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XOXO EXTREME|ここでいったん全ての力を出すんですが、その先のことも示すライブになるかな、と
XOXO EXTREME(略称:キスエク)は、世にも珍しい"プログレ・アイドル"である。
筆者は強度の"プログレッシャー"(プログレッシヴ・ロックが大好きな人のこと)だ。ゆえに生半可な気持ちでは近づけなかった。構築美が肝となるプログレと、拙さをも魅力に変えるアイドルとの融合は、極めて興味深いものではあったが、同時に極めて難しいものだと感じていたのだ。そもそもプログレは、ロックとクラシックやジャズ、サイケデリックや電子音楽など、様々な要素がミックスされたものであるがゆえに、そこに"アイドル"が加わるのも方法論的には"アリ"だが、そこには繊細な設計図が必要であろう。例えば「パンクとアイドル」ならアイドルの拙さが"捨て鉢"という魅力となって融合できるであろうし、「アイドルとエレポップ」ならアイドルの未熟さが独特の多幸感を生む要因ともなりうるが、プログレとアイドルの異物混合が生み出すカオスは、一か八かの勝負の産物としてではなく、それを一つの意図的な展開としてコントロールしなければ、相乗効果を生まないと個人的には感じていた。その点、初期のキスエクにおいては、斬新かつ奇抜なアイディアを次々と打ち出しつつも、極めて緻密なバンド演奏(あるいはそのオケ)と発展途上のパフォーマンスとのズレが悪い意味での違和感として表出していたように筆者には思えた。ゆえに少々厳しい目を向けていたのも事実だ。
だが、キスエクはぐんぐん進化していった。キング・クリムゾンの「エレファント・トーク」に“女子”要素を加えて見事に翻案した「えれFunと"女子"TALK ~笑う夜には象来る~」は、かのエイドリアン・ブリュー(元曲でヴォーカル&ギターを担当、などと改めて説明するまでもないか…)から「いいね」をもらったことでも話題となり、マグマの「The Last Seven Minutes」をリリースした際には、本家からもお墨付きをもらって“公認カバー”となった。また、金属恵比寿とのコラボレーションでアネクドテンのカバー「Nucleus」をリリースしたり、「キグルミ惑星」ではフレットレス・ハープギターの第一人者として名を馳せると同時に、プログレッシヴ・メタル作品も多数リリースする大物ギタリスト、ティム・ドナヒューをフィーチャーしたり…。と、本物のプログレ勢を次々と巻き込んでいき、好事家を唸らせつつ、その名をアイドル界隈及びプログレ界隈で浸透させていった。
加えて、小嶋りんは、幼少から鍛え上げてきたヴァイオリンの腕前を披露する機会が増え、re-in.Carnationに客演するなどヴァイオリニストとしての側面も打ち出してきた。また、一色萌はre-in.Carnationのヴォーカルを担当し、さらに11月にはソロデビューを果たし、デフ・スクールのカバー「TAXI」では本家との“共演”(バックトラックをデフ・スクール自身が新録)まで実現している。
そして何より、彼女たち自身のパフォーマンスが格段に向上しているのだ。キスエクは結成以来これまで比較的メンバーの出入りが激しかった(昨今のアイドルグループでは珍しくはないことだが)。楠芽留をリーダーとする体制から、一色萌、小嶋りん、浅水るりによる"そして3人が残った"体制を経て、歌もダンスも強化され、本格的な”プログレアイドル"が確立されたのだ。
そして、コロナ禍による自粛期間を経て、真城奈央子が加入。新たな4人体制が固まり、自粛明けのライブとしては最大規模となるワンマンライブを11月27日に行うこととなった。「Re:UNION」と題されたそのライブは、「UNION」と題された2019年9月の2ndワンマンを受けてのもの。「UNION」は、ABWHと90125イエスが合体した“イエス”の唯一のアルバムのタイトルでもあるが、ジョン・アンダーソンを軸に2つのバンドが交互に、あるいは同時にバックを務める変則的なショウを行っていた“UNION”イエスを模したかのように、AlsciaukatとSilent Of Nose Mischiefという日本の凄腕プログレ・バンド2組が演奏を担っていた。そして、3rdワンマン「Re:UNION」でもこの2バンドを擁したものとなり、さらには5曲もの新曲を披露するらしい。インタビュー本文でも述べられているように、集大成であると同時にキスエクの未来も提示されるとのことだ。
そんなキスエクの一色萌、小嶋りん、浅水るり、真城奈央子にお話を伺った。新体制について、各メンバーの素性やプログレ観について、そして3rdワンマンについてなど、じっくりと語っていただいた。
自分の持ち味を自分なりのやり方で表現できるグループかなって思います(小嶋)
――まずはキスエクって簡単に言うとどんなグループですか?真城さんからいきましょうか。
真城奈央子(以下:真城):オンとオフのメリハリがきっちりしてると思います。普段は皆さんすごい楽しくて、ふわーっと緩い感じなんですが、練習とかステージとかではすごいキリッとしてて、格好いい曲やシリアスな曲もバシッと決めてくる、みたいなのがすごくいいなと新メンバーながら思っています。
――なかなかユニークな視点ですね。浅水さんはいかがですか?
