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囁揺的音楽集団AsMRは現実を消し去るどころか、時空さえ越え、観ている人たちを太古の儀式の場へと連れ出した。 【MUSIC SHUFFLE&MASHUP LIVE】ライブレポート 囁揺的音楽集団AsMR編
8月1日(月)、新宿ReNYを舞台に行われた個性の強いガールズたちが集結したイベント「MUSIC SHUFFLE&MASHUP LIVE」。出演したのが、ANARCHY STONE/囁揺的音楽集団AsMR/太田家/CANDY GO!GO!/Oracle Futaba/月照ラス/ナデシコドールの計7組。当日の公演より、ここでは囁揺的音楽集団AsMRのライブの模様をお伝えしたい。
囁揺的音楽集団AsMR
「ピアノ、ヴァイオリン、ベース、ギターという稀有なバンド編成 。ボーカルと声優による囁き、轟音、ノイズ、歪み、そしてあらゆる音により新たな旋律を導き出し、狂っているのか、満ち足りているのか、陶酔しているのか新たな音楽受容体を覚醒させる」バンドが、囁揺的音楽集団AsMR。
Ayakaの囁くような語り。その言葉へ誘われるように重厚な音が響き渡る。やがて痛みを含んだEschikaのヴァイオリンの音色が、心に引っかき傷を与えてゆく。肌を掻きむしるように、厳かでシンフォニックな、まるで神へ祈りを捧げるゴスペルのような音楽が響きだす。囁揺的音楽集団AsMRは、その場にたたずむ人たちを暗い奈落の底へ引き込むように,宗教音楽にも似た厳かな演奏を奏でていた。囁揺的音楽集団AsMRは『異端者の祭典(サバト)』を通し現実を消し去るどころか、時空さえ越え、観ている人たちを太古の儀式の場へと連れ出した。
響き渡る不協和音。その場を漆黒の轟音で塗りつぶすように、楽曲は『雷命INFESTER』へ。GINAのギターとEschikaのヴァイオリンの音色が混沌とした世界を作り出す。Milliの感情を露にした歌声が身体を揺さぶる。高揚導く歌声に誘われるまま、拳を振り上げる観客たち。荘厳で幻惑的な音楽だ。彼女たちは、あえて不協和音を鳴らしているのに、なぜかその音色が心地好い。とても振幅激しい表情を持つ楽曲だ。その音色は、触れた人たちの感情に熱を注ぎ込めば、その熱をジワジワと上げ続けてゆく。荘厳かつ高揚したドラマが、そこには生まれていた。
美しくも切ないピアノの音色が、フロア中に優しく零れだす。Ayakaの朗読する声が、闇が支配する世界へ優しく染み渡る。その言葉は、絶望の中で点滅する小さな蛍の光のようだ。僅かな希望も含んだ言葉が、気持ちを涙で満ちた湖の中へ落としてゆく…。
ウィスパーな声でAyakaが歌いだした。その囁く言葉へ導かれるようにフワフワとした沸き立つ音が流れだす。悲しみをつんざくように響くノイズなギター音。囁揺的音楽集団AsMRは『トレモロ』を歌いながら、奈落へ導く交響曲ならぬ興狂曲を歌いだした。錯綜した感情が、サビで一気に爆発。嘆きを叫びへ変えるように歌うMilli。上がりだした熱情を合図に、演奏は黒い熱を膨らませる。「あなたへのトレモロ」と語るAyakaの言葉を合図に楽曲は、感情へ無数の光を一気に差しながら、光や希望を求めるように思いを響き渡らせていった。
身体の内側から気持ちを痛く揺さぶるように、次々と不協和音が響き渡る。「羽ばたけ震撼SCREAMER」とMilliが高らかに『震撼SCREAMER』を歌いだす。その声を合図に楽曲は、どんどん黒く濁った旋律をぶつけあう。互いが感情を露に音をぶつける様が、心地好い緊張感を与える。Milliの気持ちを熱く揺さぶる歌声へ寄り添うのではなく、その美しい声に痣をつけるようにノイズのような音で傷つける演奏も、とても印象深い。
とても壮大かつ荘厳な音だ。最後に囁揺的音楽集団AsMRは、勇壮で荘厳でドラマチックな、嘆きの鎮魂歌『Saturated World 』を歌いながら、魂を掻きむしる儀式の世界へと観ている人たちを連れ出した。荘厳シンフォニックな、すさまじいカオスな音が狂宴していく中、ただただ、呆気にとられるまま囁揺的音楽集団AsMRのライブに心がひれ伏していた。
なんと形容すれば良いだろう。この時間、ずっと魂が、突然現れたブラックホールの中へと吸い込まれ、そこに現れた黒い楽園の中、狂喜する4人の黒い女神たちの奏でる演奏へひれ伏すように祈りを捧げていた。
PHOTO:菊島明梨
TEXT:長澤智典
囁揺的音楽集団AsMR SNS
https://twitter.com/asmr_band
https://asmr-band.jp/
MUSIC SHUFFLE & MASHUP LIVE」配信チケットアーカイブ(〜8/31まで何度でも視聴可能)
https://www.funity.jp/tickets/muetike/show/msml22st/1/1