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2020.12.07
毒島大蛇

12/9ミニアルバム発売記念「毒島大蛇」インタビュー 毒島大蛇という名前でキラキラなアイドルをやったらおもしろくない?

「毒島大蛇」と書いて「ぶすじまおろち」と読む。古澤サナによるソロ・プロジェクトの毒島大蛇は、そんな異色のアイドルだ。代代代などが所属する大阪のDEMON TAPESで、2018年6月から活動をスタート。プロデューサーは代代代と同じ小倉ヲージが担当しているものの、ブレイクコア中心の音楽性の代代代に対して、毒島大蛇は歌モノだ。そんな毒島大蛇のニュー・ミニ・アルバム「SANA」は、前作「毒島音楽大全其ノ弐」からわずか半年のインターバルで届けられた。いろいろ極端な毒島大蛇は、どのような経緯で誕生して活動してきたのかを古澤サナに聞くと、柔らかな笑顔で答えてくれた。

 

——古澤サナさんが個人名ではなく「毒島大蛇」というプロジェクト名を名乗ることになったのは、プロデューサーの小倉ヲージさんが先に名前を決めていたんですよね。

毒島:最初びっくりしたんですけど、小倉さんが普通の名前でくるわけがないから(笑)。「おもしろそうだしいいかな」って。

 

——名前の由来は何なんですか?

毒島:小倉さんのお友達が「毒島大蛇という名前、どこかで使いたいんだよね」と言っていたみたいで、私のソロをやることになった時「これだ!」となってお友達に許可を取って、この名前に決まったみたいです。ふたりで「かっこいいでしょ?」みたいな感じになっていたみたいで(笑)。

 

——そもそも「毒島大蛇」が読めないと言われませんか?

毒島:よく言われます。アイドルさんにも「何て読むんですか?」って(笑)。

 

——キャッチコピーは「最後の清純派」なのに、毒島大蛇という文字列がおどろおどろしいですよね。

毒島:私、小倉さんの曲でしかアイドルをやりたくなくて。小倉さんが私のためだけに作ってくれるんだったら、名前はそこまでこだわりがなくて。「たぶん被らないしいっか」みたいな。

 

——なぜそこまで小倉さんの曲に惚れ込んだんですか?

毒島:歌詞がすごい好きなんですよ。小倉さんは「歌詞の意味はないよ」って言うんですけど、「意味がなかったら絶対あの歌詞は書けないでしょ」って思うような歌詞が多くて。

 

——「最後の清純派」というキャッチコピーはどういう経緯で決まったんですか?

毒島:小倉さんいわく「毒島大蛇という名前でキラキラなアイドルをやったらおもしろくない?」って(笑)。アーティスト写真が出た時にキャッチコピーが「最後の清純派」になっていたので、後から知ったんですよね。正統派で行くというのは聞いていたんですけど。ふふふ。

 

——古澤さん自身は「正統派」や「清純派」というのは意識しますか?

毒島:最初はすごいそれに縛られていて(笑)。最初の半年はずっと「正統派アイドルのイメージに沿っていないとダメだ」って。でも、小倉さん的に「絶対こうしなきゃいけない」みたいなものはあまりなかったみたいで、「わりと好きにやっていいんだ」と思って、半年くらいしてからはあまり縛られなくなりました。小倉さんからは「髪型を大きく変える時とかは相談してね」と言われたくらいで、それ以外は「ソロだし好きにやって」みたいな。

 

——「こどものおつまみ」や「くぴぽ」のメンバーを経て、毒島大蛇として2018年6月から活動を始めてから約2年半。小倉さんから「グループは合わないからソロでやったほうがいいよ」と言われたときはどう思いましたか?

毒島:「あぁ、そっかー。合わなかったからあんまりうまくいかなかったのかな」って(笑)。グループも楽しかったんですけどね。

 

——今ソロ・アイドルは少ないですが、活動していかがですか?

