Speak emo

2019.11.20
加納エミリ

プロデュースする時の私と、ステージで歌っている時の私と、作曲している時の私で違う気がします

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何も考えずに作ったんで。ボケーっとしながら(笑)

 

――「恋愛クレーマー」。これ、元ネタは「ポンチャック・ディスコ」ですか???(笑)

 

加納:いや、元ネタは、え~っと、名前が思い出せないんですけど、誰だっけ…。後で送ります(笑)。いろいろあります。

 

――まあ、あまり詮索するより、皆さんにあれこれと考えていただいた方がいいですよね。

 

加納:そうかそうか。推測が大事。

 

――この歌詞も深読みさせていただきますと(笑)、これも、女の子が「女の子らしく」って言われることに対して反発してるわけじゃないですか。それはやはり、旧態依然とした性差別へのアンチテーゼというか…

 

加納:全然関係ないですよ。

 

――そういったジェンダーフリーと提唱する…

 

加納:全然。

 

――でも、「女の子は女の子らしく」っていう価値観は80年代とかにはまだ幅を利かせていましたよね。

 

加納:この曲って80代じゃなくて、もっと下ってというか、60年代ぐらいをイメージして作ったんですよ。

 

――あぁ、なるほど。それだったら尚更なんですが、その時代の男女の価値観みたいなのを…

 

加納:男尊女卑みたいな。

 

――はい。それに対して“物申す”ではないですけど、それを今の価値観で捉えるとどうなのか、といった形で提示しているというか。ある意味、加納さんの音楽も昔のものを今の感覚で打ち出す、っていう部分があるじゃないですか。歌詞もそれに連動しているのかな、と。

 

加納:どうなんですかね。全然意識してなかったです。何も考えずに作ったんで。ボケーっとしながら(笑)。

 

――いろいろ深読みする方もいらっしゃると思うんですが、「いや、ボケーっとしながら書きました」って書いてもいいですか?

 

加納:はい(笑)。いろいろ深読みしていただいて構わないです。

 

――実際に歌詞を書く時って、あまり思い悩まずサラッと?

 

加納:そうですね。悩むのは悩みますが、そんなに深いことをどんな解釈で書こうとか考えなくて、基本的には言葉をどう当てはめようかってことで迷ってるだけなんですよ。そこにはそもそも深い話なんて全くないんですよね。

 

――言葉をいかに当てはめるか、と。

 

加納:そこだけしか考えてないですね。

 

――でも、物語として成立してるじゃないですか。

 

加納:ありがとうございます。

 

――それって、まずは一つ題材を決めて、って感じですか?

 

加納:そうですね。いつも“女の子”をイメージして作りますね。「恋愛クレーマー」だと、架空の女の子が男の子に対して素直になり切れないみたいな歌詞を目指して作ったんですが…。

 

――例えば、加納さんのサウンドやはり「昔のものをいかにセンス良く再現するか」みたいなところがポイントだと思うんですが、歌詞に関しても「昔の価値観を現代の視点で再定義する」みたいな部分があるんじゃないか、と…。

 

加納:全くないです。一つもないです。微塵もないです。

 

――では続いて、先ほどお伺いした「Just a feeling」ですが、アレンジは原曲どおりですか?

 

加納:ベースの音を変えたりとか、シンセの音を変えたりとか、足したり引いたりみたいなことをしましたね。

 

----では、歌詞は?

 

加納:結構変えましたね。半分以上変えました。でも、サビは割と残しつつ、みたいな感じです。

 

――これは愛の歌ですよね?

 

加納:そうですね。原曲の歌詞もそういう感じだったんですが、でも、自分で書きたいなと思って直しました。

 

――加納さんって割とダメ出ししますよね。結構頑固ですよね?

 

加納:それ、吉田豪さんにも言われました。頑固さが出ちゃってますよね。

 

――なんと言うか、あまりオープンマインドではないという印象があります。決して暗いという感じではないですが、すぐ心を開いて何でも言っちゃうタイプではないですよね?

 

加納:ではないですね。

 

――ですよね。でも、こだわるところはこだわって、絶対に譲らなそうな感じがします。

 

加納:あ、ありがとうございます。

 

――それも大事なことですよね。

 

加納:そうですね。

 

――「フライデーナイト」は、いつ頃の作品ですか?

 

加納:21歳ぐらいですかねぇ。

 

――3年前ぐらい?

 

加納:そうですね。

 

――その頃って"燻って"た時期でしたっけ?

