FEATURE
誰だって、永遠に苦しみたくはないじゃないですか。どうせ生きていくのならちょっとでも前に進みたい。 それに、ちょっとくらいのほうが、より幸せを噛みしめられるのかなと思って。 ハナフサマユ・インタビュー
「前進」をテーマに制作したアルバム「Blue×Yellow」を発売したばかり。シンガーソングライターのハナフサマユさんに、同作品の魅力を伺いました。現在、彼女はライブツアー中。ぜひ、ライブにも触れ、直接その歌声を耳にしてください。
ほんの少しでいい、聞いてくださるみなさんの心が前を向くきっかけになるような作品を作りたい。
――最新アルバム「Blue×Yellow」は、「前進」をテーマに制作しています。なぜ、そのテーマを選んだのかから聞かせてください。
ハナフサマユ(以下省略) 2020年9月に、わたしはミニアルバム「call for love」を発売しメジャーデビューしました。「そこからもっともっと進まなきゃ」という思いを心に持っていたのが、一つ。昨年からの情勢もありますし、ほんの少しでいい、聞いてくださるみなさんの心が前を向くきっかけになるような作品を作りたいと思い、「前進」というテーマを持ってきました。
――アルバムに出てくる主人公は、心傷ついてる方が多い印象も受けました。
そうですね(笑)。傷つきながらも、ほんの少しですけど、それでも前を向いてちょっとずつ進んでいく。そういう女性の姿を多く描いています。
――その姿は、普段のマユさんとも重なる姿なのでしょうか?
自分と何処かリンクしている部分はあると思います。というのも、わたし自身が、楽曲を通して自分の気持ちを少しでも前へ進めようとしています。たとえ主人公は自分でないとしても、何かしら今のわたし自身の気持ちも反映はしています。
――男性が聴いても気持ちを押される感覚は、もちろんあります。マユさんの描く曲の中へ気持ちを投影して聴いた場合、
とくに女性の共感度が高いのかなとも感じます。
そうであったら嬉しいなというのはありますね。今回は、恋愛をモチーフにした楽曲が多いですけど。恋愛はもちろん。
物事が上手くいかないときに、このアルバムを聴いてちょっとでも「前を向けそうだな」と思えるきっかけになれたらなと思っています。
実際にライブをやっていても、「●●を聴いて前向きになれました」という声は多くいただいています。
――マユさんが楽曲を作る場合、どういうところからテーマを持ってくることが多いのでしょうか?
そのときの自分の感情ばかりだと、どうしても似通ってしまうんですね。わたしは漫画好きというのもあって、漫画からインスパイアを受けて書くことはよくあります。リード曲の「Blue×Yellow」は、まさにそう。他にもいろいろあります。
――「これ、何々という漫画をモチーフにしてます?」など、元ネタのことを言われたこともあります?
まだ言われたことはないです。いろんな楽曲を探っていただければ、「もしかして…」と思えるか…は、みなさんにお任せします(笑)。
――「Blue×Yellow」は、めちゃくちゃ力強い楽曲ですよね。
ありがとうございます。「Blue×Yellow」は漫画からインスピーションを受けましたけど。「これくらい大胆に、勇気を持って進まなきゃな」という、わたし自身の思いをここには詰め込んでいます。 わたし自身がどこか物事を引いて見てしまう面があるせいか、「自分の道を切り開くためには、
これくらい大胆にいかなきゃ」とも思っています。
――中には「Rainy Rainy」のように、身勝手な男性に振りまわされてしまう女性の思いを記した歌も収録しています。
悪い男につかまっちゃったみたいな内容も書いてありますからね(笑)。実際にあったことではないですが、相手に振りまわされる女性の立場で書き始めたら、こんなにも悲しい思いを記していました。
――聴いてて、すごく情景や感情の揺れが見えてきました。
どの曲もそうですが、なるべく情景が浮かぶ楽曲を書こうと心がけています。その情景にリアルさを出すため、誰もが日常の中で目にしているものを歌詞の中へ書き加えたりもしています。
――マユさんの場合、ラブソングに見せかけて、じつは異なる思いを歌にしていることもよくありません?
