FEATURE

2024.08.09
FullMooN

誰だって毎日の暮らしの中、いろんな理不尽さを感じながら。それでも前へ進んでいるわけじゃないですか。

  FullMooNは、過去の楽曲を現在の編成/音楽スタイルで再録したミニアルバム『AncientMooNⅡ』を2024年4月に発売。彼女たちが次に提示したのが、今年作りあげた新曲のみを詰め込んだ現在の姿。それが、8月14日(水)に発売するミニアルバム『SPREAD』になる。
  「理不尽な物語 全て飲み込む勇気が欲しい」と、現状に抗う姿を記した『Reality』。「積み上げた時間は負けない ここからなんだ」と、みずからを奮い立てる『Until the end』など、ここには、4人が音楽という剣を振りかざし生きてゆく中で感じている"今現在のリアルな思い"が詰め込まれている。彼女たちが本作へ綴った思いを、ここへ記したい。

 

6


ファンの間で『Reality』は「社畜の歌」と言われてますからね(笑)。


──ミニアルバム『SPREAD』の1-2曲目を飾った『Reality』と『Until the end』へ触れたとき、現状を変えようにも変えきれぬ歯がゆさを覚えているのかなと感じたのですが…。

ねね  現状に不満を感じているみたいに思えますよね。『Reality』には、当時(歌詞を書いた時期)のリアルな気持ちを書いています。あの頃は(現状に対して)「チキショー!!」という気持ちがありました。『Reality』は得意の病み系の楽曲ですけど(笑)。その気持ちを踏まえて、続く『Until the end』ではね。

えれん  前向きな気持ちで攻めています。

  ねねが『Reality』に書いたのは、メンバーみんなが常日頃感じている気持ちですけど。これはFullMooNに限らず、誰もが日々生きていく中で感じる思い。誰だって毎日の暮らしの中、いろんな理不尽さを覚えながら。それでも前へ進んでいるわけじゃないですか。私たちは『Reality』を「社畜の歌」と呼んでいます (笑)。

ねね  自分を社畜と感じている人たちにも刺さる歌のようです。『Reality』の中で抱いているモヤモヤとした感情を、『Until the end』では明るく前向きに吹き飛ばしていますけど。もともと『Until the end』は、FullMooNの強みであり、魅力にもなっているえれんの「やんちゃボイス」を生かしたくて、ツインヴォーカルに近い攻めた曲として作りました。

──えれんさん、『Until the end』の中で思いきりがなり(叫び)続けていますよね。

えれん  『Until the end』もそうだし、『Another』でも叫んでいるように、今回は叫び系の楽曲が割と多めになっています。 

──自分自身の気持ちと対峙した内容が多いから、感情剥き出しの歌や、荒々しい攻めた曲調が多くなったのでしょうか。

りん   けっして「攻めた曲を」と意識していたわけじゃなかったけど。みんな理不尽さを感じながら生きているから、それが楽曲にも出たんだろうね。

ねね  そうかもね。でも、『Devil Princess』と『missing』は自分たちではなく、想像のキャラクターだけどね。中でも『missing』のような恋愛曲は、FullMooNの中で書くことは滅多にないから珍しいんじゃないかな。

──けっして、幸せな恋愛曲ではないですけどね(笑)

ねね  FullMooNの中に、ハッピーな恋愛曲はないです。でも、なんでだろう??(笑)

葵  今回は、どれも攻めた歌詞が多いけど。最後に入れた『ドロップ』は、すごくキラキラしてる。だけど、この曲も過去を振り返っての思いだから、今ではないんだよね。

りん  『ドロップ』でキラキラとしていたあの頃を懐かしみつつ、ふたたび冒頭の『Reality』に戻ると、「こんな大人になってしまったんだな」と病みを抱えだす。でも、その気持ちを『Until the end』で吹き飛ばしていくんだよね。ミニアルバムの『SPREAD』は、いろんな経験を重ねた大人ほど刺さる作品です。
            
──確かに、大人になるほど理不尽さの増えていく生活になっていくからね。だから、社畜じゃないけど。いろんな理不尽さに抗う自分の気持ちと置き換えて聴いてしまうんだろうなぁ。

りん  お仕事をしている方々の多くが、そう感じているようです。だけど、どの曲にも、しっかり救いは書いているからね。

──攻めた激しい曲調が多いのは、今のFullMooNの姿勢が現れているから?

