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2025.04.07
間々田優

間々田優の歌声の羅針盤が指し示す人生の道に、どんな未来が待っているのかを知りたくなる。「タイポグリセミア」の原石 お披露目LIVE」公演レポート。

 現在レコーディング中の同作品収録予定の楽曲を『原石の状態の』弾き語りで先行披露するという、レコ発とは真逆の、異色なコンセプトのワンマン公演が、「『タイポグリセミア』の原石 お披露目LIVE」。同公演が、4月4日に汐留BLUE MOODで行われた。この日は、生配信も同時に実施。ライブには、サポートメンバーで中村ピアノ(ピアノ&コーラス)・えびさわなおき。(アコーディオン&コーラス)も出演。当日の模様を、ここにお伝えしたい。

 

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 場内は、満員の観客たちで埋めつくされていた。レストラン式のライブハウスという環境もあり、始まる前から身体にアルコールを取り入れ、これから始まるライブに向け、すでに気持ちを盛り上げている人たちが大勢いた。

 場内中から溢れ出る大きな歓声と拍手。ステージの上に姿を現した間々田優は、おもむろにアコギを手にして、マイクの前に。ライブは、いきなり「タイポグリセミアーー!!」と叫びながら始まった。

  スキャットした声も印象的。冒頭を飾ったのが、『ごめんねピータン』。間々田優はアコギの弦を力強く打ち鳴らし、魂の奥底に渦巻く感情を奮い立てるように、そのパワフルな歌声で「ごめんねピータン」と力強く歌っていた。少し背筋を反らし、彼女は手にしたアコギを力強くストロークし、言葉のひと言ひと言に沸き立つ感情を込め、心の動くままに歌声を響かせる。とても雄々しく、迫力と存在感に満ちた歌声だ。巧みに緩急を付けた曲の展開も含め、その声に早くも気持ちが引き寄せられていた。彼女の勢いに負けずと、フロアのあちこちからも熱い手拍子が飛び交っていた。

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 その様はまるで、うらぶれた世の中をカラッとした歌声の台風で吹き飛ばす大道芸人のよう。続く『ミゼラブル』では、弾き語るギターと高く響かせる艶めいた声に情念を込めて歌う間々田優の姿があった、言葉のひと言ひと言に魂を‥いや、念を込めるように弾き語る姿が印象的だ。彼女の歌声は、この場にいる人たちの意識を瞬時に引き寄せ、観客たちの気持ちと視線を釘付けにしてゆく。力強くアコギをストロークする手の動きと雄々しい歌がシンクロするたびに、一人一人の感情を震わせる魂の歌が場内中に響き渡る。とくに張った高音域の歌声は、力強く振り降ろした斧のように、観客たちの心へ強烈なインパクトを持って食い込んでいた。巧みに緩急を付けて歌い上げる感情な姿に、気持ちがずっと引き寄せられる。曲が進むごとに迫力とエナジーが増してゆく。なんて、生きる血潮と息吹を携えた破壊的な歌だろう。 
 次の曲では、アコーディオン奏者のえびさわなおき。を迎えて演奏。2人が寄り添うように歌い奏でたのが、『あいの国』。アコギを爪弾きながら、あの日に想いを馳せるように悲哀や哀愁を背負い、間々田優は言葉に脈動する血を巡らせるように歌っていた。彼女の歌声が躍動するのに合わせ、アコーディオンの音色が優しく、穏やかに寄り添う。今の儚い時代を嘆くように歌う間々田優の声を、アコーディオンの音色がそっと押し支える。その様は、嘆き悲しむ女性の心へ温かく手を差し伸べてゆくようだ。いや、そんな風にも見えていた。歌声の手が伸びるたび、その手をつかみたくなる。その歌声の手と手を重ねあい、思いを分かちたい。そんな気分も胸に覚えていた。間々田優が「LA LA LA LA LA」 と歌う声が、心に優しく響いていた。

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 アコギと中村ピアノのコーラスという編成のもと、トラックを流して歌ったのが、この日初披露となる新曲の『帯状疱疹オンマイマン』。「苦しみと病の歌」と口にしながら、間々田優は、季節の変わり目の時期、帯状疱疹に苦しむ女性の心情??を歌にしていた。「帯状疱疹オンマイマン』は、思わず身体が揺れ、2人と一緒に大きく手を振り上げて騒ぎたくなる、うらぶれたアッパーチューン。間々田優と中村ピアノは、手にした旗を高く振り上げ、軽快に弾けるゴーゴーな歌謡ロックンロールに乗せて、痛みを吹き吹き飛ばすように「抗生物質をもっともっととちょーだい 何も感じられなくなるほどに」 「帯状疱疹オンマイマン」と熱唱していた。みずからの気持ちを解き放ち、馬鹿になって歌ってこそ、ここに生まれたサイケでサイコなロックンロールの宴が華やいでゆく。フロアにいる人たちも、ノリノリで手にした旗や腕を振りあげていた姿も印象的だった。

