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少しずつ成長していくことにわたしは喜びを覚えているからこそ、最後に「少しずつ"が"いい」と書きました。 菜月アイル インタビュー
CANDY GO! GO!の主力メンバーとしてグループを牽引している菜月アイル。彼女が、8年ぶりになる2ndソロシングル『Little by Little』をメジャーリリースした。彼女がどんな想いでこの作品を作り上げたのか、その胸の内を覗いてみた。
あの日が、今に繋がる運命の扉を開ける機会になりました。
――ソロ作品のリリースは…。
菜月アイル 8年ぶりになりました。1枚目の『B side U』を発売したのが、CANDY GO! GO!に加入して間もなくの時期。それからずーっと期間が空いての今回だから、なんか不思議な感じです。
――CD盤の3曲目に『B side U』の最新バージョンを収録しているのも、嬉しかったです。
菜月アイル 1枚目に収録していた『B side U』も今、サブスクにはアップしているので、アレンジも含め、わたしの歌声や歌い方がどう変わったのか、それを聴き比べてもらうのも面白いと思います。ぜひ、聴き比べた感想も聞かせてください。
――1枚目のシングル盤は、もう…。
菜月アイル 当時、200枚限定リリースだったから、持っている方のほうが圧倒的に少ないように、今や貴重な作品になっています。だからこそ、サブスクで当時の『B side U』を聞けることがわたしも嬉しいんです。
――CANDY GO! GO!の活動の中、企画ライブとして各メンバーのソロステージや、生誕祭を通してのソロコーナー。メンバーによっては単独でのソロ公演を経験しているように、ソロで歌うこと自体けっして珍しいことではないですけど。こうやってソロ作品をリリースするのは、とても貴重な機会になりますよね。
菜月アイル そうなんです。ソロとして歌った楽曲を、こうやってソロとして残せるのはとても嬉しい機会だなと思っています。
――そもそも、なぜ今回ソロ作品を出すことになったのか、そこが気になったところでした。
菜月アイル きっかけはですね、昨年行ったわたしのソロライブ公演に、いつも同行してくださるCANDY GO! GO!のマネージャーさんが足を運べない状況が生まれました。そのとき、代わりに来てくださったのがCANDY GO! GO!のプロデューサーの岡部さんでした。岡部さん自身、CANDY GO! GO!のライブには足を運んでいても、わたしのソロライブ姿を見るのは久しぶりでした。
その日の公演も無事に終えた帰りがけに、岡部さんが「今日は、改めてアイアイ(菜月アイル)のライブ姿をしっかりと、しかも客観的な視点で見ることが出来たよ」と話しだしたんですね。わたしは「えっ、今日の反省会かな??」と思っていたら、突然、岡部さんが「アイアイのライブ、すごく良かったよ!!アイアイなら、ソロとしてもまだまだ成長していける。良かったら、来年ソロで作品を出さないか」と興奮しながら言い出したんですね。まさにそれが、ソロ作品を8年ぶりに出すきっかけになりました。もし、あのときわたしがソロで歌う姿を岡部さんが見ていなかったら、この話が生まれていたかもわからないように、あの日が、今に繋がる運命の扉を開ける機会になりました。
――ということは、昨年から話は進んでいたんですね。
菜月アイル そうなんです。そのライブが昨年初冬の時期。そのときから「アイアイの誕生日時期なら、今のところCANDY GO! GO!のリリースにも重ならないから、その時期に出そう」という話をしていました。わたしの誕生日は6月でしたけど、1カ月ほど時期をずらし、7月20日にリリースをしました。
わたしは、歌詞に書いた通りの本当に不器用な人間です。だからこそ、「少しずつ少しずつ進むこと」が大事と言いますか…。
――収録した『Little by Little』と『RE:BORN』は、この作品のために…。
菜月アイル 書き下ろした新曲になります。2曲ともOKBこと岡部さんが作曲し、わたしが作詞をしています。3曲目に収録した『B side U』は、アレンジを変え、8年ぶりに収録しました。
――収録曲を聞いた瞬間から、「これぞOKBサウンド」という楽曲が飛び出します。
菜月アイル 聞いてくださった方々も、口々に「岡部さんの楽曲だよね」と言ってくださいます。同じく歌詞についても、「アイアイらしいよね」と言ってくださる言葉を多くいただけたのも嬉しいんです。
――CANDY GO! GO!で培った経験を、より菜月アイル色に染め上げて打ち出してきた曲たちばかりですからね。
菜月アイル 今回の制作に当たって、岡部さんには「アイアイの好きなようにやっていいから」と言われてましたので、CANDY GO! GO!へ加入して以来ずっとお世話になっている岡部さんに『Little by Little』と『RE:BORN』の作曲をお願いしました。作詞については、わたしが大事にしている想いや言葉を、『Little by Little』『RE:BORN』ともに込めて書きました。
――歌詞には、まさにアイルさんらしさが出ています。
菜月アイル そう思っていただけました?