毒島:ソロになってよかったと思います。最初は、ソロというだけで見てもらえなかったり、グループに比べて劣っているような見方をされているのをやんわりと感じたり。「あぁ、やっぱりグループには勝てないのか」って思うこともありました。グループはやっぱり人数での迫力もありますし、複数人いたらその中に気になる子がひとりはいたりするじゃないですか。ソロだと私単体なので、私のことを気に入らなかったら気に入らないんですよ。でも、そこから1年後くらいに代代代とコラボする機会があって感じたのが、グループだと歌っている子に目が行くので「推しメンであってもお客さんって案外見ていない時間があるんだな」って。当たり前だけど、ソロは自分しか見られない。だから「ずっと見てもらえるんだったらソロも案外いいな」って。最初はそれもすごい緊張したんですけど、今はそれに慣れてしまって。見られていない時間があるとそっちのほうが「大丈夫かな?」みたいな(笑)。

 

——2年半の活動の中で一番楽しかったことと一番つらかったことを教えてください。

毒島:お客さんにCDをたくさん買っていただけて、好評をいただけたことは嬉しかったです。最初の半年は「これでいいのかな?」って思いながら活動をしていてたんですけど、東京遠征が決まったり、そこでも好評をいただけて「これで良かったんだ」って気づくことができました。自分的にしんどかった時期は、「ミスiD2019」(2018年開催)の選考期間中です。セミファイナルまで行くことができたんですけど、ちょうど毒島大蛇を始めてすぐのあたりで。くぴぽの時はクールキャラだったので、「キラキラニコニコ」みたいなのが思っていたよりもできなくて。できないことへの葛藤と、「今までクールキャラと言われていたぐらいだから、それが本質なんだろうな」と思いながら受けていて。しかも「ミスiD」はかわいい子や自分にないものを持っている子がいっぱいいて、「ソロなのに自分、大丈夫か?」って思っていて。「ミスiD」というそれぞれ個人で戦わなくてはいけない環境ですら、そんなに目立てていないのに。あのあたりが一番つらかったですかね。

 

——ファイナルまで行けなかった悔しさはありましたか?

毒島:それももちろんあります。でも、カメラテストで自分の写真を見た時に「あっ、他の子と比べてかわいくないんだな」って自分で思って(笑)。落ちてちょっとすっきりしたところもあって。あと他の子は楽器ができたり、絵を描いたり、できることがあって。でも、私は小倉さんが曲を作ってくれて、いろんな人が手伝ってくれないと……。「個人単体で戦うとそんなに魅力ないんだな」って気づいて。でも、2年半やってきて「だいぶ表情が柔らかくなったね」とはよく言われるようになりました。

 

——活動をしてきたなかで思い出深いことはありますか?

毒島:MVや写真集を作ったり、ソロになってから初めてやることが多くて。今までのグループだったらできなかったことができるようになったのが楽しいです。

 

——代代代の楽曲ジャンルはブレイクコアと言われていて、いわゆる歌モノではないですよね。毒島大蛇は歌モノですが、それを受け取った時はどう思いましたか?

毒島:小倉さんって、もともとポップな曲を作っていたみたいで、「やりたいことをやるね」と言って曲をもらって。「小倉さんが作りたい正統派な曲ってこれなんだ」って納得しました。

 

——ニュー・ミニ・アルバム「SANA」は、前作「毒島音楽大全其ノ弐」から半年というハイペースでリリースされます。そう聞いたときはどう思いましたか?

毒島:早いな、って思いました。すごいスパンで新曲が送られてくるようになって。「今は毒島の楽曲制作のモチベーションに乗っているのかな?」みたいな(笑)。

 

——自分ひとりで全てのことをやらなければいけないのに、そんなにたくさん曲が送られてきたら大変ではないですか?

毒島:もうやらないとどうにもならないんで。でも、嬉しいですね。レコーディング好きなので。

 

——「SANA」の1曲目の「毒島コール」に入っている本物のコールを聴いたときはどう思いましたか?

毒島:想像とすごい違ったから笑うしかできなくて(笑)。小倉さんとは「ライブのSE作らなきゃね」とは話していて、どんな曲ができるかと思ったらあれで。出オチを狙うのかな? でも、小倉さんが良しとするならまあいいか(笑)。

 

——古澤さんの小倉さんへの深い信頼はどこから発生するんですか?

毒島:小倉さんの曲が好きだからというのもあるんですけど、DEMON TAPESって「小倉さん信者」しかいないので。小倉さんってすごい自由なんですよ。久々に会ってもすごい楽しそうにしゃべっているし、不思議な人。今まで関わってこなかったタイプの人で、おもしろい。

 

——「仮想メモリーズ」のような歌謡曲テイストの楽曲もありますが、どう歌いこなすよう意識していますか?

