元PASSPO☆メンバーで、今は振付師として数々のアイドルに振り付けしている槙田紗子 主催のサコフェス。Vol.3として、渋谷 duo MUSIC EXCHANGEにて開催された。槙田が振り付けをしているアイドル、そして自他共に認めるアイドルオタクとしての彼女が見たい会いたいグループに出演してもらっているというイベントだ。ただの対バンではなく、主催者の顔が見えイベント性の強いものになっており、ライブを楽しみにしているファンも多そうだ。

新たな香りを纏ったFragrant Driveは、新たな未来へ加速する

先に先輩の板橋加奈、伊原佳奈美、片桐みほが颯爽とステージへ、そして３人が後ろ向きになる、新メンバーがステージへ降り立つ。事前情報が一切なかったため何人加入するともわからなかったが、辻梨央、三田のえの2人が新加入メンバーとして、初めて顔を見せる。

５人は、新衣装で登場。Fragrant Driveグループカラーの赤を基調とするのは、今までの衣装と変わらずだが、黒のアクセントが入り、メンバーごとに衣装の形が異なる。スカートタイプもあればパンツスタイルもあり、セパレートや肩が見えるところに、彼女たちの中にある大人っぽさを強調する。Fragrant Driveの変化と継承、そんなテーマを感じさせる衣装だ。

「胸の奥のVermillion」を歌い終わったところで、新メンバーの紹介に。

「三田のえです。みなさんをワクワクさせられるように一所懸命頑張ります」と緊張で、声を出すだけでも泣いてしまうほどの中、挨拶をし「辻梨央です。フラドラをもっともっと盛り上げていきたいと思っておりますのでよろしくお願いします」とまっすぐの笑顔で頼もしい挨拶をした。

続く「Dance Flight」は、槙田紗子 振り付け曲。大きい手ぶりが特徴の振り付けは、曲の格好良さを表現しつつ、彼女たちの持ち味もうまく引き出す。フォーメーションも複雑ではない分、曲に集中できているのか歌の意思が伝わってくる。

辻梨央は、長身を生かしたダンスでつい目がいってしまう。さらに歌声が素晴らしい、伸びやかに歌うその高音域は、只者ではないことを証明する。ステージングや客席への煽り、アイドルとしての高い実力をお披露目ライブにして如何なく発揮している。

人生初のステージに立ったという三田のえは、こちらが緊張してしまうくらいの緊張が伝わる。しかしながら、今、自分が持っているものを全部このステージに置いていこうという気持ちが伝わってくるのが、いかにFragrant Driveの一員になることが彼女にとって大切なことなんだろうと感じられた。

板橋が「私たちも2人が入ってきたことに刺激を受けている」と言うように、先輩メンバーのパフォーマンスの変化が如実に感じられる。板橋は、歌声が伸びやかに安定感が増し、伊原は、ダンスに磨きがかかり、何より表情がとてもよい、片桐は、持ち味の煽りやレスがより際立ち、後輩2人のおかげで周りがより見えているように感じる。

槙田が振りを真似したくなると言っていた「ガルスピ ～Smells Like Girl Spirit～」そして「Evergreen」と続き、新メンバーお披露目ステージは終了した。

新しい刺激が加わったことにより、劇的な変化を感じるFragrant Driveの新しい扉が開いた瞬間を感じるステージだった。

コレオグラファー槙田紗子の個性。アイドルに寄り添うことへの才能。

オープニングアクトを務めたのは「透色ドロップ」デビューして半年ほどの今注目のグループ。王道アイドルというのにふさわしい、ビジュアルと楽曲。ここまでの正統派アイドルは久しぶりの登場ではないか。槙田のオープニングトークを挟み「Fragrant Drive」「SW!CH」へ続く、。SW!CHは本来は6人組のグループだが学業の都合でこの日は4人。槙田の振付けた曲は7人用に作られたものもあり、この日のために4人用に組み替えたという、それを感じさせない4人でのパフォーマンスは、振付けのおかげもあるのだろう。

ここまで見た時に槙田紗子という振付師の特徴は、"手振り"だと感じる。サビでマネしたくなる手の振り方、そして難易度が高くなくても見栄えの良い動きの追求、それが"手振り"に表れている。ライブで大事なものはライブ感、一体感だと、それを経験したきた彼女だからこその提案なんだろうと思えた。

6人組の「【eN】」は、個性がバラバラでだからこそ何が起きるかわからない期待感のあるグループ。フォーメーションも複雑に組まれていて、動きもかなり多い。そして何よりコミカルでキャッチーな振付けが特徴だ。可愛くよりも覚えてもらえることに重きがおかれているように思える。続いての「夢みるアドレセンス」は、現体制になってから槙田が振り付けをつけ始めたというが、今までの夢アドの雰囲気も継承しつつ今の4人に合わせて付けられているのだろう、4人のビジュアルが際立つようにフリーな部分も多く、止まる動きも多用しており、オタクとしては推しに集中できるのではないだろうか。

この２組に感じるのは、アイドルとの寄り添いだ。グループの特性やメンバーに合わせて、方向性や難易度を調整している、時にはメンバー一人一人に合わせているのではないかと感じる"寄り添い"がある。

「FES☆TIVE」「アップアップガールズ(2)」は、いわゆる槙田が呼びたかった枠だ。今までの槙田が振り付けをしている楽曲との対比として見るとおもしろく、FES☆TIVEは、言わずと知れた圧倒的運動量を誇るグループ、見栄えを重視し動きも多くすることでメンバーや客席の高揚感が増す。その中にも歌詞と連動した緻密な動きも見えて何度見ても飽きないグループ。アップアップガールズ(2)は、フォーメーションの美しさと鍛え抜かれた精度の高い動きと全員が主人公になるように前後列の入れ替えなど、それぞれ振り付けからも特徴が見える。

槙田自身が呼びたかったというが、振り付けからみるグループの個性を見せたかったのではないだろうか。

槙田が描く大きな夢への始動 SACO PROJECT

最後に槙田紗子自身から、重大発表が告げられた。それは、槙田紗子完全プロデュースアイドルプロジェクトを2021年1月より始動するとのこと。彼女自身が、アイドル現役だった頃からずっと胸に抱いていた夢で、今まで自分自身がそこに辿り着けるようにいろんな経験を積み重ねてきたという。約3年の振付師とのしてのキャリアで培った経験をもとに、新しい大きな夢のプロジェクトが始動する！！

エンタメ業界でずっと生きてきた彼女らしい決断だ。「このプロジェクトは妥協なしでやっていくので、皆さん応援してください」との言葉が、彼女の本気の決意を感じた。

取材・文：もりたはぢめ