木)、下北沢Shangri-Laを舞台にAphroditeが行った「Aphrodite単独公演~cryptograph~」。その日の模様を、ここへ記そう。


 暗くなったフロアに鳴り響く荘厳でかつ猛々しい音色。黒い音へ導かれるようにメンバーらが舞台へ登場。ライブは、この地を漆黒の楽園へ染め上げるように「EDEN」から幕開けた。荘厳かつシンフォニックな音が、身体を揺さぶる激烈な音に変化。その音へ導かれるように、メンバーらが妖しい歌声と煽り声を響かせ観客たちを刺激してゆく。舞台の上から身を乗り出し、フロア中で蠢く人たちへ歌声の刃を突き刺す。6人の黒い女神たちの攻めたプレイは、最初から容赦ない。

  壮麗な音が響き渡る場内。その音楽は、メンバーらの絶叫を合図に、さらに猛々しさを増した。身体を激しく折り畳み、彼女たちは呪詛を唱えるように「Distopia」を歌唱。6人の容赦ない煽りに負けじと、フロア中の人たちも拳を高く突き上げる。身体中から沸き立つ熱と熱を重ね合わせ、Aphroditeは漆黒の空間に熱情という色を加えてゆく。

  「なぜ悲しいの なぜ傷つけるの」。悲痛な想いを、絶叫に変える彼女たち。狂おしい心の叫びを、メンバーらは「Elysion」に乗せぶつけてきた。沸き立つ感情をフロア中にすべて吐き出さんことには、正気でなどいれない。いや、もともと舞台に上がったとたんに螺子の壊れる彼女たちにすれば、それが当たり前の姿か。激しく身体を揺さぶり絶叫する姿が、むしろ神々しい。

 破壊的な「lament」が炸裂。メンバーらは拳を突き上げ、雄々しい歌声を響かせ、観客たちを煽り続ける。サイコティックな音が感覚を歪ませる。狂気を抱いた歌声が理性を消し去ってゆく。

  さらに破壊力を増した音に姿を変え、「creator」が襲いかかる。舞台の上で華麗に舞い踊るメンバーたち。その歌声には理性を狂わす狂気が満ちていた。舞台の最前に一列に並び煽る6人の姿も、強烈だ。

  もっともっと壊れちまいなとメンバーらは誘いかける。いや、「Oi!Oi!」と声を張り上げ、観客たちを熱狂の宴の中へグイグイ引き込んでゆく。激しさだけではない、魂を高揚へ導く美しくメロディアスな歌もAphroditeの魅力を語るうえで欠かせない。「GENESIS」が現実を消し去り、興奮と恍惚だけが渦巻く世界をこの空間に作りあげた。美しさと激情した思いが交錯。煽る美メロな合唱に、興奮が高まり続ける。

 その接吻は、あまりにも痛々しくも甘美な味がする。拳を高く突き上げ、声を張りながらメンバーたちが煽り続ける。優美なのに、「ユダの接吻」に触れている間中、気持ちが昂り続けていた。彼女たちの歌声の接吻があまりにも暴欲的だからこそ、攻めたプレイに熱狂しながらも、気持ちは押し倒されていた。

 黒く重厚な音が轟き渡る中で、メンバーらは物語を語るように「セラフィムの夜」を朗々と歌っていた。歓喜を呼び起こす、とても甘美な歌だ。荘厳シンフォニックで激烈な楽曲の上で、彼女たちは雄々しく歌声をはべらせていた。その歌声が、心を熱く沸き立てる。黒く歪んだノイズのような曲なのに、彼女たちが歌声の絵筆をふるって物語を描くことで、「セラフィムの夜」が甘美な歌に染め上げられてゆく。

  耽美で甘美、幻想的で荘厳。Aphroditeの魅力となる甘さと激しさを融合した「My Sweet Bach」だ。濃度の強い赤ワインを一気に飲み干したときのような、苦みと渋みが身体中を駆けめぐる。苦みを持った甘い刺激へ心が一気に酔いしれる。強烈な刺激を身体中に染み渡らせながら、このまま意識だけ落ちてしまいたい。


