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2023.03.12
Pretty Ash

フロアにいる仲間たちへ熱い視線を向けながら、自分たちの生きざまを伝えてきたのが嬉しかった。 Pretty Ash ワンマンライブ〜現体制終了ライブ〜」ライブレポート

 ついにこの日が訪れてしまった。2月25日、Pretty Ashは横浜みなとみらいブロンテを舞台に「Pretty Ash ワンマンライブ〜現体制終了ライブ〜」を行った。当日の模様を、ここにお伝えしたい。

 意外に穏やかにみえる場内だが、訪れた人たちの胸の内には、きっといろんな思いが渦巻いていたと推測する。ただ、それを出してしまうと心が壊れてしまうからこそ、みんななるたけ平静を装っていたのだろうか…。

 

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 「このメンバーではこれがラストライブ!みんなで拳上げて、声だしていくよ!」の声を合図にライブはスタート。冒頭を飾ったのが、デビュー曲の『アイデンティティ』。メンバー一人一人が、Pretty Ashのメンバーとして培った自分の生きざまを、この曲を通してフロアにいる仲間たちへ向けて伝えてきた。みんな笑顔だ。悲しみの欠片をすべて扉の奥にしまい込み、今は、この場で自分を輝かせようとしていた。いや、ここで輝くことを思いきり楽しんでいた。その輝きがフロア中に降り注がれるたびに、この空間自体が、眩しい輝きに包まれることを彼女たちは数えきれないほど体験してきた。でもこの日の輝きには、濡れた涙の輝きも加わりそうだ。

 

  この日のライブは、一つの区切りかも知れない。だけどそれは、メンバー一人一人にとって後ろ向きの決断ではない。彼女たちは、果てし無く広がる空の先に待っている新しい楽園へと進むため、Pretty Ash(アイドル)としての翼を閉じる。それをわかっているからこそ6人は、Pretty Ashとして輝いてきた自分たちの姿をみんなの心に刻もうと力強く舞台を蹴り上げ、心の両翼を大きく広げ、『僕たちはイカロスじゃない』を歌いながら羽ばたく姿を見せていた。とても凛々しくて力強い歌声だ。そこには、彼女たちの強い意志と決意が漲っていた。その歌に触れた僕らも、彼女たちが焼き付けようとしていたその姿を、熱狂しながらしっかり心に焼き付けていた。

 

 「伝えたい思いを歌にしてあなたに」と優しい声で歌うメンバーたちの姿に、胸がキュッとした。楽曲が激しくなるのに合わせ、彼女たちは思いきり身体を躍動しながら『限界突破でWe Go!』を歌いだした。フロアでも、メンバーらの勢いに引っ張られるように、その場でピョンピョン飛び跳ねる人たちが登場。6人は、信じた自分の夢や意志を胸に、一緒に限界を突破する勢いで突き進もうと声をかけてきた。彼女たちの言葉を信じた大勢の人たちが、その場で思いきり飛び跳ね、限界突破する勢いで騒いでいた。

 

   疾走するビートポップチューンの『Say Hello』で6人は、大きく手を振り上げ、無邪気な笑顔で「叫べ Say Hello」と歌っていた。メンバーたちの手の動きに合わせ、フロア中の人たちも、色どりどりのペンライトや拳を振りながら彼女たちと一緒に声を張り上げていた。いいよね、気持ちを一つに熱く一体化した景色を作りあげるって。身体が自然に騒ぎだす。だから、6人と一緒にニヤけた顔で飛び跳ねてしまうんだ。

 

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  この日のライブでは、活動初期の楽曲から、歩みを重ねるように歌われていた。その理由もあり、MCでは「10人で始まったね」と、当時、ステージのフォーメーションで苦労したこと。TIFに出演したことなど、いろんな思い出話に花を咲かせていた。

 


  ライブは、時代の歩みと寄り添うように進んでゆく。次に歌ったのが、2ndシングルの『Believers』。胸の内をスカッとした風が吹き抜ける、とてもエモい気持ちに染め上げるアッパーチューンだ。彼女たちの動きに合わせ共に手を振り上げ、身体を揺らすのはもちろん、一緒に夢見る気持ちを分かちあっていたあの頃の姿がいろいろ脳裏に甦る。踏み出すことを恐れることなく、自分を信じて駆けだしていたあの頃の彼女たちの姿が次々と頭の中に映し出され、なぜか胸がキュッと鳴っていた。メンバーらと一緒に大きく手を振り上げ、その場で飛び跳ねながら無邪気にはしゃぐ人たちも、気持ちの中にちょっぴりセンチな思いを隠していたのだろうか。でも『Believers』は、一緒にシンガロングしたくなる、気持ちを前に向ける明るい歌。だからこそ、何時しか悲しみなど吹き飛ばし彼女たちと一緒に騒いでいた。

