FEATURE
橋本桃果が言ってた、「ステージの上は一年中夏だから」の言葉通り、この日は、会場中が猛り狂う猛暑の中の祭りの場と化していた。 OMNI666 ライブレポート
今年3月より、正式に始動。あれから8ヶ月強、11月22日、渋谷REXを舞台にOMNI666が初めてとなるワンマン公演「1st ONE-MAN LIVE『MIMESIS』」を行った。
この日は、二部構成で実施。一部目は、初ライブと同じセットリストをいつものオケスタイルで披露。二部目は、Alternation of Generationsの演奏を背にしてのバンドライブ。Alternation of Generationsは、OMNI666のプロデューサーであり、NoGoDのヴォーカリストとして活動中の団長が、NoGoDと平行して新たに始めたバンド。彼らが4人を支える形で参加。強烈な布陣の元、OMNI666のワンマン公演は満員の観客たちを前にして行われた。
初ライブ時と同じセットリストと言っても、準備期間を含めれば、1年間ライブ経験を4人は積み重ねてきた。当時のライブを体感した人が、この会場へどのくらいいたかはわからない。恐らく、会場に足を運んだ大勢の人たちは、初ライブ以降にOMNI666に振れ、魂を揺さぶられた人たちであり、何度もOMNI666のライブを経験し、4人の生き方に共鳴した人たちだ。それでもやはり、4人があの頃を振り返り、成長した姿を気持ちで示したことで、何時ものライブとは間違いなく譔なる嬉しい衝動を身に感じていた。
最初に映し出されたのが、初ライブを前に渋谷駅前に集合したときの映像。OMNI666の初ライブの場は、渋谷REX。彼女たちは、始まりの場で、この日のワンマン公演を迎えた形になる。
映像には、初ライブ時の模様も映し出されていた。Tシャツ姿なのも懐かしい。それにしても、荒々しい無骨なライブ姿だった。
舞台に姿を表した4人は、あの時と同じTシャツ姿だ。でも、間違いなく貫祿にあふれていた。あの頃はまだなかった、フロアから起きる観客たちの野太い雄叫び。4人が「ニンゲンキタナイ!!」と呟き、叫びだし、ライブがスタート。冒頭を飾ったのがOMNI666のテーマ曲とも言えよう『ニンゲンキタナイ!!』だ。貫祿に満ちた雄々しい4人の煽りに刺激を受け、フロア中から上がる声・声・声。この日は、マスク越しなら声出しOK。活動を始めた頃には無かった環境が、今、目の前に広がっている。あの頃から4人が求めていた、荒ぶる声の飛び交う景色がそこには広がっていた。その声を力に変換しながら、4人は胸に抱く熱い生きざまをぶつけてきた。
続く『B.N.I.D.』を通して、4人は絶叫と拳を振り上げる景色をこの会場に作り上げる。大勢の人たちが、期待というエナジーを「Oh!Oh!Oh!」と上げる声に、「Oi!Oi!」と叫びヘドバンしてゆく姿に変え、4人にぶつけていた。これが、1年間という歩みの中でOMNI666がつかんだ景色。4人の魂が呼び入れた絆だ。彼女たちの突きあげる腕と思いへ、沸き立つ思いを重ねるように、荒ぶる声と共にたくさんの腕がフロア中から突きあがっていた。
「この声が君に届くように わたしはここで歌ってるよ」。彼女たちが暗闇を切り裂くように届けた、光を携えた声。希望を抱いたその輝きが、フロア中の人たちの心に突き刺さる。高揚メロディアスな『ヒカリノアメ』を、4人は込み上げる思いのままに歌いあげていた。その歌に向け、ウッホウッホと声を荒らげる観客たち。映像に映しだされていた、がなるだけの歌声ではない。そこには、伝えたい強い思いと意思が生きていた。だから、命を持った歌としてフロア中に響けば、観客たちを沸かせていたのだろう。
