FEATURE
愛内里菜 インタビュー「進化を遂げた今だから歌えるサウンドとメロディーの楽曲であり、今のわたし自身の気持ちを記した歌を」と求めた中で作りあげたのが『+INSPIRE』になります。
2025年3月にデビュー25周年を迎える愛内里菜が、記念すべき日に向けて勢いをつけるように、12月10日にシングル『+INSPIRE』を発売する。本人いわく「バイオリンをフューチャーしたハードロックチューン」の魅力、そして今の心境を熱く語ってくれた。
『+INSPIRE』MV
「いつも通りだね」「変わってないよね」と言われるよりも、歩み続ける以上は進化した姿を見せたかった。
──最新シングル『+INSPIRE』を聴いていると、里菜さんとライブ空間の中、一緒に熱くなっていく気分になれます。
愛内里菜 暗いステージの上に立ち、曲が始まった瞬間に照明がついて舞台の上が明るくなり、目の前にいるみんなと目があう。その瞬間を、わたしは「1秒先が煌めいた 目と目合って光りだす」と書いたように、『+INSPIRE』はライブの情景をイメージして書いた歌詞です。ファンの人たちも、ライブが始まる前まで、「今夜はどんな楽曲を、どんな風に届けてくれるんだろう?」と想像を巡らせば、わたしも「みんな、始まったときにどんな反応を見せてくれるんだろう?」と、同じように想像を巡らせるんですね。互いに気持ちが高まった中で、ライブがバーッと始まった瞬間、お互いにときめいた気持ち‥。それを、わたしは『+INSPIRE』の歌詞に書きたかったんです。
──すでに多くのリリースイベントを重ねていますよね。ファンの方々は、どんなリアクションを見せています?
愛内里菜 これまでの愛内里菜のイメージと言えば、ファンの人たちは「勢いがあって前向きな歌詞、しかもロックな曲調で盛り上がって」という印象を持っています。アニメ『名探偵コナン』の楽曲を歌っていた人という印象を持たれている方も実際に多いです。もちろん、その印象があるのをわかったうえでのお話になります。
2010年に活動を止め、2018年より、ふたたびシンガーとして活動を始めた中、ここまでみずからレーベルを立ち上げ、インディーズという形で、改めて自分の土台を作り続けてきました。今回のリリースは、14年ぶりのメジャーリリースになります。ここへ至るまでの活動を積み重ねてきた中、わたし自身が「進化を遂げた今だから歌えるサウンドとメロディーの楽曲であり、今のわたし自身の気持ちを記した歌を」と求めた中で作りあげたのが『+INSPIRE』になります。ファンの方々も、ライブやイベントを通して『+INSPIRE』に触れながら、「愛内里菜のロックが進化しているぞ」と、とても好意的に受け止めてくださっています。わたし自身、「いつも通りだね」「変わってないよね」と言われるよりも、歩み続ける以上は進化した姿を見せたかったからこそ、ファンの方々の反応を嬉しく受け止めています。
──歩み続ける以上は、つねに進化した姿を見せ続けていきたい気持ちも…。
愛内里菜 わたしはいつもその意識でいますし、ここへ至るまでに生み出したどの曲にも、その思いや姿勢を詰め込んできました。ただ、今回はメジャーでのリリースということもあって、より強くその意識を持っていたところはありました。
──C/Wに、2023年にリリースした『Brilliant Queen』を収録しています。この曲は、ここから新たに攻めていく里菜さんの強い決意や、当時の気持ちを赤裸々に詰め込んだ楽曲でしたよね。その気持ちを経たうえで、今回の『+INSPIRE』を持ってきたこと。この2曲を1枚の作品にまとめあげたことに、いろんな思いを巡らせてしまいます。
愛内里菜 『+INSPIRE』を通して「ここから先、まだまだわたしは止まらないよ」「まだまだ進化し続けていくよ」と宣言したからこそ、その気持ちへ至るまでの思いの流れをわかりやすく伝えたくて、C/Wに『Brilliant Queen』を持ってきました。
『Brilliant Queen』自体は、あえてポップな愛内里菜の姿を示した曲調にもしました。ファンの方々からも「これもまた愛内里菜サウンドだよね」と言ってもらえたように、あえて懐かしさを覚えるようにしたのも、この曲の魅力になっています。じつは、『Brilliant Queen』にも、ちょっとした仕掛けがしてありました。
──それ、気になります。