浅水るり(以下:浅水):唯一無二な音楽をやっていると思います。“プログレアイドル”ということで、ただプログレなだけじゃなくてアイドルっぽい曲やっていて、そのアイドルっぽい中にも、格好いいアイドルとか可愛いアイドルとか、いろいろあるので、そういった色んな要素が合わさって出来ているみたいな。他にはあまりない音楽だと思いますね。
――プログレ自体がジャズやクラシックなどいろんな要素が入っている音楽ですから、そこにアイドルが入ってもいいわけですもんね。
浅水:はい。
――小嶋さんはいかがですか?
小嶋りん(以下:小嶋):自分のダンスだったり、歌もそうなんですけど、「こうして」みたいなのを指定されないので、自分の持ち味を自分なりのやり方で表現できるグループかなって思います。
――へえー。例えば振り付けって一応は決まっているわけですよね?
小嶋:はい。振りはついてるんですけど、自由にやることも多いですし、決まった振りの中でも自分は「こういうふうに表現しよう」っていうのを出していると思います。
――なるほど。プログレっていうと緻密に構築されているってイメージありますが、その中でも自由度があるという感じですかね?
小嶋:そうですね、はい。
―― 一色さんはいかがでしょうか?
一色萌(以下:一色):そうですね。3人がいろいろ言ってくれたので被っちゃうんですが、やはり「他にない」っていう点が一番大きいと思います。音楽的にそうですし、メンバーも個性的な子が個性的なまま活動ができているっていうのが、他にはないんじゃないかなって思います。それぞれの個性的な部分を「こういうグループだからこうして欲しい」って感じで削ぎ落としてハメなくても、そのまま伸び伸びできているっていうか…。プログレっていうジャンルは「堅苦しい」ってイメージがあるみたいで、「やりたいことができないんじゃない?」って言われることも少なくないんですが、りんりん(小嶋)も言ってたように、意外と自由度が高いって思いますね。
――ガシッとした構築美を、「あなたはこうして」「あなたはこうして」っていう風に型にハメて作っていくのではなくて、それぞれの個性を生かすような自由度の高い環境の中から出てきたものを、上手く融合させて“プログレアイドル”を成立させていると。
一色:はい。
――なるほど。それは大嶋プロデューサーの手腕も大きいんだと思います。
大嶋プロデューサー:余談ですけど、今ちょっとキング・クリムゾンを思い浮かべました。
――あぁ、はい。
大嶋プロデューサー:キング・クリムゾンって堅苦しくて全部決まってるようなイメージあるじゃないですか。
――はい、はい。
大嶋プロデューサー:ギャヴィン・ハリソン(編注:キング・クリムゾンの現ドラマー)が「キング・クリムゾンは好きなことさせてくれるんだ」とか言って、僕なんか「えぇー!」って驚いたんですが…。何かそれに近いのかなと思いました。
――なるほど。確かに1stの『クリムゾン・キングの宮殿』から3rdの『リザード』あたりまではクラシック寄りの構築美を重視していた感がありますが、『太陽と戦慄』あたりからは、ライブでの即興演奏がそのまま曲になったり、と自由度が高まり、その後もいろんな変遷がありつつ、現在の“ダブルカルテット”もみんなめちゃくちゃ上手いので統制されている感がありますが、即興性も強いんでしょうね。そういう意味では、キスエクもだんだん後期クリムゾンに近づいてきたみたいな(笑)。
一同:(笑)
――で、真城さんが8月に加入して10月に正規メンバーに昇格。ようやく新しい4人体制が固まったと思いますが、それまでは割とメンバーの出入りが多かったですよね。
小嶋:多いんですかね?