  続く『セカンドダンス』で、間々田優はシェイカーを手に歌いだした。2人がシェイカーを振りながら「ラーララー」と歌う声にあわせ、フロアでも大きな手拍子が響きだす。『セカンドダンス』は、大人の甘酸っぱい恋心や人生の悲喜を綴った歌。ゆらゆらぐらぐらと揺れ動くもどかしい気持ちを思いきり元気に吹き飛ばすように、間々田優と中村ピアノは歌っていた。間々田優をリードに、中村ピアノが愛らしい歌声で寄り添い、甘い彩りを与えてゆく。間々田優自身が、いろんな人生の機微を明るく吹き飛ばすように歌っていた。その歌声に少しの影を背負いながら、うらぶれた心情さえこの場で笑い飛ばす勢いで、間々田優は大きく手を振り上げ、手にしたシェイカーを揺らし、何もかも振りきるように華やぐ楽曲に乗せて歌い踊っていた 何時しかこの場に、晴れた景色や楽しく華やぐ様が生まれていた。どこか昭和な香りも身に覚えながら、今は、間々田優の作りあげた宴に心と身体を投じて、ゆらゆらぐらぐらと酔いしれていたい。


 曲ごとに次々と編成が変わってゆく様も、見ていて引き寄せられる面だ。ふたたびえびさわなおき。を迎え、アコーディオンとコーラスという3人編成で届けたのが、ライブで長く育ててきた『白黒ラブソング』。いつもは間々田優とアコーディオンの2人で届けるところを、この日は3人編成と彩りを増したことで、哀愁を帯びた、まるで心の暮れなずむ様が目の前に広がりだす。間々田優は、少し息を抜いた声で、うらぶれたシャンソニストのようなか弱い女性に心を染めて歌っていた。この日は2人のコーラスも加わることで、哀愁浪漫を抱いた楽曲に、甘く芳醇な香りが添えられていた。美しくも儚いハイトーンの歌声の間に間に覗かせる、力強い歌声との白黒のコントラストが、この曲の持つ心の揺れを素敵に彩っていた。 少し酔った状態のまま、ずっと触れていたい歌と演奏だ。

 

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 ふたたび、弾き語りへ。間々田優は、みんなの笑い物になりながらも、真っ直ぐに生きる。そんな男の生きざまを歌った『住所不定年齢不詳』を歌いだした。生き方の運転が不器用な男の人生の機微が、彼女が綴った歌詞の中から見えてくる。「住所不定年齢不詳 いつまでだって根無し草」と、その男の人生にエールを送るように歌いあげる声に、「あ あ あ あいつは今日もジ・エンド」と歌う言葉のナイフを胸に突き刺したまま、同じように気持ちを重ね合わせて聴いていた人たちも多かったろうか。曲が進むごとに、感情を露に歌いあげる。そんな間々田優の歌声と、うらぶれた人生の日々を刻んだ歌詞の一つ一つを、救いのない応援歌として受け止めるのか。それさえも、前向く力や勇気にして、酒を一気に飲み干すようにカラッと吹き飛ばすのか。間々田優が「住所不定年齢不詳」と力強く歌いあげるたびに、この場にいた大勢の人たちも、きっと背中を押されていたに違いない。だから、フロアのあちこちで手拍子が生まれていた。間々田優は「あ あ あ あいつは今日もジ・エンド」と歌いながら、一人の男の錆びついた人生に色を与え、背中を押してゆく。それがどんな人生だろうと、この曲に乗せて全部笑い飛ばしてしまえばいい。すべてを、間々田優の歌声に乗せて吹き飛ばしてしまえばいい。だから、「あ あ あ あいつは今日もジ・エンド」と一緒に歌っていたかった。
  「甘いひとときになって、舌の上でこの曲たちが転がることを願って」の言葉を合図に、タンタンタンッタンタンと響く手拍子に乗せ、間々田優はアコギを軽快に、でも早い勢いでストロークしながら『甘〜いのがお好き』を、ねっとりと甘く絡みつく歌声で響かせてきた。曲が進むごとに糖度が増してゆく「お嫌いですか??」と歌いだすサビでは、身体中を駆けめぐる糖度の高い歌声の血で、一人一人の心を甘くとろけさせてゆく。アコギをストロークする音と歌声や歌詞を一つに重ねながら、間々田優は「甘いのがお好き?!」と高らかに歌っていた。フロア中の人たちも熱い手拍子をしながら、甘くて熱い衝撃にしっかり満たされていた。こういう甘い衝動も、大好きです。

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 この日の間々田優は、リリース前の新曲たちをライブで届けることで、一緒に曲を育てていることを実感していた。彼女は最後に、中村ピアノのエレピと、えびさわなおき。のアコーディオンという3人編成で『ナルシスト』を演奏。儚さを持って歌いだした間々田優の歌声に、アコギとエレピの音色が優しく、甘く寄り添っていた。そこへ、哀愁という服をまとうようにアコーディオンの音色が重なりだす。ひと言ひと言に、間々田優はいろんな心模様を込めて歌っていた。その歌声や言葉の示す思いが気になり、曲を追いかけたくなる。それは、どの曲にも言えること。間々田優の歌声の羅針盤が指し示す人生の道に、どんな未来が待っているのかを知りたくなる。「格好つけてよ わたしのナルシスト」と歌う声が、深い輝きを放っていた。まるで闇夜に包まれた未来を照らす小さなランタンの灯や、暗い夜空に浮かんだ小さな星空の輝きのように、彼女が歌い叫ぶ「生きて 生きて」の声が心を照らし、背中をずっと押していた。

