FEATURE
鈴木みのり 2nd LIVE TOUR 2021~Make My Story!~ 多彩な表現でオーディエンスを驚かせた 東名阪ツアー最終公演をレポート!
“みのりんご”こと、鈴木みのりの東名阪ツアー「2nd LIVE TOUR 2021~Make My Story!~」が、鈴木の出身地である愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(名古屋)公演で千秋楽を迎えた。昨年リリースされた2ndアルバム『上ミノ』の楽曲を中心に、笑顔弾ける爽やかなポップスあり、センチメンタルなバラードあり、クールで大人なテイストありと、多彩な表情を見せるエンターテイナーとしての成長が感じられる内容となっていた。秋にはシングル「サイハテ」のリリースも決定した彼女の、シンガーとしての現在地が刻まれたライブの模様をリポートする。
鈴木みのり2nd LIVE TOUR 2021 ~Make My Story!~
2021年7月31日(土)
日本特殊陶業市民会館ビレッジホール 16:30/17:30開演
「Make My Story!」=私の物語を創る、というツアータイトルが示す通り、アーティスト・鈴木みのりとしての新たな幕開けを感じさせるものとなった今回の東名阪ツアー。『上ミノ』のリリースを記念した、昨年末のツアー『Now Is The Time!』は、新型コロナウィルスの影響により、残念ながら東京公演を除いて地方公演は中止になってしまったため、ソロとしては約2年ぶりのライブツアー、しかもこの日は、地元での千秋楽となり、鈴木本人、またバンドメンバーも並々ならぬ気合が臨んでいたことは、オープニングナンバー「Now Is The Time!」でのショーアップされたパフォーマンスからも明らかであった。バンドマスター・北川勝利(G.&Cho.)の先導によって会場がハンドクラップに包まれる中、颯爽と姿を現した鈴木は、その持ち前のはつらつとした歌声を隅々まで響かせていく。ホールで歌うことの気持ち良さを確かめるように、そしてオーディエンスの姿をひとりひとり確かめるように――赤い布が敷かれたセンターステージのみならず、左右のスペースも目一杯使って歌う彼女の笑顔には、ライブが開催できたことの喜びが溢れていた。続く「好きなものは好き!」では、歌詞になぞらえながら、みのりんごに“恋している”オーディエンスを“ズキュンバキュン”と撃ち抜いていく、華やかで軽やかなステージング。拳を頭上高く振り上げるレスポンスタイムもあり、ご時世上、声が出せない状況でも一体感を高める演出が意識されていた。「半音階のレジスタンス」においては、ロングスカートの袖を掴んでひらり、ひらりとさせながら、リズミカルに言葉を紡いでいく。ツアー初日の東京公演では少し緊張も見られた冒頭3曲だが、この日はしっかりと会場の空気を掴んでいく凄みが感じられた。
「ただいま!」と地元ならではの挨拶も交え、鈴木は「バリバリ、盛り上がっていきたいと思います!」と、高いテンションのままセカンドパートへ。サビでしゃちほこポーズも見せた「おセンチなメンタル」、80sテイストの「わからないのよBABY!」&「まいっちゃう」と、ここでの3曲はマイクスタンドを使って歌唱。アイドル風のキュートな振り付けと共に、甘酸っぱい、ロマンティックなポップスを聴かせていく。青春のキラメキやときめきの一瞬を切り取るかのような、鈴木の透明感ある声質が存分に発揮された時間であった。
MCタイムでは、今回のツアーが、前回のリベンジツアーであり、その気持ちから前回着用したものをリメイクしたという衣装のことや、地元ならではのご当地トークを和やかに切り出し、オーディエンスとの距離をごく自然に縮めていく。会場となった日本特殊陶業市民会館の椅子を見て、小さい頃、『しまじろう』のコンサートを幼馴染と観にきたというエピソードを懐かしそうに語っていた。
