Speak emo

2019.12.06
ゑんら

ここまでやってきた想いが全部入っているので、それを感じていただければ嬉しいです

1/3ページ

「和」や「妖怪」をモチーフに独特の世界観を構築してきた“ゑんら”。ほどなく結成2周年を迎えるこのグループに筆者が注目し始めたのは遅まきながらつい最近のことだが、そのコンセプトの妙には驚嘆するばかり。作品タイトルや歌詞やサウンドからアートワークや衣装に至るまで揺るぎないコンセプトを貫きつつも、「和」のテイストの中にロックやEDMを絶妙に溶け込ませ、「怖い」の中に「可愛い」を巧みに忍び込ませるのだ。

 

例えば、昨年7月リリースの1stアルバム『KEMURI』収録の「キミノセイ」などでは、祭囃子をダビーな重低音へと変換することで、ブラジルのマンギビートやアルゼンチンのデジタル・クンビアにも匹敵するような、鮮やかな“異文化の融合”をものにしている。「和」と同時代的なサウンドの融合が試みられた例はいくつもあるが、これほど滑らかにビートがシンクロするものはなかなか見当たらない。この曲を作曲したのは多くのゑんら作品を手掛ける”ぴあ”。そして、ゑんらの楽曲には緻密なコンセプトに基づく彼女たち自身の意向が反映されているらしい。

 

そして注目すべきは、そうした変幻自在の楽曲を歌い綴る彼女たちのヴォーカル・ワークだ。時にこぶしを回したり、椎名林檎ばりに巻き舌を交えながら、情感溢れる唱法によって、高品質の楽曲に一層豊かな色彩を施している。

 

聞けば、完全セルフプロデュースとのこと。作詞や作曲への関与といった制作面だけでなく、打ち合わせや連絡などの運営面も自らの手で行っているそうだ。もちろん苦労も多いだろうが、そのぶん自身の意図が納得のいく形で作品に投影されているのではないだろうか。

 

楽曲制作やアートワークなどクリエイティブな領域で感性を迸らせる木乃伊みさと。マネージメントやマーケティングなど運営面を主導する滝口ひかり。ソロでのメディア出演などを通してある種の“広報活動”を推進する滝口きらら。それぞれの得意分野でその手腕を振るいつつ、同時に各々の個性を様々な形で調和させながら、ゑんらのアーティスティックな表現へと昇華させているようだ。

 

そうした感性は、このたびリリースされる2ndアルバム『UKIYO』でも存分に発揮されている。「和」のイメージや音色。「お化け」や「妖怪」をモチーフにした歌詞。サウンドも、哀愁を帯びながら時に爽快感も漂わせるエモーショナルなロックを基調に、「和」と「ディスコ」のミクスチャー、歌い上げるバラード、そして賑やかなアイドル楽曲、さらには小気味良いスカコアや躍動するダンスホールや妖艶なワルツといった要素も垣間見られ…。もちろん、木乃伊みさとが手掛ける趣向を凝らしたアートワークも極めて魅力的だ。

 

12月10日ツアーファイナルとなる新宿BLAZE公演、そして12月11日アルバム『UKIYO』リリースを目前に控えた、ゑんらの3人にお話を伺った。

 

 

 

 

 

やりたいことはできてるなっていう感じはします(ひかり)

 

 

――「ゑんら」ってどういうコンセプトのグループなんですか?

 

木乃伊みさと(以下:みさと):私たちは…えーっと何だっけ?

 

滝口ひかり(以下:ひかり):大丈夫? 嘘でしょ???

 

みさと:(資料を見ながら)何て出てますか…?

 

滝口きらら(以下:きらら):ちょっと待って。誰が考えたんだっけ…???

 

みさと:私かな、多分。やばいやばい。

 

――この辺も文字になるかもしれないですが…(笑)。

 

ひかり:全然大丈夫です(笑)。

 

みさと:あぁ。これ私だと思う。そんな気がしてきた。えーっと。ゑんらは完全セルフプロデュースのグループで、自分たちで色々やってます。自由自在に色んな形になるっていう意味で「煙」って言っていて…。「煙々羅」っていう煙の妖怪から取って「ゑんら」と名付けました。

 

ひかり:「煙のように変幻自在」っていうのは色んなところで言わせていただいてるんですが、実際何をやってるかというと、今年の1月に『ゑんら絵巻』っていう舞台を自分たちの主催で行なったり、地域のお祭りでライブをやらせていただいたり、お神輿を担いだり、正月にお餅つき大会をやったり、ライブももちろんなんですが、そういうイベント事にも力を入れたりしていて、色んなことにチャレンジしているグループです。

 

――きららさん、何か付け加えることはありますか?