毒島:小倉さんの曲って、曲に対して歌詞の量が多くて。あと、毒島大蛇ではあまりないんですけど、転調やリズムが変わることがあるので、いつもリズムは一番最初に気にします。リズムをひたすらやって、最後に感情を込めるみたいな。

 

——曲をもらったら感情を込めることを優先してしまいそうですが、リズムからなんですね。

毒島:そうですね。私、ハロプロさんが好きなんですよ。ハロプロさんってすごいリズムを重視して、どこで息を吸うかも決めていることが多くて。とにかく「リズム!」という感じで。

 

——つんく♂さんがリズム重視だということはよく言われますが、毒島さんはいつ頃それに気付いたんですか?

毒島:Juice=Juiceさんがデビューして1年くらいの時ですかね。映像をいっぱい出していて、そこでメンバーさんが「リズム!」って言われていて。そこから自分も意識するようになりました。好きなアイドルの影響は大きいです。

 

——「私らしく」は、「機動戦艦ナデシコ」のエンディングテーマに使われた桑島法子さんのカヴァーですが、なぜこの楽曲をカヴァーすることになったのでしょうか?

毒島:小倉さんが好きな曲なのかな?(笑)小倉さんは70、80年代アイドルのカヴァーをしがちで。代代代もワンマンの時にカヴァーしたり。代代代のライヴの開場BGMでもかかっているから、お客さんもTwitterで話しているのを見かけました。小倉さんと同世代の方はけっこう好きな人も多いみたいで、「めっちゃテンションあがる!」って言っていて。

 

——原曲は聴きましたか?

毒島:聴きました。あの年代の歌手の独特な、リズムをオンで歌わずちょっと余韻を持たせるような、わざと崩すのが最初つかめなくて。小倉さんが歌ったデモ音源が来てやっと「あっ、こういうリズムだったのか」って。そこからは原曲を聴いても小倉さんのデモを聴いてもリズムが取れるようになりました。

 

——他にアルバムで気に入っている楽曲やこだわった部分があれば教えてください。

毒島:「futuristic」という曲が初めてバラードで。今までバラードを歌ったことがなかったので、感覚をつかむまで「これで合っているのかな?」と思いながらやっていました。アルバムのレコーディングに入る少し前くらいからボイトレの先生に教えていただくことになったので、いろいろ質問しながら取り組んでいます。あと、バラードを歌っている歌手、コレサワさんやLiSAさんを見て勉強したり。「イケないRMO」は、最初聴いた時「代代代が歌っていそうだな」って。意味があるのかないのかわからないような言葉の羅列って、けっこう代代代の曲で多くて、毒島では今までなかったので新しさを感じました。曲はすごい明るくてみんなで楽しめそうな曲です。「めらん懲りー」は、今までにない大人っぽい感じの曲。今まで振付は自分でしていたんですけど、この曲は初めて他の人にお願いして。大好きな泉茉里さんにしてもらいました。「憧れの人に振りをつけてもらえる」と、初披露に向けてすごい気合が入っていた思い出があります。大人っぽい曲だし、「今までと違う見せ方をするぞ」と思った曲ですね。

 

——泉茉里さんは、同じ大阪でもともと「いずこねこ」として活動していましたね。古澤さんも好きだったんですか?

毒島:大阪だったらやっぱりいずこねこさんが有名で、曲も知っていたんですけど、その時は「かわいくておしゃれな曲を歌っているアイドルさん」ぐらいしか知らなくて。私がソロになった時、自分の見せ方を小倉さんに聞いたら「参考に見てみて」と送っていただいたのがいずこねこさんのライヴ映像で。当時気づかなかった魅力にすごいハマってしまって。

 

——それは直接本人にお伝えしたんですか?

毒島:実はまだお会いしたことがなくて。

 

——会って話せるといいですね。いずこねこみたいに、ソロ・プロジェクトでも終わることもあるんだな……と考えたりしますか?

毒島:けっこう夢で見るのが「いついつで終わりです」「ソロだと売れないから新メンバーを入れます」と言われたり……。「いつかもしかしたらそうなるかもしれない」と片隅で思っちゃったりするんですけど。小倉さんは「ソロだから」って言うから新メンバーの線はないかな(笑)。私が集団行動には向いていないのかな?(笑)

 

——夢にまで見るって、無意識にかなり不安を抱えているのでは?