東京公演での「astro traveler」に代わり、大阪、名古屋公演では「月夜の夢」を演奏。先ほどとは打って変わって、感情を抑えたウィスパーボイスを器楽的に聴かせ、サウンドとのめくるめく融合を実践していた。続くバラード「夜空」では、繊細さを保ちながらどこまでも広がる抜けの良いボーカルが、照明の美しさと共に昇華されていった。見方を変えれば、鈴木のボーカルや楽曲のジャンルに応じて柔軟に対応する、北川勝利(G.&Cho.)、奥田健介(G.)、千ヶ崎学(Ba.)、毛利泰士(Per.&Mp.)、山本真央樹(Dr.)、末永華子(Key.&Cho.)で構成されたバンドの抜群の安定感と、高いクオリティが窺えるシーンでもあった。
続いてのコーナーは、数多く歌っているキャラクターソングから2曲。スマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』から、鈴木が演じる東雲(しののめ)絵名名義の「限りなく灰色へ」を。何よりも絵を認めてもらいたいという承認欲求の強いキャラクター・絵名の葛藤を描いた曲ということもあり、鈴木の歌声にもキャラの感情が乗り、シリアスなムードが伝わる。複数のピンスポットライトがステージに対して斜めに入る演出も新鮮で、これまでとはまったくの別世界を創出していた。もう一曲は、今秋に新作劇場版の公開を控える『マクロスΔ』から、フレイア・ヴィオンとして歌謡ポップ「ルンがピカッと光ったら」を。このツアーではカントリー調のアレンジが施されており、心地よいリズムの中で鈴木もタンバリンを叩きながら熱唱。バンドメンバーとワチャワチャと楽しんだり、立て膝になって歌ってみたりと、駆け回る彼女の姿がフレイアそのもので印象的だった。
いよいよ、ライブは後半戦に突入。「gloria」では、躍動的で伸びやかな歌声が会場を包み込んでいく。その強さと優しさが一体で迫ってくる感覚は圧巻のひとこと。EDM調のサビが高揚感を誘う「最果てのハロー」では、サビの「WO WO WO」のパートで「そんな甘っちょろい拳の振りで良いんですか!」と客席を煽り、オーディエンスをさらに盛り上げていく。「リワインド」では、テクニカルな演奏とポップなメロディを鈴木の歌が巧みに接続し、その魅力を100%にして伝えていた。
人気曲の乱れ打ちにとどめを刺すように、セリフめいたユーモラスな歌唱が楽しい“狂騒曲”・「ダメハダメ」に。大サビの前には、富士山のディスプレイが施された指揮台に鈴木が登壇。挿入されたベートーベン「第九」のメロディに乗せて、ネギ型の耳かきをタクト代わりに振ったものの、アクシデントで破損してしまう事件が。だが、耳かきをプレゼントしてくれた妹への謝罪も含めて、この一連のくだりをひとつのコメディとして見せてしまう彼女にはたくましさが感じられた。
5曲連続で演奏されたこのパートのラストに選ばれたのは、デビュー曲「FEELING AROUND」。ダンスロックとしてのアグレッシブさを最大限に表現していく。これまでも様々な面白い仕掛けが行われてきた間奏部分では、声優らしくどんな設定で「ちゅる」という台詞を言うかを、岡持ちで運ばれてきたリクエストボックス(ラーメンどんぶり)から選ぶコーナーがカットイン。名古屋では、ベース・千ヶ崎からのリクエストが選ばれ、“3歳児が生まれてはじめて辛いものを食べたときの「ちゅる」”を再現することに。「言葉はどれくらい喋るんですかね?」と、赤ちゃんと3歳児の境目が曖昧な鈴木が、泣き声との境目が曖昧な「ちゅる」を繰り出す、レアな場面となった。曲のエンディングでは、高く放り投げたネギを倒れ込みながらもキャッチする大技も見せ、声優×ネギ界(?)