 

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  破壊力満載な音に気持ちを重ね合わせ、6人は強い意志を胸に『Reality』を歌っていた。 彼女たち自身が、この曲を通して感情を奮い立てていた。曲が進むごとに強い意志を込めた歌声が、気持ちを揺さぶる衝撃を持って伝わってきた。身体を大きく揺さぶり歌うメンバーらの姿に刺激を受け、気持ちが熱く騒いでいた。

 

  その衝撃は、心を複雑に揺らす嬉しい毒だ。彼女たちは3rdシングルの『恋は毒だ』を通し、可愛らしさの中にも妖しく挑発する小悪魔女子な視線を見せながら、舞台の上で弾け飛んでいた。メンバーらとフロア中の人たちが熱くクラップを交わす場面。落ちサビで6人が妖しく歌う姿に向けてフロア中から起きたケチャの風景。その後、一緒に飛び跳ねあった姿など、めちゃくちゃエモい熱狂の様が、この場に生まれていた。

 

  「頼りないこの信念 隠して」と、メンバーが凛々しい声を一つに『STEADY』を歌いだした。気持ちを熱く騒がせる楽曲の連打に、観客たちも理性のストッパーをOFFにし、ずっとずっと騒ぎ続けていた。なんてむちゃくちゃエモいライブだ。6人と一緒に身体を折り曲げ、拳を突き上げ、共に歌い、騒ぎ続けていたい。確かな夢に向かって声を張り上げ突き進み続けるメンバーたちと一緒に、このまま突き進み続けたい。

 

  最後は、Pretty Ash流の青春パンクナンバーの『はじまりのうた』。彼女たちの未来にどんなことが待ち受けているのかは正直わからない。でも、歩み続ける道の先に夢や未来を示す輝きが見えるのなら、彼女たちは舞台の上でひと際輝いていたこの日の姿を、消えない思い出の力にしながら進んでゆくのだろう。6人は、今、この場に一切の後悔を残すことなく。だけど、今にも泣きだしそうな笑顔で 「いつだってここから始めるんだ」と歌っていた。物語の舞台を変えることは容易でも、その物語を輝かせることはたやすくない。それでも、彼女たちが「いつだってここから始めるんだ」と歌った、その声の行く先へ、今は素直にエールを送りたい。

 

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 アンコール前に、メンバー一人一人が認めた手紙を読み始めた。

  「本日を持って、わたしはアイドル活動も卒業します。今までたくさんの苦悩もあり、たくさんの夢を叶えて、最高のメンバーと、最高のファンの方々と一緒にこの日を迎えられたことは、卒業というのに相応しいのではないかと思います。
  一人娘が自由奔放で心配をたくさんかけてしまったのに、誰よりも側で楽しく応援してくれた家族。メンバーの顔と名前だけじゃなくて、ファンの方の名前も覚えて応援してくれたお友達。メンバーの意向を汲み取ってたくさん協力してくれたスタッフのみなさん。2年以上一緒に活動してきた戦友、Pretty Ashのメンバー。原点である、AKIHABARAバックステージpassのみなさん。そして、いろんな試練も、楽しいことも一緒に乗り越えて応援し続けてくれたファンのみなさん。みなさんがわたしにとっての宝物です。本当にありがとうございました。離れていても、みなさんの明るい未来を祈っております。今後も、Pretty AshとPretty Ashの楽曲を愛し続けていただけたら嬉しいです」(INORI)

 

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  「わたしはPretty Ashの新メンバーとして約2年間活動してきたのですが、振り返ってみると、どれも素敵な思い出ばかりで幸せだったなと思います。Pretty Ashに加入して、自分だけの衣装、歌割、立ち位置をもらえて嬉しかったことを、今でも鮮明に覚えています。もちろん、楽しいことばかりじゃなくて、他のグループとは違って、何を決めるにも投票だったり、なかなか対バンライブに出られなかったり、何かないとレッスンがなかったり、もどかしいなって思ったこともありました。でも、そこであきらめずに、メンバーだけで集まってレッスンをしたり、どうやったらファンのみなんに喜んでもらえるかなって話しあったり。そういう時間を通してメンバーとの絆も深まったので、今ではもどかしかった時間も大切だったのかなと思います。
  そして、ファンのみなさんの応援のおかげで、たくさんの夢を叶えていただきました。お願いすることがたくさんあって、心苦しいなと思うこともあったけど。みなさんが一緒に頑張ろうって支えてくれて、とっても心強かったです。だからこそ裏切らないように何時も全力で取り組んだし、ファンのみなさんはそれに答えようとたくさん応援してくれたこと、本当に感謝しています。
  Pretty Ashとファンのみんなは二人三脚で、一緒にいろんな道を歩んで戦った、強い絆で結ばれた素敵な関係だなって思っています。だから、これからもみなさんのことはずっと大切だし、忘れません。いつも一緒に楽しくて最高のライブを作ってくれてありがとう。Pretty Ashに出会ってくれて、応援してくれてありがとう。大好きだよ」(SARA)

