Speak emo

2019.08.19
HALLCA

気持ちがないと書けないですよね

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気持ちがないと書けないですよね

筆者がインタビュー中に思わず漏らしてしまっているように、HALLCAは思いのほか赤裸々に話してくれる。決して「これが本音だ」と声高に主張するわけでもなく、あるいは、心開いていることを殊更アピールするわけでもなく、もちろん真摯であることを武器に何らかの策略を巡らせているわけでもないが、極めて本能的に純粋な気持ちを包み隠さず口にしているといった印象だ。「素直な自分をもっと出していきたい」といった“手の内”さえも無邪気に明かしてしまうほどに。

そして、そんな純粋さはその歌声にも表れているのではないだろうか。彼女の歌声は決して突き刺すような豪速球ではないが、その包み込むようなサウンドスケープの中で、さり気なく佇むかのごとく清澄に響くがゆえに、聴き手の心の鎧を剥ぎ取り、そこにスーッと染み込んでいく。

Especia解散後、約一年半の“準備期間”を経て、2018年7月『Aperitif e.p』でソロ・デビューを果たしたHALLCA。その後、今年2月より5ヶ月連続して配信シングルをリリースし、9月にはいよいよ待望のアルバムを世に問う。

その語り口は“赤裸々”だが、彼女がこれまでに綴ってきたサウンドは幻想的で夢想的な非日常的なもの。この相反するかのように見える要素は、互いにその特性を引き立て合う。そして、歌声に“人間”HALLCA、“人間”冨永悠香が透けて見えるからこそ、その背景にある幻想世界がいっそう幻想性を増し、同時に現実世界と滑らかに溶け合うのではないだろうか。あたかも、我々の生きるこの世が仮初めの幻想世界であり、そこに生々しい情感を対峙させることこそが“生きる”ということである、と示唆するかのような…。

HALLCAに“赤裸々”に語っていただいた。

 

最初は公園のベンチとかで一緒に曲を作ってたんですよ

――まずは根本的なところからお訊きしますが、“HALLCA”っていうアーティスト名にしたのはどういう意図からですか?

HALLCA:そうですねぇ。“冨永悠香”でも全然良かったんですけど、新しい自分でいきたいな、と思いました。そんな深い意味があるわけではないんですが、じゃぁ英語でいこうかな、みたいな。

――“HALLCA”っていうのは、プロジェクト名なんでしょうか? それとも個人名ですか?

HALLCA:“どっちも”でいきたいです。

――“どちらも”と。

HALLCA:はい。個人の名前でもありプロジェクト名でもあり。

――ちょっと細かい話になりますけど、じゃあ、HALLCAというプロジェクトのヴォーカリストは“HALLCA”さんですか? それとも“冨永悠香”ですか?

HALLCA:そこは…多分“HALLCA”なのかなぁ。どっちですかね…。でも、“冨永悠香”はプライベートの自分なので、ホントは“HALLCA”のままでいきたいところなんですが…。最近思うのは、ちょっと作り過ぎるのに疲れてしまって…。今は“冨永悠香”寄りの要素も出していきたいって思いはあります。「素直な自分も出していきたいな」って。

――なるほど。で、HALLCAという表記になったのはSuicaがきっかけでしたよね?

HALLCA:丁度新しいアーティスト名を考えている時にSuicaの表記を見て「HALLCAにしよう!」って思い付いたんです。“CA”になってたので…。

――PiTaPaじゃないんですね?(笑)

HALLCA:その時はもう東京に住んでいたので、Suicaでしたね(笑)。

――もうすっかり“東京の人”になったって感じですよね。

HALLCA:それ、ちょっと思いました。Suicaってめっちゃ東京やん!って(笑)。でも、PiTaPa魂もありますので(笑)。

――(笑)。上京して3年ぐらいですか?

HALLCA:はい。3年ですね。

――:どうですか? 東京はもう慣れましたよね?