恋愛の歌に聴こえるけど…というのは、あります。このアルバムだと「ユメミラ」がそう。愛を語ってはいるけど、そこにはいろんな愛を重ねられるように書いています。
わたしの場合、「生きる」というよりも、「生きづらい」日々から自分を救い出すために歌い始めたところがありました。
――恋することをあきらめたはずなのに、でも、ふたたび恋しようと思いを巡らせる「恋」も素敵な歌だなと感じました。
「恋」は臆病な女性が一歩進み出すことをテーマに、書きました。
――マユさんの場合、「生きる」ことをテーマに歌うこともありまよね。「命ある限り生きていく 今を」と歌う「今を」を聞き聴きながら、深く心動かされました。
「今を」は、コロナ禍になって以降、改めて自分が生かされている意味を考えさせられて収録しました。確かに、より深く命について考えた歌にはなりましたね。わたしの場合、「生きる」というよりも、「生きづらい」日々から自分を救い出すために歌い始めたところがありました。
――そこ、とても気になります。
わたしが曲を書き出したのは小学生のとき。生きづらい気持ちを歌にして吐き出したとき、わたし自身が前を向くことができました。それからは、心の中にモヤモヤを感じたら歌詞にして気持ちをおさめてゆくことをし続けてました。ただし、当時は誰に披露するわけでもなく、本当に自分自身のためだけに曲を作っては歌っていただけでした。
その曲を高校時代に友達へ初めて聴かせたとき、「わたしも自分の背中が押された気持ちになれた」と言われたんですね。そのときに初めて「わたしの歌って、自分の背中だけじゃなく、誰かの気持ちを前に向かせることも出来るんや」ということに気づきました。それからなんです、他の人のことも意識して曲を書くようになったのは。 でも、人前で積極的に歌うようになったり、誰かのためにという意識を強く持つようになったのは、本格的に音楽活動へ没頭した大学時代からでしたけど(笑)。
――自分へ向けて曲を書いていたときは、どんな思いを記していたのかも教えてください。
「気付いてよ」とか「助けて」など、そういう思いを歌にしていました。もちろん、そういう曲ばかりじゃなかったですけど、自分へ向けてというのが多かったのは確かでしたね。
わたしの歌や、このアルバムがちょっとでも気持ちに寄り添える力になっていたら。みなさんのいろんな感情の色に寄り添える、そんな作品になれたらなと思っています。
――話を戻しますが、「前進」というテーマを掲げたことは、創作してゆくうえでも良いパワーになっていたのでしょうか?
それはありました。「前進」というテーマを掲げた以上、みんなへその思いを届けるには、わたし自身が前進してなきゃ説得力が出ませんからね。ただし、「前進」と言っても、ただ「前を向く」だけではなく、振り返ったり、立ち止まったりすることもけっして悪いことだとはわたしは思いませんでした。たとえネガティブな気持ちが渦巻こうとも、最後に、少しでも気持ちが前へ進んだり、「前へ進もうかな」と思うだけで「前進」したことになるとわたしは思ったし、ほんのちょっとだけ気持ちを前に進めてゆく歌も実際に多いです。
――その、ほんのちょっとが大切ですからね。小さな気づきや前を向いた思いがあるからこそ、止まることなく前へ進んでいけますし。
人の気持ちって、そうそう簡単に変われるものではなく、ほんの少しずつ変化していくものじゃないですか。だからこのアルバムを聞いてくださる方々にも、「前へ進め!」と強く押すのではなく、「自分のペースでいいから、ほんのちょっとだけ前へ踏みだしてみない?」と伝えたかったところはありました。
――「「Blue×Yellow」と題したこのアルバム、今のマユさんにとって、どんな1枚になりました?
完成したアルバムを手にしたとき、わたし自身が「この時代の中に、このアルバムがあって良かった」と思いました。この作品が誰かの元へ届いたとき、少しでいい、気持ちを前へ動かす力になれたらなとも思っています。
――せっかくですので、1-2曲上げていただき、「こんな思いを詰め込みました」と語っていただいても良いですか?
