FEATURE
みずからが熱狂を描くコンダクターとなり、この空間を支配していた。 春乃友夢 ライブレポート
今年で、ソロでの単独ライブも3回目。Spotify O-WEST・恵比寿LIQUIDROOMと続き、今年はSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催。ソロ公演ではお馴染み、バンドを従えてのライブになった「春乃友夢 3rdワンマンライブ〜Reflection〜」。ここへ、当日の模様をお伝えしたい。
重厚なギター音が轟きだす。荒ぶるバンド演奏へ導かれるように春乃友夢が舞台へ登場。ライブは、艶やかな音色に乗せ、伸びのあるハイトーンヴォイスを響かせ歌うソロ曲の『Misty lady』から始まった。背伸びした?いや、大人の女性としての妖しい香りも放ちながら、春乃友夢は歌声の矢を次々と打ち放っていた。艶めいた歌声にハートが射抜かれるたび、その思いを突き上げた拳に変える観客たち。経験という年齢を重ねるごとに、いい女っぷりの出たシンガーに進化し続ける、その姿を冒頭から味わえたのが嬉しい。
荒ぶるラウドな音が猛々しく駆けだした。春乃友夢は、懐の深い歌声でソロ曲の『last scene』を歌っていた。アンダービースティーで見せる姿とも少し違う、攻め続けるのではなく、重厚な音を小さな身体でどっしりと受け止め、みずからの身体を共鳴体に、高揚した感情を増幅。観客たちを熱情の虜に変えていった。「かかってこいや!!」の煽り声も、逞しい。バンドサウンドに負けないどころか、轟音をみずから牽引しながら堂々と歌い上げる。その姿には見惚れてしまう。
飛びだしたのが、アンダービースティーの『occult propose』だ。春乃友夢は興奮と高陽を描きだすアンダービースティーナンバーを歌いながら,フロア中の人たちの感情のストッパーを解き放ち、一人一人に熱狂という翼を授け、もっと自由に暴れろよと煽ってきた。分厚い音の衝撃を巧みに操りながら、みずからがこのライブ会場に熱狂を描くコンダクターとなり、この空間を支配していた。春乃友夢の歌声に触発され、身体を揺さぶりながら荒ぶる音を繰り出すメンバーたちの姿も、印象的だ。
雄々しく気高い歌声を合図に、春乃友夢は『new journey』を突きつける。フロア中の人たちを煽るように歌う姿に刺激を受け、熱いクラップが鳴り響けば、たくさんの拳や紫色のペンライトの輝きが突き上がる。攻めた口調で歌う春乃友夢の声が気持ちを煽りたてる。春乃友夢の姿は存在感にあふれるオーラを放っていた。間違いなく舞台の中央で、彼女の歌声やパフォーマンスが、この空間の行き先を支配していた。
MCで春乃友夢は、甘えた優しい声で思いを述べる。その姿のギャップも愛らしい。「Reflection」というライブのタイトルは、「自分の持っている思いをすべて反映していこうということから選んだ」と述べていた。
このライブが決まったとき、真っ先に歌いたいと選んだのが『YNBK』。春乃友夢自身がテンヅレでヤンデレな、自分の心に素直になれない照れ屋。だからこそ、この歌を愛しい、大切な盟友へ向けて贈るように歌っていた。いや、そんな風に想像を巡らせてしまいたくなるほど、その歌声に、痛々しいほど切ない感情が満ちていた。あまりにも生々しい歌声だ。胸が強く揺さぶられたのも、当然だ。
「歌に人が加わることで、その人の色が加わることで歌は変わります。人としてもっともっと成長していけたら、わたしの歌ももっと素敵なものになると思っているからこそ、これからも歌い続けていきたいと思います」
その言葉を受けて歌ったのが、ソウルフルでミドルメロウなソロ曲の『regret』。この楽曲では、オケを背景に歌唱。伸びのある歌声を絵筆に、春乃友夢は、揺れ動く感情へいろんな色を巧みに塗り上げてゆく。弱い自分の気持ちを認めながら、それでも大切な存在へ寄り添いたくて自分を変えようとしていた。そんなあの頃を思いだすように、春乃友夢は物語へ没入しながら歌っていた。心の揺れに合わせ、微妙にフラットしながらも、乱れ騒ぐ心模様を切々と歌いあげる。その声に、思いを優しく寄り添えていたい。
ふたたび演奏は、バンドスタイルへ。「拳で熱さを見せてください、もっともっとイケるよね、熱くなれるよね」。春乃友夢の言葉を合図に飛び出したのが、ソロ曲の『Red Line』だ。冒頭から激しく押せ押せに攻める攻撃力の強い楽曲を突きつけ、彼女はフロア中の人たちの理性をふたたび瞬時に消し去った。身体を大きく揺らし「Red Line Red Line」と歌いあげる。雄々しいその姿は、灼熱の中にたたずむ女神のように神々しい。フロア中からも熱いクラップが響き続ける。沸き立つ感情、でも、もっともっと限界点を超える勢いで盛り上がりたい。
