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地元横浜へ凱旋!!「nuance(ヌュアンス) botäwnie oneman tour 特別公演 『okaeri』」ライブレポート!!

地元横浜へ凱旋!!「nuance(ヌュアンス) botäwnie oneman tour 特別公演 『okaeri』」ライブレポート!!
2020年10月18日、横浜の4人組アイドル・グループであるnuance(ヌュアンス)のワンマンライヴ「nuance botäwnie oneman tour 特別公演 『okaeri』」がKT Zepp Yokohamaで開催された。nuanceにとっては過去最大規模の公演、そして地元・横浜での凱旋ライヴだった。
nuanceは2017年に横浜で結成されたグループ。メンバーはもちろん、プロデューサーやサウンド・プロデューサーまで横浜で暮らしているという、生粋の横浜のローカル・アイドルだ。そして、楽曲やサウンドのレベルの高さは、神奈川県のローカル・アイドルとして他に類を見ないほど突出している。
開場すると、会場内には波の音が流れ続けていた。そして汽笛の音が響くと、客電の明かり落ち、ステージとその左右の壁いっぱいに、無数のオレンジのライトが夜空の星のようにまたたいた。
ステージにまず登場したのは、サウンド・プロデューサーの佐藤嘉風。2019年に話題を呼んだAI美空ひばりの「あれから」の作曲者でもある。
彼がギターで「青春の疑問符」を弾きだすと、nuanceの歌も会場に響いた。しかし、ステージ上に彼女たちの姿はない。スポットライトが照らしたのは、2階で歌う4人の姿だった。
「青春の疑問符」が終わると、ステージ上には案内人ならぬ「アヌュナイ人」がふたり登場。アヌュナイ人の会話によると、今日の公演は出港する船を舞台にしているという。出港しようとしているものの、2階のnuanceのmisakiは寝ており、珠理はゲームをし、みおは雑誌を読み、わかは茶碗のご飯を食べていて、アヌュナイ人に「やる気がない!」と言われる状態。しかし、9人のバンド・メンバーが登場して演奏を始めると、その熱演にnuanceもやる気を出して1階へ。
1階フロアの中央に敷かれた赤いカーペットを、nuanceは後方から歩いてステージへと向かい、「ヌューミュージック」が始まった。ここでやっと本編がスタートである。
nuanceには、ここまで書いてきたような演劇的な演
そして、バンドに拮抗する力強いメンバーの歌声は、初期とは別のグループのようだ。nuanceのレパートリーの中でもアンニュイな「サーカスが来ない街」も、この日は感情がはちきれんばかりの激しさを感じさせた。
アヌュナイ人が4枚の大きな鏡をステージに持ちこみ、バンドの伴奏のなかnuanceが芝居(コント?)をしてから、「yokohama sweet side story」へ。そして、4枚の鏡も演出に使われていく。「sekisyo」は、横浜の関内という地名が、関所に由来していることにインスピレーションを受けた楽曲だ。「cosmo」では、nuanceにとって重要な小道具である4つのイスが登場し、その上に立っても歌われた。「ハーバームーン」は、この公演の設定と同じく港をテーマにした楽曲。ブギーな「ルカルカ」、「赤レンガ」という歌詞が出てくる「からくれない」も、横浜ならではの楽曲だ。特に「からくれない」では、バンドの演奏とnuanceのヴォーカルが高いレベルでせめぎあい、この日のハイライトのひとつでもあった。
そして、アヌュナイ人が乗り遅れてきたという乗客の名前が呼ぶと、会場から驚きの声が上がった。シークレット・ゲストとして、クレイジーケンバンドの小野瀬雅生が登場したのだ。これまでもnuanceに楽曲提供をしてきた小野瀬雅生だが、ライヴでは初共演。彼が作曲した「Love chocolate?」(公勝良名義)「8月のネイビー」が、初めて小野瀬雅生の生ギターとともに披露された。小野瀬雅生は「お昼のお弁当がおいしかった」と言い残して去っていったが、翌週の2020年10月30日にクレイジーケンバンドの日本武道館公演をひかえている多忙ななかでのゲスト出演だった。
一度ステージの幕が降り、嵐の効果音が響くなか、赤い衣装から真っ白な新衣装に着替えたnuanceが現れ、ピアノの連打に合わせて踊る。そして、嵐を抜けた先での後半戦は「i=envY」でスタート。さらに「ai-oi」「sanzan」へと狂おしく続いた。日本語と英語で歌われる「tomodachi」も、港湾都市としての横浜を強くイメージさせる。
さらに「ミライサーカス」からのラストスパートでは、「タイムマジックロンリー」「セツナシンドローム」といったキラー・チューンが立て続けに披露された。歓声を上げられないファンたちのクラップに熱が入る。「雨粒」は、nuanceのラヴ・ソングの狂おしさを改めて感じさせた。
メンバーがようやく自己紹介のMCを始めたのは、開演から約2時間後。転換を挟みつつも、ほぼ歌い踊り続けていたのだ。
本編最後に歌われたのは「初恋ペダル」。1970年代のソウル・ナンバーを連想させるコード進行が美しい楽曲だ。歌い終わると同時にアヌュナイ人が「出港です!」と叫び、ステージの上空から金の紙吹雪が降り注いだ。nuanceの「いってきまーす!」という声とともに汽笛が鳴り、nuanceは旅立っていった。
アンコールの拍手に再び幕が開くと、バンド・メンバーの紹介が行われ、アンコールとして新曲「last a way」が披露された。写真撮影と最後の挨拶も終えてnuanceがステージを去り、これで終了かと思いきや、会場からもう一度驚きの声が上がることに。「初恋ペダル」のMVが流れだしたのである。プロデューサーのフジサキケンタロウがかたくなにMVを作ってこなかったため、これが初のMV。それを見終えたファンの拍手とともに「nuance botäwnie oneman tour 特別公演 『okaeri』」は幕を閉じた。
nuanceに加えて、2バンド編成、役者も参加しての演劇性などは、2019年4月25日と2020年3月10日の渋谷TSUTAYA O-EASTから続いてきたものだが、舞台装飾や照明なども含めて、完全に今回のKT Zepp Yokohamaが最高傑作。コロナ禍ながらリスクを覚悟で公演に踏みきったことにも感銘を受けた。そもそも、nuanceはツアーのスケジュールの変更を余儀なくされ、当初はツアーファイナルのはずだったKT Zepp Yokohamaからツアーを始めることになったのだ。渋谷、大阪、名古屋、福岡と回り、2121年2月27日に横浜へと帰港するnuanceの旅路を、ぜひひとりでも多くの人に見てほしい。
アイドルに限らず、この日のnuanceを超えるライヴを2020年に見ることは、はたしてあるのだろうか? そう考えてしまうほど、エンターテインメントとしての密度の高さに震撼させられたのが「nuance botäwnie oneman tour 特別公演 『okaeri』」だった。
取材・文:宗像明将
<セットリスト>
00.青春の疑問符
01.ヌューミュージック
02.ヒューマナイズド・ヒューマノイド
03.which's witch
04.悲しみダンス
05.ナナイロナミダ
06.サーカスが来ない街
07.yokohama sweet side story
08.sekisyo
09.cosmo
10.ハーバームーン
11.ルカルカ
12.からくれない
13.Love chocolate?
14.8月のネイビー
15.i=envY
16.ai-oi
17.sanzan
18.tomodachi
19.ミライサーカス
20.タイムマジックロンリー
21.セツナシンドローム
22.雨粒
23.初恋ペダル
24.last a way