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2022.02.28
太田家

太田家は、色褪せない「青春」物語の中へと招き入れ、観ている人たちの心を10代の自分に着替えさせていた。

 声優が詠う、文学的青春パンクバンド太田家(おおたや)が、2ndアルバム「四季織々」をリリース。同アルバムの先行販売も兼ね、2月20日(日)に赤羽ReNY alphaを舞台に、太田家主催LIVE「おおた祭り例大祭 レジェンドとおおた!」を開催した。出演したのは、【会場出演】太田家/ザ・マスミサイル/GEEKS。【中継出演】花男/THE BOOGIE JACKの計5組。太田家以外の出演者たちは、1stアルバム「愛読書」、2ndアルバム「四季織々」へ楽曲提供した人が行っているバンド。太田家以外、「青春パンク」というムーブメントの渦中で注目を集め、今も、現役で活動している。当日のイベントの中から、太田家のライブの模様を伝えよう。 

 華やかに祭り上がろうと、太田家のライブはTHE BOOGIE JACKのヒライシュンタが曲提供した「星明かりのメロディ」からスタート。フロア中の人たちが心の中で「オーオーオー」と声を上げ、太田家が「星明かりのメロディ」を通して作りだした眩しい青春の風景に飛び込んでいった。この曲が、演奏が、太田彩華の歌声が心に届いたとたん、目の前からリアルが消え、自分が欲しいと願っていた青春の景色の中へと入り込んでいた。気持ち揺れ動くまま夢中で音にまみれ,はしゃぐ少年に戻っていた。きっと、同じ気持ちを感じていたあの頃の少年少女たちはたくさんいただろう。太田家は、色褪せない「青春」物語の中へと招き入れ、観ている人たちの心を10代の自分に着替えさせていた。
 太田たけちゃんの声を合図に、僕らは14歳の自分に戻り、舞台の上から流れるロックンロールのビートに合わせ、夢中になって飛び跳ねていた。「青春」(↑THE HIGH-LOWS↓ COVER)、何時の間にか僕らは、言葉通りの景色の中にいた。無邪気で、無敵で、でも脆くて、壊れそうで。だけど、やっぱり最強だと思える、真っ直ぐな心で、太田家の演奏や音楽に触れ、あの頃の気持ちのまま夢中になってはしゃいでいた。

  続いて奏でた「夏のイカれ野郎」は、ザ・マスミサイルの高木芳基が提供した曲。ゲストで、よっくんが登場。彼は太田彩華の歌声に熱を加えるように、合いの手変わりに声を重ね合わせ、歌いあげていた。よっくんという最強の仲間を得た太田家は、いつも以上にパッションあふれる演奏をぶつけ、観客たちの拳を高く高く突き上げさせる。太田彩華自身が、喜びを隠せない最高の笑顔でとイカれた気持ち全開で、ガナり、歌いあげていた。お互いが本気で熱情を交わしあう姿を見て、胸に涙が込み上げる。泣きたいくらいに嬉しくて楽しい感情に、瞼がウルウルしていた。
 次に届けた「赤赤」は、GEEKSのエンドウ.が提供した楽曲。ここでは、エンドウ.がゲストギタリストとして登場。「赤赤」は、太田家ナンバーの中でもとくにアグレッシブさを出した楽曲。荒ぶる感情を、エンドウ.が荒ぶるギター演奏で盛り立てる。太田彩華も、荒々しい演奏に刺激を受け、がなるような声も混ぜ、沸き立つ想いを吐き出すように歌っていた。太田家の、太田彩華の中にあるワイルドな面は、「赤赤」を通して間違いなく増幅していた。
  荒ぶる気持ちや勢いを一気に明るく解き放つよう解放感たっぷりに、太田家はメロコアチューンの「じゃぱにーず・いでぃおっと」を演奏。爆走する楽曲の上で、カラッと晴れた気持ちと歌声を太田彩華は走らせていた。彼女の晴れた歌声の熱に引き寄せられるように、フロアでもみんな夢中になってはしゃぎだす。そこには、楽しい祭りの景色が生まれていた。
  演奏は止まることなく「クソゲーって言うな!」へ。太田彩華はゲームコントローラー仕様のマイクを用い、舞台の上を右に左に駆けながら、「もっともっとみんなクレイジーになっちゃいなよ」と誘いかけるように声を張り上げ、歌っていた。この曲では、愛らしい面も披露。途中、あまりにもはしゃき過ぎ、マイクのトラブルも発生。そんなアクシデントさえ逆にパワーに変え、太田彩華は舞台の上から絶叫し続けていた。

