FEATURE

2022.07.25
藤嶋美伶

一心不乱に鍵盤を叩く藤嶋美伶。狂気を孕んだその姿と激情した劇場型な音楽を、いつしか夢中になって追いかけていた。 藤嶋美伶ソスーデビューライブの模様をレポート!!

 新規オープンして間もない原宿RUIDOを舞台に、同店舗の「REBIRTH」シリーズ企画の一つとして、7月4日(月)に「竹下通り恋ノ歌劇場」と題した女性アーティストたちを集めたイベントが催された。出演したのは、安月名莉子/上間江望/つじりお/藤嶋美伶/younA。ここでは、この日がソロ・デヒュー公演となった藤嶋美伶のライブの模様をお伝えしたい。


  言葉の響きを確かめるように、音数を抑えたピアノの音色に乗せて藤嶋美伶がゆったりと歌いだしたのが、YOASOBIの『夜に駆ける』。原曲のテンポをぐっと落とし、藤嶋美伶は哀愁を帯びた声で、言葉のひと言ひと言へ命を吹き込むように歌っていた。声を張り上げることなく、原曲の歌メロへ寄り添いながらも、その言葉の持つ意味が一番似合う声の表情で、彼女は自分なりに解釈した物語を描くように歌っていた。その声に心がスーッと惹かれる。気持ちが癒されていく…と思ったとたんに、楽曲が鮮やかに跳ねだした。それまでゆったりと歩みを進めていたのが嘘のように、藤嶋美伶はダンスを踊るように軽やかに歌っていた。暖色系の明るい色に染まったたくさんの音符たちが、ポップコーンのようにその身をぶつけあいながら次々と弾けてゆく。彼女は『夜に駆ける』を、魅惑的な歌声とピアノの旋律を相棒に、新しい色(新たな解釈)を持った楽曲として目の前に描きだしていた。コピーではない。自分の色に楽曲を染めてゆく。まさに、あるべきカバーの姿がそこにはあった。

 過去にも多くのライブ経験を重ねれば、今も囁揺的音楽集団AsMRのメンバーとしても活動をしている藤嶋美伶。とはいえ、ソロアーティストとしてのライブはこの日が初。そんな不安を感じさせないライブ姿が、そこにはあった。

  次に披露したのが、樫原伸彦さんが提供したオリジナルナンバーの『Risoluto』。本人も「とっても難しい曲」と語るように、複雑で難解な展開を描きだす楽曲だ。タイトルには「Risoluto=新たに踏み出してゆく」という、もう一つの新しい物語を始める藤嶋美伶さんへ向けた、樫原伸彦さんからのエールが込められている。
  水面へ生まれた波紋が四方へ広がるように、フロア中に美しい旋律がゆっくりと流れだす。壮麗な景色を映し出す演奏だ。楽曲は、藤嶋美伶が指先へ次第に力を込めるごとに、少しずつ躍動していく。美しい音たちが織りなす調べに心地好さを覚える。そんな癒されるひとときを一気に覆すように、音の火薬が瞬時に炸裂。楽曲は、いきなりドラマチックな展開を描きだす。背景に流れる性急なリズムに気持ちを掻き立てられるように、藤嶋美伶は指先を熱情した音の筆に変え、魂を揺さぶる感情的な音の絵(表情)を次々と描きだす。速いテンポで、しかも変拍子を多用しながら、楽曲は次々といろんな絵(表情)を見せ(転調し)てゆく。その演奏は、熱を抱きながら、強い意志を持って未来へ突き進んでいた。未来には苦労や困難も待ち受けているだろう。激しく情熱的な旋律を折り重ねながら突き進む『Risoluto』が次々といろんな表情を描きだすのも、どんな困難があっても熱情した気持ちで突き進む意志を示してのこと。とてもパワフルな楽曲だ。一心不乱に鍵盤を叩く藤嶋美伶。狂気を孕んだその姿と激情した劇場型な音楽を、いつしか夢中になって追いかけていた。

 演奏を終え、思わず「1kmは走りきった気分」と呟いた藤嶋美伶の言葉も納得だ。次に披露したのが、藤嶋美伶がヴォーカル&ピアノで参加しているバンド囁揺的音楽集団AsMRの楽曲たち。普段の囁揺的音楽集団AsMRは、ラウド/シンフォニック/ノイズが激しくぶつかりあうダークでカオスな音楽性を示している。でも、そこから闇の要素を取り除くと、骨組みとなる美しくメロディアスな姿が現れ出る。その本質を成す面を、藤嶋美伶はここで伝えてきた。

 ゆっくりと闇へ落ちていきそうな言葉やメロディーを救い(掬い)上げるように、藤嶋美伶はゆったりと『Saturated World』を歌いだした。とても壮麗で広大な世界を描きだす、美しくファンタジックな楽曲だ。その身(楽曲)を守っている鎧(黒く激しいノイズ)を脱いだことで、そこには、無垢な天使のように汚れなき美しい姿が浮き彫りになっていた。藤嶋美伶は優しく穏やかな音色に乗せ、闇から言葉を拾いあげては痛みを払いのけるように歌っていた。激しさに立ち向かうように荒げた声で歌うのではない。線が細く温かな歌声と指先で、藤嶋美伶は歌とピアノを穏やかに紡いでいた。