 

加納:はい。昔のレコード会社にいて、悶々としていた時期です。

 

――このヴァージョンは当時のものから変わってますか?

 

加納:作り直しました。歌詞は変わってないんですが…。当時まだDTM歴が2~3年ぐらいで上手く作れてないところが結構あったので、昨冬にブラッシュアップし直しました。当時とは機材も違うし、歌い方も違うし、結構変わったかなと思います。

 

――ご自身の打ち込み技術とか、作曲のセンスとか、歌の技術とか、やはり違いますか?

 

加納:そうですね。当時の打ち込みのクオリティーは……まあ、今もそんなに高くはないんですが……今の方がまだマシかなって感じですね。

 

――続いて「1988」ですが、これは何の年ですか?

 

加納:バブルが始まった頃をイメージして作ったんですが、1988っていう年に特に意味はないです。適当に「このへんかな」と思って付けました。

 

――これも深読みしちゃいますと、最後に「31年前のママとパパなの」という一節があるじゃないですか。これは実際にお父様とお母様が“出会った年”とか“結婚した年”とかなんですか?

 

加納:どうなんだろう? 多分違うと思います。まだ結婚して30年経ってないと思います。

 

――加納さんが生まれる7年前とかですよね?

 

加納:はい。7年前ですかね。

 

――ちょうど出会われた頃なんじゃないですか?

 

加納:出会ったぐらいかなぁ? もしかしたら出会った頃なのかもしれないですけど…。

 

――そういう“オチ”じゃないんですね。

 

加納:全然ないです。

 

――詞の中には、まさにバブル期の日常をイメージさせるフレーズがいくつも出てきます。「留守電途切れた」「24時間も働く」「四角いスーツ」「ギザギザチェック」といったような。

 

加納:その辺はお父さんにたくさん聞いたんですよ。

 

――やはり聞かれたんですね。

 

加納:お父さんに「こういう曲作るんだけど何かいいワードない?」って言って、いっぱい送ってもらって、このワード使えそうと思ってバババーってとりあえず当ててみて、そこから前後の歌詞を作っていきました。

 

――でも、それだけヒントをもらって、実際に作詞もヘルプしてもらう間柄なら、いろいろと“馴れ初め”とか聞くこともできると思うんですが…。例えば実際の「お父さんとお母さんが出会った年」にしておけば、なんというか、“上手く収まる”わけじゃないですか。"綺麗な話"になるというか…。でもそこは上手く収める必要はない、と。

 

加納:ないです。そのへんの矛盾はあるんですけど、べつにいっか、みたいな(笑)。

 

――なるほど。こだわるところはものすごくこだわり、でもテキトーなところもあって、そこに"隙"がある。それが加納さんの本質なのかもしれないですね。

 

加納:そうですね。そこまでガッツリ作り込むっていうのは自分にはあまり向いてないと思います。歌詞ぐらいはテキトーでいいかなって。

 

 

 

取材・文
石川真男

加納エミリ ライブ情報


加納エミリ「GREENPOP」レコ発ワンマンライブ(BANDSET)
2019/12/14(土)
青山 月見ル君想フ
開場18:00 開演18:30
前売¥3,000 当日¥3,500 (+1D¥600)
https://t.livepocket.jp/e/greenpop

加納エミリ 商品情報

 

greenpop

11月20日 1stALBUM「GREENPOP」 全国発売

《通常盤》
1.恋せよ乙女 2.ごめんね 3.Next Town 4.ハートブレイク 5.恋愛クレーマー 6.Just a feeling 7.フライデーナイト 8.1988 9.二人のフィロソフィー 10.Moonlight 11.ごめんね(Extended Ver.) ¥2,500+TAX (HYCA-3093)

※初回限定盤[DISC2]
「GREENPOP REMIX」
1.恋せよ乙女 -テンテンコ MIX-
2.ごめんね -TETTOはNEO NEW MUSIC MIX-(吉田哲人)
3.Just a feeling -ミカヅキBIGWAVE MIX-
4.フライデーナイト -佐藤優介 MIX-
5.フライデーナイト -HF International MIX-
¥3,000+TAX (HYCA-9004)


12インチアナログ盤、カセットは12月18日発売
LP: ¥3,000+TAX (NRSP-1270) CT:¥2,500+TAX (NRCT-2501)

レーベル:なりすコンパクト・ディスク
発売元:ハヤブサランディングス
流通:スペースシャワーミュージック

 

 

 

 

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。