「Blue×Yellow」は、まさに前進をテーマに作った楽曲です。この歌には、「守るべきもの、守りたいものがあるからこそ、攻めていかなきゃいけない」という思いを記しています。わたし自身も歌いながら、「今まで築きあげてきたもの、守りたいものがあるからこそ、いろんな挑戦をしなきゃいけない」と思いましたし、「自分の中の殻を破らなきゃいけない」とも思っていました。アレンジ面でも、今までのハナフサマユとは異なる曲調へ仕上げたように、力強い歌詞と弦カルテットの演奏が持つ重厚感を楽しんでいただきつつ、「こういうハナフサマユもいるんだ」と感じてもらえたらなと思います。
もう1曲上げるなら、「LIAR」かな。この曲には、人のことをなかなか信用できずに嘘をついてしまう女の子が登場します。たとえ見栄を張った嘘を言ったとしても、それをちゃんと受け止めてくれる人や、「そんなに強がらなくていいよ」と抱きしめてくれる人だって世の中にはいます。自分の壁にぶつかったとき、頑張った結果、たとえ悲しい結果やったとしても、「なにかしら先に見えてくるものがあるから大丈夫」と言いたくて、こういう前進の仕方もあるという曲を作りました。
――たとえ傷ついても、それでも前へ進もうとそっと背中を押してゆく。そういう歌がマユさんには多いのも好きなところです。
誰だって、永遠に苦しみたくはないじゃないですか。どうせ生きていくのならちょっとでも前へ進みたい。それに、ちょっとくらいのほうが、より幸せを噛みしめられるのかなと思って。なので、「傷ついて戻れない」と思っても、いつかほどけてゆく日がくることを願いながら、わたしは歌っているのかも知れません。
――最後に、改めてアルバム「Blue×Yellow」についてひと言いただけますか?
このアルバムには、「前進」をテーマに書いた曲たちを詰め込みました。もちろん、立ち止まってしまうこともあると思うし、振り返ることだって、嫌になって投げ出したくなることだってあると思います。たとえ全部を失くしてしまったとしても、そのときにわたしの歌や、このアルバムがちょっとでも気持ちに寄り添える力になっていたら。みなさんのいろんな感情の色に寄り添える、そんな作品になれたらなと思っています。ぜひ、あなたの側にこの1枚を置いてみてください。
TEXT:長澤智典
<インフォメーション>
ブルー アンド イエロー
「Blue×Yellow」
TKCA-74976 ¥2,300(¥2,091+税)
収録楽曲
1. Blue×Yellow
2. Rainy Rainy
3. 恋
4. Dm.1460
5. 今を
6. 愛がなんだ
7. LIAR
8. めぐりめぐって
9. ユメミラ
10. 大丈夫
全 作詞作曲:花房真優
★LIVE情報★
2021.11月28日(日) 名古屋SPADEBOX ワンマンライブ
2021.12月26日(日) 神戸煉瓦倉庫K-WAVE Birthdayスペシャル
2022.1月16日(日) Yokohama mint hall
Profile
ハナフサマユ(花房真優)
隙あらばマンガを読み、ヨーグルトが無いと生きていけないほんの少しナチュラルな超面倒くさがりやさん。
自分の想いを言葉にして伝えるコトが苦手だった小学生の頃、映画「タイヨウのうた」に感銘を受け歌をつくるようになる。その後「阿部真央」さんに憧れ、書き下ろし楽曲は300曲以上。2017年2月(大学3回生)より本格的にライブ活動をスタート。年間300ステージ以上をこなし、開催したワンマンライブは全てSOLDOUT。そして2019年11月・活動から僅か2年9ヵ月で3大都市ライブツアーを敢行。ツアーファイナルアメリカ村BIGCATも大いに盛り上がり、大成功に納める。翌2020年9月ミニアルバム「call for love」で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。母校関西大学交友会・後援会での様々な行事へゲスト出演。関大東京センターや様々な企業への楽曲提供。高槻阪急百貨店内にて期間限定で花房真優ポップアップストアオープンやスペシャルライブの開催・店内放送にてメッセージと共に楽曲が流れていたりと強力なバックアップを受け、2021年夏、新たに「ハナフサマユ(花房真優)」としてイメージ一新!そして、2021年10月27日(水)待望のメジャーファーストフルアルバム「Blue×Yellow」徳間ジャパンより発売!現在FM滋賀(e-redio)第2木曜16:30~「花房真優のキャッチ」・渋谷クロスFM第4木曜20:00~「SSW SONG BOX)パーソナリティーを務める。
SNS情報
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