HALLCA:もう慣れましたし、最初っから結構慣れてました。

――以前から東京での活動も結構ありましたもんね。

HALLCA:はい。関西に住んでる時も東京での活動も結構あったので「東京嫌だ」とか全然ないですね。

――でも、“関西っぽさ”は抜けてないですよね。

HALLCA:ホントですか? ありがとうございます。それは嬉しいです。「あんまり関西弁出ないよね」って言われることが多くて。関西なんやけどなぁみたいな。関西魂はやっぱりあるので、「抜けてない」って言われるのは嬉しいです。

――多分、東京の人は「関西弁出ないですね」と思うかもしれないですが、関西人の僕から見ると…

HALLCA:「出てるやん!」みたいな?

――「関西人の喋る標準語だな」って感じはします(笑)。

HALLCA:ホントですか?一応、東京に住んでた期間もあったんですよ。幼稚園は東京でしたし、小学校2年生で関西に引っ越したので、ちょっと東京も混ざりつつ、みたいな…。

――で、ソロ・デビューして1年経ちましたよね?

HALLCA:そうなんです。再始動してからちょうど1年で。

――その時は確か大阪の事務所にいましたよね?

HALLCA:はい。大阪の事務所に所属していました。

――そこに所属していた期間は短かったですよね?

HALLCA:短かったですね。でも、再始動の半年ぐらい前から打ち合わせとか曲作りとかしていたので、関わっていた期間は1年弱ぐらいですかね。

――で、去年の終わりぐらいにちょっと“悲痛な叫び”みたいなツイートをされましたよね?

HALLCA:あれは事務所辞めた時ですね。

――事務所を辞められてフリーになった、と。

HALLCA:そうです。フリーになりました。

――なるほど。「どんな曲にしようか」とか「誰に発注しようか」とか、HALLCAさんが最終決定するって感じですか?

HALLCA:周りの方にも相談はしますね。

――『Aperitif e.p』では、“Executive Producer”のクレジットはありましたが、“Producer”や“Sound Producer”はクレジットされていませんでした。例えば、方向性とかビジュアルイメージとか、グッズだったりライヴのブッキングだったり、HALLCAさんはそれら全てに関わっていますか?

HALLCA:そうですね。「これこういう感じに出来ませんか?」みたいな感じで。

――ということは、総合プロデューサーでもあるわけですよね。

HALLCA:プロデューサーというより、セルフマネジメント、という感じじゃないですかね?

――例えば「新曲を作ろう」となった時、「誰にお願いしようか」みたいなところから始まるわけですか?

HALLCA:そうです。日頃から「この人にお願いしたいな」っていう人が自分の中であったりするので。でも、PellyColoさんとかRillsoulさんの曲が好きなので、基本的にはそのお二人に頼みたいなっていうのはありますね。「こういう曲やりたいな」って思った時に、「これは絶対コロちゃんに作って欲しい!」って思ったりとか。

――「コロちゃん」って呼んでるんですね(笑)。ダメ出しとかもするんですか???

HALLCA:コロちゃんの曲にしてもリルさんの曲にしても、そんなこと1回も思ったことがなくて。これってすごくないですか? 私今まで他のことに関して「これちょっと違う」「これちょっと直して欲しい」とか思ったことはあるんですけど、曲全体に関しては全くないんですよ。自分のヴォーカルに関して「ここの歌い方があまり好きじゃないので直して欲しい」とか、サウンドに関しても「ここのシンセの音をもう少し出して欲しい」とか、そういうことしか言わなくて。曲全体に関して「これはちょっと」とか思ったことが全くないんですよね。ホントにあの二人のサウンドが好きなんだろうなって思います。

――「どんな曲にしたい」といったことを具体的に発注することもあるんですか?