 

きらら:それで全てです。アハハ(笑)。

 

――煙ですから、枠にはまらず様々な形になるということで、音源を出してライブをやるだけではなく、お祭りなどに参加して地域と関わったり、あと、アパレルとタイアップしたりもしてますよね。

 

きらら:はい、やってます。

 

――本当に色んなことをやられていますよね。「枠にはまらない」ということは、今は「和」とか「怖い」といったイメージでやられていますが今後ガラッと変わってしまうこともあるんですか?

 

みさと:まあ、基本の枠組みはあまり変わらないと思います。この新しいアルバムで打ち出してるコンセプトでもあるんですが「怖かわいい」といったジャンルを私たちで発信していけたらいいなと思っていて…。私たち自身和風な感じの妖怪やお化けをコンセプトに曲を作ることが多いので、そういうものをあまり知らない方々にも刺さってくれたらいいなって思っていますね。

 

――なるほど。その辺はある意味こだわってやってられているわけですね。で、みさとさんとひかりさんはdropにいらっしゃったんですよね?

 

みさと・ひかり:はい。

 

――こういったことをやりたいからdropを卒業されたんですか?

 

ひかり:そういうわけではなくて…。辞める時はそうではないですね。

 

――「自分たち自身で何かやりたい」みたいな想いはdropの時からあったんですか?

 

ひかり:こういった感じでやりたいなっていうのは個々にはあったと思います。でも、それで辞めたわけではないですね。

 

――今さら蒸し返すのもなんですが、では、dropを辞めた理由はなんだったんですか?

 

ひかり:あぁ~。でも、「自分の人生なので自分で道を切り開きたかった」って言ってますね。取材ではそんな風に言わせていただいてます。自分でやりたいという想いが強くなったって感じです。

 

みさと:そうですね…。前のグループが初めての芸能界だったんですが、当時からイラストとかジャケットとかも書いていて…。で、自分の中でそうした制作に対する意欲が強くなり過ぎちゃって、でも事務所に所属してるとそれが難しいじゃないですか。演者をやりながらそうした創作活動はできないってその時は思っていたので、事務所と相談して「自分でやりたい」っていう気持ちを伝えて、辞めることになりましたね。

 

――で、そこにきららさんが加わったわけですが、「和」「怖い」といったコンセプトは、そこから3人で話し合ってできたということですか?

 

ひかり:もともと少しアーティスト寄りな感じにしたいっていうのはみんな思ってましたね。でも、私ときららはあまりクリエイター気質ではないので、その辺は全部みさとにお任せして、コンセプトをまとめてもらってる感じです。

 

きらら:そうですね。私ほんとにセンス無いので…。

 

みさと:そんなことないでしょ。

 

きらら:いやいやいや。ジャケットの絵もそうですし、アー写のコンセプトとかも全部みさみさ(=みさと)がやってくれてるんですよ。なので、そういうコンセプトは全部みさみさにお任せしてます。

 

みさと:でも、最初はそうだったんですけど、最近は曲の内容とかみんなでアイディア出し合ってますね。やっぱり、自分たちでやったことのないことをやるっていう“手探り作業”なので、みんなで力を合わせて。最近になって、ようやくちょっと形になってきたのかなって思います。

 

――いや~、めっちゃ形になってるじゃないですか。

 

ひかり:確かにやりたいことはできてるなっていう感じはします。このグループになってからはすごく。

 

――で、完全にセルフプロデュースということですよね?

 

一同:はい。

 

みさと:周りの方に助けられながらやってます。

 

ひかり:協力してもらって。

 

――セルフプロデュースになってもうすぐ2年ですよね。来年2月で。いかがですか?

 

ひかり:う~ん。まぁでも、もう2年目なので、まだバタバタすることとかはあるんですが、一応慣れてはきたかなって…。ある程度この世界の常識とか、例えば、メールの返し方とか。最初はほんとに、例えば「お世話になっております」とかっていう挨拶から始めて、っていうことも知らなかったので。私の父が経営者なので、メールの書き方とか一から教えてもらって。最初はあたふたしてましたが最近はスムーズにできるようにはなってきました。

 

――ビジネスマナーやスキルを学ばれたわけですね。

 

ひかり:はい。

 

――みさとさんはクリエイティブ担当で、ひかりさんはビジネス関連を担当して、で、きららさんはおしゃべりが得意なんですよね?

 

一同:アハハハ。

 

みさと:いつものあれやる?