――聞いて、すぐに伝わりました。
菜月アイル わたしは、歌詞に書いた通りの本当に不器用な人間です。だからこそ、「少しずつ少しずつ進むこと」が大事と言いますか…。『Little by Little』という言葉は、ファンの方がわたしに言ってくれた言葉です。
今でこそ少しは成長しましたけど。昔は、「あの子は出来るのに、わたしはぜんぜん出来ない」「あの子は覚えが早いのに、わたしはぜんぜん覚えられない」。その結果、ステージに立つことさえ許されなかった時期もありました。そういう日々の中でも、わたしのことを応援し、支えてくださるファンの方々がいました。その時期に言われたのが、「アイアイはLittle by Littleの人だから」という言葉。その方いわく、「無理に背伸びすることなく、自分のペースで進むことを大事にしてほしい」「少しずつでいい、そうやって進み続けていれば成長していけるし、その姿を見続けているからこそ、その成長だってしっかり感じてる。だからアイアイのペースでゆっくり成長すればいいんだよ」と。そのときに、「見てくれている人たちは、わたしのゆっくりとした成長をしっかりと見てくれているんだ」と思えました。それからは、「自分らしさを持って成長していけるのなら、わたしは少しずつでいいから、焦らずに成長し続けよう」という気持ちで進めば、今も進み続けています。だからこそ、わたしと同じような想いを感じている人たちへ向け、「出来ないことが悪いわけじゃない。少しずつでいいから、自分のペースで進み続けよう」と『Little by Little』を通して伝えたかったんです。
――『Little by Little』は、日々の努力を怠ることなく、小さな努力を積み重ね続けているアイルさんのストイックな生きざまや姿勢が見えてくる歌ですからね。
菜月アイル 「日々の努力は無駄じゃない」というのが伝わったら嬉しいですよね。見てくれる人は、日々の小さな積み重ねもしっかりと見てくれているんですよね。今は出来なくとも、それをクリアするために頑張っている。その過程を見てくださる人たちって、いつだって身近にいるんです。だからこそ、「自分はここにはいらない存在だ」「わたしは仕事が出来ないから、みんなに嫌われてるし、相手にされないんだ」という意識は持たないで欲しい。まして、「今朝のニュースも心曇らせる」の歌詞ではないけど、命を絶つことは絶対にしないでもらいたい。ほんの少しでいい、前向きな気持ちを持って頑張り続ければ、いつか出来るようになるし、そうなってくると、昔気になっていたことも気にならなくなるどころか、それが自信にも繋がり、「なんか明るい表情をしているよね」とまわりから言われるくらいに自分を輝かせていくことにも繋がります。だからわたし、「少しずつ」の歌詞の表現も最後にちょっとだけ変えました。
それまではずっと「少しずつ"で"いい 少しずつ」と歌いながら、最後に「少しずつ"が"いい 少しずつ」と書きました。"で"を"が"に変えただけですけど。でも、少しずつ頑張っていれば出来るようになる。そうやって成長していくことにわたしは喜びを覚えているからこそ、最後に「少しずつ"が"いい」と書きました。ファンの方々の中にも、そこへ気付いてくださり、「最後の少しずつ"が"いいよね」と言ってくださる方々がいましたし、わたしの想いを汲み取ってくださったことも、すごく嬉しかったです。
「あんな無邪気に笑っている顔を見たことない」とも言われました。
――少しずつでいいという歩みの進め方は、CANDY GO! GO!にも重なる想いですよね。
菜月アイル ほんと、そうだと思います。むしろ、誰もがこういう心の迷いを一度は経験しているんじゃないかと思います。そういうときに、『Little by Little』を通して背中を押してあげたいし、マイナスの決断へ至らないようにしてあげたい。わたしは、そんな思いも抱きながら『Little by Little』を歌っています。