 ここまでは、新メンバーの咲夜璦魔娘を交えてのライブ。彼女が加わったことで、Aphroditeに甘美なハーモニーが加わったことが嬉しい。


 ここからは、咲夜璦魔娘を除いた5人のAphroditeのライブへ。ノイズのような黒い音が炸裂。Aphrodite流の轟音デジロックナンバー「nocturne」を歌い踊りながら、5人はふたたび破壊的な衝動を抱きながらも、甘美な熱狂の宴へと観客たちを連れ出した。

  美しき破壊衝動を抱いた「moirai」が、観客たちを、ここではない不思議な異世界へと連れ出した。彼女たちは旅へ誘う案内人となり、意識を混濁する幻惑した場へと連れだす。妖美な歌声へ気持ちを寄り添いながら、でも壊れたエンジンのような黒く唸る音へ痺れるままに身体を奮わせていた。5人の一体化した美しい踊りからも、目が放せない。
  
  Aphroditeが作りあげる「Utopia」は、直接脳を、意識をグチャグチャに掻き乱す強烈なインパクトを持っている。とても甘美でメロディアスな心を嬉しく酔わせる歌なのに、歪みきった音がグサグサと切り裂く衝撃を身体に与えてゆく。恍惚へ導く歌と身体を傷つける痛みに、気持ちがむせび泣く。その美しい攻め方も女王気質のAphroditeらしいじゃない。

  続く「パルテノンを眺めて」でも、メンバーたちは轟音に乗せ、心を歓喜へ導く歌を響かせていた。歌を軸に据えた楽曲にも関わらず、ライブでは次々と轟音のパンチを繰り出す。その刺激に恍惚を覚える人たちが、振り上げた拳を彼女たちへ向けていた。その歌声に惹かれてゆく。魂を揺さぶるその声の源をもっともっと追いかけたい。

  強烈な四つ打ちのビートが鳴り響く。Aphrodite流のデジタルなダンスロック曲「パリの灯りは遠く」の登場だ。彼女たちは共に口ずさみたくなる印象深いメロウな歌を響かせていた。5人編成になって以降は歌を聴かせる楽曲を中心に、彼女たち自身が破壊と陶酔の黒い女神たちである姿を示してゆく。フロアでも、その歌に陶酔しながらも、身体揺さぶるリズムに合わせ、その場で跳ね続ける人たちが大勢いた。
 
  最後にAphroditeは、観客たちを熱狂と恍惚の先にある桃源郷へ連れ出すように「私を天国へ連れてって」を歌唱。フロア中でも色とりどりのペンライトの光が舞えば、メンバーたちの歌声をしっかり受け止めようと、誰もが熱い視線と手を舞台上に捧げていた。


 アンコールで最初に歌ったのが、荘厳シンフォニックかつ雄大な景観を描きだす「ヨハネの福音」だ。スケール大きな楽曲の上で、5人は優美に歌声を踊らせる。甘美なその刺激に理性が混濁し、美しくも激烈な音にすっかり酔いしれていた。舞台の上で可愛らしい仕種や踊りも見せながら観客たちを煽る5人の姿も、愛おしい。観客たちと声なきコール&レスポンスしてくゆく様も印象的だった。

 最後にふたたび新メンバーの咲夜璦魔娘を迎え、6人になったAphroditeは「月は無慈悲な夜の女王」を歌い、観客たちを煽りだす。さぁ、黒い女神たちへひれ伏しなさいと言わんばかりにアピールしながら、6人は観客たちを最後まで陶酔と興奮の宴の中へ巻き込んでいった。
 

 新メンバーを加え、さらに優美さと破壊力を増したAphrodite。彼女たちの、ここからの進撃を楽しみながら観続けようか。


TEXT:長澤智典


LIVE


セットリスト
「EDEN」
「Distopia」
「Ēlysion」
「lament」
「creator」
「GENESIS」
「ユダの接吻」
「セラフィムの夜」
「My Sweet Bach」

MC
「nocturne」
「moirai」
「Utopia」
「パルテノンを眺めて」
「パリの灯りは遠く」
「私を天国へ連れてって」

-ENCORE-
「ヨハネの福音」
「月は無慈悲な夜の女王」


Aphrodite twitter 
https://twitter.com/aphrodite_idol
 

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