FEATURE
「どの歌からも、人生が思い浮かぶよね」。『結晶』というアルバムは、"人生"を描いた作品です。
10月19日に2ndアルバム『結晶』を発売するハナフサマユ。本人が綴った言葉を借りるなら、本作は「様々な想いの曲が集まって1つの結晶となり輝き出す。人生には出会いと別れ、幸せも悲しみもあって、そのひとつひとつが積み重なってこのアルバムになる。愛や涙の結晶今の時代、好きな曲だけをサブスクで聴けるようになった。そんな中で形あるものを発売させてもらえるからこそ、アルバムを1枚通しで聴いてもらって何を残せるか。この1枚にどんな光を込められるかを考え、1曲目から11曲目まで、1人の人生を描くように曲順を選考」したアルバム。ハナフサマユが綴った人生模様を、ここに全曲解説も含め、お届けしたい。
ハナフサマユ、収録曲を1曲ごとに解説!!
――今回のアルバムを作る上で、どんな思いを胸に制作を始めたのか。まずは、そこから聞かせてください。
ハナフサマユ 『結晶』というアルバムは、"人生"を描いた作品になっています。というのも、1stアルバム『Blue×Yellow』を発売して以降作り続けてきた幾つかの新曲たちを身近な制作チームの方々へ聴かせたときに、みなさんが口にしたのが「どの歌からも、人生が思い浮かぶよね」という言葉でした。そこから、新しいアルバムを秋頃に出そうという話になったので、わたし自身も「次のアルバムは、人生をテーマにしよう」と思い、そのテーマに相応しい楽曲を作り続けてきました。
結果、以前から書き上げていた楽曲も含め、「人の人生の始まりから、これからも続く人生に向けて」という一つの物語を描き出せる曲たちを全部で11曲並べる形で2ndアルバムの『結晶』を作りあげました。このアルバムが、聴いてくださるみなさんの生きてく中、人生の何処かに寄り添えるアルバムになれたらなと思います。
――ここからは、収録順に楽曲の魅力を紐解きたいと思います。
『この美しい世界で』
ハナフサマユ この楽曲を作ったのが、1stアルバムの『Blue×Yellow』を手に、全国各地をライブサーキットしている頃でした。その時期に、ウクライナで起きた戦争のニュースが、いろんなメディアで取り上げられるようになりました。ウクライナの国旗の色って、ブルーとイエローなんですよね。それを知ったとき、今、この時代にわたしは何が出来るんだろう。平和とは一体どういうものだろうと、自分自身いろいろ考える機会になりました。
「自分に出来ることって何だろう」、そう考えや思いを巡らせてゆく中で生まれたのが、『この美しい世界で』です。すでにラジオ番組などでオンエアしていただいており、感想の声もいただくんですけど。みなさん「考えさせられる曲」「言葉に込めた思いが深い」など、いろんな言葉を伝えてくれます。ぜひ、みなさんからの感想の声も聴きたいです。
『えんぴつ』
ハナフサマユ 『えんぴつ』は、本当に人生を映し出した楽曲になりました。きっかけは、「鉛筆1本で人生を現せられるな」と思ったことからでした。人生って、本当に鉛筆のように少しずつ少しずつ削られていくじゃないですか。でも、芯となる部分はずっと変わらずにあり続ける。つまり、自分の心の芯となる部分をいかに大切にしていくか。削れていくだけの人生じゃなく、その中で、どれだけ自分の気持ちを大切にしていけるのか。そういう希望を込めながら、1本の鉛筆を通して人生を描きました。収録した他の曲たちもそうですが、わたし自身が音楽を通して希望をもらったり、音楽を生きる糧にしてきました。だから、どの曲も"希望という光"を差した歌として書き上げています。この『えんぴつ』のような、たとえ小さな光だろうと…。
『透明』
ハナフサマユ 悲しみが消えることはないんですけど。その悲しみを、どれだけ柔らかく包み込むかを考えながら書いたのが、『透明』でした。わたしの歌声を、「透明感がある」と言ってくださる方が多いんですね。そこから「透明感」についていろいろと考えを巡らせていく中、「透明には涙もあるな」と思ったことが、楽曲が生まれるきっかけになりました。