トップとしての矜持を見せつけた。
ラストパート前のMCでは、現在の正直な心境を吐露。昨年の公演が完全な形でできなかったことへの悔しさ、今回はなんとか東名阪を回ることができたことへの安堵と喜び、そしてスタッフやメンバーへの感謝を真摯に述べる。また、ここに来るまでに、声優・歌手である鈴木みのりとしての悩みや迷いを抱えていたことを告白した上で、「今はなんとなく、初心に戻ってきました。自分の生きがいは、お芝居と声を通して、みなさんと素敵な空間を作ること。今日は新しい一歩を踏み出す、そんな日になりました」と、ひとつのターニングポイントになるであろうこの日のライブに強い意味と価値を見出していた。
その直後に披露されたのは、『上ミノ』の中でも新しいテイストのロックサウンドである「茜空、私がいた街」。複雑に構築されたトリッキーなサウンドとメロディに対し、翻弄されるでも振り回されるでもなく、その声一本で堂々と勝負して見せた鈴木みのり。考えること、悩むことを恐れず、誠実に歌を届けようとする覚悟が、まるで歌を通してにじむようであり、この日のハイライトでもあった。本編ラストは、ミディアムバラード「エフェメラをあつめて」。少し感極まる様子も見せつつ、想い人に手紙を綴るように、丁寧に歌を届けようとする姿勢が会場全体をひとつにし、本編は終了した。
割れんばかりのアンコールを受けて、スタッフTシャツに身を包んだバンドメンバーと鈴木が再びステージに登場。ここで披露したのは、ファンクラブ「みのり隊」での人気曲ランキング1位にも輝く「Crossswalk」。1番は末永のピアノとのデュオでしっとりと語りかけるように、2番はバンドサウンドであたたかく、包み込むように。サウンドに反応しながら表情を変えていく歌声の鮮やかなグラデーションが、シンガーとしての幅の広さを感じさせるものとなっていた。
ここで新たな情報が解禁。10月から日本でも放送がスタートするアニメ『海賊王女』のエンディングテーマに、鈴木みのりの新曲「サイハテ」が選ばれたこと、そしてそのリリースが秋に決まったことが発表された。ソロ曲のリリースに、『マクロスΔ』の劇場版公開、参加するワルキューレの新作アルバム発売など、今年の秋はまさに「みのりの秋」になりそうだ。
ラストは、笑顔が弾けるポップでキャッチーなナンバー「いっせーのーでっ!」で締めくくり、約2時間のライブは大団円を迎えた。「また笑顔で会えることを約束したい」との言葉を残したあと、名残惜しそうに最後まで客席に手を振りながらステージを降りていった。
今回のツアーで鈴木は、取り繕った言葉や、決まりきったパフォーマンスではなく、自分の表現すべき感情をなるべくストレートにぶつけようとしていた。ポップでユーモラスな一面も、シリアスで陰の見える一面も、すべて私である――そんな覚悟と、それをエンターテインメントへとつなげていこうとするアーティストとしてのスタンスが、その歌や発言の端々から感じられた一夜であった。次のステージでは、制約なくそのエンターテイナーぶりを楽しみたいと思わせる、熱の込もった素晴らしい内容であった。
Text by 森樹
Photo by 中原幸
<インフォメーション>
最新情報
今年10月に国内テレビ放送開始の「海賊王女」エンディングテーマに、新曲『サイハテ』が起用!アニメ第2弾PVで楽曲が少し聴ける!更に今秋、5枚目となるニューシングル『サイハテ』のリリースが決定!
第2弾PV https://youtu.be/5yjtOm_bQkc
ライブアーカイブ情報
鈴木みのり 2nd LIVE TOUR 2021~Make My Story!~
■配信チケット:3,000円(税込)
※7月11日の東京公演のみ、現在アーカイブ配信中!ぜひチェックしてください!
【配信チケット販売期間】 6月20日(日)12:00~8月7日(水)21:00まで
【アーカイブ期間】 2021/7/31(土)22:00~8/7(土)23:59まで
【配信プラットフォーム】 Streaming+
【配信チケットの購入はこちら】 https://eplus.jp/minoringo/st/
■バンドメンバー
Guitar & Band Master : 北川勝利(ROUND TABLE)
Drums : 山本 真央樹
Drums : 渡邊シン(17日大阪公演のみ)
Bass : 千ヶ崎 学
Guitar : 奥田健介(NONA REEVES)
Keyboards : 末永華子
Percussion & Manipulation:毛利泰士
■オフィシャルグッズ
【受付サイト】
VICTOR ONLINE STORE
https://victor-store.jp/artist/18793798
2nd LIVE TOUR 2021~Make My Story!~セットリストをプレイリストで再現!
