FEATURE

2025.01.18
囁揺的音楽集団AsMR

この日、4つの新たなるNEW IMPULSEが、観客たちの熱狂という生命を取り込み、この地で産声を上げた。 囁揺的音楽集団AsMRライブレポート!!!!

 1月5日(日)にKIWA TENNOZを舞台に、3rd ONEMAN GATE「THE GATE OF IMPULSE」と題したワンマン公演の扉(GATE)を開けた囁揺的音楽集団AsMR。彼女たちは、2024年の活動を集大成した内容と同時に、2025年の囁揺的音楽集団AsMRの未来を示唆する姿を提示。外の光も取り込んだ会場という理由もあり、移ろいゆく時間の変化に合わせて演目も構成。さらに、グランドピアノを用いたことで、何時も以上に生々しく臨場感あふれるライブを見せてくれた。満員の観客たちを前にした、この日の模様をお伝えしたい。


  始まりを前に、Ayakaの語りが、この日、4つの扉(GATE)を用意したことを伝えてきた。これから開かれるそれぞれの扉(GATE)の先に、どんな世界が広がっているのだろうか、期待に胸が鳴る。


「The Impulse of God's Work」
                                             
  ゆっくりと上がるスクリーン。一つ目の扉(GATE)が開かれた。その先に広がっていたのは、荒廃した世界??囁揺的音楽集団AsMRが見せた始まりの物語。その中で最初に示したのが、『ドラゴニア』だ。
  勇壮な4つの音色と歌声がゆっくりと重なり合い、雄大かつ荘厳な景観を描きだす。交じりあう4つの旋律たちが、少しずつ熱を持って身体の中を巡りだす。目の前に広がっていたのは、頽廃した世界??その様を嘆くように。そして、ここから新たな創世の物語を告げるように、4人の優美な女神たちが、Milliの歌声をストーリーテラーに、その物語へ雄々しき色を塗り重ねだす。
                                    
 不穏な調べが流れる場内。その上でMilliが、一つ一つの言葉をゆっくりと語るように歌いながら届けたのが『Ark of Chaos』。その歌声と嘆きの旋律たちが織りなす楽曲が、まるで鎮魂歌のようにも響いていた。彼女たちは、頽廃した世界へ新たな恐怖を与えようとしていく??それとも、次第に躍動する演奏に乗せて新しい希望の世界を描きだす??Milliは歌っていた「極上ノ絶望ヨ」と。彼女たちは、目の前に広がる頽廃した世界の闇を晴らし、新たなる混沌とした世界を描きだす黒い創世者たちなのか…。曲を重ねるごと、今宵の囁揺的音楽集団AsMRが描きだそうとしている物語に、いろんな思いが巡りだす…。

  鋭利に跳ねたMilliのピアノの音色を合図に、ダークでラウドな。でも、優美さを抱いたシンフォニックな音色が流れだす。『Saturated World』が、この空間へ興奮と高揚という風を呼び起こす。魂に燃え盛る火種を灯した彼女たちの演奏に向け、フロアから熱い声が飛び交いだす。4人の創りあげる狂気を孕んだ美しくも刺立つ演奏に引き寄せられた大勢の人たちが、沸き立つ感情を抑えられず、座ったまま拳を振り上げ、声を上げていた。

 天井から射し込む光は、まだまだ明るさを注いでいる。その場へ、語り部となったAyakaが物語の続きを語りだす。そこへ絡む荘厳な音色。やがてその音は『異端者の祭典(サバト)』へと形を変えていった。4人が織りなす奈落の底で繰り広げる宴。観客たちもその場へ飛び込みたくて、ステージの上を注視しながらも、手を鳴らし、共に狂奏の仲間へと染まっていた。曲が一つ一つ進むたび、モノクロだった世界が徐々に赤黒く色づく。嘆きのシンフォニックなロックに身を預け、共に興奮を手に奈落へ落ちていけ。

 emyu:のヴァイオリンの音色が狂ったように音を掻き鳴らす。GINAも歪みを上げた攻撃的な音を響かせ、『艶麗戦歌』を奏でだす。とても力強く勇壮な歌声と演奏だ。感情が激しく高ぶったところで、さっと転調を繰り返し、ふたたび色を変えながら絶頂へと導く調べを奏でる。荒々しいカオスな演奏へ秘めた美しさを交えながら、4人は、この場にいる人たちの心へ、刺々しい天啓の言葉と演奏を突き刺し続けていた。