悲しみの涙もそうだし、その人の存在が消えてしまうことも透明という言葉に重なること。だからと言って透明な涙になって消えてしまうんじゃなく、その透明な涙も結晶のように固まり、何時かは輝く存在になってほしい。そういう想いを『透明』には込めました。同時に、『透明』という楽曲が生まれたことが、アルバムタイトルの『結晶』へ繋がった面もあります。
『だらしない』
ハナフサマユ 『だらしない』『アネモネの果て』『Instinct』の3曲が、ABCテレビで放送されたスペシャルドラマ「今夜、わたしはカラダで恋をする。」の主題歌として書き下ろし曲になります。ドラマの中に描かれた恋愛観はとても奥深い、まさに大人の恋愛事情。わたし自身、なかなか想像が及ばず、あの当時、ドラマの映像をみながら、ビジネスホテルに缶詰になって楽曲を作っていたのを思い出します。
『だらしない』では、身体だけじゃなくて、心でも愛を求めている女性を描きました。報われない恋の心情を描いた『だらしない』を聴いたファンの方々や、twitter上へドラマの感想の書き込みと一緒にこの歌の感想も書き込んでくれた方々は、よく「自分のことを言われてるみたい」という言葉を書かれていましたね。
『アネモネの果て』
ハナフサマユ 『アネモネの果て』は、『だらしない』よりも希望の見える楽曲として書き下ろしました。終わっていく恋もお花も、やがては散っていきますけど。でも花は、種を地面に落として、また新たな花を咲かせてゆく。だから恋だって、ふたたび芽吹いて実らせることが出来るという前向きなメッセージを込めた歌として書きました。
『だらしない』には、報われない恋をしている女性の心情を書きましたけど。『アネモネの果て』には、ちょっと勘違いした子の心情を記しました。この子の恋も報われないんだけど。でも、次の恋へ向かう希望も込めたくてこの歌を書いています。世の中には、片思いのままを含め、好きになったけど上手くいなかった恋を経験したことのある人って多いと思います。わたしも、その中の一人。だから、こういう思いに共感する人が多いのかなとも感じました。
『スイマー』
ハナフサマユ 『スイマー』の歌詞は、自分自身の気持ちと重ねあわせるほど胸に刺さる歌になりました。息をしづらい水中と同じように、生きづらさを感じる瞬間って、人ならいろんな場面にあるんじゃないかと思います。そんな日々の中、いかに自分を大事にするかといいますか、自分らしさを、自分の幸せを自分でどう見つけてゆくのか…。そんなことを考えながら書いたのが『スイマー』です。
もどかしい気持ちと言いますか、友達と話をしていても、みんなどこかで上手くいかずに壁にぶち当たる経験もしています。日々の生活の中、もし躓くようなことがあったときに『スイマー』を聴いていただけたら、少しは聴いてくださった方の心に寄り添えるんじゃないかとわたしは思っています。
『Instinct』
ハナフサマユ この曲もスペシャルドラマ「今夜、わたしはカラダで恋をする。」の主題歌として書き下ろし曲で、ドラマの内容に沿う形で歌詞を書きました。『だらしない』や『アネモネの果て』とは異なり、『Instiocnt』では幸せになっていく、その瞬間を描きました。
テーマに据えたのが、「恋から愛に変わること」。Instinctとは"本能"のこと。わたしは、本能をさらけ出してこそ愛に変わっていく。その人の駄目な部分も受け入れることで愛に変わってゆくと思っています。その思いを、ここに書きました。冒頭の歌詞の数行に記した言葉は、きっと経験のある人も多いんじゃないかなとわたしは思っています。
『Happy Wedding』
ハナフサマユ もともとは、兄の結婚式用に作った歌でなんです。このアルバムの中では一番幸せを描いた楽曲になりました。これから結婚を迎える多くの人たちの幸せを祝える歌になりますように。実際にWedding Songとして広がってもらえたら嬉しいですよね。
『話をしようよ』