転換の間には、1年間を振り返っての思いを語るメンバーらの言葉を紹介。橋本桃果の「春夏秋冬巡ってきたけど、1年間ステージの上はずっと夏でした」の言葉が、この1年間のOMNI666に歩みを示していた。
OMNI666(バンドスタイル)
新衣装を身につけ、舞台に姿を現したメンバー一人一人が、満員の観客たちを煽りだす。ふたたび熱を帯び始めた場内。その熱を大きく膨らませるように、バンドスタイルにバージョンアップしたOMNI666は、キュートで愛らしい、アイドル然とした可愛らしさを振りまきながら『開眼のすゝめ』を歌いだした。もちろん、彼女たちがブリブリにアイドルを演じるわけがない。楽曲が轟音を引き連れ走り出すのを合図に、彼女たちはアイドルの心情を皮肉り、本音を吐き出しながら、荒ぶる声で観客たちを煽りだす。騙す、騙される馬鹿しあいの世界に嫌気のさした4人がアイドルとして開眼した生きざまは、とても辛辣で赤裸々だった。
4人は『B.N.I.D』の演奏に乗せ、フロア中の人たちを激情した気持ちに染めだした。彼女たちの歌や叫びに向け、上がる熱情した歌声。メンバーたちの突き上がる拳に合わせ、客席中からも無数の拳が突き上がれば、大勢の人たちが4人と一緒にヘドバンに狂(興)じてゆく。バンドサウンドに気持ちを押されたメンバーたちは、その迫力に飲み込まれるのではなく、荒ぶる音にさらに高揚を覚え、ゲスい歌声にどんとん迫力を加えていた。
「人間のみんな、まだまだ声出せるよな!!」。ライブは止まることなく『怪物ちゃん』へ。フロア中から「Oi!Oi!」と上がる声。メンバーたちは、荒ぶる牙を剥きだし、観客たちをがなりたてる。みずからがモンスターと化し…なんて、糞みたいな表現は使わない。4人は、もともと闇に病みまくった心がSICKなモンスターたち。そんな自分たちの本心や本性を活かせる場を見つけ出し、今、こうやって声を荒らげ、鈍い輝きを放ちながら、たくさんの人たちの心を熱狂と熱情で支配している。その姿こそ、まさにライブモンスターそのものだ。
「みんなで一緒に地獄へ落ちましょう」。メンバーとフロア中の人たちが「Go To Hell」と叫びだす。「地獄祭りだー!!」の声を受け、『地獄祭り』が飛びだした。重く跳ねた演奏の上で、4人は「Go To Hell」と叫び、挑みかかる姿勢で観客たちを煽りだす。サビでは、メンバーと観客たちが掲げた拳をくるくると振りまわし、熱情した祭りの景色を描き出す。「それ!それ!それ!それ!」とメンバーらと一緒に声をアゲながら、間奏ではデスメタルな音頭の演奏に乗せ「Go To Hell」と叫ぶ。みんなが地獄という名の熱狂の祭りへと身を落とし、4人のオラオラとした煽りに刺激を受け、飛び跳ねていた。
次に披露したのが、新曲の『Now or Never』。ザクザクと身を切り裂くような演奏を背に、メンバーたちは腹の底かち沸き立つ熱情を、ヒリヒリとした音に乗せて突き刺した。目の前にいる観客たちを剥きだした牙で噛みつくように、前のめりの姿で4人は声を張り上げていた。高揚したエモさも覚えていたのは、4人が歌声のピックで、見ている人たちの熱情という琴線をガツガツと掻き鳴らしていたからだ。またもライブに熱を描き加える楽曲が誕生した。
この会場にいる人たちを広大な世界へ連れだすように、OMNI666は高揚系スタジアムロックナンバーの『evergreen』を通し、心を輝きで包み込む。気持ちを前へ前へと突き動かすメロでエモい楽曲だ。後半にはメンバーの歌に合わせ、大きくクラップを返す景色も誕生。けっこうネガティブな気持ちを彼女たちは歌っている。ありのままの自分を投影し、弱さを肯定しながら、その姿をポジティブに導いてゆく。だから、その歌声に光を感じていたのに違いない。