 続く『Snow drop』では荘厳な、でも哀愁や切なさを抱いた物悲しいピアノの音色を響かせ、物語を綴りだす。今にも朽ち果てそうな切々とした歌声を、藤嶋美伶は零すよう歌っていた。その歌声を、壊れないようと支えるピアノの旋律。白いスポットライトに照らされた中、藤嶋美伶はしんしんとピアノの音色を雪のように降らせてゆく。終盤に向かうにつれ、歌声や藤嶋美伶自身の感情にも熱が生まれだす。その熱が春の訪れを告げるように、黒く固まった闇を優しく溶かすように響いていた。少しずつ熱を孕み、前へ進むように、藤嶋美伶は音に光を注いでいった。こうやって、囁揺的音楽集団AsMRの原曲を成す原型を感じられたのも嬉しかった。

 最後に、藤嶋美伶は、レーベルメイトであり、シンガーの上間江望をゲストに迎えコラボ演奏。藤嶋美伶のピアノと、上間江望のアコギ。そして、2人の異なる色を持った歌声。それぞれが主張を持った色を持っているからこそ、互いの個性を活かす曲として選んだのが、上間江望も自身のアルバムでカバーしていたKING GNUの『白日』だった。ただし、色の強い二人がカバーしたように、原曲の魅力を活かしたうえで、独自の色にアレンジしていたことを、先にお伝えしておく。
  透き通る美しく柔らかい歌声を響かせる藤嶋美伶。それ以上に温かく優しい声を上間江望が塗り重ねてゆく。藤嶋美伶のピアノの旋律に乗せ、互いに歌を掛け合う形で楽曲は進んでいく。エレピとアコギというシンプルな演奏だからこそ、それぞれの澄み渡る歌声を巧みに折り重ねることで、2人は原曲の持つメロディーに鮮やかな色を塗り重ねていた。2人の歌声の絵筆が、モノトーンな楽曲へ透き通る青系の優しい色や暖色系の温かい色を塗り重ねる。力強さを抜き、温かな歌声の中へ巧みに緩急を付けながら、2人は物語を描いていた。終盤、2人の歌声が、高鳴るピアノの音色に合わせ熱を帯びてゆく様も、嬉しい聞きどころだった。
  
 始まりを景色から、実力者としての面を遺憾なく発揮した藤嶋美伶。囁揺的音楽集団AsMRはもちろん。ソロアーティスト藤嶋美伶のこれからの活躍にも期待したい。


LIVE


PHOTO:菊島明梨
TEXT:長澤智典


セットリスト
『夜に駆ける』(YOSOBI)
『Resoluto』
『Saturated World』
『Snow drop』
『白日』(KING GNU)



藤嶋美伶
オフィシャルHP
https://miri-fujishima.jp/

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Instagram
https://www.instagram.com/miri_fujishima/




囁揺的音楽集団 AsMR
オフィシャルHP
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Twitter
https://twitter.com/asmr_band


LIVE出演



藤嶋美伶

8月25日(木) 「アキバの夜に歌うたい集う Vol.2」
開場 18:00 / 開演 18:30
[会場] 秋葉原GOODMAN
https://club.goodman2020.com/contents/about
[出演]藤嶋美伶 / 宇月真織 / 椿木はる / ERENA / 小鳥遊七星 / リョマル / 服部星奈 / etc
[チケット]前売 3000円/当日 3500円(D別)
https://tiget.net/events/187879


8月30日(火)  「AOYAMA MUSIC SHUFFLE Vol.5」
開場 18:00 / 開演 18:30
[会場] 青山RizM
https://ruido.org/rizm/access.html
[出演] 藤嶋美伶 / 亥野マキ / MIHANE / 平岡歌恋 / MiYuuL / 小鳥遊七星 / etc
[チケット]前売 2500円/当日 3000円(D別)
https://tiget.net/events/190206




9月3日(土) 「NK40 GGWスペシャルライブ」
開場 14:30 / 開演 15:00
[会場] 赤羽ReNY alpha
https://ruido.org/akabane_reny/access.html
[出演] 樫原伸彦 / DASEIN / →Pia-no-jaC← / かとう唯 / 森ふうか / ポジティブモンスター /
令和琴姫 / 山川陽彩 / 太田彩華 / 藤嶋美伶 / Rina♪ / ハララビハビコ / SHiN
[チケット]前売¥5,000 / 当日¥6,000(D代別途要)
https://eplus.jp/sf/detail/3633430001-P0030001


囁揺的音楽集団AsMR


8月1日(月)「MUSIC SHUFFLE & MASHUP LIVE」
開場 16:30 / 開演 17:00(予定)
[会場] 新宿ReNY
https://ruido.org/reny/access.html
[出演]ANARCHY STONE / 囁揺的音楽集団 AsMR / 太田家 / CANDY GO!GO! / Oracle Futaba / ナデシコドール / 月照ラス

[チケット] 
■ご来場チケット 前売 3000円/当日 3500円(ドリンク代別)
https://www.funity.jp/tickets/muetike/show/msml22/1/1

■WEB配信チケット 2,000円 (アーカイブも同価格)
https://r.funity.jp/music_shuffle_22_st
販売期間: 2022年7月23日(土)18:00~2022年8月30日(火)23:59
アーカイブについて: ライブ生配信終了後~2022年8月31日(水)23:59まで何度でもご視聴可能です。


9月28日(水)「MUROTA MIZUKI MUSIC FESTIVAL #02」
OPEN 16:00/START 16:20(予定)
[会場] 新宿ReNY
https://ruido.org/reny/access.html
[出演]RiskyMelody / ЯeaL / nilfinity / 囁揺的音楽集団AsMR / Disconnect Cendrillon / MALLOW BLUE / CANDY GO!GO! / AKIARIM / IZANAGI / ショートカット部

[チケット]
■一般 前売 ¥3000/ 当日 ¥3500
https://eplus.jp/sf/detail/3647010001-P0030001
■最前エリア ¥4000
https://eplus.jp/sf/detail/3647020001-P0030001
(すべてドリンク代別)

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