 次の物語の扉を開くため、Ayakaが世紀末を綴った書を手にして語りだす。彼女が告げたのは、狂気と痛みの物語。それは…。


「The Impulse of Pain」

 Ayakaが語りだしたのは、狼の血を受け継ぐ部族たちの物語。もの悲しいピアノの音色と悲壮さを覚えるヴァイオリンの旋律が響き渡る。だが、Ayakaの荒ぶる声を合図に、楽曲は絶望のオペラを描きだす。悲壮かつシンフォニックな演奏が描きだしたのは、みずからをせめぎ、葛藤し嘆く、人狼たちの心の物語。『人狼』を通して4人は、狼の血を持つが故に身悶える部族たちの痛い感情を露にしてゆく。本心をさらけだすことが崩壊へ繋がると知りながらも、己の存在を知らしめるように上げる遠吠え。それを示すような痛々しくも感情的な歌声と演奏。そして‥。

 フロア中に響いたASMR音。ピアノとヴァイオリンが織りなす美しい音色の上へ、GINAがノイズのようなピリピリとした音を重ねる。その上で語り続けるAyaka。やがて、流れだしたピアノとヴァイオリンの音色。2つの生音を軸に据えた美しくも切なさを抱いた旋律に乗せ、Milliが『Snow drop』を歌いだした。美しさと悲哀。そこへ絡む痛々しいカオスな音、常に相反する2つの表情を同時に描きながら、白い銀世界の上へ鮮血を散らすように、4人は、心癒す穏やかな楽曲へ狂気を抱いた音を滴らせてゆく。次第に暗くなる場内。間もなく外を覆う闇の訪れを感じながらも、今、この瞬間は、痛く優しい音楽にじっと身を浸していたい。

 照明を落とし気味にした舞台の上から、ふたたび感情を露にした、狂気を帯びた激しい演奏が駆けだした。曲が進むごと、深い抑揚を持った荒々しい歌声を響かせるMilli。他のメンバーたちも、抑えていた感情やの頭の中を支配していた理性を『震撼SCREAMER』に乗せて消し去ろうとしてゆく。4人がサビで魔物のように荒ぶる感情を剥き出し、攻撃するように刃を突きつけたとき、身体中を熱い血が駆け巡った。

 「サ・ヨ・ナ・ラ  ヒ・カ・リ  オ・カ・エ・リ ナ・ミ・ダ」と囁くAyakaの声を合図に、激情した攻撃的な音が鳴り響く。『トレモロ』だ。胸の内に抱いた破裂しそうな気持ちをぐっと抑えながら。でも、ときに理性の留め金を外し、荒ぶる感情を剥き出しに歌い奏でる。1曲の中で彼女たちは、これまで以上に深く鮮烈に、感情の振幅を歌や演奏に乗せて描きだす。Ayakaの甘い囁き。乱れ揺れる気持ちのまま、ピアノの鍵盤を叩きながら感情的に歌いあげるMilli。その様はまさに、激情した心模様を晒した生々しいドラマだ。 

 不穏なピアノの旋律に乗せてMilliが、世に渦巻く様々な感情をすべてみずからの歌声で抱きしめるように『Abyssphere』を歌い奏でだした。そこへゆったりと絡む3人の演奏。emyu:は、歌い奏でるMilliの表情を見ながら、その気持ちへ寄り添うようにヴァイオリンを弾いていた。そこへ、Ayakaの語りが重なりあう。静かなる衝動。メンバー一人一人の奏でる音色が際立つように耳に届くのも、Milliの歌へ寄り添い、共に嘆きのドラマを音の絵筆で綴っていたから??‥。


