FEATURE
上間江望がワンマン公演に描いた、想いがCrossoverした(重なり合う)景色。
声優アーティストの上間江望が、自身の誕生日当日である10月2日(土)に、青山RizMを舞台にワンマン公演「上間江望ワンマンライブ2021-Crossover Story-」を行った。大勢の観客たちが詰めかければ、ライブ配信を通しても多くの人たちがその姿を見ていた。当日の模様を、ここにお届けしよう。
現実を消し去り、悠久な世界へとその場を塗り替えるようなSEに乗せ、上間江望が舞台に登場。幻想的な空間へいきなり刺激的な色を塗り重ねるように、ライブは今回の公演のテーマソングとして作った「Crossover Soul」からスタート。上間江望はキリッとした表情で前を向き、その先へ広がる世界を見つめながら凛々しい声で歌っていた。闇に覆われた空間を切り裂くように、上間江望は胸の内から沸き立つ想いを力強くぶつけだす。間奏で拳を振り上げ歌う姿に、フロア中の人たちも拳を振り上げて呼応。この空間に作り始めた物語は、彼女の力強い歌声を通してどんどん明瞭になっていく。
次に披露したのが、9月に配信リリースした「ET CETERA STORY〜hope〜」。ファンキーでソウルフルな楽曲へ心地好く身を任せた上間江望は、大きく手を振りながら、この空間へ眩しい光を降り注いでいった。彼女の動きにあわせ、フロア中で大きく揺れるたくさんの手。この会場にいる人たちの気持ちがどんどん一つに寄り添いあう様が、その景色から伝わってきた。胸を躍らせる曲調という理由もあり、自然と笑顔があふれだす。それも嬉しい光景だ。
次のブロックでは、サイキックラバーのYOFFYが楽曲を制作、ゲーム「スターメロディー ユメミドリーマー」の主題歌へ起用になる「Eternal Glow」を初披露。広大な空間へ向けて気持ちを解き放つ、眩しい輝きを放つ楽曲だ。じっとなんかしてられない。誰もが初見にも関わらず、力強く拳を振り上げていたのも、「Eternal Glow」に熱く感情を触発されたからだ。上間江望も、伸びのある歌声を空へ響かせるように笑顔で歌っていた。歌うことを無邪気に楽しむその姿も、上間江望に似合う表情だ。
続く「星屑プラネタリウム」で上間江望は、優しく身体を揺らし、肩の力を抜いた暖かな歌声を魅力に、観客たちへ物語を語るように歌っていた。1曲ごと感情の色を変えながら。でも、楽しさをずっと継続したまま上間江望のライブは進んでゆく。
飛びだしたのが、9月に配信リリースして間もない、舞台「アフターウォーズ-遥かなる星の変革-」のEDテーマ「メビウスの輪廻」。上間江望は、楽曲の世界へ深く感情移入しながら歌っていた。この曲の背景を知る人なら、きっと物語を思い浮かべながら彼女の歌へ浸っていたに違いない。たとえ背景を知らずとも、想いを深く深く沈めながら歌う上間江望の歌声に触れ、その世界へ同じように浸っていた人たちも多かったと想像する。それくらい、感情的な歌声に耳目が強く惹かれていた。
次に披露したのが、「ひぐらしのなく頃に イメージソング~遊園ノ音~」へ収録した園崎魅音のキャラクターソングの「微熱のミラージュ」。これまでの明るさや穏やかな表情から色を塗り替えるように、上間江望は少し切ない色も声に塗りながら想いをたっぷり胸に抱え、何より、彼女自身が園崎魅音というキャラクターになりきって歌っていた。
続く「かざぐるま」では、上間江望はもちろん、フロア中の人たちがタオルをまわしだす。大勢の人たちが手にしたタオルを天高く突き上げ、風車のようにくるくるとまわし、会場中へ一体化した空気を作りあげてゆく。その光景の、なんて壮観だったことか。