 

ひかり:うんうん。

 

みさと:私が作り手。グッズを作ったりとか、ジャケットを作ったりとかしていて。

 

ひかり:で、私が打ち合わせしたりメールを送ったりといった運営の部分をやってます。

 

きらら:で、私がパンを買いに行くっていう…。

 

――アハハ(笑)。何ですか? 三段落ちですか? まぁ、うまく文章にしますね。

 

ひかり:お願いします(笑)。

 

――パンを買いに行く、と。それはどんなパンを?

 

ひかり:どんなパン!(笑)

 

きらら:アハハハ。コンビニで2人が好きなものを買って、サポートしてます。

 

ひかり:(笑)。でも実際は、私たちの手が回らない事務的なこととか、印刷物を作ったりとかそういうのをやってますよ。

 

 

 

 

 

 

「海外に目を向けたいね」みたいなのはデビュー当初から3人で話してました(きらら)

 

――「和」って、どなたかの趣味だったりするんですか?

 

ひかり:まあ、趣味っていうか、コンセプトでして…。

 

――皆さんお好きなんですか?

 

ひかり:三味線の音とか好きですよ。和楽器バンドも好きで聴いてます。そういうのカッコいいなって思いますね。

 

みさと:あと、インパクトがあるじゃないですか。「和」をコンセプトにすることによって外国人の方にも知ってもらえるんじゃないかと思ったり…。意外とアイドルにはいそうでいないんですよね、「和」のコンセプトって。

 

ひかり:確かに。「和」っぽい衣装のグループは沢山いると思いますが、楽曲でここまで「和」のコンセプトを打ち出している例は少ないと思います。

 

――「どういうところを狙っていこう」「海外での可能性がありそうだからこうしよう」みたいな話し合いはされたんですか?

 

きらら:「海外に目を向けたいね」みたいなのはデビュー当初から3人で話してました。曲調も「和」っぽいものが多いですし、「和」っぽい音を入れたり、アルバム・タイトルとかも…。外国人の方に引っかかるようなものにしてますね。

 

――そういう意味では、来年3月にタイでワンマンライブをやられますよね?

 

きらら:はい、やります。

 

――ワンマンってすごいですね。タイって最近よくフェスとかあってアイドルさんが結構行ってますよね。これまでに海外でやられたことは?

 

ひかり:台湾で一度。

 

きらら:去年の6月ですね。

 

――昨年6月というと、デビューしてからそんなに経っていないですね。

 

ひかり:すぐですね。

 

――どうでした? 現地の方々の反応って。

 

きらら:台湾の方って日本のアイドル好きなんだなって感じました。台湾にアイドルはいないのかなぁ?

 

みさと:いるとは思うけど。

 

きらら:TIFってあるじゃないですか。東京の。TIFにも行くって言ってる台湾の方が結構いて、やはりアイドル好きな方多いんだなと思いました。

 

――台湾でも日本のアイドルのフェスとかイベントありますよね。

 

みさと:多分あちらは今がブームみたいな感じらしくて。

 

きらら:今キテる。

 

――「和」のコンセプトに対する反応みたいなとかありました?

 

きらら:その時は曲が4曲しかなかったんですよ。

 

ひかり:そっか。まあでも、まだデビューして4カ月だったので…。

 

みさと:コンセプトもまだ浸透してなかったんですよね。MVもまだなかったし…。

 

きらら:いつも来てくださるファンもあまりわかってない、みたいな。「どうやって乗ろうかな」って考えてる段階みたいな感じで…。でも、みんな「リンネ転生」って曲で一番騒いでたかなぁ。

 

ひかり・みさと:うん。

 

みさと:なので、次のタイでのワンマンライブでは、まだ私たちを知らないタイのファンの方々にも広がって欲しいですね。でも、ちょっと未知の場所なので、これからどうやって発信すればいいか考えてるところです。

 

――でも、皆さんのそのコンセプト、曲とか衣装とか絶対受けると思いますよ。

 

一同:うぁ、ありがとうございます。

 

――あと、アニメとタイアップしたいとのことですが…。

 

一同:はい。

 

――アニメがお好きなんですか?

 

きらら:アニメはみさみさがすごい好きで。

 

――オープニング曲とかエンディング曲とか狙ってる、と?

 

みさと:そうですね。夢ですけど…。

 

――具体的に動いたりしてるんですか?

 

みさと:はい、まあ。来年あたりは本格的に狙いにいきたいなって。

 

きらら:そういったタイアップを狙って曲を作ったりとかしてるんですけどね。まぁ、なかなか…。

 

ひかり:今頑張ってる最中です。

 

――でも、そういう意味では色々とビジネス的な面でもきっちり考えられてるんですね。

 

ひかり:そうですね。

 

――例えば、皆さんで会議をしたりするんですか?