りん  うちらなら出来るでしょ、やれるでしょという気持ちが、自然と曲にも反映したっていうのかな?!

葵  挑戦する意欲は、以前よりも強くなっています。えれんの叫びには、とくにそういう感情が出ているからね。

えれん  「生きてるぞ!!」というね。ライブ中に叫んでいると、より強く「生きてるぞ」と感じることが出来れば、うちらも、ファンの人たちも、いい発散になっているからね。

 

2


『Until the end』の歌詞の一節じゃないけど、「積み上げた時間は負けない」んですよ。


──それぞれ、ミニアルバム『SPREAD』を作りあげた今の心境を聞かせてください。

えれん FullMooNは、まもなく12周年を迎えるように暦の長いバンド。求められるものも多いからこそ、それを超えるクオリティの高い作品を作らないと…という気負いもあったけど。結果的に、自分たちが積み重ねてたきたものをしっかり反映できた、すごく手応えを感じる作品になったなと思います。

りん  つねにチャレンジしていく姿勢を持って進んできたFullMooNらしく、『Another』のような挑戦曲もあるように、今までにない新しいFullMooNを見せた1枚になりました。だからこそミニアルバム『SPREAD』を手に、ワンランク上を目指して攻めていきたいんです。

葵  昨年、アルバム『Dear...』を出したときかなりの手応えを覚えたから、当時は「これ以上の作品を作れるだろうか??」と思っていたけど。ミニアルバム『SPREAD』を作り終えたら、超えた云々ではなく、また異なる最高を生み出せたなと感じました。『Another』のようなテクニカルに攻めた楽曲を示したことも、自分たちにとっていい自信になっています。ほんと、『Until the end』の歌詞の一節じゃないけど、「積み上げた時間は負けない」んですよ。

えれん  激しい中でも、『Another』のようなジャンルの異なる攻めた楽曲を表現するガールズバンドはいないからね。

ねね 今回は本当に良すぎて「格好いい」の言葉しか出てこないから、絶対にみんなに聴いてほしいです。確かに攻めた曲調も多いけど、『ドロップ』のような歌心を持った楽曲も、FullMooNだからこそ表現できるんですよ。しかも懐かしさを覚える曲調だから、最後まで聴くとジーンとしてくると思います。まさに、FullMooNの可能性とFullMooNを取り巻く環境を大きく広げてゆく作品。だからこそ、『SPREAD』(広がり)と名付けました。

 

3


延々とループしてゆく物語をミニアルバム『SPREAD』には描きだしています。


──改めて、収録曲の魅力を探ろうと思います。冒頭を飾ったのが『Reality』ですね。

 わたしが作曲をしました。今回は攻めた曲が多かったので、FullMooNらしい王道な楽曲をと作りつつも、加入して日が浅いわたしが書いた理由もあるからか、ちょっと異なる王道路線を打ち出した楽曲になりました。実際、ファンの方々からも「今までとはとちょっと雰囲気の違う王道さだよね」と言われます。『Reality』は、ある程度のハードさを持った曲調の上で、「理不尽な物語 全て飲み込む勇気が欲しい」と、いろんな渦巻いた感情を記した、とても深い内容の楽曲。混沌とした感情を示しながらも、続く『Until the end』でそれらの気持ちを明るく吹き飛ばしていくからね。

ねね 『Until the end』はえれんの「ヤンチャボイス」を生かした、勢いを持った曲調に乗せて表現するツインヴォーカル曲として作りました。もともとは,シングル『shut out』の第二弾曲を意識して制作。『shut out』ほど激しくはないけど、勢いと疾走感を生かした曲調として完成。そこへ、バチバチに前向きな歌詞を乗せています。続く『Devil Princess』もわたしが作ったんですけど、一部ではヴィジュアル系っぽい楽曲とも言われています。歌詞は、想像の中から生まれた内容です。

──『Devil Princess』へ書いたのは、表向きはか弱そうに見せて、じつは腹黒い女性。世の中には実際にいますよね。

えれん いるんじゃない??