一本の輝くスポットライトに照らされながら、見ている人たちへ希望や未来を降り注ぐように、上間江望は「キャッチライト」を歌っていた。満面の笑みを浮かべ歌うその姿を見ながら、上間江望自身が希望を降り注ぐ光の源であることを強く実感。歌が進むたび、その輝きが大きく見えてきたのも嬉しかった。そこには、数多くのペンライトの光揺れる光景を見て感激を覚える上間江望の姿もあった。
「これまで歌ってきた曲は真っ直ぐな歌詞が多い。でも1曲だけぜんぜん希望のない曲があります。誰かを助けたいけど、自分ではどうにもできない。そんな闇の世界の歌も、今回は聴いていただきたいと思います」
その言葉に続いて歌いだしたのが、哀愁を抱いたサウンドも印象深い「Irony」。闇に包まれた痛い感情の中へ、上間江望は光求めゆく願いを込め歌っていた。たとえ希望の見えない、絶望に打ちひしがれる曲だろうと、彼女が希望を手にしたい願いを持って歌うことで、歌声や演奏に小さな希望という輝きが生まれる。歌い手次第で、その歌はいろんな意味や表情を持つ。それを、「Irony」を通し上間江望が示してくれた。
悲しみに浸っていたからこそ、次に歌った「Fanfare~君と生きる歌~」がより輝きを放つ歌として胸に飛び込んできた。何事にもまっすぐな上間江望らしい歌だ。「たとえ傷つき挫けそうなときでも、わたしが寄り添うから」「一緒に最大級の夢を探そう、前を向いてしっかり進んでいこう」と彼女はエールを送るように歌いかける。上間江望が勇気を届けようと拳を振り上げるたび、フロアからも一緒に力強く拳が突き上がる。「君がそばにいてくれるから強くなれると知った」と上間江望は歌う。その想いを共に分かちながら歌うこの瞬間、僕らも確かに笑顔を手にしていた。
ライブへ激しさと勢いを重ねるように飛びだしたのが、躍動する激しいロックナンバーの「Just Will Be The Fight」。凛々しい表情と歌声を魅力に、上間江望は観客たちを煽るように歌っていた。その楽曲の持つ表情や感情、物語に合わせ、瞬時に気持ちの色を塗り替え、その歌へ似合う主人公となり想いを放つ。この曲では、戦う強い意志を示したロックシンガーになり、何度も力強く拳を振り上げ観客たちを煽り続けていった。
MCでは、事務所へ入所してちょうど8年経ったことを報告。10年前に東京のシェアハウスに住み始めるという無鉄砲な行動があったからこそ今に繋がったことを、懐かしみながら語っていた。「始めればなんとかなる」の言葉が示すように、その通りの歩みを上間江望は送ってきた。
次のブロックでエレキギターを手に上間江望が歌ったのが、「果てしない光の彼方へ」。躍動する楽曲へ気持ちを重ね合わせるように、彼女は力強く弾き出した。ときどき手元も確認しながらとはいえ、上間江望はキッと強く前を見ながらギターの音を掻き鳴らしてゆく。ときに、両手でスタンドに設置したマイクを握りしめ歌っていた姿も印象的だ。彼女自身が「明日へ進みたい」と願うように、声を張り上げ、光の彼方を見つめながら歌っていた。その間中、ブルーのペンライトの光が蒼い照明とリンクするようフロア中に揺れていた。それはまるで、ここが銀河の世界のようにも見えていた。
雄々しく力強い「Stagazer」の演奏に乗せ、上間江望は気持ちの内側から沸き立つ感情を、ときに破裂寸前で止めながら。ときには、想いあふれるままに歌唱。フロアでは「ウォオオオオー」のコーラスにあわせ、高く両手を上げる人たちの姿も。パワフルな楽曲とは裏腹に、感情のリミッターを上手くコントロールしながら歌う上間江望の姿も、そこにはあった。
「ここからみんなでビューティフルな世界を作っていきましょうよ!!」「まだまだみんなで楽しもうね」の声を合図に飛びだしたのが、会場中を熱狂したパーティ空間へ染め上げる「Beautiful World」だ。歌声と演奏が流れたとたんに感情のリミッターが外れ、上間江望の「希望を歌え」の声へ導かれるように誰もが手を高く突き上げ、「オオオー」と心の中で声を上げ、一緒に「楽しい」気持ちを全力で分かちあっていた。「越えて」「歌え」と高らかに叫ぶ声を聴くたびに、気持ちが無条件に熱くなる。大きく身体を動かしながら、上間江望と一緒にこのまま自分を思いきり開放し続けていたい。ほんと、最強になれる最高の景色だ。