HALLCA:リルさんに関しては言ったことなくて。リルさんは自分がかっこいいと思うものとHALLCAの世界観を融合をしてくれてる感じで、PellyColoさんは「4つ打ちのハウスでやりたい」みたいな感じで発注したり、参照して欲しい曲を投げたりはします。

――それぞれ違うんですね。

HALLCA:リルさんの中には自分の世界観ができていて、自分の作りたい曲があるというか…。PellyColoさんももちろん自分の世界観を持っているんですが「自分のやりたいことは自分で決めろ」っていうタイプなんですよ。私が自分のやりたいことがはっきり分からない初期の頃に「前に立つ人間なんだからそんなんじゃダメでしょ」とめちゃめちゃ怒られたこともありました。

――それはソロになってからのことですか?

HALLCA:ソロになってからです。最初は公園のベンチとかで一緒に曲を作ってたんですよ。

――公園のベンチですか?(笑)。

HALLCA:青春ですよね。そう、作ってました。その時にすごい怒られたこともあります(笑)。

 

「自分がソロ・シンガーになれるはずがない」って思ってたんです

――再始動までに約1年半の“ソロ活動準備期間”がありましたが、その期間はどんな感じでした?

 

HALLCA:そうですね~。Especiaが解散した直後は、すぐに「ソロシンガーになろう」とは思ってなくて…。もちろんなれるものならなりたかったですけど「自分がソロ・シンガーになれるはずがない」って思ってたんです。自信がなかったので、もうちょっと違う道を探したいって気持ちがあって、色々やってみたいな、と。

――その間、舞台もやられましたけど、ああいったことですか?

HALLCA:“歌”ぐらい自分が夢中になれるものって他にもしかしたらあるかもしれない、と思ったんですよね。ソロってほんとに厳しいと思うし、「私ごときに出来るはずない」ってずっと思ってたので、舞台をやったりしたんですが、歌ほどに“アツい気持ち”が自分の中に生まれなくて…。MCのお仕事とかやったんですけど、そこまで「極めたい」とは思えなくて、いろいろ模索した上で、やはり「歌いたいな」って思うようになりました。

――新宿BLAZEでのEspecia最終公演の時は、「どうするか」は明言はされなかったですよね。

HALLCA:そうなんです。明言しませんでした。自信がなくてできなかったんです。

――ぺシスタ/ペシスト(編注:Especiaのファンのこと)の間では「ソロでやるんだろうな」って皆さん思っていたと思います。

HALLCA:えっ? そうなんですか?

――ええ。

HALLCA:全然感じなかったです、そんなこと。

――え? 全然感じなかったですか!?

HALLCA:はい。むしろ「あんまり期待されてないかな」「やっぱりやらないほうが良いかな」ってちょっと思って、「他の道を試してみたい」って気持ちで動いてました。

――そうですか…。まあ、あまり「ソロでやります!」みたいなことをガンガン言うタイプではないとは思っていたので、ラスト・ライヴでは敢えて明言されなかったんだろうなとは思ったんですが…。

HALLCA:そうですね。ただ普通に就職することは考えれらなくて、舞台やステージに立つことがすごく好きだったので、そっちの方面で考えたいなとは思っていました。

――舞台やMCのお仕事をやられましたけど、他の選択肢ってどんなのがあったんですか?

HALLCA:えーなんだろう。舞台とMCと…。あ、あとEspeciaの頃からラジオがずっと大好きだったので、ラジオDJもやってみたかったかな。ラジオに関しては具体的に動いたわけじゃないですけどね。

――では、歌の道に舞い戻うと思ったのは、いつ頃でどういうきっかけでした?

HALLCA:いつからだっけ…。たしか舞台やってる時期に福岡の方とコラボとかしたりして…。

――はい。ありましたね。あの時は「いよいよ動き出したな」みたいな印象を抱きました。その頃ですか? 明確なきっかけとかそういうものはありました?

HALLCA:明確なきっかけは…。あの頃に色んな人と音楽をやろうって感じにはなったんですが…。

――:お声が掛かったりしたんですか?