 Ayakaの語りを合図に、3つ目の扉が開こうとしていた。光が漏れだす扉を開けたその先に広がっていたのは‥。その世界を目にした人たちが覚えた覚醒とは‥。


「The Impulse of Awakening」

 Milliのピアノの音色が踊りだしたとたん、フロア中の人たちが一斉に立ち上がり、荒ぶる声を上げだした。囁揺的音楽集団AsMRは『Snare』を突きつけ、それまで胸の奥に閉まっていた観客たちの興奮のGATEを解き放ち、光に満ちた熱狂の空間へ呼び入れた。跳ねた激しい演奏の上で、emyu:の弾き倒すヴァイオリンの音色がさらに激しく感情的に躍りだす。そして‥。

  GINAとAyakaが荒ぶる音をぶつけるのを合図に、『光喰者』が飛びだした。4人が心を獣のような捕食者に染めあげ、荒ぶる感情を剥きだして襲いかかる。今まで以上にMilliの歌声が、凛々しさを持って胸に突き刺さる。emyu:に至っては、ステージの上を矢継ぎ早に移動しながら狂気の旋律を奏で続けていた。emyu:と絡むAyaka、一心不乱にギターを掻き鳴らすGINA。4人が放った輝き放つ攻撃的な音に刺激を受けた満員の観客たちが、身体を揺らし、ときに声を荒らげ、拳を突き上げ、自分たちも感情を露にし、4人に高ぶる思いをぶつけていた。

 熱情した心に、囁揺的音楽集団AsMRが繰り出す攻撃的な音楽は最高に刺激的な媚薬となる。すっかり暗くなった場内に流れだした『雷命INFESTER』でも、観客たちが声を荒らげれば、魂を剥き出しにした4人が戦いの神となり、会場という荒野へ、身体を震撼する衝撃を次々と落としてゆく。いつしか観客たちも声を張り上げ、身体を大きく折り畳み、ヘドバンに興じていた。その様へAyakaが魔法の呪文を述べる。荒ぶる翼を羽ばたかせ、闇夜を翔るような雄々しき様でMilliが歌えば、3人が勇猛かつ麗美な演奏を通し、その歌声へさらに天翔ける力を授けていった。

  GINAのギターの音がこの空間へ雷鳴のような衝撃を落としだす。Milliの呪文のような言葉を合図に、この場を熱情した宴の場へ染めあげるように『PARADOX』を演奏。いや、宴というよりも、ともに気持ちを高め、最後の扉(GATE)を開けるために進撃してゆく儀式や集会のような様が、この場に生まれていた。大勢の観客たちが力強く手を打ち鳴らし、Milliの歌へ掛け合うように声を上げる。一瞬のブレイクから、ふたたび跳ねた荒ぶる演奏へ突き進んでゆく際には、Milli以外の3人が大きく飛び跳ねて演奏。みんなで気持ちを一つに高めあい、最高の興奮と高揚の様をここに創り上げていった。


  ついに、最後の扉へ。その先に見えるのは、どんな未来??「刮目せよ、The Gate of New Impulse」とAyakaが唱える。その言葉を合図に‥。


「The Gate of New Impulse」

  最後の扉を開いたその先に見えたのは、心を躍らせる華やかな宴の様。ダークファンダシーな世界を描き続けてきた囁揺的音楽集団AsMRが新たに見せたのは、マジカルでファンタジックな。微睡む幻想への場と連れ出す音の媚薬を身体中に注ぎ込む、舞踏歌の『cult à la carte』。心を軽やかに躍らせる歌や演奏に導かれ、身体が心地好く揺れ動く。だから、観客たちも手拍子をしながら、まるで見せ物小屋のステージの上で繰り広げられる舞台劇に嬉しく酔いしれていた。