https://jvcmusic.lnk.to/MakeMyStory
最新作品
2020年8月26日発売
2ndアルバム『上ミノ』
声優界随一の「クセの強さ」を存分に生かしたキラーチューン「ダメハダメ」のアルバムバージョン、しっとりと歌い上げる王道バラード「夜空」、そして配信限定シングルとして先行カットした「エフェメラをあつめて」と、3曲のアニメタイアップ曲をひっさげ、さらに個性的な作家陣が織りなす新録ナンバーを取り揃えた、聴けば自然と「箸を伸ばしたくなる」満腹感必至の2ndアルバム。北川勝利(ROUND TABLE) & 福田正夫(FlyingDog)の共同プロデュースで、鈴木みのりの素材の味を絶妙に引き出している。
初回限定<しお盤>に付く特典BDには、初商品化となる「ダメハダメ」「エフェメラをあつめて」Music Videoと、密かなブームを呼ぶ「YouTuberみのりんご」の新作動画2本を収録。
初回限定盤<しお盤>(CD+BD)¥4,200+税 / VTZL-175
通常盤<タレ盤>(CD)¥3,000+税 / VTCL-60531
《収録曲》
01. Now Is The Time!
作詞 : 鈴木みのり 作曲・編曲 : 北川勝利
02. ダメハダメ(Album Ver.) (TVアニメ「手品先輩」EDテーマ)
作詞 : acane_madder 作曲 : 浅利進吾 編曲 : 北川勝利
03. わからないのよBABY
作詞 : 鈴木みのり 作曲 : 北川勝利 編曲 : 北川勝利・SASUKE
04. まいっちゃう
作詞・作曲・編曲 : 堂島孝平
05. 最果てのハロー
作詞・作曲 : sasakure.UK 編曲 : 有形ランペイジ
06. まぼろし
作詞 : 饗庭 純 作曲・編曲 : 出羽良彰
07. 月夜の夢
作詞 : 鈴木みのり 作曲・編曲 : myu
08. 夜空 (TVアニメ「恋する小惑星(アステロイド)EDテーマ」)
作詞 : 中村砂羽 作曲・編曲 : h-wonder
09. gloria
作詞・作曲 : acane_madder 編曲 : acane_madder・北川勝利
10. こいもよう
作詞 : 鈴木みのり 作曲・編曲 : 南田健吾
11. 茜空、私がいた街
作詞・作曲・編曲 : 照井順政
12. エフェメラをあつめて
(TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」第二部 EDテーマ)
作詞 : やなぎなぎ 作曲・編曲 : kz ストリングス編曲 : 真部 裕
《Blu-ray Disc収録内容》
01. 「ダメハダメ」Music Video
02. 「エフェメラをあつめて」Music Video
03. 出張版みのりんご~映える「肉パフェ」作って食べてみた!~
04. 出張版みのりんご~大量のTシャツ脱いでみた?!~
《配信情報》
音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて好評配信中! https://jvcmusic.lnk.to/Jo_Mino
※対応ストリーミングサービス:Apple Music、Amazon Music Unlimited/HD、AWA、Google Play Music、KKBOX、LINE MUSIC、mora qualitas、RecMusic、Rakuten Music、Spotify、YouTube Music、ANiUTa
プロフィール
2018年1月、三原康司(フレデリック)が楽曲提供し話題となった、TVアニメ「ラーメン大好き小泉さん」OPテーマ『FEELING AROUND』でソロデビューを果たす。同年12月には待望の1stアルバムをリリース。19年3月31日より「1st LIVE TOUR 2019~見る前に飛べ!~」を開催し、東名阪福Zeppツアーを大好評のうち完走。昨年2020年8月には2枚目となる最新アルバム『上ミノ』をリリース。『ダメハダメ』(TVアニメ「手品先輩」EDテーマ)、『夜空』(TVアニメ「恋する小惑星(アステロイド)EDテーマ」)、『エフェメラをあつめて』(TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」第二部 EDテーマ)の3曲のタイアップソングも収録され、好評を博した。
ずば抜けた歌唱力と幅広い表現力、見るものに元気を与える印象的な“笑顔”が武器の、今最も勢いのある声優アーティストの一人。声優としても『アイドルマスター シンデレラガールズ』藤原肇役、『カードキャプターさくら クリアカード編』詩之本秋穂役、『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』ういうい役、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』東雲絵名役などを担当している。
公式サイト http://e-stonemusic.com/minoringo/
公式ツイッター https://twitter.com/minoringo_staff
公式YouTube Channel https://www.youtube.com/channel/UC7f1T-CF50uNMmGK_I9cILQ
レギュラーラジオ 文化放送 超A&G+「鈴木みのりと笑顔満タンで!」
毎週土曜15:00~15:30 オンエア