 それまでの熱狂した景色から少し色を塗り替えるように、太田家は、失くした愛しい人へ想いを伝えるように、届かない手紙を読むようなセリフ語りから次の物語の扉を開けた。太田家が届けたのは、今の季節に似合う美しくも切ないバラードの「スノーグローブ」。今はもう会えない大切な人へ向け、届かないのを知りながらも届けたい想いを、太田彩華は、今にも心壊れそうな声で優しく歌っていた。先程までの熱情した姿が嘘のように、曲の扉を空けるごと、太田家は、その歌に相応しい物語を目の前に描き出す。観ている側も、その景色や心模様へ素直に気持ちを寄り添えてゆく。
 切々とした太田ひさおくんの奏でるエレピの音色に乗せ、メンバーらが澄み渡る歌声を重ねて届けたのが、卒業ソングとしてお馴染みの「旅たちの日に」。美しい合唱と演奏は、途中から一気に加速。熱情抱いた青春パンクスタイルに進化した。メンバーらの煽りに刺激を受け、拳を突き上げ騒ぐ観客たち。気持ち嬉しく高ぶる歌に触発され、心が騒ぐ。大勢の人たちがこの歌を心の中で歌いながら、背中に授けた翼をはためかせ、心を空に飛ばしていた。

 ライブも終盤へ。次に届けたのが、花男が楽曲提供した「ツアーは続く」。太田彩華のベースから幕開けたこの曲で、メンバーらはどんな状況下でも支えてくれる仲間たちへ向け感謝の想いを届けていた。仲間たちがいるからこそ、これからも前へ進むことを辞めない。その強い意志を、太田彩華は美しくメロウなバラードに乗せ、歌いあげていた。太田彩華の歌う言葉のひと言ひと言が、今宵は強く胸を揺さぶった。一つ一つの言葉を零すことなく全部しっかりと受け止め、胸の奥深くへ染み込ませていたかった。

  「みんなの明日がもっと強く、もっと優しく輝きますように」。次に歌った「光れ」は、吉崎綾に提供した楽曲。秘めた熱情を駆ける演奏に乗せ解き放つように歌うこの曲は、パッションに満ちた青春パンクをトレードマークにしている太田家にも似合う表情だ。吉崎綾へ送った想いとして記しながらも、ここに綴ったのは、自分たち自身へ言い聞かせ、向きあおうとしてゆく、永遠の夢追い人の太田彩華や太田家らしい意志。熱情を詰め込んだ歌に刺激を受け、気持ちが熱く奮い立つ。熱を抱えた気持ちのまま駆け上がりたい。

 「オイオイオイ」の声も胸を熱く滾らせる。最後に太田家は、メロディアスで勢いを持った太田家流の青春パンクソング/シンガロングナンバーの「愛とアストロノミア」を演奏。太田彩華の歌声へ気持ちを寄り添え、一緒に声を張り上げたい。熱く駆ける演奏に合わせ、拳を何度も何度も高く突き上げていたい。太田家の顔の一つとも言うべき高揚メロディックな青春パンクロックが、ここにいる人たちみんなの気持ちを一つにし、大きな拳の波をフロア中に作りあげていった。奮えるくらいの興奮が、たまらない。この曲を相棒に、また太田家と一緒に次の世界を見たくなっていた。

 止まないアンコールの手拍子を受け、メンバーらはふたたび舞台へ。いろんな人の背中を押すように。一人一人が人生の主人公だからこそ、物語の主人公として輝こうとすることが自分の力や魅力になることを伝えるように、太田家は「シュプレヒコールが眠らない」を歌い、奏でていた。一歩を踏みだせない小さな臆病者たちに向け、小さな心の枷を、この歌は外し、少しだけ前へ踏みだす力をくれる。大きな一歩でなくていい。僅かでも気持ちが前に進んだら、その小さなきっかけが自分を主人公にしてゆく。
 最後に太田家は、始まりの歌「名もなき少年の 名もなき青春」を力強く演奏し、青春という眩しい輝きの中で生きることの喜びを伝えてきた。青春の息吹を燃やすように、熱情した気持ちを解き放つよう歌い奏でる姿に、胸が熱くたぎっていた。感情のすべてがぐちゃぐちゃになるくらい、メンバーらと一緒に心の中で声を張り上げて騒ぎたい。何時の間にか光輝いていた"青春"という景色の中へすべての感情をどっぷりと浸らせ、太田家と一緒にその輝きを身体中にまとっている自分がいた。

  本当なら、この日、みんなで同じ会場で顔を合わせ、みんなで顔を突き合わせたライブをやりたかった。この日出演したGEEKSも、THE BOOGIE JACKも、ザ・マスミサイルも、花男も、太田家も、みんな一緒にこの会場で、同じ空気を感じていたかった。でも、今回はコロナ禍という影響から、THE BOOGIE JACKと花男は会場に足を運ぶことは叶わなかった。だからこそみんな約束していた、「もう一度、このメンツでリベンジ公演をやろう」と。その約束はきっと叶うはず。今はまだ何も決まってはいない。でも、出演者たち全員がそれを望んでいる。その望みはきっと叶うはず。その時期がきたら、またみなさんにお知らせしたい。

PHOTO:菊島明梨
TEXT:長澤智典
 

ジャケット


セットリスト
「星明かりのメロディ」
「青春」
「夏のイカれ野郎」
「赤赤」
「じゃぱにーず・いでぃおっと」
「クソゲーって言うな!」
「スノーグローブ」
「旅たちの日に」
「ツアーは続く」
「光れ」
「愛とアストロノミア」

-ENCORE-
「シュプレヒコールが眠らない」
「名もなき少年の 名もなき青春」
 

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