一色:どうなんですかね。結構目まぐるしく今まで来ちゃったんですけど、奈央子ちゃんが入ってくるまでの1年ぐらいはるりちゃんとりんりんと3人でずっとやってきたので。
――はい。3人の時期が結構長かったですよね。
一色:1年ぐらいあって。その前はるりちゃんが入って、ちゃんまお(小日向まお)が抜けてみたいな、ちょっとバタバタしたんですが、その前はめる(楠芽留)さんとりんりんとちゃんまおと私の体制が結構長くて、やってる本人たちには、そんなにメンバーの出入りが激しいと感じてはないかもしれないです。
――なるほど。
大嶋プロデューサー:一人一人を見るとそれぞれ意外と長持ちしているので。地下アイドルの尺度で言うと、それほど激しくはないんじゃないかと思います。
――まぁ、もっと出入りの激しいグループはいっぱいいますから、とりわけ目立つってわけではないですよね。ただ、真城さんが入って……まあ、これから皆さんがどう考えてるのかわかんないですけど(笑)……なんかこう安定期に入りそうな印象があるんですが、皆さんとしては、この4人のラインナップはいかがですか?
一色:そうですね。奈央子ちゃんが違和感なく入ってきてくれたので、安心感があります。私たちとしても4人体制だった時期がすごく長かったので、3人でやってきたこの一年は初めてのことばかりだったんですよ。「これ3人でやったことない」っていうことのオンパレードで。もともと4人用に作っているものが多くて。なので、奈央子ちゃんが自然に入ってきてくれたので、今はめちゃめちゃやりやすいです。
――そういう風に言われていますが、真城さん、いかがですか?
真城:いや、すごくうれしいです。
――真城さんご自身は今の4人はいかがですか?
真城:すごく活動しやすいです。まだまだダンスとかついていけないところがあったり、たくさん曲を覚えなきゃいけなかったりするんですが、でも先輩方がいろいろ教えてくださって、覚えやすい環境を作ってくださっているというか。見た目よりも自分の負担が少ないように感じます。皆さんが手伝ってくださるので。ホントに頑張りやすい環境というか、「頑張らなきゃ」って常に思わせてくれる感じがして、すごくやり甲斐があるなと思っています。
一色:奈央子ちゃんはそう言ってくれるんですけど、実は逆で。奈央子ちゃんがめちゃめちゃ覚えるの速くて、すごい頑張ってきてくれるんです。まだやる予定じゃない曲とかも、舞台袖でダンスを見て覚えててくれたりとかして、「これやってね」って言う前から準備してきてくれるので、こんなに教えやすい後輩はいないって感じですね。というか、教えることが本当にないです。
――さすが優秀ですね。
真城:(恥ずかしそうに首を振る)
――浅水さんはどうですか? この4人は。
浅水:奈央子ちゃんは私にとって初めての後輩なんですね。なのでファンの人からも「るりちゃん、先輩になるね」って言われて、いろいろ頑張らなきゃと思ったりして、最初はちょっと緊張してたんですよ。でも、本当に奈央子ちゃん、後輩なのかな?っていうぐらいしっかりしてるし、私も全然心配することなくすごく楽しくできるようになって…。今本当に楽しいです。いい後輩です。
――浅水さんは“そして3人が残った”状態のキスエクの1つのピースとして支えてきたわけですもんね。
浅水:何だかんだで、はい。役に立ててたらうれしいですけど。3人で1年ぐらい活動してたんですが、本当にあっという間でした。
――りんさんはこの4人、いかがですか?