  続く『a・ni・ma』で囁揺的音楽集団AsMRは、この場にいる人たちを微睡む悠久の世界へ誘いだした。ノスタルジックで幻想的な、鬱蒼とした深い森が広がる異世界へ誘うような音楽だ。Milliは、物語の語り部となり、この場にいる人たちを厳かで幻想的な音の波紋の広がる世界へと導いてゆく。まるで現世から隔絶された美しい桃源郷のような楽園で戯れるような楽曲だ。古の香りに、このままずっと包まれていたい。

 すっかり暗くなった場内へ、オリエンタルかつ荘厳で聖なる幻想的な音色が流れだす。『カルデラの虎』でも4人は、触れた人たちを現世ではない、時代の波を忘れた古の世界へと連れ出し、目の前に不思議な、でも、胸の奥から気持ちを揺さぶるドラマを描きだす。ゆったりとしながらも、次第に躍動してゆく演奏に乗せ、観客たちも手拍子をしながら、物語の行方を追いかけていた。彼女たちは、毒々しい童話のような幻想耽美な世界を目の前に描きだしていた。触れてはいけない巻物を開いたときに記されていた物語に、心をドキドキしながら惹かれていた。

 囁揺的音楽集団AsMRが最後に届けたNEW IMPULSEは、観客たちを総立ちにし、熱くクラップをし続けたくなる、激しく躍動する幻想ゴシック&シンフォニックな『Maleficium』だ。鍵盤を力強く叩きながら歌うMilliへemyu:が寄り添い,さらに狂気を呼び起こす旋律を奏でる。惑い、激情する感情を、激しく振幅させながら、彼女たちは荘激なドラマを見せてきた。転調するたびに気持ちが高揚していく。黒い熱を身体中に孕みながら、一緒に絶頂へ駆け上がっていくような楽曲だ。まさにこの日、4つの新たなるNEW IMPULSEが、観客たちの熱狂という生命を取り込み、この地で産声を上げた。


 アンコールでは、もう一度『PARADOX』を演奏。彼女たちは、ふたたびこの場を熱情した宴の場に染め上げだす。この曲でMilliはピアノの演奏を止め、マイクを手に前へ出て観客たちを煽るように歌っていた。Milliの歌を先導に、GINAとAyakaが飛び跳ねなから演奏。emyu:も、気持ちをさらに解き放ち、狂喜の旋律を次々と響かせていた。身体を大きく反らし熱唱するMilliへ導かれるように、3人の演者たちが演奏しながら飛び跳ねていた。場内中の人たちも、声を荒らげて跳ね続ける。まさしく熱狂という言葉に相応しい宴が、ここに生まれていた。

 囁揺的音楽集団AsMRの新しい表現の扉を開いたライブだった。開いた先に見えた、覚醒した4人の姿に興奮が収まらない。だから、新たな扉(GATE)を開いた囁揺的音楽集団AsMRの未来に強い期待を持たずにいれなかった。
 

LIVE

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PHOTO:鶴田健吾
TEXT:長澤智典


セットリスト
「The Impulse of God's Work」
『ドラゴニア』
『Ark of Chaos』
『Saturated World』
『異端者の祭典(サバト)』
『艶麗戦歌』

storytelling

「The Impulse of Pain」
『人狼』
『Snow drop』
『震撼SCREAMER』
『トレモロ』
『Abyssphere』

storytelling

「The Impalse of Awakening」
『Snare』
『光喰者』
『雷命INFESTER』
『PARADOX』

storytelling 

「The Gate of New Impulse」
『cult à la carte』
『a・ni・ma』
『カルデラの虎』
『Maleficium』

-ENCORE-
『PARADOX』



2025年1月27日(月)「Mashup LIVE -異彩- Vol.25」
開場 18:00 / 開演 18:15

[会場]
渋谷REX
https://ruido.org/rex/access.html

[出演]
太田家/囁揺的音楽集団AsMR/月照ラス/Mellows

[チケット]
■会場
前売 ¥4,000 / 当日 ¥4,500
https://r.funity.jp/mashuplive_vol25

■配信
ニコニコチャンネル『Galpo live Show!』にて配信
https://ch.nicovideo.jp/galpoliveshow

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