「みんなのこれからも晴れ渡る日々でありますように」。ギターを置いた上間江望は、最後に優しい歌声を響かせ、これまでの熱狂をすべてその声で抱きしめるように「ある晴れた日に」を歌っていた。その姿を見ながら、彼女が伸ばした優しい歌声の手へ、同じように心の手を伸ばしていた。誰もが身体をゆったりと揺らしながら、「君がいるから」と歌う上間江望の歌声を伸ばした両手で優しく包んでいった。
本編終了後に映し出されたのが、この日訪れた人たちやライブ配信を見ている人たちへ向けての感謝の想い、ライブを行うことの喜びを歌詞に込めた「ENCORE,before」のMVだ。この日のために作った歌詞が、見ている人たちに心地好い余韻も残していった。
アンコールは、ふたたびこの会場へ温かい熱を甦らせるように、「幸せになれましたか」と「ENDROLL,after」を歌いだした。舞台前を覆っていた幕へ映しだした映像が終わり、幕が開いてすぐに歌いだしたように、今し方まで本編の余韻を胸に受け止めていた気持ちを、少し想いを進めた姿で、しかも躍動した楽曲を通して味わえたことに、ファンたちも喜びを覚えていた。上間江望自身も、ライブで歌うことの楽しさを改めて自分でも実感するように「ENDROLL,after」を笑顔で歌っていた。
かつてはスロースターターな行動の多かった自分を懐かしむように歌ったのが、次に披露した「スロースターター」。自分のペースで心地好く歩くようなフワフワッと軽やかな楽曲に乗せ、軽快に歩を進めるように上間江望は歌っていた。その歌声に触れながら、同じようにフワフワッとした気持ちに心が包まれていた。
ここで、サプライズでバースデーイベントを実施。素敵な花束を受け取り、手にした花以上に満面の笑みの花を咲かせていた姿が印象的だった。
「続けていたら何かあるだろう、次のステージに行けることもあると思って過ごしています。それができるのもみんなが一緒に歩いてくれてるから」。最後に、上間江望は「あるこう」を歌唱。まだまだ夢を追いかけ歩き続ける意志を示すように。観客たちや、その先の未来を見据えながら、目の前に広がった道をしっかりと歩むように「あるこう」を歌っていた。彼女の歌声や大きく振る手の動きにあわせ、フロアでもたくさんの手がゆっくり大きく揺れていた。
さぁ歩こう、ここまでに印した足跡はけっして消えることはない。その足跡が未来へ進むための勇気や力となる。ゆっくりとした速度でいい。止まることなく歩き続ければ、いろんな幸せを、きっと未来で手にしていける。それを、これまでの活動を通して実感し続けてきたからこそ、上間江望は最後に自分自身にも言い聞かせながら、ともに仲間たちと進み続けようと「あるこう」を歌っていた。
上間江望らしい、着飾らない素敵なライブだった。だからこそ、次の行動を、今は楽しみに待っていたい。
TEXT:長澤智典
セットリスト
「Crossover Soul」
「ET CETERA STORY」
「Eternal Glow」
「星屑プラネタリウム」
「メビウスの輪廻」
「微熱のミラージュ」
「かざぐるま」
「キャッチライト」
「Irony」
「Fanfare~君と生きる歌~」
「Just Will Be The Fight」
「果てしない光の彼方へ」
「Stagazer」
「Beautiful World」
「ある晴れた日に」
-ENCORE-
特別映像「ENCORE,before」
「ENDROLL,after」
「スロースターター」
「あるこう」
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