ハナフサマユ コロナ禍になって以降、人と会えなくなった時期が生まれれば、会話が少なくなる時期も増えたじゃないですか。大切な人を守る術が、人と会わないことだったり。だけど、最後の最後、本当にお別れになったとき、「もっと話をしておけばよかった」と後悔が生まれるのはとても悲しいことだなとわたしは思っています。
わたしの身近で語るなら、うちのおじいちゃんが、まさに病気で入退院を繰り返せば、病院へ会いに行けない時期もありました。だけど、大切な人と過ごす時間が、だんだん限られた時間になっていくのであれば、少しでも話をしながら思い出を増やしていきたいし、同じ時間をわたしは一緒に生きていたい。そうやって話をすることの大切さや、同じ時間を過ごすことの意味を、少しでも考えてもらえたらなと思って『話をしようよ』を書きました。
世の中には、別れを歌った楽曲や、永遠に会えなくなった方への思いを記した歌はたくさんあります。だけど、あと少しの時間を歌っている楽曲は少ないなともわたしは感じています。だから、そういう思いを書きたいなと思ったし、そういう心境になったのも、自分と向き合っている時間が長かったからというのもあったのかも知れません。
『メリーゴーランド』
ハナフサマユ アルバム『結晶』に収録した楽曲は、どれも最後には希望を持たせていますけど。『メリーゴーランド』は、唯一やさぐれてると言いますか、自棄になっている心情を記しました。『スイマー』とも重なる思いですけど、人の人生って上手くいくことばかりではないじゃないですか。それでも『スイマー』は希望を求めていきますけど、『メリーゴーランド』の主人公は、全部が嫌になってしまう。そこで本当に今の現実から逃げ出してしまうのか、もう一度頑張って立ち上がろうとするのか。そこの意識次第で人生は変わってゆく。そういう心情を…。闇に落ちている状況下の中、どう自分の心と戦うのかを『メリーゴーランド』には書きました。
わたし、どの歌にも光を差したいと思って歌詞を書いていますけど。『メリーゴーランド』では、光が差すのか差さないのか、その微妙な心のラインを歌にしています。こういう楽曲も、人生を描いたアルバムには必要ですからね。
『夕焼けカタルシス』
ハナフサマユ アルバム収録用の楽曲をセレクトしていたときから、「アルバムの最後はこの曲で締めよう」と思っていました。アレンジも割と壮大にしながら、より楽曲の良さを引き立てる形に出来ました。人生を描いたアルバムですから、たとえ『メリーゴーランド』のような心情へ陥ったとしても、やっぱり最後は前に進む気持ちになって、アルバムを閉じたかったんですよね。たとえ絶望に陥るときがあっても、きっとその先で抜け出せている。そんな思いも『夕焼けカタルシス』には込めています。
カタルシスとは、"浄化"や"気持ちを解放する"という意味を持っています。わたし自身、夕焼けを見るたびに、「今日も頑張ったな。また明日も頑張ろう」と気持ちがリセットされます。そういう想いを、みなさんも夕焼けを見るたびに思い出していただきたいし、そんな暖かい楽曲にしたいなという気持ちもここには込めています。
『感謝の手紙』
ハナフサマユ ボーナストラックとして収録したのが、コロナ禍の中で生まれた『感謝の手紙』になります。この楽曲を通して、わたし自身たくさんの縁をいただきました。しかも嬉しいことに、昨年に引き続き、今年もカラオケ文化の日(10月17日)の事業で『感謝の手紙』を使っていただけることにもなりました。
『感謝の手紙』は、医療従事者の方々へ感謝の気持ちを伝えるきっかけになった楽曲です。ライブでこの曲を歌っていく中、「自分は医療従事者です。この歌にとても励まされました」という言葉を、実際に医療現場に携わっている方々からもいただけたのは本当に嬉しいことでした。この歌は、これからもずっと歌い続けたい楽曲です。聴いていただけた方々から「ぜひCDにも収録してください」と言ってもらえたことが嬉しくて、このたびボーナストラックという形で収録をしました。
――今のマユさんにとって、アルバム『結晶』はどんな作品になりました?