 

ひかり:はい。3人でよくミーティングします。

 

――ビジネスミーティング、というかマーケティング会議みたいな。

 

ひかり:そうですね。3人だけだとまだまだ未知な部分も沢山あるので、いろんな方に支えられて、助言とかしていただいて、でも私たちの芯はブレないようにしながら、色んな案を取り入れて進めていってますね。

 

――今後はどういう風に攻めてくんですか?

 

みさと:私たち、Zepp Tokyoに立ちたいっていう目標を掲げているので、そこに立つために今活動をしているんですよ。その会議もやっていて、ちゃんと逆算して色々とやっていこうって話になり、ちょっと道筋が固まってきたかな、みたいな感じなので…。早く発表できるように頑張りたいなって思います。

 

――まだ言えないとは思うんですが、どれぐらいの時期にZepp Tokyoでやろうっていうのを具体的に決めている、と。

 

ひかり:はい。大体のプランは。まだ言えないですけど。

 

――なるほどね。僕が取材した方には「武道館でやりたい」っていう人が結構いるんですが、皆さんはZepp Tokyo。というと、ちょっと控えめじゃないですか。武道館と比べると。結構現実的なところを見てるのかなっていう感じがします。

 

きらら:確かにそうですよね。

 

ひかり:最初に3人で話し合った時に「武道館だと誰もが言ってるよね」なみたいな意見は出てましたね。

 

みさと:武道館ってほんとにできたらすごいですけど、今の私たちにはあまり現実味がないじゃないですか。それこそ、Zeppに立ってから「武道館」って言いたいんですよ。

 

ひかり:そうそうそう。

 

みさと:その時にはみんな想像できると思います。

 

きらら:現実的になってくると思いますね。

 

ひかり:例えば、私たちがZeppに立った時に「重大発表があります」って言って、「次、私たちが目指すところは武道館です」って言うとカッコいいなって思うんですけど、今「武道館」って言っても「なんか言ってるよね」みたいな感じで終わっちゃうから、それが嫌だったんですよね。

 

――より現実的に戦略を立ててるって感じですよね。言っちゃおうと思えば「武道館」なんて誰でも言えるわけですけど、でも皆さんとしては、しっかりと戦略を立てて、ちゃんとした目標として掲げてると。

 

ひかり:そうですね。

 

――素晴らしい運営組織ですね!

 

ひかり:ありがとうございます!(笑)

ゑんら ライブ情報

◎12/10 全国ツアーゑんら道中
新宿BLAZE ワンマンライブ
開演◼︎19:00
https://ticket.yahoo.co.jp/tour/00004359/

◎12/14 大阪ライブ ESAKA MUSE 1部 開演◼︎12:00 2部 開演◼︎17:30 ※両部出演予定 https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1953210

 

ゑんら 商品情報

2ndアルバム『UKIYO』 2019年12月11日リリース 3人組ユニットゑんら集大成ニューアルバム。

『UKIYO』”怖かわいい”を求めて。

ゑんら

Type-A 3,000円(税込)

ゑんら

Type-B 3,000円(税込)

 

 

 

 

PROFILE

PROFILE
ゑんら

「煙のように変幻自在、枠に囚われない」をコンセプトに、木乃伊みさと、滝口ひかり、滝口きららの3人で結成された、完全セルフプロデュースユニット「ゑんら」

 

和をテイストに、楽曲によって表情が変化していく。
楽曲制作、衣装、グッズ制作などをメンバーが自らが担当している。
海外、アニメカルチャー、ミュージカルなどの進出を目指し、さまざまなエンターテイメントを追求している。

木乃伊みさと

1994.09.09

絵が得意で、ゑんらのグッズやアー写の絵を描くなどクリエイターとしても活躍中。

滝口ひかり

週刊プレイボーイの「隠し球GP」の読者投票で初代グランプリとなり、後に2000年に1人の美少女と呼ばれる。

2000年に1人の美少女と呼ばれる。

地上波テレビのバラエティ番組やグラビア、モデルなど幅広くメディアに出演。

滝口きらら

ゑんらの最年少。元ソフトボールプレイヤーでヤクルトスワローズのホームページモデルとして活躍。

また、ラストアイドルの挑戦者として出演。セカンドユニットに誘われるも辞退。

その後、盟友長月翠と共演を果たす。

公式サイト: https://wyenra.jp/