ねね  女性なら、『Devil Princess』に記した心情をわかる人は相応にいると思いますけど、男性は(女性の涙や、か弱い素振りに)騙されてしまう場合もあるのかなと思って。

えれん  こういう女もいるから、女性のいろんな仕種や表情には気をつけろよという注意喚起の歌です。

──『missing』の歌詞も意味深ですよね。

ねね  この歌詞を読んで、どういう内容だと思いました?

──浮気された女性の歌ですよね。

ねね   あははははっ、バレちゃったぁ。って笑ってますけど、わたしのことじゃなくて、これも想像の物語です。この曲の歌メロが歌謡曲風だったから、浮気されている女性の歌が自然に浮かびました。

 この女性が、浮気されて「あのヤロー!!」とぶち切れるのではなく、「違う、大丈夫」と思い込もうとしてるところが可哀相というか、自分から気持ちが離れているのに気づいているけど、気づきたくないと思ってしまうところがリアルなんですよね。

えれん  この子は、ちょっと年上の男性に遊ばれている感じなのも、なんか可哀相だよね。この曲のツインギタープレイはすごく綺麗なので、そこも聴いてください。

りん  『Another』は、今までのFullMooNにはなかった新たなチャレンジ曲です。歌も曲調もすごく格好いいんだけど、よりテクニカルさを追求した曲になりました。むしろ、「FullMooNはこういう楽曲も表現できるよ」という幅を見せています。この曲のギターソロが格好いいんですよ。

えれん  『Another』自体が、ガールズバンドらしくない渋さを持っている曲だから、ギターソロもちょっと渋い感じで演奏をしてみました。

ねね  最後が『ドロップ』になります。こちらは提供曲ですけど。聴いた瞬間「かわいい曲だし、どこか懐かしさを感じるなぁ」と思い、まだまだ気持ち的に幼かった頃の青春時代を思い起こす歌詞にしました。これも、想像で書いています。

 「溢れる言葉ノートに書いておくよ」や「大切な想いはカバンに閉まっておくから」とか、驚くほどキラキラした内容なんですよ。この曲を聴いてると、ノスタルジーでもないけど、あの頃の自分にふっと戻っていける感覚になれます。

ねね  わたし「悩んで泣いた日もある あの子を傷付けたことも ごめんねが言えなくて苦しくて」の歌詞が好きなんです。大人になると心に余裕も持てるようになり、いろんな対処法もわかりますけど。あの当時(10代の頃)は何事にも必死だし、精一杯で、心の余裕を持てなかったんですよね。ただし、大人になるにつれいろんな現実も知り、ただただキラキラ真っ直ぐな気持ちではいれなくなってしまう。だからこそ、全力で必死に輝いていたあの頃が眩しく見えてくるんですよ。

 あの頃は、何事にも全力でぶつかっていたからこそね。

ねね   そんなキラキラとした『ドロップ』に登場する女の子が、大人になっていろんな現実を知り、『Reality』のように現実はけっして美しいものではないと悩んでしまう。

葵  『Reality』で「現実なんて美しくない」と嘆きながらも、『Until the end』では「積み上げた時間は負けない 向き合った時間は負けない」と自分を奮い立てる。

りん  そんな日々の中、『Devil Princess』に出てくる女の子や、『missing』で他の女性にうつつを抜かす男性のように、世の中にいろんな人がいることを知った主人公は、『Another』を通して自分を見つめ直していくんです。

ねね  『Another』は、鏡の中の自分。つまり、もう一人の自分自身に問いかけてゆく内容。いろんな病んだ現実を知りながらも、「どうか暗闇に負けないで逃げないで 僕が手を引く」と自分を奮い立てながら、「羽根を広げても飛べなくて飛べなくて 此処でまた散る」と書いたように、結局は理想と現実の狭間で葛藤をしてゆく。だからこそ。。。

葵  『ドロップ』で、眩しかったあの頃の自分の姿を思い出して、ふたたび『Reality』を通して現実に戻るんだけど…。

ねね  やっぱし理不尽を感じてしまう。でも、『Until the end』でふたたび気持ちを奮い立てる。そういう延々とループしてゆく物語を、 ミニアルバム『SPREAD』に描きました。

 

4


結果、FullMooN中毒になる人たちが増えているから、もっともっとそういう人たちをSPREADしていきたい。


──8月31日には、赤羽ReNY alphaで「FullMooN 12th ANNIVERSARY ONE-MAN LIVE THE LEGEND OF FullMooN~そして伝説~」と題した、意味深なタイトルのワンマン公演を行います。

 いや、何も意味深じゃないですから。うちのプロデューサーが、とあるゲームのタイトルをもじって付けただけなんですけど。みんな「伝説って、FullMooNは解散するの??」と聴いてくるからね。

ねね  そんなわけないじゃないですかぁ。でも、ミニアルバム『SPREAD』を聴くと、ますますそう思ってしまうのかな??