ハナフサマユ 中には恋愛を歌った楽曲も収録していますけど。"人生の生き方"をいろいろと歌ったことで、自分自身の気持ちも正されたなと思っています。同時に、「聴いた人たちが少しでも気持ちを前へと向けられるように」「少しでも心に光を差射せるように」と思いを込めて作った曲たちを詰め込んだことで、わたしが表現してゆくうえでの大切な心の軸になる作品になれました。聴いてくださる方々の心の中でも、そうなってもらえたら嬉しいです。
――アルバム『結晶』が、生きてくうえでの心の軸であり、気持ちの支えになっているのは、自分でも聴くたびに感じます。
ハナフサマユ ありがとうございます。『結晶』というアルバムは、わたしにとってすごく大事な1枚になりました。この作品には、いろんな曲調の楽曲を収録すれば、いろんな歌唱スタイルで、いろんな心模様を歌にしています。たとえ曲によって表情は違っていても、わたしの芯となる部分は何もぶれることはない。そこにハナフサマユらしさを感じていますし、聴いてくださる方々にも感じてもらえたら嬉しく思います。同時に、ハナフサマユの新たな一面を見せることのできた作品にもなりました。あとは、ここに収録した曲たちを、どれだけ熱量を持ってライブで届けていくかだと思います。ただ、曲によっては、あまりにも歌の世界へ感情移入してしまうあまり、歌いながら泣きそうになることもあるんですけど。そういう感情さえも、聴いてくださる方々に伝えていけたらいいですよね。
――これからライブを通して、この歌たちに触れ合えることを楽しみにしています。最後に、ひと言締めていただいても良いですか。
ハナフサマユ どの歌にも主人公となる人物を定めつつ、そこには、今のわたしが感じている思いも反映しています。中でも、ドラマ主題歌として書き下ろした曲たちからは、自分にはなかったいろんな価値観を示されたことから、また新たな要素をわたしの中へ加えてくれたなと思っています。そんな、自分自身の新しい発見も含め、これからも、自分の生き方を投影しながら、いろんな曲たちを作り続けていけたらなと思います。次はぜひ、イベントも含め、ライブ会場でお会いしましょう。
TEXT:長澤智典
<インフォメーション>
ハナフサマユ2ndフルアルバム「結晶」
TKCA-75125
¥2,500(税込)
人生をテーマに描く2ndフルアルバム。
1. この美しい世界で
2. えんぴつ
3. 透明
4. だらしない
5. アネモネの果て
6. スイマー
7. Instinct
8. Happy Wedding
9. 話をしようよ
10. メリーゴーランド
11. 夕焼けカタルシス
※ボーナストラック
12. 感謝の手紙
13. 感謝の手紙instrumental
ハナフサマユ ライブ/イベント出演情報
■ 10/1(土) ロハスフェスタ東京 (光が丘)
■ 10/9(日) 高槻魂2022
■ 10/10(祝月)FM802 ミナミホイール
■ 10/15(土) 関西フリー予定
■ 10/16(日) 明治村音楽祭
■ 11/25(金)大阪Pangea 夢番地企画
■ 12/24(日) ESAKAMUSE BOR FES 2022
ラジオパーソナリティー
FM滋賀(e-radio)毎月2週目木曜日16:30~「ハナフサマユのキャッチ」
渋谷クロスFM 毎月4週目木曜日20:00~
BLOR pre「SSW SONG BOX」各月
SNS
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