 

  「みんなにオレンジを振ってもらうのも、今日で最後だと思います。今までたくさんたくさん、本当にありがとうございました。Pretty Ashに入ってからのみんなとのライブも、特典会も、プリクラ会も、思い出一つ一つが、本当に大切で宝物です。
  後輩が中心のグループに入ることの気まずさもあったけど。気づけば、メンバーみんなと同じ学校の友達みたいに仲良くなって、今では何でも言い合える、くだらないことで笑い会える、大切な大切な仲間です。そして、何よりも応援してくれるみんなのおかげで、私たちは今、卒業ライブもこうして無事に開催することが出来ています。本当にありがとうございます。
  自分が卒業する日が来るなんて想像もしていなかったけど。何事にも終わりが来ます。みんなには「まだまだPretty Ashを続けてほしい」と思ってもらっている人もいるかも知れないです。期待に応えられなくてごめんなさい。もっともっとみんなと見たい景色もたくさんあったけど、Pretty Ashをもっとたくさんの人に届けたかったけど。わたしにとってのPretty Ashはこの6人なんです。この6人で最後のライブが出来て、本当に本当に幸せです。Pretty AshのHARUKAとしての活動は、わたしの一生の宝です。出会ってくれて、支えてくれて、見守ってくれて、本当にありがとうございました」(HARUKA)

 

  「バクステ外神田一丁目のジャケット選抜にも入れず、マンスリーランキングの1位も取ったことがなかった当時のわたしが、新ユニットに入りたい、頑張りたいという強い気持ちがあり、応援してくれているみなさまの投票のおかげで加入することが出来て、早くも4年の月日が経とうとしています。アイドルという華やかな職業のはずなのに、まわりのみんなに比べて鈍い光でしか輝けなかったわたしに、目を細めたくなるくらい目映いスポットライトで照らしてくれたのがPretty Ashでした。
  わたしのサイズで作られた衣装、わたしに決められた歌割り、立ち位置。楽しくて、嬉しくて、美しいことばかりというわけにもいかず、辞めていくメンバーや、コロナ禍というどうにもしようがない向かい風。ダンスが下手だったり、人間関係が上手くいかなかったり、悩んだことも、怒られたことも、怒ったことも、つらく苦しい気持ちもたくさんありました。それでも今日まで続けてこれたのは、Pretty Ashが好きだから。応援してくれるファンのみなさんがいたから。一緒に頑張れるメンバーのみんながいたから。支えてくれるスタッフのみなさんや家族がいたから。心の底から感謝を申し上げます。
  じつは本当に最近まで、寂しいとか、悲しいといった感情はまったくありませんでした。それは、今日という日はもう二度とこないという意識で、1回1回のライブに、毎回全力を出し切ってきたからだと思います。アイドルは偶像としてあるべきかも知れませんが、わたしの思う通り、自由奔放にアイドルをしてきて、ついてきたくれたMIO推しのみなさん。みなさんのおかげで、本当に本当に温かく幸せなアイドル人生でした。ありがとうございました」(MIO)

 

  「わたしは元々アイドルをやるなんてまったく考えていなかったのに、歌うこと、踊ることが好きで、気づけば5年半もアイドルを続けていました。アイドルをやっていて楽しいこともたくさんあったけど。つらいことや、辞めようかなと思ったこともたくさんありました。最初は推しの人なんて一人もいなくて、バクステ店舗では、お話が苦手だし、美里朱音はこれというものも何もなく、推しがなかなか増えず、めちゃくちゃ悩みました。でも、ステージで頑張っていたら誰か見てくれるかなと思い、好きなことをあきらめずに今日まで続けてきたことで、Pretty Ashのこと、AKANEのこと、応援してくれてる人がたくさん増えて、頑張ってきて良かったなと心から思っています。
  わたしは初期メンバーだから、この紙切れじゃ書き切れないくらい、このグループにはたくさんの思い出があります。自分でもよくわからない性格だし、頼りないサブリーダーだったかも知れないけど。わたしはメンバーのことも、スタッフさんも、ファンのみなさんも、家族も、ずっとずっと大好きです。ファンのみなさん、Pretty Ashを好きになってくれて、私たちと出会ってくれてありがとう」(AKANE)

 