愛内里菜 『Brilliant Queen』の前に、わたしは『Ring+』というアルバムをリリースしました。その中に、『NOPE 2023Ver.』という激しいロックな楽曲を最後の曲として収録しています。この曲の終盤へ、表情を変えるように、後に『Brilliant Queen』としてリリースする曲の中で使われている(メロディアスな)サビを組み込みました。それは、この楽曲に登場する女性の二面性を示すための仕掛けであり、わたし自身とても気に入っているところです。
その当時からわたしは、「いつか、『NOPE』に出てくる女性を主人公に、もう一つの物語を作ってみたいなと思っていました。その思いを、続きを成すように形にしたのが、次にリリースしたシングルの『Brilliant Queen』。だから、『NOPE』と同じフレーズや歌詞も一部使ったわけです。きっかけはそこでしたが、歌詞を書き始めたらどんどん思いや世界観が広がりだし、「いろんなことで悩んでいる女性たちの応援歌になったらいいな」という気持ちで『Brilliant Queen』の歌詞を書き上げました。
──『Brilliant Queen』の歌詞は、里菜さん自身の意志や決意を含め、いろんな女性たちの思いや決意を後押しする曲としても書いたわけだ。
愛内里菜 「何かを始めたい」気持ちを応援するのは、もちろん。「日頃つらいこともいろいろとあるよね、腑に落ちないこともあるよね。文句を言いたいときだってあるよね」という気持ちから、「女性だからと言って見下されなきゃいけないのはなぜ??」「女性というだけで足元を見られちゃうことがあるよね」など、いろんな思いを踏まえながら。「それでも、私たちは胸を張って生きていこうよ」と、『Brilliant Queen』を通してメッセージしました。
実際に女性の方々からは、「通勤のときに『Brilliant Queen』を聴くことで、その日も1日頑張れます」の言葉などいろいろもらっています。わたし自身も、いろんなことを乗り越えたうえで『Brilliant Queen』の歌詞を書いたし、そのうえで『+INSPIRE』へ詰め込んだ思いに繋がっているからこそ、その流れを知ってほしくて『Brilliant Queen』をC/Wに入れたわけなんです。
「いい曲が出来たから、歌詞頑張ってね」と言われ、小声で「がんばります」と返事したのを覚えています(笑)。
──里菜さんと言えばロックなスタイルという話がありましたけど。『+INSPIRE』では、華やかさも持ったうえで、さらに尖ったロックなスタイルを示していませんか?
愛内里菜 そうですね。これまでの愛内里菜のロックなスタイルといえば、「振り切っていけー!!」や「盛り上げようぜ!!」という気持ちをぶつけた、一つのテーマやスタイルで走りきる楽曲を作る傾向が多かったですけど。今回は、サウンドも歌い方も激しい部分と抑えた面を、1曲の中、いろんなところへ散りばめる形で作っています。今までだったら、ギターの音をガーンとぶつけて盛り上がりを作ってきましたけど。今回は、ソロパートになったとたんロックなバイオリンの演奏が入ってきたり、キュッと締める演奏を心がけるなど、いろんな表情の変化を描きだしています。それはヴォーカルにも言えることで、Aメロは思い切り激しく歌いながら。でも、Bメロではちょっと感情を抑え目にして落ちた雰囲気を出すなど、巧みに、しかも何度も緩急をつけながら、1曲を通して物語性を感じるような歌い方やサウンドにしています。
──激しく攻めながらも華やかなバイオリンの演奏は、この楽曲でも気持ちを熱く掻き立てる嬉しいポイントになっているなと感じました。
愛内里菜 バンドメンバーでもあるバイオリニストの高久知也さんが演奏してくださいました。『+INSPIRE』を作る際に、「今までとは違った表現の楽曲を作りたい」と思い、作曲をしてくださる石井健太郎さんと一緒に、「Aメロのリズムはこれくらいで、Bメロではもっと落として、ここのリズムはこんなに刻まなくてもいいよね」と言葉を交わしながら、ともにサウンドやメロディーを、わたしが理想とする形に構築していきました。歌う際にも「サビのここでロングトーンがほしい」「ひと言ごとに切る感じがいい」など、実際に歌いながら、その場で互いに求める形へ調整していきました。
──その時点で、歌詞のイメージも頭の中にあったのでしょうか?