 

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たくさんのアンコールに呼ばれて、ふたたび間々田優がステージへ。今宵は弾き語りライブと銘打ちながらも、アンコールで彼女は、バンド編成で楽曲を届けてくれた。間々田優(Vocal)・中畑丈治(G)・村田悟郎(B)・まななん(Key)・吉田貴博(Dr)・夏生奈苗(Sax)・中村ピアノ(Cho)という編成で届けたのが、『さよならファンタジア』。掲げた旗を大きく振りながら、「みなのもの船出に出よう」の声と合図に、胸を弾ませる軽快に跳ねた演奏が流れだした。間々田優は軽やかに身体を揺らし、手にした旗を振りながら、この場にいる人たちを明日へ向かって航海する乗員に迎え入れ、輝く銀色の波しぶきをともに上げて突き進んでいた。楽しい。理屈も屁理屈も関係ない。ただただ心と身体が弾むまま, 間々田優と一緒にこの航海を楽しんでいたい。間々田優が振り上げる旗を先導に、フロア中の人たちも振り上げた旗や手を揺らし、一緒に最高の船出を楽しんでいた。彼女が描きだす先には、一体どんな景色が待っているのだろうか。胸をドキドキ騒がせるこの楽曲と、晴れた気持ちで高らかに歌いあげる間々田優の声の指し示す道を信じて、この旅を一緒に続けたい。『さよならファンタジア』を歌っているときの間々田優が、ずっと満面の笑顔を浮かべていたのも印象的だった。

 

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「今日の夜があなたにとって忘れられなくなるように」の言葉を合図に、間々田優が最後に歌ったのが『エロエロエッサイム』。彼女は、ふたたびシェイカーを手に、触れた人たちの心の欲望を欲情させるように、跳ねたジャジーな演奏に乗せ、艶のある歌声を高らかに響かせていた。転調したとたん、心を野生に戻し、剥きだした裸の心で妖しくせまる場面も登場。ふたたび、軽快に駆けだした楽曲に乗せ、彼女は欲情に溺れるままに歌声をあえがせていた。『エロエロエッサイム』、とても妖しく艶のある香りをたっぷりと塗した、跳ねるダンサブルな楽曲だ。その上で妖艶な様と声で歌う間々田優の姿が、ずっと心を刺激していた。この場にいる人たちをメロメロエロッサイムしてゆく、とてもイカした華やかなパーティーに染め上げる様が最高にHAPPYだった!!

 

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 『タイポグリセミア』のワードが入っているものの、明らかに間々田優とは別人が歌唱する歌に乗せて、これまでクラウドファンディングのリターンとして開催された屋形船ライブや水族館ライブなどの映像が流れた。映像を終えたあとに、間々田優はマスクをかぶったタイポグリセミアマンに扮して、ふたたびステージに。その場で、「アルバム『タイポグリセミア』を夏にリリースすることを、頑張ります」と宣言していた。さらに、タイポグリセミアマンとしてプロレスデビューすることも語っていた。さぁこれからも間々田優と一緒にタイポグリセミアし続けようか。

 

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PHOTO:A.kwsk(@a_kwsk_1985)
TEXT:長澤智典


アーカイブ配信
https://twitcasting.tv/thogo777/shopcart/364416


協力:JROCKNROLL


セットリスト&編成
『ごめんねピータン』【A】
『ミゼラブル』【A】
MC
『あいの国』【B】
MC
『帯状疱疹オンマイマン』【C】
『セカンドダンス』【C】
MC
『白黒ラブソング』【D】
MC
『住所不定年齢不詳』【A】
『甘〜いのがお好き』【A】
MC
『ナルシスト』【E】
-ENCORE-
『さよならファンタジア』【F】
MC
『エロエロエッサイム』【F】
カーテンコール
『タイポグリセミア』


【A】
間々田優(アコギ&Vocal)

【B】
間々田優(アコギ&Vocal)
えびさわなおき。(アコーディオン&コーラス)

【C】
間々田優(アコギ&Vocal)
中村ピアノ(コーラス)

【D】
間々田優(アコギ&Vocal)
中村ピアノ(コーラス)
えびさわなおき。(アコーディオン&コーラス)

【E】
間々田優(アコギ&Vocal)
中村ピアノ(キーボード&コーラス)
えびさわなおき。(アコーディオン&コーラス)

【F】
間々田優(Vocal)
中畑丈治(ギター)
村田悟郎(ベース)
まななん(キーボード)
吉田貴博(ドラム)
夏生奈苗(サックス)
中村ピアノ(コーラス)

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SNS
https://rosecreate.jp/mamadayu/
https://x.com/demodorimamada

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