――『Little by Little』はMVも制作。ここでは、CANDY GO! GO!では見せないアイルさんの姿を存分に楽しめます。
菜月アイル そうなんですよぉ。このMVは、わたしの誕生日当日に撮影をしました。撮影をした場所が海浜幕張。海辺や、道の上を歩きながら歌ったりなど、いろんなシチュエーションで撮っています。
今回、道の上を歩きながら歌っている撮影場所は、わたしが小さい頃に事故に巻き込まれたところでした。MVを観たパパが、「あの歩いて歌っている場所、ディズニーランドへ遊びに行った帰りに事故にあった所だ」と言いだしたことでわかったんですけど。と言っても、事故にあった記憶はなんとなくあるけど、まだ幼すぎて記憶が曖昧です。それでも、ここへ戻ってきたというのは、何かしら運命が導いたことだったのかも知れませんよね。
――いろんな運命が重なり合って生まれたのが、今回のソロ作品というわけだ。
菜月アイル ほんと、そうだと思います。MV撮影のお話になりますけど。ファンの方々に「あんな無邪気に笑っている顔を見たことない」とも言われました。CANDY GO! GO!は凛々しいイメージを打ち出しているから、あえて笑顔を見せずにキリッとした表情を心がけているように、CANDY GO! GO!にいるときは普段のわたしというよりも、CANDY GO! GO!を通しての菜月アイルを見せています。それにCANDY GO! GO!の場合は、絶対に黒しか着ない。だから『Little by Little』のMVでは、「黒い服は絶対に着ないぞ」と決めて服も選びました。結果、白のトップスに、緑色好きという理由もあって緑色のスカートをはきました。
――まさに、普段のアイルさんらしさを見せてきたわけだ。
菜月アイル そうなりましたね。ただ、自分の中で「もっとCANDY GO! GO!らしいイメージを大事にしたほうがいいのかな?」「こんなに笑顔でいていいのかな?」とも最初は悩みましたけど。マネージャーさんが「アイアイの作品なんだから、自分の思う通りに。自分らしく振る舞ったほうがいいんじゃない?」と言ってくれたことから、自由に、自分らしさを出しながら撮影をしました。
結果、「アイアイさんって、こんな可愛い人だったんだ」「こんな可愛らしい表情の人なんだ」と言われることが増えました(笑)。普段、「恰好いい」と言われることがあっても、「可愛いい」と言われることがないから、そう言われたときは、正直、どう対応して良いのかわからない自分もいましたけどね(笑)。
――ファンの方々にとっても、嬉しい意外性を持った姿を、ソロ作品を通して感じているんですね。
菜月アイル 「こんなにも、いろんなアイアイさんを見れるとは思っていなかった」とも言われるくらい、嬉しい意外性だったみたいです。
――確かにCANDY GO! GO!では凛々しい印象を与えていますけど。メンバーみんな、普段からキリッと険しい表情をしているわけではないというか。むしろ、その逆の人ばかりですからね。
菜月アイル そうなんです。面白い子たちばかりだし、あの恰好をするとき以外は、けっして決め顔している人たちではないですから(笑)。
『RE:BORN』は、ここから下克上してやると宣戦布告してゆく内容です。
――『RE:BORN』も、"らしく"もあり、ソロだからこそ見せた音楽性ですよね。
菜月アイル 打ち込みサウンドも取り入れているように、恰好いい中にもデジタルな要素を加えてみました。この曲の特徴が、「RE:BOEN」とサビで12回繰り返しているところ。そこは、いつかライブで声を出せるようになったら、わたしが「RE:BORN RE:BORN」と2回歌い、ファンの方にも、そこを2回歌ってもらうという、そのやり取りを何度も繰り返しながら、気持ちを一つにしたライブを作りたいなと思ってのことでした。
歌詞は、これまでの人生の歩みを振り返りながら、「こんな風に思いながら生きてきたなぁ、でも本当はこうなりたい気持ちがある」「こう言われたら、こう言い返す」など、"RE:BORN=生まれ変わる"という言葉の意味を現すように、ここから下克上してやると宣戦布告してゆく内容にしています。