りん  『Until the end』で前向きなことを言ってるから大丈夫でしょ。

ねね 赤羽ReNY alphaは、FullMooNのワンマン公演史上最大のキャパシティ。これからさらにFullMooNの存在をSPREAD(広げる)するためにも、この日は大きな挑戦になります。

りん  この公演のために、Empresのみつき、Siriusのあにゃ、2人のギタリストがゲストで出演します。

えれん  今回のワンマン公演はミニアルバム『SPREAD』を軸に据えた公演にしつつ、FullMooNにはツインギターを生かした楽曲がいくつもあるから、今回は2人をゲストに招いて、それぞれ何曲か一緒に演奏をしながら豪華な姿も見せたいなと思って。だから、いつもとはちょっと異なるワンマン公演にもなりそうだし、一段違うFullMooNのライブをお見せしていけると思います。

りん  I.D.JAPANさんに提供していただいた新衣装も、この日の公演からお披露目になるからね。

ねね  以前からもそうだけど。今回も、タイアップ曲(テレビ東京系「秋山ロケの地図」の8月度エンディングテーマ)として『Reality』が流れているから、そこでFullMooNに興味を持ってライブに来てくれて、そのままFullMooNにはまってくれる人たちも増えています。そういう人たちも「ワンマンに行くよ」と言ってくれるのが嬉しくって。

 8月23日(金)には、ディスクユニオンお茶の水ハードロック/ヘヴィメタル館で「FullMooN『SPREAD』発売記念サイン会」も行います。ここでは、恒例の私物サイン会もやっているから、サインしてほしい私物をいろいろ持ってきてください。前回はVRゴーグルや空気清浄機の裏蓋??を持ってきた人がいたけど、今回、みんながどんなものを持ってきてくれのかも楽しみです。

ねね  どうせなら、車とか持ってきてほしいよね。うちら、駐車場までサインしに行きますので。みんなが何を持ってくるのか楽しみにしています。

──最後に、ねねさんシメていただけますか。

ねね 一本締めですか?あっ、そっちじゃないですね(笑)。そうだなぁ……今のFullMooNは、本当にバンド力がヤバいです。だからこそ、ワンマン公演を観に来た人たちは、絶対に後悔させません。普段のライブでも、観た人たちをかならず満足させているし、結果、FullMooN中毒になる人たちが増えているから、もっともっとそういう人たちをSPREADしていきたい。今のFullMooNは一度触れたら離さないし、みんなも離れられなくなるはずです。

 

5

 

TEXT:長澤智典 


FullMooN「Reality」 MV Full
https://www.youtube.com/watch?v=WtE1cfszetA

 

『SPREAD』
発売日 2024年8月14日(水)
定価 ¥2.750(税抜価格 ¥2,500)

▶収録曲
1.Reality
2.Until the end   
3.Devil Princess 
4.missing   
5.Another      
6.ドロップ

 

1


8月31 日(土)赤羽ReNY alphaワンマンライブ

FullMooN 12th ANNIVERSARY ONE-MAN LIVE
THE LEGEND OF FullMooN ~そして伝説へ~
【GUEST】Risky Melody
[OPEN/START]15:45 / 16:30
 一般¥4,000 / ¥4,500 (D代別)
プレミアムチケット\10,000 (D代別)


最新情報は、こちらから。
https://www.tatenaga.net/


公式HP:http://tatenaga.net
公式X:https://x.com/FullMooN_tw
https://x.com/FullMooN_live
 

特集FEATURE

FEATURE
最新記事更新日 2024.11.24
イベント情報
最新記事更新日 2024.11.19
ガルポ!ズ INTERVIEW