  「わたしのPretty Ashとしての目標は2つありました。一つは「RURIKAがリーダーで良かった」ってメンバーからも、ファンのみなさんからも、スタッフさんからも思ってもらえること。詳しくはブログを読んでください(https://lineblog.me/pretty_ash/archives/3153361.html)。
  もう一つは、「メンバー自身がPretty Ashであることに誇りを持てること」。そして、「ファンのみなさんにとってPretty Ashが自慢の推しグループになれること」でした。わたしはバクステに加入当初から「推しだよ」と言ってくれるPさんには、「自慢の推しメンになれるように頑張るね」って伝えていたんですが、その思いはPretty Ashのリーダーとしても同じでした。
  最初は、「投票で出来た寄せ集めグループだ」と言われていましたが、メンバーが減ってしまって、わたしがリーダーになったとき、「わたしに出来ることはすべてやろう」「推しメンをPretty Ashのメンバーにして良かった」と思ってもらえるようにしようと決意しました。ファンのみなさんがまわりのお友達に、「とりあえずPretty Ashのライブ見て」って布教してくれているのを見て、自慢できている証拠だって感動していました。「今後はアイドルはやらないの?」って聞かれるんですが、わたしはPretty Ash以上に素敵なグループに出会えることはもうないと思っています。それくらい今のPretty Ashというグループに誇りを持っているし、個性が強いメンバーとも、ときに意見がぶつかりあうけど、ファンの人を楽しませようという方向性が同じだから協力しあえるし、なんならバランスもいいし、全員優しいし。こんな最強のメンバーと、ファンのみなさん。それを支えてくださる現場のスタッフさん、本当に素敵なチームだなと思います。こんな奇跡的な出会いをくれて、わたしのアイドル人生に輝きをくれて。あのときわたしに推しポイントを投票して、Pretty Ashにしてくれたプロデューサーの人たち、ありがとうございます。そして、Pretty Ashを新たに見つけて、大きくしてくれたファンのみなさんも本当にありがとうございました。これからも、みなさんが挫けそうなときに、Pretty Ashの音楽が背中を押してくれると思います。ずっと聴き続けください」(RURIKA)

 

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 アンコールは、ふたびび『Believers』を歌唱。さきほどまでの涙ぐんだ気持ちを胸の奥に仕舞い込み、ふたたび笑顔を浮かべ、彼女たちは「笑い泣いて過ごしてた日々 間違いじゃない」「世界で1番の景色 ここに作ろう」と歌っていた。メンバーの歌声に合わせ、フロアでも大勢の人たちが大きく手を振り、共に笑顔で過ごしてきた一つ一つのライブという景色を思い返しながら。そして、この日の眩しいライブの景色も、しっかりと心のフォルダに収めていた。

 

 まだまだライブは終わらない。6人は『アイデンティティ』を歌いながら、自分が選んだ道に後悔ないと、集まった仲間たちに旅立つ強い意志を示していた。それぞれが、これからどんな未来を描いていくのはわからない。でもPretty Ashを通して手にした"自分の声"に自信を持ち、進み続ける限り、いつまでも6人は、舞台の上で見せる表情をけっして失うことはないだろう。だから、みんな涙を隠した笑顔で歌っていた。輝こうとするその姿がひと際眩しく見えていた。

 

  これまでの歩みを確かめるように。そして、これから新しい道を描き出す自分たちにエールを送るよう、この6人でのPretty Ashとして最後の最後に『限界突破でWe Go!』を歌っていた。後悔など残すことなく。いや、「これがPretty Ashだ!」という姿を示すように、彼女たちは力いっぱいの声と笑顔で歌っていた。ときにメンバーどうしで抱き合う場面も登場。互いに顔を見合わせ歌う様にも惹かれたが、それ以上に、フロアにいる仲間たちへずっと熱い視線を向けながら、自分たちの生きざまを伝えてきたのが嬉しかった。だからフロア中の人たちも、むちゃくちゃ飛び跳ねながらはしゃいでいた。

 

  この日を持って、第一期Pretty Ashは幕を閉じた。次に、どんな姿で第二期が始まるのかは、まだ何もわからない。いや、そんなことよりも今は、この6人との思い出を、いろいろ心の中で整理しながら、もう少しだけ思い出に浸っていたい。

 

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PHOTO: 黒澤奨平
TEXT:長澤智典

★インフォメーション★

この日の模様を収めた受注生産限定BD-Rが
Stand-Up! Recordsオンラインストアにて予約受付中!!
[受付期間]2023/3/31 23:59まで
[受付URL] https://stand-up-records.stores.jp


セットリスト
Overture
『アイデンティティ』
『僕たちはイカロスじゃない』
『限界突破でWe Go!』
『Say Hello』
『Believers』
『Reality』
『恋は毒だ』
『STEADY』
『はじまりのうた』
-ENCORE-
『Believers』
『アイデンティティ』
『限界突破でWe Go!』
 

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