――今回に限らず、アイルさん自身、CANDY GO! GO!を通しても「現状を塗り替え、夢をつかんでやる」強い意志を歌詞にすることが多いですよね。
菜月アイル 『RE:BORN』にも書いた、這い上がってでも最後はかならずわたしが勝つ。実際に、鼻で笑われるような経験を何度も重ねてきたからこそ、その思いはどうしてもソロでも、CANDY GO! GO!でも出てしまいますよね。そこに関しては、わたしに限らず、メンバーみんなそうですけど(笑)。
――そうやって、自分が、自分たちが変えていくんだと意志を示すことが大事なこと。その姿に、見ている側も強く共鳴します。
菜月アイル その意志表示を示すことが大事なんだと思います。けっして、なぁなぁで活動しているわけじゃないぞと。「これまでこんな風に生きてきたけど、わたしが絶対に勝つ」「今までは負け組だったかも知れないけど、今に見とけよ、お前ら!!」「最終的にはわたしが勝ってやるんだ!!」。まさに『RE:BORN』は、下克上ソングになりましたからね。
――ソロ作品を出したことで、改めてCANDY GO! GO!との共通項。菜月アイルという一人の表現者としての思いなどがいろいろと見えてきて、ますますCANDY GO! GO!の活動にも期待したくなりました。
菜月アイル これは岡部さんが言ってたことですけど、今回は、わたしがソロとしてシングル作品を出しましたけど。メンバー次第では、今後、他のメンバーがソロ作品を出す可能性もあるし、そうしていきたいそうです。もちろん、わたしの3rdシングルだって、何時になるかはわかりませんけど可能性があるわけですからね。
CANDY GO! GO!はずっと活動を宣言しているように、55周年経つまでは終わることのないユニットです。そのぶれない軸があったうえで、各メンバーが、ソロとしてそれぞれの色を出していくのも、長く活動をしていくうえでファンの人たちにも、メンバー自身にも刺激的なことだと、今回のソロ作品を出してわたしは感じました。
――その展開は、応援する側としても嬉しいことですよ。
菜月アイル CANDY GO! GO!は、どんな状況下や逆境に追い込まれようと絶対に心折れないし、がむしゃらに走り続けます。だから、ファンの方々も安心してついてきてください。こうやってCANDY GO! GO!という戻れる場所があるからこそ、わたしはソロ活動も楽しめています。
まずは、『Little by Little』に収録した3曲の歌詞をしっかり噛みしめながら聞いてください。そして、少しでも気持ちが前を向いてもらえたなら嬉しいです。見てくれている人は、あなたの努力する姿をいつだって見てくれています。だから少しずつでいいから、日々前へ進み続けてください。
TEXT:長澤智典
<インフォメーション>
【MV】菜月アイル / 「Little by Little 」
https://www.youtube.com/watch?v=XsGFLzzW7h0&list=RDXsGFLzzW7h0&start_radio=1
タイトル:「Little by Little」
品 番:XNOK-00012
価 格:1000円(税込)
販売元:エイベックス・エンタテインメント(株)
発売元:VORTex Records
<収録曲>
1, Little by Little
2, RE:BORN
3, B side U ~2022 new version
★菜月アイル(ナツ”キアイル)
・Twitter
@aiaichan20
所属ユニット:「CANDY GO!GO!」
・公式ホームページ
https://candygogo.jp/
所属事務所:ONEtoONE Agency
・公式ホームページ
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