「ニンゲンキタナイ!!」の声が響き渡る。4人の絶叫を合図に、轟音がフロア中を駆けめぐる。彼女たちとフロア中の人たちが、絶叫に合わせヘドバンしてゆく光景が激エモだ。『ニンゲンキタナイ!!』の演奏が、観客たちから理性を奪い、本能だけが支配した姿へと塗りかえる。メンバーたちが荒ぶる声でアジテーションしてゆく。サビではキャッチーでエモい歌も届けるが、基本は、荒れ狂う音に乗せ、どれだけ本能のままに荒ぶる声を上げられるかだ。それが、OMNI666のライブにあるスタンダードな楽しみ方だ。
「生きてる時間は限られているので、悔いなく生きていこう」(一ノ瀬怜)や「愛しの猿ニンゲンたち、どんなにネガティブに陥っても、君たちの存在が心の支えになっています。声が枯れるまでみんなの声を聴かせてください」(雅)の言葉を受け、最後にOMNI666は、ここにいるすべての人たちを、鈍い光輝く未来へと導くように、あの曲を伝えてきた。
「この声が君に届くように わたしはここで歌ってるよ 暗闇を切り裂く光の雨をどうか この場所で見つめていて」の歌声を受け、彼女たちは『ヒカリノアメ』を高まる気持ちのままに歌いだした。バンド演奏を従えたことで、今まで以上に迫力とエモさを増した演奏を背に、4人は熱情した、いや、心の底から沸き立つ願いや祈りにも似た声を、このフロア中に光の雨に変えて降らせていった。その声を受け止めた人たちが、絶叫した声を張り上げ、サビ歌を共に歌っていた。その声は,間違いなくこの場所を埋め尽くした一人一人の心の奥まで届き、興奮と高揚の雨で綺麗に濡らしていった。
やまない熱狂の声を受け、ふたたび4人が舞台へ登場。彼女たちは、新曲の『Now or Never』をケバージョンで歌唱。4人は、身体をギザギサに切り刻むソリッドで荒ぶる楽曲や悲しみや絶望など心痛むネガティブな思いを、自分たちの力に変換。拳を突き上げ、張り上げた野太い声をフロア中に響かせていた。OMNI666は病や傷を背負った自分たちを肯定してくれる。その痛みを、4人が歌声という希望で塗り上げ、俯いた顔(心)をしっかり前へと上げさせる。
4人は、ふたたびAlternation of Generationsのメンバーたちを迎え入れた。OMNI666は改めてバンド演奏で、『地獄祭り』を披露。熱にまみれたこの空間を、さらに「そいや!!」「それ!それ!それ!それ!!」のかけ声と一緒に、「Go To Hell」と叫ぶ声をパワーに、灼熱の夏祭りの場に染めあげていった。橋本桃果が映像の中で言ってた、「ステージの上は一年中夏だから」の言葉通り、この会場が、猛り狂う猛暑の中の祭りの場と化していた。
OMNI666の歴史は、たった1年の歩みを記したばかり。でも、この熱狂がライブごと生まれ続けるなら、この宴の場はもっともっと大きく広がり続けていくはずだ。最後にみんなで叫んだ、「にんげんはきたない!!」の声も最高だ。
TEXT:長澤智典
<インフォメーション>
SNS
セットリスト
オケセット
『ニンゲンキタナイ!!』
『B.N.I.D.(brand new idol death)』
『ヒカリノアメ』
バンドセット
『開眼のすゝめ』
『B.N.I.D.(brand new idol death)』
『怪物ちゃん』
『地獄祭り』
『Now or Never』
『evergreen』
『ニンゲンキタナイ!!』
『ヒカリノアメ』
-ENCORE-
『Now or Never』
『地獄祭り』