毒島:あはは……。最近は見なくなりましたけどね。2年目に入るぐらいまではそういう夢をよく見ていて、自分の中でも不安に思っていたんでしょうね。

 

——「SANA」の最後の「時をかける症状」は、ダジャレなんじゃないかとさすがに思いますよね?(笑)

毒島:あはは、そうですね。小倉さんオマージュが好きなので「もじってるな」とは思ったんですけど、曲を聴いたら全然違う感じで。「こういう曲調でいくのか」って思いました。

 

——そして、2020年12月17日には新宿MARZでワンマンライヴ「単独毒島」があります。東京での初のワンマンライヴですよね。

毒島:自分でも気合いが入っているのを感じます。代代代のファーストワンマンが今もすごい印象に残っていて。メンバーも、お客さんもスタッフさんも気合いが入っていて、「全部ぶつけるぞ」という気迫をすごい感じて。「初めてだからってあんまり気負いすぎないほうがいいよ」ってスタッフさんや小倉さんからも言われているんですけど、やっぱり「良いもの見せたいぞ」という気合いはあります。

 

——気負う部分や不安な点はありますか?

毒島:「お客さんが入らなかったらどうしよう」ってすごい思っていて。「その時間、毒島大蛇を見たいと思っている人はどれぐらいいるのか」という漠然とした不安みたいな。「大丈夫か?」みたいに思っちゃったり。

 

——今、東京でライヴをやっている感触はどうですか?

毒島:「東京のほうが見てくれるな」って思います。大阪に比べて東京のほうがポップな曲を受け入れてくれる、そういう曲が好きなお客さんがたくさんいるので。「単独毒島」でもっといいところまで行きたいです。

 

——ところで、noteを開設した理由は「普段何を考えてるのか、何を思っているのか表に出すのが苦手」だからとツイートしていましたが、考えは表に出せるようになりましたか?

毒島:「noteだったら書いてもいいかな」と思えるようになりました。今まで、感想を言うのが苦手なほうで。お客さんからも「普段何考えていているのか、生活が見えづらい」と言われていて。

 

——noteで=LOVEとグーグールルについて書いていましたね。どんなところが好きなんですか?

毒島:イコラブさんは最初「かわいい人たちがいっぱいいる」ってハマったんですけど、声優アイドルと言われているくらいだから、みんな声がすごい良くて。声フェチなところがあるので、「みんな歌が上手だしキラキラしていてかわいい」「それぞれ特徴があって被らない声の子たちばかりだな」って。キラキラアイドルとしてイコラブさんは参考にもなります。グールルさんは、もともとMIGMA SHELTERの初期体制がすごい好きだったんですよ。AqbiRecさんの楽曲や、迫力があって狂気を感じるぐらいのパフォーマンスに魅力を感じていて。グールルさんって踊れる感じの曲なのに、みんなすごいキラキラしていて。また新しいキラキラアイドルの見せ方をそこで知って。かわいくて、見せ方も上手だし、参考にもなるし、曲も好きです。基本は「好き」の感情で見ているんですけど、どうしても「この子のここがいいな」みたいな目線で見ちゃいがちです。

 

——今、他に好きなアイドルはいますか?

毒島:最近はクマリデパートさんがすごい好きで。クマリデパートさんもキラキラでニコニコ笑顔でやっていて、ちょっと初期スマイレージさん感があるのがもうなんともいえない嬉しさがあって(高まりながら)。

 

——クマリデパートはライヴでもピッチが狂わないのがすごいですよね。そういう存在になりたいですか?

毒島:やっぱり歌を歌えないとソロではやっていけないと勝手に思っているので。歌うまくなるぞ!

 

取材・文:宗像明将

 

<インフォメーション>

毒島大蛇 NEWミニアルバム
2020年12月09日発売

「SANA」

CDジャケット

2,200円(税込)
DEM-040

<収録曲>
1.毒島コール
2.仮想メモリーズ
3.めらん懲りー
4.futuristic
5.イケないRMO
6.私らしく
7.時をかける症状


12月17日(木) 
毒島大蛇ファーストワンマンライブ

『単独毒島』

新宿MARS
開場 18:00 開宴 19:00
前売3,000円
当日3,500円

チケット:
https://tiget.net/events/111526

 



毒島大蛇

公式サイト:
https://busujima.link/

公式Twitter:
https://twitter.com/busujimaorochi

古澤サナTwitter:
https://twitter.com/Na3O7

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