愛内里菜 それが、ぜんぜん(笑)。むしろ、すごくいいメロディーやサウンドを持った楽曲が出来上がったから、歌詞を書くうえでのハードルがめっちゃ上がりました。実際に石井さんからも、「いい曲が出来たから、歌詞頑張ってね」と言われ、小声で「がんばります」と返事をしたのを覚えています(笑)。
──『+INSPIRE』のリリースに合わせて、多くのリリースイベントをいろんな場所で行えば、それが嬉しい刺激にもなっているようですね。
愛内里菜 本当に、いろんな環境で歌っています。開放された空間の場合、もう公開リハーサル状態なんですね。むしろ、その環境を楽しんじゃおうと、手を振りながら、マイクを通して「愛内里菜でーす、これからライブをやりまーす」とアピールもしています。わたし自身「なんか、むっちゃおもろいやん」と、その環境をめちゃめちゃ楽しんでいます。
嬉しいのが、「名探偵コナン」の楽曲などを歌うと、その曲を聞きつけて観に来てくださる方々が、どの場所でもいること。多いのが、「「名探偵コナン」の曲じゃん、懐かしいと思ってきたら、本人だったんですね」と驚かれること。もちろん、今、シンガー活動をしていることを知ってくださっている方々もいますが、復活したことをまだ知らない人たちも多いから、それをもっと多くの方々に伝えたいし、もっと知ってもらう活動もしたいなと思っています。嬉しいのが、「昔よく聴いてました。また応援しますね」と、今の愛内里菜に興味を示してくださる方も多いこと。そこは、多くリリースイベントをやってきた中で得ている嬉しい出会いや再会になっています。
たくさんの方に20代の愛内里菜の音楽に触れてもらったからこそ、40代になった今、「いい歳の取り方をしているよね」と感じてもらいたい。
──里菜さんは、『+INSPIRE』を通して新しい扉を開きました。これからも『+INSPIRE』に描いた世界観を研ぎ澄ませていくのでしょうか?それとも、また新たな広がりを作っていくのでしょうか?
愛内里菜 両方です。今回、メジャーリリースという形を通し、たくさんの人たちへわたしの音楽を届けられる新たな環境へ身を置いたことで、どんどん自分に磨きをかけ、いい音楽をもっともっと届けなきゃという気持ちも生まれました。わたし自身、「変わんないことをやってるね」と言われるのが一番嫌なこと。たくさんの方に20代の愛内里菜の音楽に触れてもらったからこそ、40代になった今、「いい歳の取り方をしているよね」と感じてもらいたいし、やがて訪れる50代へ向かって経験を重ねていく姿を見せながら、「こういう風に年齢を重ねていったら楽しそうやん」という風に、音楽面での進化はもちろん、わたし自身のパーソナルな部分もいろいろ形にして見せていきたいなと思っています。
──『+INSPIRE』や『Brilliant Queen』を聴きながら感じてもいたことですが、今の里菜さんの楽曲からは、現在進行形の愛内里菜自身の生きざまを示した心模様が見えてくるし、伝わってきます。
愛内里菜 20代の頃のわたしは、テレビの中、まるでお姫様のようにきらびやかに着飾った、ステージという場の姿だけを見せてきましたけど。今は、その人の人間性を見られる時代じゃないですか。だからこそわたしも、愛内里菜の音楽を好きになってもらうのは、もちろん。愛内里菜自身を好きになってもらいたい。それこそ「愛内里菜という人が好きだから、音楽も好きになった」だって、今の時代ならぜんぜん有りだと思ってる。だから、YouTubeチャンネルで、いろんな(バラエティ的な?)こともやっているし。これからもずっと進化し続けていくし、いい意味で変わっていきたいなと思っています。
──今回のシングル作品自体が、未来へ向かって突き進む攻めた里菜さん自身の強い意志を感じる作品ですからね。
愛内里菜 それは、わたしに限らず、一緒に音楽活動へ携わってくれている仲間たちも同じ気持ち。みんな「まだまだ俺たちも止まらないし、一緒に歩み続けていくよ」と言ってくださるし、みんな経験も勢いもある人たち。わたし自身も、サウンド・プロデューサーの石井さんを含め、みんなと本当に熱い音楽作りが出来ています。