春乃友夢は頭上高く手を掲げ、『crazy fancy』に乗せ、手にしたタオルをくるくると回しだす。それまで中央に陣取っていた春乃友夢だが、この曲からは舞台の上を左に右へと移動。手にしたタオルを振りまわし、ときに振り上げ、夏のハリケーンにも負けない熱狂の渦を巻き起こしていった。春乃友夢の作り上げた熱風に巻き込まれ、気持ちがどんどん沸き上がる。このまま、天空へ吸い込まれてしまいたい。
限界を越えた熱狂を求める人たちすべての背中に、春乃友夢は『raven』を通して黒い翼を授けた。春乃友夢の煽る姿へ導かれるまま、思いきり黒い翼を羽ばたかせ,限界を超えたその先まで飛び立ちたい。自分の限界を突き詰めるまで、思いきり騒ぎたい。フロア中の人たちがヘドバンをし、雄々しく拳を突き上げ、心の中で雄叫びを上げる。沸き立つ感情を制御出来ない?それ以外に今、ここに何が必要だ!
春乃友夢のアカペラからスタート。次に届けた『Rose』は、春乃友夢のソロナンバー。彼女は、胸を熱く高ぶらせ、みずからを情熱の歌姫に染めあげ、熱情した声を張り上げていた。この曲を歌い始めた頃は、まだ背伸びした姿で歌っていた。あれから3年という時を経たことで、こんなにも歌の存在と重なりあう姿として歌えているとは。その成長ぶりが嬉しい。
「この場所で、わたしの持っているものをすべてさらけ出そうと思って、ここに立ちました。自分のやりたいことを見つけたら、全力でやることが大事だなと思いました。これからもステージに立ち続けていく、その過程をみなさんも見ていただけたらと思います」
最後に春乃友夢は、ソロ人生の始まりを告げた、17歳のときに初めて手にしたソロ曲の『Never my love』を、オケを背景に歌唱。今のアンダービースティーやソロのスタイルと比べたら、優しい表情だ。汚れ無き思いも、年齢を重ねるごとに深みを増して聞こえる。春乃友夢には、悲劇のヒロインのような切ない歌もなかなか似合うじゃない。強気な表情の裏に隠し持った、か弱くも素直な春乃友夢の本心を覗き見た気分だった。
アンコールの最初に披露したのが、この日のタイトルにも記した最新ソロナンバーの『Realize』。とても華やかな、いや、ギラギラするほどにカラフルで熱情を抱いた、感情を解き放つパワーソングだ。ネガティブな気持ちを認めながらも、そこから外へ向かおうとする歌が春乃友夢のソロ曲には多い中、『Realize』では最初から、ネダティブな感情さえすべて吹き飛ばす勢いを示していた。春乃友夢のソロ曲の中へ、またもライブで生きる強烈な歌が加わった。
その勢いをさちに脹らませるように、春乃友夢はソロ曲の『Shine』を歌唱。『Realize』『Shine』と続いた理由もあるのか、切ないこの歌が、いつも以上に力強く輝きをつかもうとする歌として胸に届いていた。戸惑いや嘆きさえ、すべてを輝く未来の自分の養分に変えていく。輝いた季節の中へ縛られた心を残し続けるのではない。その境遇さえも、今の春乃友夢は踏み出す一歩にしてゆく。そんな姿を見せてくれた。
最後に春乃友夢が選んだのが、ソロ曲の『Take wing』。春乃友夢は、これからもアンダービースティー/春乃友夢ソロと、2つの表現の道を歩み続けてゆく。その両翼を上手く羽ばたかせることが、自分の大好きな歌の道を追求し、己自身を磨き続けるうえで大切なこと。抱いた夢を形にしてゆくために、その両翼を広げ未来へ向かって羽ばたき続ける。その意志を示すように、春乃友夢は最後に『Take wing』を歌っていた。そう感じさせる姿で、彼女は舞台の上でみずからを輝かせていた。
次はまた1年後だ。今度はどんな景色を見せてくれるのも、今から楽しみにしていたい。
TEXT:長澤智典
セットリスト
『Misty lady』
『last scene』
『occult propose』
『new journey』
『YNBK』
『regret』
『Red Line』
『crazy fancy』
『raven』
『Rose』
『Never my love』
-ENCORE-
『Realize』
『Shine』
『Take wing』
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