小嶋:私はキスエクの割と初期の頃からいるんですが、メンバーが変わる度にグループの雰囲気や色が変わっていってるなっていうのを感じていて。で、3人になってからは結構ダークめな感じになったんですが、奈央子ちゃんが加入して明るくなったんですよね。奈央子ちゃん自身がすごく明るいキャラで……自分では陰キャって言ってるんですけど(笑)……グループの雰囲気も、まあもともと仲悪いわけじゃないですけど(笑)、明るくなって、すごく楽しくやってます。
――皆さんおっしゃいましたが、それぞれが個性的で、ラインナップや時期によっても個性があると思うんですが、じゃあ今のこの4人のグループとしての個性って何だと思いますか? これまでとはどこが違うでしょうか?
一色:この4人になって、私たちはひたすら一生懸命やってるだけなんですが、お客さんからは「パフォーマンスのクオリティが上がった」「世界観がすごく深まった」ってすごい言ってもらっていて…。これまで私たちがやってきてた中で、芽瑠さんが抜けたっていうのが大きくて。ずっとリーダーで、キスエクの“プログレアイドル”の“アイドル”の部分を芽瑠さんが全部一人で担ってきたみたいな感じだったんですよ。可愛い担当として。芽瑠さん自身もそれを一番重視してパフォーマンスしてたと思いますし…。その可愛い担当が抜けた時にどうなるの?っていうのが、私たちもお客さんもみんな不安だったと思うんです。その時に「どうしようか?」ってちょっと話して、曲の世界観を深めようとか、一生懸命格好いいステージを見せようっていうことを、3人で話して決めたんです。それで1年間一生懸命やってきて、形になりつつあったものを、奈央子ちゃんが最後にピースとして入ってきてくれて、補強してくれたって感じですね。
――あぁ、僕もまさにそんなことを感じています。るりさんはいかがですか?
浅水:はい。今回、奈央子ちゃんが入ってきてくれて固まったみたいな感じのことを私も思っていて。あと、奈央子ちゃんはカッコいいのが似合うけど、意外と可愛い声とかも個人的にいいなって思ったりしてるんですよ。新しい要素が入ってきて、久しぶりにやった曲も最近あって、そういう意味では"そして3人が残った"の続編みたいな感じでもあり、新しい時代に入った感じもあり、って思います。
――3人で作ってきたカッコいいものが、真城さんによって補強され、今は完成に向かっているという感じですね。
浅水:はい。
――では真城さん。
真城:みんな一人一人個性的なんですが、グループ全体で見た時に違和感がないと感じていて、結構それってすごいことだと思うんですよ。普通個性が立ち過ぎると纏まらない感じがするんですが、今のキスエクにはなんかそれがなくて。纏まるレベルで最大限に個性を発揮しているって感じですね。それによって音楽の幅も広がるような気がしています。
――なるほど。一つにはなるけど、でもガシッとハマって平らになっちゃうわけではなくて、ある意味デコボコに個性が残ってると。そのバランスが絶妙なわけですね。
真城:はい。
――また新たな色が加わって“新しい4人のキスエク”になったわけですね
一同:はい。
XOXO EXTREME リリース情報
最新シングル:「フェニキスの涙」
発売元:Twelve-Notes
品番:TNR-0022
仕様:CD 紙ジャケット
価格:1,200円(税別)
XOXO EXTREME ライブ情報
11/27(金)XOXO EXTREME 3rd ワンマンライブ ~Re:UNION~
会場:渋谷クラブクアトロ
18:00 OPEN 19:00 START
来場チケット:4,000円(税込) ※入場時にドリンク代別途600円
配信チケット:2,000円(税込)
購入はこちら
https://upluslive.udo.jp/schedule/20201127.html
追加来場チケット
https://eplus.jp/sf/detail/3304620001
Alsciaukat(アルシャウカット)
Gt: 林 隆史(Qui)
Fl: 吉田 和夫(Qui)
B: 瀬戸 尚幸(Qui)
Key: 大沼 あい
Dr: 谷本 朋翼(STELLA LEE JONES、新●月プロジェクト、etc)
Silent Of Nose Mischief
Gt: 稲葉 敬
B: 根岸 和貴
Key: 諸田 英慈
Dr: 仁科 希世彦
Mani. : 細井 総司
■配信に関するお問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
12/19(土)re-in.Carnation 1stワンマンライブ~re-Animator~
会場:小岩オルフェウス
OPEN 17:30START 18:00
前売¥3,000- 当日 ¥3,500-(各+1D)
ご予約はこちら!(限定45名)
https://tiget.net/events/110605