HALLCA:自分から関係者の方に相談したりしてました。で、曲を作ったりとかしたんですけど、うまく進まなくて…。そんな中2017年の年末頃に、コロちゃんに相談する機会があって、その時に「今作ってる曲でAORぽいのがあるから、ちょっとそれ聴いて、よかったら歌詞をつけてみたら?」って言われて、聴かせてもらったんですよ。それが「Milky Way」で、聴いた時に「やっぱりコロちゃんの曲最高!私はこういう曲を歌いたい!」ってなって、再始動への流れができていった感じですね。

――:なるほど。それからはトントンを進んでいったわけですか?

HALLCA:そうですね。コロちゃんに「こういう曲が良いんですけど…」って相談して作っていただきました。

――つまりは、2017年末のPellyColoさんとの食事をきっかけに曲を作ってもらうこととなり、2018年7月『Apelitif e.p』での再始動に繋がって、でも、その年末には事務所を辞めてフリーになって、紆余曲折がありながら、今年2月には「歌うことが大好きな自分に戻ってきてるなって思う」というポジティヴなツイートがありました。そして、1周年を迎えられたというわけですね。

HALLCA:そうですね。なんか記憶が曖昧なので1周年という節目にこんな風にインタビューしていただいて、ありがたいです。

取材・文
石川真男

HALLCA ライブ情報

 

HALLCA 1st One-man Live "Aperitif at my VILLA"

場所:東京・渋谷Chelsea Hotel(https://goo.gl/maps/btqsGeK118iEWJk69

チケット:前売4,000円、当日4,500円(1Drink別)

プレイガイド:Live Pocket(https://t.livepocket.jp/e/hallca_villa

HALLCA 商品情報

 

HALLCA 1st ALBUM『VILLA』

HALLCA 1st ALBUM『VILLA』

発売日:2019年9月25日

品番:MGLB-0001

定価 : ¥2,778(税抜)

メジャーでの活動含め2017年の解散まで5年間の活動を展開したEspeciaのメイン・ヴォーカル、HALLCA。

デジタル・シングルの連続リリースに続き、グループ時代共に歩んだPellycolo、Rillsoulらアレンジャーのバックアップによる待望のファースト・アルバムがリリース決定 !

<収録曲>

01 Diamond

02 Show the Night

03 burning in blue

04 WANNA DANCE!

05 コンプレックス・シティー

06 Utopia

07 Dreamer

08 Milky Way

09 モイスチャーミルク

10 guilty pleasure(Blackstone village remix) 

11 Diamond(Yohji Igarashi remix) 

 


『Aperitif e.p』好評発売中

 

『Aperitif e.p』

 

価格:WVRG-1001

定価 : ¥926 (税抜)

 

<収録曲>

01 Diamond

02 Dreamer

03 guilty pleasure

04 Milky Way

 

PROFILE

PROFILE
HALLCA
93年生まれ、兵庫出身のヴォーカリスト。オーディション合格をきっかけにレッスンを積み、2012年6月1日にリーダーとしてEspecia結成に参加。大阪を拠点に2012年の初EP『DULCE』からコンスタントにリリースを重ねて全国区に支持を広げていく。2015年にメジャー・デビューし、2016年からは東京に拠点を移して活動を続けるも、2017年3月に解散。休止期間には限定的なライヴや舞台出演も経験する。その後はPellyColoと楽曲制作を進め、2018年5月31日にHALLCA名義での再始動を発表。6月1日からSpotify先行で楽曲配信をスタートして話題を集め、ソロでのファーストEP『Aperitif e.p』(WAVERIDGE)をリリー ス。ディ スコ・ポップ、ニュー・ディスコ、ディープ・ハウス、ブラック・ミュージックの要素を取り入れ、グループ時代共に歩んだPellycolo、Rillsoulなどのクリエーターと届ける新たな彼女の世界観に注目。
公式サイト: https://www.hallca.me/