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2021.11.02
yucat

505号室から始まり、広がった夢の旅は、けっして終わることはない…。yucat10周年公演レポート!!

 心に闇/病みを抱えた人たちの救い求める心の声に誘われ、yucatが小さな部屋で生まれたのが10年前の10月31日だった。yucatがYouTube上で産声を上げてから、彼女はいろんな世界へ足を運びながら、みずからの"心の声"を歌にし続けてきた。今も、彼女の旅は続いている。この世から胸の痛みが消えない限り、yucatはいろんな地を巡りながら歌の旅を続けてゆく。
  2021年10月31日(日)、yucatはホームグラウンドとする渋谷eggmanを舞台に「yucat PARALLEL LIVE〜ハロウィン10th生誕祭〜」を行った。当日は、コロナ禍以降初めての有観客ライブ。同時に、ライブ配信も実施。当日の模様を、ここにお伝えしたい。


LIVE


 カウントダウンする数字へ重なるように、これまでのライブシーンを振り返る映像が映し出される。その後に流れだした厳かな音色。その音は、次第に少女が胸の内に抱えた心の慟哭へと移り変わる。そして…。


  「もう僕を責めないで 心の声聞こえるなら」と歌うyucatの歌声を合図に、ライブは「Stop Me!」から幕を開けた。身体を痛く刺激する轟音なギターサウンドが、交錯するダークな音の塊たちが、聞き手の心をぐっとつかみだす。デビューステージの時に身につけていた衣装姿のyucatは、吐き出そうにも吐き出せない痛い胸の内を掻きむしるように歌っていた。絶望に打ちひしがれそうな少女の心の声を代弁するように歌うyucatの声が、同じように闇を抱えた心へ震える(奮える)手を差し伸べてきた。
 
 
  勢いを増すように。いや、さらに奈落の世界へ落とすように、yucatは「言霊」を歌いだした。舞台の上で歌うyucatは、黒く重い音の上で、生きてゆくための呼吸を感じるように歌声を上げていた。彼女自身の気持ちはとても前を向いている。たとえネガティブな想いを嘆き叫ぼうと、その先にある光を知っているし、それを信じているからこそ、活動初期に生み出した嘆く心模様を綴った曲たちにさえ、今の彼女は希望の光を与えてゆく。「もう頑張らなくていい」という言葉をどう捉えるのか、それは聞き手次第だ。今のyucatの歌に、絶望という言葉は似合わない。

  さぁ、小さな自分だけの世界から飛び出し、もっと広い世界へ駆けだそうか。yucatが歌う「暴走マシーン」へ乗り込み、ここからもっと心を自由に開放していけ。「いくぞ!!」と叫ぶ声を合図に、僕らは笑みを浮かべながら病みの世界から駈けだした。yucatが先頭に立って走る暴走マシーンへ共に乗り込みながら、自分を探す旅に出よう。yucatが10年間という日々の中に描き続けてきたいろんな物語の舞台の中へ、歌の列車に乗り込んだ一員となり、これからいろんな景色を見ていこうか。ここでじっとしているよりは,きっとましなはずだから。


LIVE


 この日は、1年前に渋谷eggmanで無観客ライブ配信時に届けたときと同じメンバー。このメンツで最高に熱くなれる演奏を届けたいからこそ、このメンバーで有観客ライブを行いたくてyucatは舞台に立っていた。


 yucatの吹く幻想的な、異世界への扉を開く鍵となるピアニカの音色が流れだす。その調べが呼び入れたのが、「SteamCircus」。三拍子の優しいリズムに乗せ、ゆっくりと歩を進めるように。yucatを先頭に、僕らは放浪の民たちの奏でる音の調べに歩調を合わせるように、心惑わす森の中を歩いていた。yucatの歌声へ導かれながら、僕らはその演奏に心地好く身を委ね、これから足を踏み入れる物語の世界の扉を探していた。


  yucatのハミングが、人の心を魅了するローレライの歌声となる。幻想的なローレライの声へ引き寄せられるように辿り着いたのが、現実を忘れ享楽に溺れる海底世界。yucatは「ローレライ~消滅海底都市」に乗せ、心を穏やかに惑わす世界へと僕らの身を落としてゆく。大きなランタンを手にしたyucatは、その光が映し出す幻想的な世界へ仲間たちを導いてゆく。けっして激しくも、派手でもない。でも、大きくリズミカルに揺れる音楽の波に乗せた気持ちは、心地好く揺れていた。