嬉しいのが、誰かを介して伝えるのではなく、わたし自身が直接思いを伝えれば、その姿をみんなが間近で見ているから、わたしのことをわかったうえで音楽を作ってくださること。それこそ、「ここをこう変えたいんだけど」と言える関係だし。だからこそ曲の制作を重ねるたびに、どんどん研ぎ澄ませた音楽作りが出来ているんだと思います。
──ダイレクトに意見や思いを交わしあえるって、すごくいい環境ですね。
愛内里菜 そうなんです。自分のひらめいた考えも、すぐに伝えることが出来ちゃう。今、ちょうどアルバムへ向けての制作中ですが、この間も、急に楽曲のタイトルを変えたくなって、思った時点で即、電話をして「この曲のタイトルを、こういう風に変えたいんだけど」と伝えたなんてこともあったし。一度作り終えたらもう直せないではなく、お互いに納得がいくまでやりとりをしあえるのが今の環境。愛内里菜として活動をしているけど、実際にはチームとして動けば、わたしの中ではバンドメンバーと一緒に音楽作りをしている気持ちでいます。しかもみなさん、わたしが活動を再開したときに協力の手を差し伸べ、そこからずっと一緒に何年も歩んできた人たち。まさに仲間ですからね。
まだまだ進化していく愛内里菜を、次はアルバムという形で表現したいなと思っています。
──里菜さんは、2025年3月で、デビュー25周年を迎えるんですよね。
愛内里菜 そうなんです。きっと、あっと言う間だし。今年はとくに、いろんな初めての経験が多かったから、1年経つのが本当に早かったです。最近では、毎月のように中国などアジアを中心に、海外でもライブ活動をしています。
──里菜さんは多くのアニソンを歌っているから、世界中にその名は知れ渡っています。
愛内里菜 とくに「名探偵コナン」の歌がね。海外でもコナンくん人気は凄いし、だからこそ広がった海外での活動だとも思うから、本当にコナンくんさまさまです。 嬉しいのが、きっかけはアニソンでも、海外に行ってライブを行うたびに、今の愛内里菜や、活動再開後にリリースした曲たちも好きになり、今の愛内里菜の活動も応援してくださること。わたしの活動をチェックしている海外の方々の中には、「次は何時来るかな」どころか、「あっ、日本でこういうライブやイベントがあるんだ」と知って、日本に足を運ぶ人たちも増えています。来年は、まわる国々の数も含め、今年以上に海外へ足を運ぶ機会が増えそうなくらい、今もいろんなオファーの声をいただいています。
──里菜さんの、これからの活動が楽しみです。
愛内里菜 活動の幅が一気に広がりだしたことで、まだまだやりたいことも、やれることもあるし、やらなきゃいけないこともあれば、まだ出来てないこともある。まだまだ成長していける環境だからこそ、その成長を一緒に楽しんでもらえたらなと思います。
──改めて、完成したシングル『+INSPIRE』についての思いを聞かせてください。
愛内里菜 背筋がピンと伸びる1枚になりました。何より嬉しいのが、新たに動きだしたときに支えてくれたメンバーたちと共に、こうやってメジャーという環境でも作品を出せたこと。わたしが改めて音楽と向き合ったとき、一番支えてくれたのが今のメンバーたち。そのメンバーと一緒に作った作品をメジャーリリース出来たことが、わたしの中ではすごく大きなことです。
みんなで育んできたものが、こうやって1枚の形になりました。この作品を聴いてもらえたら、これまでの歩みと、今の愛内里菜を感じてもらえると思います。来年3月には25周年を迎えます。もちろんその後も含め、止まることなく、まだまだ進化していく愛内里菜を、次はアルバムという形で表現したいなと思っています。みなさん、これからも愛内里菜の動きをチェックしてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。
TEXT:長澤智典
<インフォメーション>
■『+INSPIRE』MV
■愛内里菜 ニューシングル『+INSPIRE』
価格:¥1,200(税込)
発売元:Running Rabbit
販売元:コロムビア・マーケティング株式会社
M1:+INSPIRE
M2:Brilliant Queen
M3:+INSPIRE Instrumental
M4:Brilliant Queen Instrumental
■愛内里菜 SNS
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