  yucatの始まりを告げた曲、「505」の登場だ。小さな部屋の中で産声を上げたyucatという一人の少女は、小さな世界から音楽という魔法を手に、いろんな世界へ飛びだしていった。ここまでに見てきた世界や物語も、もしかしたらyucatが小さい部屋の中で描いた妄想なのかも知れない。でも、彼女が歌う声に導かれ迷い込んだいろんなパノラマ世界へ足を踏み入れるたび、時に痛みを感じつつも、僕らは何時だって心躍る素敵な現実を覚えられる。みずからの闇を抱えた世界にいろんな色を付けた風景を重ね、病みを塗り潰していける。そんな素敵な世界の存在を知ってしまったからこそ、僕らはこの世界から抜けだせないし、抜けだしたくない。

 和心抱いた幻想的な竜笛の音色が、太古の大和の国へと心を誘いだす。その音色に導かれて始まった、バンド陣によるジャジーなセッション演奏。自由に音を解き放つ演奏へ心惹かれるように、着替えを終え、最新の衣装を身につけたyucatが、ふたたび舞台へ姿を現した。
  琴の音色を合図に演奏が高鳴ると同時に、「音戯ノ国」が流れだした。身体を大きく揺らし、高ぶる気持ちをぶつけるように歌うyucat。乱れ狂う姫と化したyucatは、女である性を晒し、その生きざまを謳歌し鼓舞するように力強く歌っていた。yucatが描き出す物語は、時空や国境、性癖(人としての感情) など、あらゆるものを呑み込み、それを浄化するように届けてゆく。感情的な歌声に気持ちが強く魅了され、心が溺れていく。


LIVE


 MCでは、10年前の10月31日にyucatを動かし始めた当時の思い出や、ここへ至るまでの日々の中で出会った人たちへの感謝の想いを述べていた。「この先もずっと歌い続けたい、この場所をずっと守りたい」という言葉が嬉しい。


  「わたしに居場所をくれて、ありがとう」。想い込めた言葉を述べて歌いだしたのが、「D2」だ。闇の中へたたずむ姿を歌声に乗せた始まり。重く激しい演奏が加わると同時に、楽曲は緩急大きなウネリを描きながら雄大な、でも切なくも美しい物語を描き出す。モノクロな世界に光という絵筆で色を塗り付けてゆくようにyucatは歌っていた。けっして激しい演奏ではない。でも、奏でる一つ一つの音色や演奏に、yucatの抑揚した感情的な歌声に生や力が宿っている。その音が心を奮わせる。

 それまでのモノクロな世界へ、一気にカラフルな光を抱いた演奏が降り注いだ。yucatは「パノラマ」を歌いながら、みすからの心も解き放ち、ふたたび希望を胸に冒険の旅へと僕らを誘い出した。気持ち沸き立つ演奏や歌声に心が躍りだす。yucatと一緒に腕を振り上げ、共に笑顔を浮かべながら、真っ直ぐな気持ちでここから突き進みたい。その先に見えるのは、胸躍らせる未来だと信じていたい。yucatの差し出す歌声の手へ引っ張られるように、僕らもまた心を鮮やかに色づかせながら勇気や希望を胸に駆け出していた。

 胸躍る和の音色が鳴り出した。豊かで情緒にあふれた和文化の魅力を伝える、yucat流のおもてなしソング「ジャパリズム」だ。yucatの歌声というお囃子に導かれ、気持ちがウキウキ弾みだす。一緒に身体を揺らし躍りたい。「楽しい」という言葉しか出てこない。でも、それでいいんだと思う。なぜなら、本当に気持ちが"わっしょい"と華やいでいたのだから。

  「一緒に踊りましょう」。フロア中から沸きだした熱い手拍子に乗せて届けたのが、「レプリカパプリカ」だ。深い深い森の中を突き進んだ先に広がったのは、人の心を無垢な気持ちで開放し、笑顔だけを降り注ぐ楽しい宴の場。誰もが、yucatの歌う「レプリカ パプリカ 魔女るか? スパイシー」の歌声に合わせ、共に同じ振りをしながら無邪気に踊りに興じていた。ここは捨てたい感情をすべて投げ捨て、無邪気な少年少女に戻してくれる宴の場。余計な気持ちはすべて脱ぎ捨て、踊り続ければいい。と書きつつ、歌詞はかなりシリアスでホラーめいてるけどね。もしかしたら僕らは、yucatという魔女が煎じた魔法の薬を飲まされ、幻想の中で躍られていた? でも、楽しければそれでいい。ここは祭りの場なんだもの。

  切々としたピアノの音色に乗せ、悲喜すべての心の物語を包み込むようにyucatは「全知全能ノ樹」を歌っていた。彼女は、どんな人にも慈しみを持って光を降り注ぎ、魂を浄化してゆく。みずからの心に溜め込んだ光を、少しずつ分け与えてゆく。終わることのない間違いを犯し続ける世の中を嘆きながらも、自分と同じ想いを抱えた仲間たちへ歌声という希望を降り注いでゆく。「全知全能ノ樹」に実った実は、あなたにとって甘い実ですか?苦みを持った渋い実ですか?


 MCでは「どうしたら続けていけるかをずーっと考えてきた10年間」だったことを、その都度のエピソードを交えて語りつつ、yucatは感謝の想いを述べていた。


LIVE


  巡る季節の中、yucatはつねに自分の生きる意味を探し続けてきた。いや、その答えはわかっている。その答えを、日々の事柄に重ねながら投げかけ続けてきた。「サクラサイエンス」も、そう。時に壊れそうな自分の心を鼓舞するように、その光を消さないように、yucatは「消えないで」「負けないで」と熱唱していった。どんなに痛い石礫が飛んでこようと、揺るがない意志を確かめ、それを示すようにyucatは力強く歌っていた。

  この歌を耳にしないことには、yucatと共に描く物語は終われない。最後にyucatは「Fairy Story 10th  Anniversary ver.」を歌っていた。確かに人生は「おとぎ話みたいに上手くはいかない」のはわかっている。でも、yucatが「Fairy Story」に乗せ「そしたら笑って ずっとそばで笑って  それ以外何もいらない」と歌う声を聞くたびに、たとえ絶望の淵に立っていようと、その言葉の魔法によって不思議と笑顔の自分になれる。今を変えてゆく自分になれる。きっと僕らは、この日までに降り積もった心の悲しみをすべて笑顔に変えたくて、ここへ集うのかも知れない。自分を信じれる小さな勇気をyucatが与え、心の闇へ寄り添いながらもしっかり光へと導いてくれる。だからこそ僕らはここへ来て、笑顔を浮かべた自分に戻ってゆくのかも知れない。それこそが、僕らにとって必要なお伽話なのだから。


  アンコール前には、この日生まれたyucatのためにとバースデーケーキが登場。思わぬ嬉しいハプニングに興奮していた姿も印象的だ。

 この日の旅を締めくくるように、アンコールでyucatが届けたのが「脳内トラベル」だった。ここまで共に描いてきた物語を心の旅行鞄へギュッと詰め込み、思った以上に大きく膨らんだ鞄を心の両手に抱えながら、僕らはまた、それぞれ自分が描いている日常という旅の物語へ戻ってゆく。でも、ここで感じたたくさんの幸せと喜びが胸の中で大きく膨らんでいる限り、何かあったらそこから夢や希望、笑顔を取り出して頑張ればいい。もし、鞄の中身が減ってきたら、またyucatに会いに行って夢や希望、何より笑顔と元気を詰め込めばいい。当たり前にある幸せを減らしがちな日常だからこそ、その幸せをチャージしてくれるyucatのライブにまた足を運びたい。そのための場は、その先いくつも用意してあるからこそね。でも、この日一番無邪気な笑顔の少女でいたのがyucat自身だったことも、最後に伝えておこう。

  505号室から始まり、広がった夢の旅は、けっして終わることはない…。


PHOTO:リリィ(ririco:ramu)
TEXT:長澤智典


セットリスト
「Stop Me!」
「言霊」
「暴走マシーン」
「SteamCircus」
「ローレライ~消滅海底都市」
「505」
「音戯ノ国」
「D2」
「パノラマ」
「ジャパリズム」
「レプリカパプリカ」
「全知全能ノ樹」
「サクラサイエンス」
「Fairy Story 10th  Anniversary ver.」
-ENCORE-
「脳内トラベル」

 

<インフォメーション>


【10周年企画クラウドファンディング実施中】
「yucat PARALLEL WORLD具現化計画
〜10周年を盛り上げよう!〜」
実施期間2021年10月28日〜2022年1月9日
https://camp-fire.jp/projects/view/502709


【10周年企画 7/17開催ストーリー仕立てワンマンライブ】
「PARALLEL 10th Anniversary LIVE〜Welcome to Steam Circus〜」
2022.7.17(日) Open/17:00 Start/18:00 
@ミューザ川崎シンフォニーホール

yucat Official HP
http://www.yucat1031.com

 

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